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ようこそ、異世界コンツェルンへ♪   作者: 三芳(Miyoshi)
※ トーマ ※
12/86

【11】※ doubt(疑惑) ※


暫く歩いていたらトーマが突然笑いだした。



「…聞いたか?」



「何を?」



「お前の事をユーキくんだって!俺、危うく心の中で突っ込み入れそうになったぜ…ぷふっ!」



「…そんなに笑える事かよ…」



「笑えるだろ?最初はあんなに不機嫌だったのに、識別番号じゃなく…ユーキくん…ぷふっ!」



「…そんな事はどうでもいい。次はどうするんだ?」



「あぁ、そうだな、次はチームに戻る。もう戻っているバディーもいるだろう。」



トーマは笑いすぎて出た涙を拭きながら言った。



「一区切りついたからな。一休みだよ…前にも言ったが研修中は情報交換の時間だ。」



俺はそんなトーマをムッとした顔で見たが



「ちゃんと、今の『ユーキくん事件』も報告してやるからな…ぷふっ!」



ヤツは俺を置き去りにして、笑いながら走っていった。



チームの部屋に着くと既に7人は揃っていた。



((アンリとライラックはまだか…))



「ユーキ、活躍したようですね。」



早くも『ユーキくん事件』とやらを報告したようだ。



俺は遠くにいるトーマを睨みながら、ハルに応えた。



「活躍なんてしてないよ。

むしろ、研修中に声を出して、減点されたかもしれない。」



「…そうでしょうか?あなたは少し自分に厳し過ぎるように思えます。」



((…贖罪…))ふとその言葉が頭を過った。



「お前は何故そう思うのだ?」



突然マイケルが聞いてきた。



「……わからない。ふと言葉が過っただけだから…」



((さっきもそうだったが、頭に浮かんだだけなのに、他人にわかってしまうというのは……プライバシーも何もないな。))



「……知らないのか?」



心地よく響く声が聞こえた。

背が高く、抜けるような白い肌、端正な顔立ち、眩しい位に輝く長い金髪…マイケルに似た容姿だが、目の色が違う…サミーだった。



「!?」



サミーが俺に話しかけてきたのは初めての事だった。

その深紅の瞳に見つめられると、何故か背筋がゾクッとした。



「心の声は隠す事だって出来るんだぜ…そんな事は初期の知識だ。本当に知らないのか?

トーマに……」



「やめろ!お前が口を出す事ではない!」



マイケルが険しい顔をして、サミーを叱責した。



「チッ!」



サミーはマイケルを睨み付け、舌打ちをして、その場を立ち去った。



((トーマに…なんだ?…トーマに聞かなかったのか?と言いたかったのか?))



当のトーマは、レオンと談笑している。



そして…俺の中で何かが崩れ、トーマを見る目が変わっている事を自覚した。



記憶をなくし、この空間に連れてこられ、右も左もわからない状況の中、最初から俺に色々教えてくれた。

トーマは…俺にとって信頼できるヤツだ…と思っていた。

人の迷惑お構い無しといった図々しい所も、コミュ障気味な俺には有難い相棒なのかも…とも。



図々しい?…確かに俺やライラックにとってはそうだ…

だが、トーマは相手によって接し方を変えている。



今も…いつの間にか移動したトーマは、フィンと穏やかに話をしている。

ニモにもたまに何かを話しかけている。



その様子は俺に対する態度とは全く違う。



他人との関わり方を心得ている。

頭の良い男だ。

適度な距離感、相手に合わせられる会話術…



……俺には欠けているものだ。……



いや、そんな事を考えている場合ではない。



…あの時の射すような視線

…真顔で言ったあの言葉「自分は何者なのか?」

…何故、心の声が隠せる事を俺に教えなかったのか…



((トーマは…何を企んでいるんだ!?))



再び震えが来そうなのを堪えながら思った。



俺はいったい何に怯えているのだろう…



ウザいと思いながらも、頼りにしていたトーマに裏がある…そう思う事がか?…いや、違う気がする。

もっと心の奥の何か…



足元から、えも言われぬ恐怖が這い上がってくるような気がした。



「サミーの言った事を気にする必要はない。」



マイケルが静かに言った。



「あなたにはトーマが必要です。」



ハルも前に言った言葉を口にした。



だが、一度芽生えた不信感は俺の中で既に育ち始めていた。





「お~い、ユーキ!」



いつものようにトーマが軽い調子で俺を呼んでいる。



俺は振り向かなかった。



……なんで俺にあんな鋭い視線を向けたんだ?……



「ユーキく~ん、聞こえてるよね?」



……何故俺が何者なのか、探るような事を言う?……



「…ユーキ、どうしたんだよ?」



……研修の事前に「思った事が筒抜けなんて…」と思った、俺の心の声に何故応えてくれなかった?

何故心の声を隠せる術がある事を教えなかった?……



「おい、ユーキ…」



近づいて来たトーマの手が俺の肩に触れた。

俺は思わず、その手を振り払った。



「!……」



……聞いていたんだろ!今の俺の心の声も!なら、何故応えてくれない!?

お前こそ、いったい何者なんだよ!!……



俺は呆然と立ちすくむトーマを残し、無言でその場から離れた。



全員が俺達を見ていた。凍りついたような雰囲気が嫌だった。しかもその原因を作ったのは俺だ。

ともかく、少し頭を冷やしたい。俺はチームの部屋から出た。



「アンリとライラックはまだ帰ってこないから、暫く情報交換はないよな…」



情報交換…今はどうでもいいように思える事だが、それでも理屈を呟いた。



「そうさ、まだ自由時間だぜ。少し話さないか?」



ビクッとして振り返ると、そこには、サミーがいた。



【あとがき雑学】


『贖罪』(しょくざい)


「贖罪」には2つの意味があるそうです。


「贖」(しょく)「贖う」(あがなう)

元々は身代金を支払って罪人の身柄を引き取る事、金銭によって罪を免ずる事。

金銭や物品を差し出して罪を償う事。それに値する行為によって罪滅ぼしする事。

また、単純に物品を買うという事。


一般的には「罪の償い」という意味で使われています。


しかし、宗教用語としての「贖罪」はだいぶ意味合いが違うようです。


キリスト教では、人々の原罪(アダムとイブが神に背いたので、人間は生まれながらにして罪人)を贖い、人類を救うために、キリストが十字架にかかったとする教義を意味します。


罪人である人間が償うのではなく、罪人を救いたいと思う神が、代償(息子の命)を払って、人を罪から解放し、神の近くへ取り戻す、という事が贖罪とされるそうです。

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