かのこ
ずっと前の昔のこと。まだ人々は着物を着ていた。争いのような戦のようなこともあった。
ある日、大きな海に黒い大きな船が海面から上がって姿を見せた。
人々は恐怖を感じた。するとこちらも負けじと言うことなのか、木の色をした大きな船が海面から顔を出した。
その近くの砂場で男数名と女が十人前後ぐらいがいた。そのうちの一人がワタシだ。男たちが小舟に乗り、我らを先導する。女たちは四つの小舟に別れて乗りこんだ。
何でか理由は分からない。波に揺れ、女たちは怯えた。膝を抱えなにかを呟く人もいた。ワタシたちが乗った小舟がみんなと方向が違った。波に乗せられてみんなより斜め右に進んでいた。
一人の女がオールを持って「漕ぐよ」と鼓舞をする。みんな一生懸命にするが、波が強かった。
ふと気が付くと、ワタシは不思議な食べ物屋さんにいた。大きな柱となにかの隙間テーブルか?の間にいた。ウロウロと黒い頭が動くのを人に見られて笑われたかもしれない。ワタシは黒く長い髪で白いワンピースを着ていた。
目よりも高いところに、美味しそうなもんがいっぱいあった。ソースがかかったハンバーグに、魚に他にもいっぱいあって食べたくなった。
横を見ると長ぼそいテーブルに料理がたんと並んでた。手前の一番前の席だけ同じ料理が二個もあった。
お兄さんがワタシを捕まえて、その席に座らせた。よく見ると他にも人がいた。みんなでいただきますをするが、ワタシはどうやって食べたらいいのか分からなかった。ただボートしていた。
隣の椅子に座るお姉さんがワタシに「今日は自分で食べれない日かな」と言って、ワタシの右側に椅子を持ってきて、料理を食べさせてくれた。最初からそうすればとも思った。
少しすると私は眠くなった。お兄さんがワタシをお姫様抱っこにして椅子に座る。ワタシはよく分からないが、その首に手を回す。お兄さんはワタシの肩をポンポンとしたり背中を擦ったりする。お兄さんは温いのにワタシは冷たくなっていく。
みんな急いでご飯を食べて、ごちそうさまと言った。お兄さんはワタシをお姫様抱っこしたまま抱き上げて歩いた。
また気が付くと、畳の部屋に布団がひかれてそこにワタシは横になっていた。お兄さんかお姉さんが、ワタシの手を握っていた。声は聞こえるけど、目はぼんやりして分からなかった。
ワタシはご飯を食べた場所でも、背中越しで色んな人が言っていたのが聞こえていた。
「あそこのかのこって子がいるでしょ。あの家族は呪われてるのよ」
「かのこって子は、もう何度も大きくなったり小さくなったり死んだりしてるって言うでしょう」
「かのこって子は、愛想はいいんだけどね」
「かのこって子を世話してる二人もかわいそうようね」
「かのこって子と一緒に小さい頃から過ごしてるのに、ある程度まで成長したかと思えば小さくなるんだから。逆戻りっていうのかしら」
お兄さんとお姉さんとは一緒に過して来た。それが何度もワタシだけ成長してもまた戻るのを繰り返してしまう。そしてある程度までいくと死んでしまう。でも二日ぐらいしたら、また生きがえるの繰り返し。
たぶんある程度までは、ワタシがあの小舟に乗った年までだと思う。
この家には、ワタシ“かのこ”が代々伝わり守られている。みんなワタシがいる布団の周りにいた。泣いてる人やキレてる人もいる。
「何度目や、もう死ぬのは分かってるから悲しまんでええやろ」
「そう言わんとってくれ」
ワタシは自分が死ぬ時は、おじいさんに脈を取られ死亡を告げられる。それを繰り返す。
かのこは、この人たちがずっと前の昔に生きてた家族の子孫かわかりません。
ワタシは転生しているのかもわかりません。ワタシはワタシだから。ワタシは二日後に起きるとあわい青いワンピースを着ていた。
ワタシはこんな話も聞いた。あのずっと前の昔の海に顔を出した大きな船と小舟のこと。
「小舟に乗せられた女は、生贄だ」
「男たちが先導したといっても、生贄には変わらない」
「大きな船や小舟の女たちのことは伝わってるのにその後は分からないんだよな」
ワタシが覚えてるのは、ワタシよりもお姉さんとワタシよりも小さい子とワタシと同い年の子が小舟に乗っていた。その当時は中学生か高校生ぐらいだった気がする。
ワタシと過ごしたお姉さんとお兄さんは、ワタシよりも当然老いた。オジサンとオバサンで子供だっている。ワタシだけとり残された。
ワタシだけその後が分からない伝説か言い伝えから飛び出した。そして成長して自分が小舟に乗った年に戻りまた小さくなって、成長して死んで、二日後に生き返るのを何度も繰り返しをする。
ずっと前の昔のことを、ワタシ“かのこ”はそれを繰り返していくのだ。
読んでいただき、ありがとうございます。