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どうにもならないこの気持ちに気付かれる位なら嫌われる方がマシだと俺は蘇芳に必要以上に冷たく、キツく接した。
そして蘇芳に嫌われ、追い詰めミスを引き起こさせた。
ここで吸う煙草は1本だけ。
そう決めていたのに今日はもう何本吸っただろうか。
「ふーーーっ」
俺は煙と一緒に大きく息を吐き、短くなった煙草を灰皿に押し込む。
煙草の箱はもう空だ。
しばらくの間弄んだ空箱をぎゅっと握り締めて俺はようやく蘇芳の元へ足を進めた。
まだ俺に気付かない蘇芳に声をかけようとした瞬間頭の中で声が響いた。
『ーキモチわりーんだよ!!』
息が止まりそうになり、体が強張る。
俺はかけようとした言葉をぐっと飲み込んだ。
「…常磐先輩…?いつからそこにいたんですか…?」
やっと俺の存在に気付いた蘇芳がびっくりしたように本から顔を上げる。
「…お前さぁ、先輩がいるのによく無視して本が読めるよな」
咄嗟に口から出たのは飲み込んだ言葉とは全く違うわざとらしく嫌みったらしい言葉だった。
「…すみません…本に夢中になってて…全然気付きませんでした…」
蘇芳はボソボソと言いながら俺から視線を逸らし側に置いていた眼鏡を掛ける。
視線を逸らされ胸がズキッと痛む。
1年前のミスから蘇芳の態度は少しずつだが変わってきていた。
だが俺は相変わらずだし、嫌われてるのはわかってる。
こんな反応にも慣れているが胸が痛むのにはいつまでも慣れなかった。