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第73話 鬼の一夜漬け② 5月27日

5月27日(木)


 連日の一夜漬けで飛び込んだ中間テスト二日目。

俺は答案を見て小さくガッツポーズした。

今日のヤマもほぼほぼ当たっている。

 

 休憩時間にこちらにやってこようとするアホ2人を直前まで教科書見てろと追い払う。

そんな俺を見て陽助が笑った。


「ここまで来たらリラックスさせた方が良い結果出るんじゃないのか?」


「普通に勉強してるならな。あいつらも俺も暗記で詰め込んでるだけだから余計なこと考えると漏れてくんだよ」


 目を閉じて単語を頭に留めようとしている俺を見ながら陽介は更に笑った。


「那瀬川が心配してたけどなんとか大丈夫そうだな」


 なんでだよ、追い込まれてるようにしか見えないだろ。


「誉が苦しい顔してる時はまだいける時だろ。本当にやばくなったら無表情になる」


 俺が無表情になるのは極限ギリギリの時だ。

『表』でそんな顔したことなんて何度あったか……よく気付いたな。


「誉も追い込まれると割とアウトローなことするし、あいつらと変な化学反応起こして答案盗みにでも行かないか心配してたんだぞ」


「んなアホなことするか。どう考えてもヤマ張るより難度高いだろ、前日から計画立てて間に合うかよ」


「難度の比較してる時点で危ないんだよなぁ。甘いもの食って思いとどまっとけ」


 俺は陽助の差し出す飴を口に放り込む。

シュワシュワするタイプの飴じゃないか、刺激で単語が1つとんだぞ。


「次はOCだな。なあ陽助、オーラルって単語ちょっとエロくてワクワクするよな」


「頭中学生かよ。……『次はオーラルの授業です』まで揃うとちょっとクるな」


 だよなと俺と陽助は頷き合う。

邪念が入って単語3つぐらいとんだかもしれない。


 ふと視線を感じて向き直ると隣の女子が冷たい視線を向けていた。


「ところで女子もオーラル……」

「まだ攻めるのかよ!」


 また暗記単語が2つ3つ抜け落ちたのを感じる。

この辺にしておこう。


 こうして2日目のテストもなんとか終わり、残すところあと一日だ。




 俺は不道徳なヤリ部屋改め、健全勉強部屋で仁王立ちになっていた。


「さあラスボスが来たぞ」


 そう言ってエナジードリングをすするキョウコとユウカの悪女2人の前にドンとノートを置く。


「全教科中もっとも難度の高い『物理』――はまあ流せる。俺達の目標は赤点回避だから難しいなら平均点も下がるからな」


 俺はヤマの赤丸をつけたノートを2人に放る。


「厄介なのは数学だ。公式は暗記するとしても適用して計算するのは自分でやるしかない。教科書ノートを丸暗記しても間違いなく数字は替えられるから最低限理解するしかない」


