19日目.回復効果
今日も私は訓練に勤しんだ。
「うん、だいぶコントロールできるようになっていますね」
「はい!」
力の発動も最初の頃に比べてスムーズにできるようになってきたし、加減の仕方にも慣れてきた。
アルフィ先生も以前、きっかけさえ掴めば一気に開花できるのではないかと言っていたけれど、ラステリーも順調だと言ってくれた。
「今日は二人治療してみますか?」
「いいんですか?」
「ええ、その調子なら大丈夫でしょう。ルークアルト様からは私の判断で許可して良いと言われてますし」
ジェラルド騎士団長にもそれを告げて魔道室へ入り、待っていると今日は二人の負傷者がやって来た。
半身が麻痺している者と、脚と腕を骨折している者。
二人とも上級回復薬がなければ死んでいただろうとのことだった。
それでも完治はしなかったのだ。
スムーズに力を発動させ、一人ずつ光を送り込む。
爛れていた皮膚は綺麗に再生し、折れていた骨も綺麗にくっついた。
うまく魔力も調整できた。
二人の騎士は大きく体を動かしながら歓喜の声を上げて喜び、私の前に跪いて礼を述べる。
「ありがとうございます! フラッフィーナ様」
「我等は一生貴女様に忠誠を誓います」
「そんな、大袈裟だよ……」
顔を上げて立ち上がるように言うと、今度はラステリーが声をかけてきた。
「体調はどうですか?」
「平気みたいです。なんならもう一人くらい……」
騎士たちの喜びぶりに嬉しくなり、つい調子に乗って言ってみたけれど、ラステリーは食い気味に声を張った。
「ダメです! 無理をさせると私がルークアルト様に叱られます!」
「……はい」
少し休憩した後、スムーズに発動できるよう練習をして、午後は久しぶりにダンスのレッスンに行った。
*
「そうか、ではフィーナの力もだいぶ落ち着いてきたようだな」
「はい」
ルーク様と夕食を取りながら、今日の調子を報告するのも日課になってきている。
「昨日フィーナが作った回復薬も、治療中の者に使ってみたらしいのだが……」
一度手を止めて、ルーク様は険しい表情を見せた。
「それで――、どうだったのでしょう?」
その答えを急かすように問い、そのイエローベージュの瞳を見つめた。
「フィーナは凄いよ。その効果は上級回復薬をも凌ぐものだった。あんなものを見たのは初めてだ」
具体的にはどのような効果があったのかまでは口にせず、それでもルーク様の語る様子からはその効果の高さを感じ取れる。
「正直、あれを使えば現在治療中の者の傷も癒えるだろう。フィーナがわざわざ治療せずともね」
そんなにすごい効果があったのか。では、体の一部を失った者の部位の再生も可能だということだろうか。
「それでは、明日からはポーション作りに専念した方がいいでしょうか」
「いや……あれは性能が良すぎる。あれ程のものが出回るのは今の段階では却って危険かもしれない」
「どうしてですか? ポーションであれば一度に何個も作れますし、一日一人か二人しか治療できない今より効率がいいです」
「うん、それはそうなんだけどね」
ルーク様は少し言いにくそうに視線を下げると、言葉を選ぶように再び口を開いた。
「世に知れ渡れば欲しがる者が多く出てくるだろう。それは国内外問わずね。だがあれはそう簡単なものではない」
「……」
そうか。あれを作れるのは私一人だけだし、いくら一度に何個も作れたとしても、限度はある。魔力は消費するのだから。
となれば量産するのは無理だ。
「わかってくれるか?」
ルーク様は私のために言っているんだ。
量産して高値で売れば儲かるのに、それをしようとは思わないのだから。
けれどこれはこの国の強い武器になることも間違いない。王の妻になるのだから、そういうことも理解しておかなければ。それに、無理をしない範囲で作っておくのは問題ないはずだ。
「フィーナのポーションについてはラステリーたちとも慎重に協議してみるよ」
「わかりました」
「それと、話は変わるけど君のご両親への挨拶なんだが、二日後で大丈夫だろうか」
気を取り直すように笑みを浮かべると、ルーク様はもう一度私に向き直って言った。
「私は大丈夫です」
「では取り急ぎご両親へ手紙を飛ばそう。急で申し訳ない」
「両親も大丈夫だと思います」
魔法を使えば、手紙は一瞬で送り届けることができる。
ルーク様は眉を下げて申し訳なさそうに言ったけど、うちの両親はたぶん大丈夫だと思う。毎日のんびり暮らしているだけなのだから。
それに、急になってしまったのはルーク様が私の返事を待ってくれていたからだ。
ポーションや聖女の力のことなど、まだまだ落ち着かないことも多いけれど、正式に婚約を発表するお披露目会まではあと約一週間なのである。
この三週間はとても長かったようだけど、そう思うとあっという間だった気もする。
それはルーク様と過ごす時間が楽しいからだ。
考えなければならない問題もたくさんあるけれど、目の前で私を想ってくれているこの方のためにも、今はそれに見合う良き妻になることを第一に考えることにしよう。そう思った。




