【17】※ search(探索)part① ※
「まず、僕がやるので二人とも見ていてね。」
「畏まりました。」
「わかりました。」
ケイは画面に向かうと
「まず、画面左上を見てね。
ここにある数字とアルファベットを入力する。」
そう言いながら、素早く指を動かし、あっと言う間に入力を終えた。
「………!?」
「あっと、ごめん。
つい、いつもの調子でやっちゃった……。
アンリくんには、何をやったかわからなかったよね?」
「はい、お詫びの言葉もございません。」
「いや、いや、僕の方こそごめんね。」
「もったいないお言葉、痛み入ります。」
「アンリくん、相変わらず堅いなぁ。」
ケイは少し笑いながら、暫く頭を傾げていたが、何か思いついたように言った。
「…じゃ、実際にやってもらった方がいいかな。アンリくん、やってみる?」
「はい、よろしくお願い致します。」
アンリは席に座り、画面を興味深げに見ている。
キーボードに触れる手が震えているようだ。
「僕もモニター見ているから、そんなに緊張しなくて大丈夫。」
ケイは、自分が入力した数字と文字をデリートしながら、明るくアンリに声をかけた。
俺から見ても、アンリはガチガチに緊張しているように見える。
肩に凄く力が入っている。
「あの…俺もまだ後ろで見ているだけでいいんでしょうか?」
「う〜ん、ユーキくんなら、一人でやれるとは思うけど…まだ研修生だから、いいよ。
アンリくんが肩凝りに耐えられなくなったら、交代してね。」
((肩凝りに気づける程、アンリに余裕があるとは思えないが……))
「冗談だよ。アンリくんが少し慣れたら、ユーキくんと交代してもらうから。」
ケイは監督官とは思えない、くだけた言い方をする。
「まず、画面左上にある指示された座標の数字とアルファベットを入力して。」
画面と手元を交互に確認しながら、アンリは恐る恐る右手の人差し指だけでキーを叩いている。
「…『J』はここにあるよ。『X』はここ。数字は、ここのテンキー使った方が早いかな…。そうそう…。」
ケイは丁寧に指導をしてくれている。
……俺も最初は一本指打法でキーを打っていたのかな?
今は多分だが…ケイより速く入力出来る気がする。誰に教わったんだろう?……
ふと、そんな事を思った。…思い出せない。余計な知識はあるのに、自分の過去だけはどうしても…。
「入力終わったら、このキーを押す。ほら、映像が映っただろ?この座標が示している時空は…画面右上、ここに表示される。」
「ここは、西暦1793年フランスだね。…とは言ってもどの世界かはまだわからないだろ?同じ年、同じ場所でもパラレルワールドは無数にあるからね。そこでこのキーを押すと…特定出来る。」
画面右上には『1793/FRANCE/No.3589472203………』これまた膨大な桁の数字が並んでいた。どのパラレルワールドか、特定する数字か。
「…アンリくん……大丈夫?」
「…問題ありません。…続けて…頂きたい。」
「じゃ…次に…
監視の指示が出る世界、場所には高確率で色付きの魂がいるんだよ。後はこの国のどこに、画面上では点だけど…魂がいるか探すんだよ。Zoom…つまり画像を拡大したり縮小したりはマウス、これを使うと便利だ。」
「万が一、紫色の点が画面に現れたら、このキーを叩く。そうすれば緊急事態を部屋中に報せる事が出来る。
そして、他のモニターで見つかった時は、すぐにこのキーを叩き、画面を切り替える。
どちらの場合でも、Zoom拡大縮小を使って、早急に詳細な場所を特定出来るよう努力する事。わかったかな?」
「………了解…致しました……。」
蚊の鳴くような声でアンリが応えた。
「?」
「…アンリくん、初めての事ばかりで疲れちゃったかな?
…じゃ、ユーキくんと代わろうか?」
「………はい……そうして頂けると…有り難いです……。」
……アンリらしからぬ弱気な発言だな。……
「じゃ、ユーキくん出番だよ。アンリくんと代わって。」
アンリが立ち上がり、こちらを振り向いた時、俺はまるで幽霊に出会ったかのように、怖気がした。
明らかにアンリは憔悴していた。
慣れない機械の操作や、緊張感から来る疲れ…それがアンリの負担になったのだろうか?
「アンリ、頑張ったな。後は俺に任せてくれ。」
「……不甲斐ない私で…申し訳ない……。」
「気にするな。バディーはお互いに助けあうものなんだろ?
アンリは良くやったよ、ともかく休んでくれ。」
「……感謝…する……。」
アンリはふらつきながら、俺がいた場所に行くと、頭を抱え座りこんだ。
「…………。」
「ユーキくん、アンリくんは大丈夫かな?」
ケイが小声で聞いてきた。
「普段のアンリからは考えられない状態ですね…。」
俺も小声で応じた。
「…慣れないし緊張している様子だったけど、途中までは普通だったんだよ。段々様子がおかしくなった。」
「途中から…ですか?」
「うん、座標特定した辺りから…。」
……だからあの時、ケイはアンリに大丈夫か?と聞いたのか……
「僕、監督官やるの初めてだから…なんかやり過ぎたかな?…」
「いえ、監督官は懇切丁寧に指導して下さいました。アンリだって理解出来ないながらも、やる気充分でしたし、監督官のせいではないと思います。」
「そうかな…ありがとう。」
「いえ、アンリの分も俺がやりますので、引き続きご指導お願い致します。」




