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ようこそ、異世界コンツェルンへ♪   作者: 三芳(Miyoshi)
※ トーマ ※
11/86

【10】※ guide(案内人)part③ ※


(((いいぞ、ユーキ!…そのまま続けろ!)))



トーマの心の声が聞こえた。

意外に落ち着いて対処できたと思うが、気づけば全身に汗が吹き出している感覚がある。



((魂でも汗をかくのかな…))



などと愚にもつかない事を思っていると、部屋の隅の空間が歪みだした。



!?…まずい、そこからだとトーマの姿が見える…



俺は慌てて歪みの近くに行き、現れた人物の視界からトーマを遮るように立った。



そして現れた年配の女性の手をとり、さりげなく中央へと移動した。



「あなたは誰ですか?」



女性は手を引かれながら、俺に尋ねてきた。



『案内人』と名乗っていいものか、一瞬迷ったので



「貴女様は人生をやり直したいとは思われませんか?」



反対に問い返して誤魔化した。



彼女はあの男がいる時に出現しかけたミキという女性だろう。だが、彼よりもだいぶ年上に見える。



「………」



「否定も肯定もされないのですね。」



「はい、質問が唐突過ぎて…」



この反応…彼女の目的は、人生のやり直しではないのかもしれない…

では何故ここに現れた?

マニュアルには書かれていなかった事象に、俺は少し焦った。



「では質問を変えます。

貴女様はパラレルワールドという言葉をご存知ですか?」



(確か、同じような世界が幾つもある…みたいな事だったような…)



彼女の心の声が聞こえた。



「そうですね。その認識で構いません」



「人生には色々な分岐路がある。人はどれかを選び、現在の自分になっているのです」



「はぁ」



「貴女様も今迄たくさんの岐路を選択してこられた。」



「捨ててきた未来もある。それらも含めて、選択の数だけ世界は存在するのですよ」



「はぁ」



……「はぁ」…か…少し話を飛躍させ過ぎただろうか……



「現状に満足していますか?」



(現状に満足?…うん、概ね満足していると思う。)



……やはり、やり直したいという自覚がない、もしくは違う目的の来訪者なのか?……



「選ばなかった選択肢の先を見てみたいとは思われませんか?」



「それはどういう…」



突然、彼女の姿が歪みだし、段々薄くなっていく。



とりあえず何か言葉をかけなければ…



「残念ですが今宵はここまで…またのご来訪、心よりお待ちしております。」



彼女に聞こえたかどうかはわからないが、俺はそう言って頭を下げた。



顔を上げた時には、既に女性の姿は消えていた。



…ふぅ…あれでよかったのだろうか?…



(((代われ!)))



突然かけられた言葉にビクッと身体が強ばった。

すぐ近くにトーマ…ではない誰かがいた。



(((多分、イレギュラーな案件になる。研修生ではキツイだろう。)))



俺は軽く会釈して、その場を離れた。



トーマが手招きをしている。

(((部屋を出るぞ。ここでの研修はこれで終わりだ。)))





部屋を出た途端、俺は大きく息を吐いた。



「どうした?」



「あの部屋の中には空気がないような感じがした。」



「空気?…そんなもの元々ある訳ない。…かなり緊張していたんだろ。」



「…あぁ、そうかもな。」



(((ぷふっ、ユーキくんでも緊張するのね~)))



トーマの軽口に口答えする気もしない。



「男の方はともかく、俺の言い方だと、彼女には俺の話は突飛過ぎて、不自然に感じられたかもしれない…。」



「彼女は多分覚えちゃいない。覚えていても、夢だと思っているだろうよ。」



「……だといいんだが……。

あぁ、そうだ。トーマ、助言ありがとう。助かったよ。」



「……本当にお前は律儀なヤツだな。」



今度は笑うでもなく、トーマは言った。





俺達は雑談をしながら『案内人室』へ向かった。



「しっかし、女に未練タラタラって感じの男だったよな?…しかもその彼女が同じ部屋に現れるとは…レアケースだぜ。」



「あの男は多分俺と同じ位の年齢に見えたが…想い人と思われる彼女はずいぶん年上に思えた。」



「それは来た魂の時空が違うんだろうよ。」



((…だとすると、やはり彼の願望は叶うまい…))



「…そうとも言い切れないぜ。まぁお試し段階では、ダメだろうが…正式転移した先なら、わからんぞ。」



「どうしてそう思う?」



「人間の想いには限りない可能性がある!」



きっぱりと言い切ったトーマの顔は、何故か輝いて眩しく見えた。





「お忙しい所、すみませ~ん。

『区分コードO、識別コード9793519307』

『区分コードR、識別コード9793519309』

以上2名、研修終了致しました。」



『案内人室』の扉を開け、トーマが声をかけると、手前にいた白い人が振り向き、やって来た。



「ご苦労様でした。少しモニター見たけど、二人ともなかなか良かったわよ。」



「お褒めに預り、光栄です。」



多分、先ほどの女性だろう…相変わらず白くて判別が難しいが。



「では、衣装を返して頂戴ね。マニュアルはどうする?」



…どうする?って…?



「出来ましたら後学の為、1冊頂戴出来たら嬉しく思います。」



トーマが言うと女性は



「そうね。特にユーキくんには必要かも知れないわね。それにしても、イレギュラーに当たったのに、よく対処したわ。」



そう言って俺を見て微笑んだ。(ような気がした)



「それでは失礼致します。」



俺達は『案内人室』を出た。



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