 言いながら帰り道で買って来た参考書を積み上げる。


「もっと厄介なのは現代国語だ。これに関してはもう本を読めと言うしかない。付け焼刃では、この時の作者の気持ちはわからないのだ」


 しかもこの国語教師の過去テストを調べると自分の好きな小説から文を持ってきている。

これではヤマを張るのはまったく不可能だ。


 俺はキョウコにサイコロは何面体か聞いてみる。


「よん――ふがっ」


 鼻摘まんで次はユウカに直近どんな本を読んだか聞いてみる。


「えと……中学の時の読書感想――ぶぎゃ」


「死ぬ気でやるぞ」


 俺はそう宣言して2人を座らせる。

普通に勉強してこいつらに赤点ラインを突破させないといけないのだ。



 カリカリとペンの走る音が鳴る。

時折2人は俺に質問し、俺はそれが妥当なら丁寧に答え、初歩的すぎる質問なら鼻を弾いた上で丁寧に答える。


「ぶっちゃけ中学レベルのこと聞いちゃってると思うんだけどさ。双見はバカにしないで丁寧に答えてくれるね」


 俺はキョウコの顔を見ずに手を動かしながら答える。


「間違いが2つあるな。普通にバカにしながら答えているし――」


 ひでぇと呟くキョウコを抱き寄せる。


「分数の掛け算は小学生レベルなんだよ!」

「……あぅ」


 そして引き寄せたついでに次の質問に答えて解放する。


「こんな勉強したの生まれて初めてだけど……正直間に合わないし……ちょっとだけ隣の奴の覗いたりとかして――」


 俺はユウカを引き寄せる。


「絶対にやめろよ。やったら犯すぞ」


 きつい口調にユウカが小さく悲鳴をあげるがここは強調しておかないといけない。


「不正うんぬんの倫理的なことはこの際おいとく。その上で覗きのカンニングが割に合うのは監視役が無警戒かつ隣の奴が80点以上取ると分かってる場合ぐらいだ」


 しかも状況的にこいつらは教師に集中マークされてるに決まっている。


「キャッチャーが立ち上がってる中での盗塁、しかも失敗したら点数関係なく即ゲームセットのルールだぞ。仕掛ける方がどうかしてる」


「野球わからねぇよ」


 そうなのか。

結構面白いから見てみろよ。


「というかそんな分析しているって双見もやる気だったのかよ」


「必要があってリスクも合えばな。それで合わないと結論した。だからお前らもやめとけ。俺より上手くできるとはとても思えないから」


 少しオーバーに言ったが、これで2人もバカな考えはしないだろう。

せっかくここまで粘ったのに不正で退場はあまりに悲しい。

2日、3日一緒に居ればそれなりに情も湧いてくるものだ。



 再び淡々とペンを走らせていると今度は2人が船を漕ぎ始めた。

勉強開始から6時間……まあ無理もないが、ここで休憩していたら間に合わない。


「寝たら犯すぞ」

  

