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25日目.魔王の口づけ

 日の光を感じ、ぼんやりと目を開けた。


「フィーナ!」


 すぐにルーク様と目が合って、彼が私の顔を覗き込んでいたのだと感じた。


 とても不安そうに瞳を揺らしている。


「……」

「フィーナ、大丈夫か?」


 ジッと顔を近づけ、私の返事を待つルーク様。


 ……やだ、私、もしかしてルーク様にずっと寝顔見られてたの!?


 そう気づいてガバッと起き上がり、両手で頬を包み込む。


「フィーナ……?」

「ル、ルーク様……お恥ずかしいです、そんなに見られては……」

「ああ……、良かった。元気そうだな」


 本当に安心した様子のルーク様を見て、眠る前のことを思い出す。


 そうだ。怪我をした騎士たちと魔力を使いすぎたルーク様を全員治すために思い切り力を解放して……私は気を失ってしまったんだ。


「ルーク様、身体の具合は大丈夫ですか?」

「……君は、本当に。私は大丈夫だから、頼むから昨夜のような無茶はしないでくれ」


 苦しそうに眉を寄せてそう言うと、切なげに懇願された。また心配をかけてしまったことは素直に申し訳なく思うけど、ルーク様も元気になったようで安心した。

 彼だって、少し無茶をしたようだったから。


「ごめんなさい」

「でも、よかった……本当によかった……」


 すっかり回復している私を見て、ルーク様は強く身体を抱きしめてきた。


「フィーナ、君は昨夜いつもより強大な力を解放したんだ」

「はい……自覚はあります」

「……君は聖女として、どんどん目覚めていくね」

「はい……」


 至近距離でフッと小さく微笑むと、ルーク様はすぐに唇を重ねてきた。素直に受け入れ、私も彼の背中にそっと腕を回す。


「……このまま目を覚まさなかったらどうしようかと思った……」


 目の前で静かに囁いて、ルーク様は額にも唇を運んだ。そしてそのまま瞼や頬にもちゅっと軽く触れてくる。


「んっ、ルーク様」

「とても心配したんだよ?」

「はい……、ごめんなさい」

「まだ許してあげない……」

「ん……」


 顎に手を置かれ、上を向かされると再び唇を塞がれる。


 本当に心配して、そして今とても安心しているのだと伝わってくる。


「……、っ!」


 けれど、甘いだけの口づけだったのに、突然ルーク様は私の顎を引くと唇を割って、やわらかな舌を滑り込ませてきた。


 湿った音がテント内に響く。


「……」

「……は……ぁ」


 ようやく解放されて息を吸うと、熱を持った彼の瞳が目の前にあって、私の身体からキュンと力が抜け落ちる。


「……ルーク様」

「ごめん、やりすぎた」


 軽く睨み付けると、困ったように笑みを浮かべて「ごめんごめん」と言いながら私の頭を撫でるルーク様。


 ごめんではない! 寝起きにこんなことされて、私の頭の中は真っ白だ。

 身体は熱いし、胸はドキドキ高鳴って、もうどうしたらいいのかもわからない。


「フェリオンも心配していた。今朝食を食べていると思うが、君も食べられそうか?」

「……はい、いただきます」


 今度はいつものように優しく微笑むと手を差し出され、それに捕まって私たちは外へ出た。


「フラッフィーナ様がお目覚めになられたぞ!」


 テントの外で騎士たちが私を見てまた歓声を上げた。照れくさい思いでそれに応えながら辺りを見渡してみたけれど、フェリオンの姿が見つからなかった。




 *




 その後、王都へ出発しようとしていた私たちの元へ副団長たちの一団がやって来て、無事合流することができた。


 その中には怪我をしている者が数名いた。


 軽傷者には余っていた魔道士団のポーションを使い、重傷なものには聖女の光を使った。

 ルーク様を心配させないよう、落ち着いて、練習もかねるつもりで、無理はせずにね。


 そして帰路についたけれど、森を抜ける前に日が暮れて野営をすることになった。

 そりゃそうよね。随分奥まで来ちゃたのだから。今日中に帰れるわけないのだ。


 でもこの野営にもだいぶ慣れてきた。

 ルーク様の隣で寝るのはまだドキドキするけれど、一緒にいられるのは純粋に嬉しい。


「あれ……? フェリオンはどうしたのでしょう」


 夕食が済み、テントを張って寝ようと思ったら、またフェリオンの姿が見当たらなかった。

 思えば今日はずっと静かだったし、彼も疲れているのだろうかと思っていたけれど……。


「ああ……そういえば今日は二人でこのテントを使えと言っていたが……あれは本気だったのか」

「え!?」


 どうして突然そんなことを言い出したのだろうか。今まで三人で使っていて問題なかったはずなのに。


「……いや、それがその……今朝、フェリオンが君の様子を見にテントへ来たようなのだが、その時私たちはちょうど……」

「……」


 その先を言いづらそうに視線を外して頬を染めたルーク様に、まさか……と思い顔に熱が上っていく。


 もしかして、あのキスを見られたの……?!

 う、嘘でしょ……!! 恥ずかしくて死ぬ……!!


「……」


 けれど、二人きりは逆に困る……!

 またあんなキスをされたら、私はもう溶けてなくなってしまうかもしれない……!!



「私、フェリオン呼んできますね!!」

「うん……残念」

「え?」

「ううん。なんでもない」

「……」


 ……今、残念って言った?


 けれど聞き返せば可愛く笑顔を見せるルーク様に、それ以上聞くのはやめた。


 こんなに綺麗で可愛い笑顔を見せるけど、この(ひと)は間違いなく魔王なのだと、今回の旅で思い知らされたのだった。

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