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17日目.聖女の力

 北の森で負傷していた騎士の方たちを、今日から一人ずつ、より重症な者から治癒できることになった。


 魔道士団長のラステリーは、訓練も兼ねているのだと言い、あくまでも力をコントロールするイメージを忘れないように、と言った。


 それでもジェラルド騎士団長に肩を支えられながらやって来た、顔の半分に包帯を巻いた男を前にして、私の心はざわついた。


 ジェラルドに支えられていなければ立っているのもままならないであろう。包帯が巻かれていない方の目もどこかうつろで、生気を感じられない。

 彼は自分の身に起きた事実を受け止められず、絶望しているのだ――。


 本当はこちらから出向いてあげたい。

 怪我人をわざわざ来させるのは気が引ける。

 けれど、それでは医務室にいる多くの怪我人に魔力を吸われ、まだ力の調整ができない私の身に危険が及ぶかもしれないと、この魔道室でのみ治癒することを許された。

 魔道室にはラステリーが特殊な魔法をかけており、ある程度の力では部屋が壊れてしまったり、他に害が及ぶ心配もないらしい。

 この間のように魔法実験にもこの部屋が使われているのだ。



 騎士の前に立ち、強く祈る。すると私の中から大きな力が溢れてきた。


「フラッフィーナ様! それではまた倒れてしまいますよ!」

「……」


 ルーク様やフェリオンに見守られながら、ラステリーの言葉を聞く。


 けれど、溢れてしまった力を引っ込めることをせず、私は彼の頭に手を翳し、魔力を流した。


 やわらかな光が彼の体全体を包み込む。やがて光が消えると、彼はジェラルドから手を離し、自分の足でしっかり立った。

 ジェラルドがその包帯を解くと、彼の顔は傷一つない綺麗なものになっていた。


「治った……、目が見える……。動く、体が動きます……!」

「本当か!?」

「はい……、麻痺していた右半身も……ちゃんと、」


 言葉を詰まらせ、震えながら言うと、彼の瞳からポロリと涙が零れ落ちた。


「ありがとうございます……! 聖女様――、フラッフィーナ様……!!」


 見えなくなっていた片目も見えるようになったようで、脚が治った彼のように、涙を流しながら跪き、何度も私にお礼を述べた。


 良かった……。

 心の底からそう思う。


「フィーナ、大丈夫か?」

「……はい、」


 見守ってくれていたルーク様が私に歩み寄り、声をかけてくれる。

 やはり、少し疲れる。けれど、すぐに倒れてしまうほどでもなかった。


 前回よりほんの少しは、力をコントロールできたのだろうか。


「貴女が倒れてしまっては意味がないのですよ? 今日はお休みください」


 けれど、少し怒ったような声でラステリーは言った。力を調整しろと言われていたのに、必要以上に力んでしまった自覚はある。


「フィーナ、行こう」

「……はい」


 ルーク様にゆっくり手を引かれながら、私は一度自室に戻った。





「ゆっくり休め」

「ありがとうございます」


 私をベッドに寝かせると、ルーク様は心配そうにしながらも笑顔で言い、すぐに部屋を出て行こうと扉の方へ体を向けた。


「ですが、少し休んだら訓練に戻ります」


 ラステリーにもお伝え願えないかと問えば、ルーク様は眉を寄せてツカツカと私の元へ戻ってきた。


「フィーナ」

「はい……」


 そしてラステリー同様に、少し怒気を含んだ声で私を呼ぶ。


「君の気持ちは嬉しいが、頼むから無理をしないでくれ」


 そう言って私の手を強く握り、辛そうに顔を歪めるルーク様に、思い直す。


 ……確かに、少し焦っていたのかもしれない。

 たとえ自分が倒れたとしても、早く騎士たちの治療を行いたいと思っている。

 治ったときの騎士たちの喜びに溢れる顔を見ると、こうして休んでいる場合ではないと考えてしまうし、より大きな力を早く使えるようにならなければと、焦燥感が胸を過ぎる。


「フィーナ、大丈夫。君が頑張っていることはわかっているから。私も一緒にいる。だから無理をしないで」


 ルーク様は私の身体を優しく抱きしめると、頭を撫でながらそっと囁いた。


 彼がとても心配してくれている気持ちが伝わってくる。

 こんなに私を想ってくれている人を悲しませてはならない。


「……わかりました。今日はこのまま休みます」

「うん、いい子だ」


 そう言うといつもの笑顔で微笑んで、ルーク様は私の頭を撫でながら額に口づけを落とした。


「では私は戻るが、何かあったらいつでも呼んでくれ」

「かしこまりました、ルークアルト様」


 控えていたアリエラにそう言葉を残し、ルーク様は戻って行った。


 その後アリエラにも「無理をしてはいけませよ」と叱られた後、「ですが……ルークアルト様とフラッフィーナ様……お熱いんですからぁ……」と、頬に手を当てて顔を赤くしながら先程のやり取りをいじられた。

 恥ずかしい……。

 けれど、本当に私はこの前よりは元気だ。


 訓練に戻れないのなら、せめてイメージトレーニングだけでもしておこう。


 そう思い、少し休んでから頭の中であの力を使ったときのことをもう一度思い返し、何度もシミュレーションしてみた。

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