確かめてみようかな(電子書籍配信記念SS)
5月4日、電子書籍(上巻)の配信が開始されました!
※甘いちゃ注意。
ルーク様と婚約して、私は幸せな毎日を送っている。
けれど最近少し、悩んでいることがある。
「……ちょっと太ったかしら……?」
これは幸せ太りというやつだろうか。
王城で出される食事はすごく美味しいし、食事マナーもだいぶ身に付いて余裕が出てきた私は、毎食綺麗に完食するようになった。
それに、ルーク様はよく私のためにデザートを用意してくれる。
「……たんに私が王城の美味しいごはんを食べすぎているせいね」
少し痩せなきゃ。
そう思いながら夕食後に自室のソファで休んでいたら、扉をノックする音が聞こえた。
「フィーナ、いいかな」
「はい! どうぞ」
ルーク様だ。
「アリエラがお菓子を焼いてくれたから、一緒に食べようと思って」
「えっ、お菓子ですか?」
「ああ、好きだろう?」
「ええっと……」
確かに、甘いお菓子は大好き。
マドレーヌやマフィンのような焼き菓子を、私の前にあるテーブルに置いたルーク様は、とてもにこやかに微笑んでいる。
「私は、遠慮しておきます……」
「え? どうして?」
どうして、と言われても……。
ちょっと食べすぎて太ってきたので!
なんて、恥ずかしくてルーク様には言えない……。
「……フィーナ? どうかしたのか?」
「その……」
「もしかして、お腹が痛いのか?」
「いやぁ……」
言い淀んでお腹に手を当てていた私を見て、ルーク様が心配そうに問う。
「それは大変だ。今医者を呼んでくるから、少し待っていてくれ」
「あ……っ、お待ちください……!!」
医者を呼ばれるのは困る。
だから慌ててそう声を張ると、ルーク様は不思議そうにピタリと止まって私に視線を向けた。
「その……」
「なにかあるなら、なんでも言ってほしい」
「実は……」
「うん」
私の隣に座って、真剣な表情で私を見つめるルーク様の視線がとても優しくて、つい逸らしてしまう。
そんなに心配されると、とても言いにくいのですが……。
「最近、少し食べすぎなので……」
「そう? フィーナはもともと少食だったから、今で普通くらいじゃないかな?」
「ですが、少し…………太って……きて……」
「え?」
「……」
聞こえたのか、聞こえなくて聞き直したのかはわからないけれど。
ぼそぼそと呟いた私の言葉に、ルーク様は大きな声を上げた。
「ですから、最近少し太ってきまして……!!」
「……」
そんなルーク様の反応に、思い切って大きな声を出してから、はっとする。
「すみません……! そんなに大声で言うことではなかったです……!!」
いくら私たちの他には誰もいないとはいえ、これではまるで逆ギレしたみたいだ。
落ち着こう……。
「なんだ、そんなことを気にしていたのか」
「そんなことって……!」
「フィーナは全然太っていないよ?」
「ルーク様は知らないじゃないですか……」
「……そうか。では」
一瞬の間を置いた後、なぜか口角を上げてそう言ったルーク様に疑問を感じた直後――
「……!!」
「……うん、やっぱり太ってなんかいないよ?」
ルーク様に抱きしめられたと思ったら、彼の手が私の背中を撫でるように這った。
「ル、ルーク様……」
「フィーナは細いが、やわらかくてとても抱き心地がいいな」
「……っ」
嬉しそうにそう囁いたルーク様の手が身体を這って、くすぐったい。
「やっぱり、やわらかいということは、少しダイエットしたほうが……」
「必要ないよ。でも、そんなに言うなら――」
〝直接確かめてあげようか?〟
そんな言葉を耳元で囁かれて、私は顔から火を噴いた。
「そ、それはどういう意味ですか……!??」
「さぁ、どういう意味だと思う?」
「……!!」
くすっと小さく笑ったルーク様に、からかわれたのだと察した私は、彼の胸に手を置いて力一杯押し返した。
「もう、そんな冗談やめてください……!」
きっとまだ顔が真っ赤になっていると思うから、顔を背けるように彼に背中を向けた私に、ルーク様の手が伸びてきた。
「冗談でもないんだけどね?」
「え――?」
そして、あっという間に私の身体はソファの上に倒される。
「俺を突き放すなんて、ひどいな」
「ル、ルーク様……?」
「やっぱり直接確かめてみようかな」
「ちょ、ちょっと……待ってください――!!」
そう言って、今度は仰向けになっている私の脇腹辺りに手を這わせるルーク様。
「愛してるよ、フィーナ」
「そんな言葉で誤魔化されませんよ……!!」
楽しそうに笑うルーク様の頭から、魔王のそれらしい触覚が見えた気がした。
お読みいただきありがとうございます!
約二年ぶりの更新です……!
このお話は私が初めて書いた異世界恋愛小説です。
電子書籍として刊行していただけて、本当に嬉しいです!
刊行を記念しまして、二年ぶりにSSを投稿してみました。
二年前とは書き方が少し変わっていますが、書籍版でも大幅改稿しておりますので、よろしければそちらもよろしくお願いいたします!
活動報告にてフィーナとルークのお顔が見られる書影を公開しておりますよ~(*^_^*)




