【18】※ search(探索)part② ※
アンリの事は気になっていたが、ともかく研修だけはクリアしなければならない。
幸いな事に、俺にとってこの仕事はとてもやりやすいと思う。
何せ、俺の知識技能が活かせる筈だから…
アンリから引き継いだ『1793/FRANCE/No.3589472203………』の座標内、オーストリアとの国境近くのヴァレンヌという場所で、オレンジ色の点を発見した。
探し出すのに少し苦労したが、Zoomを駆使し、詳細な位置迄特定出来た。
「ユーキくん、凄いね。初めてなのに拡大機能を使いこなしている。」
「ありがとうございます。」
ケイは、本当に驚いているようだ。
目の前にあるオレンジのボタンを押した。
……救助隊がこれで保護に向かうのか…
そう思いながら、俺は新たに現れた、次の指示通りの数字とアルファベットを即座に入力した。
画面右上に『1909/AMERICA/No.7709385201.………』 と表示された。
西暦1909年アメリカ
……アメリカは広いな。時間がかかるかもしれない。……
そんな事を思いながら、何気なく真ん中辺りを探す。……ビンゴ!!
オクラホマ州オクラホマシティ付近に黄色の点があった。
……この仕事は…運任せな側面もあるな。……
そう思いながら黄色のボタンを押す。
また新たに現れた、次の指示通りの数字とアルファベットを入力した。
画面右上に『1005/JAPAN/No.8483998201.………』 と表示された。
西暦1005年日本
……日本か。俺のいた時空と繋がりがあれば、西暦1005年は確か平安時代だった。とりあえず人が多そうな所は、奈良…いや、京都か……
京都嵯峨付近に赤色の点がある。
手元の赤色ボタンを押した。
((しかし、パラレルワールドの座標までわかるのに、その後は手作業か…もっと詳細なシステムは作れないのだろうか?……))
「システム開発部も頑張っているんだけどね。」
突然かけられた声に、ビクッとした。作業に熱中して、思わず心の声が漏れてしまったようだ。
「あっ、すみません!」
「いいよ、僕だって常々思っている事だからね。
それにしてもユーキくんは本当に凄いよ。もうノルマ達成してるよ。」
「ノルマ達成ですか?」
「普通、研修生は一人一件こなせば、ここではオッケーだからね。
アンリくんは実質0件だけど、監督官として査定するのはバディーが対象だから。君達は3件クリアした事になる、多分最速で。」
……「それぞれ得意不得意はあるだろう。研修中は補いあって結果を出す事も得点に繋がる。」
トーマにそう言われたな。……
「…ありがとうございます。」
「…ただ、アンリくんが心配だけど…」
「…もし、このままの状態なら、休暇をとってもらいます。」
「えっ、えっ…チームの点数減点になっちゃうよ?…知らないの?」
……トーマが言っていた通りだ……
「知っていますが、その分は皆でフォローします。」
「……なら、僕も少しだけ協力するよ。君は最速でノルマをクリアした。
よって、特別ボーナス点を加算する。」
「…いいんですか?」
「勿論。監督官は自分の裁量で加点する事が出来る。
…それに僕にも責任があるかも…だしね。」
「監督官の責任はないと思いますが…ありがたく頂きます。」
俺がそう言うと、ケイはニコッと笑ってこう言った。
「新入社員研修終わったら、是非ここに来てよね。」
俺もニコッと笑って、こう言った。
「考えておきます。…チーム丸ごと魂が消滅しなければ、ですが。」
……さて、ケイはどう返してくるのか……
「えっ、冗談でしょ?」
……冗談でしょ?どういう意味で言っているのだろう。……
「…それは、どういう…」
言いかけた途端、部屋中赤くなり、警報音が鳴り響いた。
「!…紫が出ちゃったみたいだ。席代わって。」
「はい。」
「ともかく、君達のここでの研修は終了だよ。…見送れないけど、アンリくんの事よろしくね。マニュアルは1冊あげるから。」
「はい、色々ありがとうございました。」
マニュアルを受け取り、お辞儀をすると、ケイはニコッと俺に笑いかけて
「Good Luck!」
そう言うと、画面に向き直った。
アンリに肩を貸して、『探索室』を出た。
「ユーキ、すまない。もう大丈夫だ。」
それまで脱力していたアンリが口を開き、俺の肩から腕を離した。
「無理しなくていいんだぞ。慣れない作業で、大変だったよな。」
「………西暦1793年フランスは何色の点だった?……」
……変な事を聞くな?……
「オレンジ色だったよ。」
「…そうか…良かった。ともかく本当に迷惑をかけて申し訳ない。…それにありがとう、私の分のノルマ迄こなしてくれて。」
「同じチーム、バディーじゃないか。当たり前だろ。」
「それだけじゃない。私の為、チームの点数を減点しても、フォローすると言ってくれた。感謝する。」
アンリは深々と頭を下げた。
……聞いていたのか……
「……やめろよ。また貧血起こすぞ。顔を上げてくれよ。」
アンリは頭を上げると、ジッと俺の目を見つめて言った。
「…お前は本当に…いや、ともかくありがとう。」




