XX.魔王の事情6
「……それで、一緒に寝たのに何もしなかったのか」
「ああ、そうだとさっきから言っているだろう」
フィーナのご両親に挨拶するためトリアルの町へ行き、一泊して帰って来た俺はフィーナと夕食を済ませた後、自室でフェリオンと少し酒を飲んでいた。
フェリオンは幼い頃からこの王宮に住み、俺と共に学業や鍛錬を積んできた幼なじみである友だ。
俺が唯一心から気を許し合える男である。
こうしてよく二人で晩酌する仲だが、ウイスキーが三杯目にさしかかった頃、トリアルにフィーナと一泊してどうだったのかと、この男はニヤついた表情で聞いてきたのだ。
「……それはお前、逆に不健康だな。魔王といえど男である以上お前にもそういう欲があるだろう?」
「もちろんあるさ、俺は健康だ。忍耐強いと褒めてほしいね」
「それならフラッフィーナの方が期待していたのではないか?」
「そんなわけないだろ?」
自慢ではないが、俺たちはモテる。
まぁ俺は魔王だ。その子供を産みたがる女は山程いて当然だが、フェリオンはそのクールな見た目と賢い頭脳、魔王の側近を務める実力を伴った色男だ。
絶えず女が言い寄ってきているが、フェリオンはそういうこともうまくやる。
昔から器用でなんでも卒なくこなすのだ。
だから今となっては女の扱い方で俺はフェリオンに敵わない。
話は戻るが、そんな俺が初めて女に本気になったのがフィーナだ。
フィーナはフェリオンに言い寄ってくる女たちとも異なり、とても純情で初心な女性だ。
見つめればその愛らしい頬を赤く染め、触れれば恥ずかしそうに目を逸らす。
強く抱き締めれば、細みであるのに女性特有の膨らみが自分の胸に当たり、たまらない気持ちになる。
その奥にある彼女の鼓動は速まっていて、緊張が窺える。
そして彼女の唇はとてもやわらかく、気持ちがいい。一度触れると止まらなくなりそうなのだ。
正直、もっと深く彼女を知りたい。
早くフィーナのすべてを知りたいと思う。
……だが、あの時もキスをすれば我慢できなくなると言ったら、俯かれたのだ。
彼女が望まないことはしたくない。
「結婚するまでは……まして正式に婚約を発表してもいないんだ。手は出さない」
「さすが、堅物魔王様」
そんな俺にフェリオンは口元で小さく笑って言った。
少し呆れているようだが、フェリオンは俺とフィーナのことを見守り、応援してくれている。
当然、配下のほとんどの者はそうだ。
しかし、最近ラステリーが気になる。
彼はあまり他人に興味を持つ男ではないのだが、興味があるものへの執着心は異常なものがある。
俺への忠誠心は本物であるだろうが、聖女の力に目覚めたフィ-ナにどうやら興味を惹かれたらしい。
随分と楽しそうにフィーナの話をするのだ。
無自覚であるのか、報告をかねてフィーナの話を嬉々として俺に話してくる。
〝フラッフィーナ様は本当に素晴らしい〟
〝あんなに素敵で魅力的な女性は他にいませんね〟
〝是非魔道士団に欲しいものです〟
〝また回復薬を作らせに呼んでよろしいですか?〟
〝フラッフィーナ様が、フラッフィーナ様が……〟
と、あまりにも彼女の話ばかりをするものだから、少しだけ咎めたことがあった。
「フィーナは私の婚約者だぞ?」
「……もちろん、承知しております。これは失礼しました、少し興奮し過ぎてしまったようで」
すぐに察して頭を下げたが、やはりラステリーには自覚がなかったようだ。
ラステリーに限ってまさか、間違ったことなど行わないだろうと信頼してはいるが、無自覚の男は怖い。
それに、聖女の子は強く賢く育つのだ。
この国では魔王がその聖女を妻にできると決まっているが、自分の子孫を聖女に産ませたいと思うのは本能として当然のことでもある。
過去に、王に反逆して無理矢理聖女に種付けをした者もいたらしいのだから。
「……」
「どうしたルーク、怖い顔して」
「いや、杞憂だな」
「……なんだ、お前まさかそんな完璧なナリをしてアッチに自信がないのか? 大丈夫だ、男に必要なのは心のデカさだ。あとはテクニックでなんとかなる。なんなら俺が教えてやろうか?」
フェリオンはククク、と怪しく笑いながら右手の指を意味深に動かした。
「何を言っている!! そんな心配はしていない!!」
考え込んでいた俺を見てとんだ勘違いをするフェリオンを一喝し、俺はグラスに残っていたウイスキーを飲み干した。
フィーナのぬくもりを思い出してしまった俺は、こんな夜中にも関わらず彼女に会いたくなってしまった。
あのやわらかく気持ちがいい身体を抱きしめて、その芳しい香りに包まれて愛しい唇に口づけたい。
「我慢は体に悪いぜ? 魔王様」
「うるさいな、お前と一緒にするな」
そう言いつつも、早く酔ってしまわなければ今夜は眠れそうにない。
そう思い、四杯目のウイスキーを喉に流した。
下ネタすみません。。
フェリオンに喋らせるとこうなりがち……(^^;
大丈夫でしょうか。
終わりが近付いて参りました。
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