 言いながら2人の腰をガッと掴む。


「うぇっ!?」

「ぶはっ」


 ちょっと失敗したかな。

というか俺も勉強付けの寝不足でちょっと変なテンションだから仕方ない。

あと色々溜まっているのですぐ話がシモ方向に動いてしまう。


「いきなりなんだよ! ビックリしただろ!」


「てか双見のズボン思い切り盛り上がってんじゃん! マジで襲う気じゃないよね!?」


 これは疲れてるから生理現象だ。


「他意はあんまりないから心配するな」


「ちょっとはあるのかよ……」


「こっわー」


 俺が立ち上がると2人は大げさに悲鳴をあげた。

本気ではなく息抜きの一環でふざけているのだろう。

少し乗ってやろう。


「ほら見てみろ。でかいだろ!」


「ぎゃー見せつけんなって! ズボン破れそうなぐらい膨らんでんじゃんか!」  


「キョウコのマジビビりうけるし! どうせなんか詰めてんでしょ。大きさ的にありえねーもん!」


 一通り騒いだところで勉強に戻る。

5分程度のバカをやっただけで効率結構あがったな。

これからも眠そうな気配を感じたら下ネタをぶちこんでいこう。


 ふとキョウコが俺に耳打ちしてくる。


「なあ。さっきの何も詰めてないよな?」

「ああ」


 キョウコは大きく唾をのみ込み勉強に戻っていった。





5月28日(金)テスト最終日


「全教科終了……」


 俺は脳内で全教科の自己採点をする。


「どうだった?」


 同じく自己採点を終えた陽助が寄って来る。


「暗記教科は80後半、それ以外は70、平均80前後だな」


「誉はなんだかんだであわせてくるよなぁ」


 点数取っただけで全く理解はしてないから勉強やり直しの二度手間だけどな。


「さて本命のアホ共は死んだか生き残ったか」


 意味ありげな視線を向ける陽助を振り切って悪女2人の席に向かう。


「ん」


 俺が手を差し出すと2人は首を傾げ、ポッキーを乗せられたので封を切って2人の口にねじ込む。


「あむっ」

「むぐっ」


「自己採点に決まってるだろ。あとエロい声出すな、溜まってるのに教室で立ったらどうするんだ」 


 2人はポッキーを食べ終わると自己採点を開始……今からやるのかよ。

平均点は60ぐらいだろうが高く見積もっても70としておこう。その半分だから35以上で安全圏だ。  


 採点完了と同時に2人の強張っていた顔が一気に綻む。


「やった……見てこれ45――」


 俺はユウカの頭をスパンと叩いた。


「なんでよ!」


「こっちが言いたい。ヤマ命中で9割当たってるのになんで半分落とすんだ!」


 これ普通のヤマ張りだったら見事に落ちてただろう。


 ともあれ心配だった国語も数学も無事……というには厳しいがギリギリ通過している。

合格点を取ってしまえばいかに学校にうとまれていようと大丈夫だ。


 俺が軽く息をついたところで2人が躊躇とまどいがちに礼を言う。


「……ありがと。双見が助けてくれなかったらアタシら絶対終わってた」


「奈津美の男なのにウチら助けてくれるとかその……ほんと感謝してるから」


 俺は軽く頷く。

これだけやったのだから感謝はされてしかるべきだし礼の一つも無かったら頭をはたいてやるところだが、礼さえ言ってもらえればそれ以上を求めることはしない。


「それで今日なんだけどさ……その」


 キョウコがユウカに目配せする。


「良かったら……」


 ユウカも頷き返してから俺を見る。


 性の気配を感じるぞ。

さてどうしようか。



「誉ー」


 聞き覚えのある声に振り返ると晴香が奈津美と風里と一緒に入ってくる。


「打ち上げ行こうよ! 苺子の地獄特訓を乗り越えた私達のご褒美に」


 見れば晴香も奈津美も目の下にクマも出来ている。

あっちはあっちで苦行があったようだ。

しかし教える側のはずの風里が一番疲れているように見える。


「晴香は体力お化け、三藤さんは隙あらば寝る。3秒で寝る……私の苦労を知りなさい」


「割と知ってたりするんだよなぁ」


 俺は風里の手を取って努力を労う。

そして腰に手を回して互いの健闘を称え、背中に手を回して互いの頑張りを認め合おうとしたところで股間に膝蹴りを食らった。


「んじゃまずご飯を食べて……」


 俺はキョウコとユウカに振り返る。


「お前達も今日は帰って寝とけ。体も心も疲れてるはずだ」


 こういうのは気を張り終えて数時間経ってからドカっとくる。

『裏』で極限を経験している俺が言うのだから間違いない。


「……うん」

「……わかった」


 露骨に肩を落とす2人。

奈津美の前ではやりたくなかったが仕方ない。


 俺は2人を強引に抱き寄せて頭を撫でる。


「よく頑張ったな。大したもんだ」


 さて晴香達と一緒に打ち上げにいこう。

無言で袖を摘まんで迫ってくる奈津美にどう言い訳しようか。

   

 教室を出る間際に振り返るとキョウコとユウカは何故か下腹部を押さえて荒い息を吐いていた。


主人公 双見誉 市立両河高校一年生  

人間関係

家族 父母 紬「ムカ着火ファイヤー」新「弟」

友人 那瀬川 晴香#21「打ち上げ」三藤 奈津美#5「問い詰め」風里 苺子「疲労」江崎陽助「打ち上げ」高野 陽花里#1「デート」上月 秋那#14「暇」

中立 キョウコ ユウカ「発情」

経験値107

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― 新着の感想 ―
[一言] 中立…とは?w
[一言] 90点超えの女を知ってても70~80くらいの女もそれはそれとしてたのしめるのがホマ君にしろエイギルにしろ凄いところですな
[良い点] 紬さん、おもしろ。笑 そして、2人組が下腹部を押さえている姿から、同時にGO?
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