第64話 誉の会「乱」 5月21日
「お腹もいい感じなったし次はみんなでゲームしよっか。コントローラーも三つあるしね」
食事を終えて一段落したところで晴香が俺のゲームを引っ張り出す。
「晴香。貴女、このところ睡眠時間を削ってまでゲームしているのでしょう? まだやり足りないの?」
「あ、あれは一人で黙々とやり込む感じのやつだから。今日はパーティゲームだから別だって!」
道理で晴香は最近目の下にクマ作ったり肌荒れしたりしていると思った。
「TVゲームなんて三藤さんはやったことないでしょうに」
奈津美は気まずそうに頷く。
「やれやれね。私が和気あいあいと皆で遊べるボードゲームを持って来て正解だったわ。テーブル借りるわね」
風里は仕方ないとばかりにカバンからボードゲームを取り出す。
「……和気あいあいと?」
「……皆で遊べる?」
ジャラジャラ音を立てるそのゲームはほんわかと対極にありそうだぞ。
――しばらく後。
「どちらも決着ついたし別のことをしようか」
「そうだな。寒いし」
俺と陽助はパンツ一枚の姿で正座しながら頷き合う。
陽助は俺とのTVゲームタイマン勝負で白熱し、負けた方が一枚ずつ脱いで決着をつけようとなった末にこの姿となった。
そして調子に乗った俺が女性陣に麻雀勝負と同じことをしようぜと冗談半分でもちかけると、なんと風里が受けてしまった。
スルメを齧りながら麻雀を打つ風里はとても様になっており……というかそこらの雀荘に居そうな雰囲気で普通に強かったのだが、それでも俺は善戦していた。
そして後一歩で風里を負かせるとなったところで素人奈津美まさかのクリティカルショット『全部漢字で揃いました~』の直撃を受けてパンツ一枚となったのだ。
いそいそと服を着る俺と陽助。
晴香は苦笑しながら俺の方を見て赤くなり、奈津美は顔を覆う指を隙間からガッツリと見ており、風里は顎の下に指をあてて俺達の裸体を見比べる。
「なにげに風里が一番スケベだよな」
「目力すごいよな。しかも見てるの完全にヘソから下だろ」
「愚かなことを言ってないで次の遊びをするわよ。三藤さんも何か持って来ていたでしょう?」
言いながらも視線が股間から外れないんだよなぁ。
「は、はい! えっと……お姉ちゃんがパーティゲームといったらこれだって……」
奈津美が持って来たのは――ツイスターゲームか。
「おいおい先に言ってくれよ。服を着るところだったじゃないか」
俺は留めかけていたシャツのボタンを外す。
「などと下らないことを言うスケベと絡み合うのはごめんだから却下ね。もっと健全なゲームをしましょう」
余計なことを言わなきゃよかった。
「ここは王様ゲームかしらね」
「「「ええ……」」」
「?」
風里の提案に意味の分かっていない奈津美以外が声を漏らす。
こいつは食い物の趣味から好きな遊びまでまるっとおっさんじゃねえか。
こいつが前に付き合ってたの大学生と同級生のヤンキーだったよな。
40代のおっさんじゃないよな。
風里による王様ゲームのルールはこうだ。
くじを引いて王様を選ぶところまでは普通の王様ゲーム、但し王様が指示するのは『なにをするか』だけで『誰がするか』は別の紙で決める。
つまり王がメチャクチャな指示を出すと自分でやる羽目にもなりかねないのである程度の抑止力になるというわけだ。
「人数指定は2人まで、節度をもった命令を出すことね。非常識なものは私の判断で無効にして窓から放り投げるから。特に双見君、一か八かで裸で抱き合うなんて命令を出したらもぐわよ
「出さねえよ。陽助と俺になった時のダメージでかすぎるだろ」
晴香や奈津美と陽助になっても大変だ。
彼女達を抱えて窓から逃走しないといけなくなる。
さあゲーム開始だ。
「お、最初の王様は俺か」
「やっぱり今日の主役だね!」
「さすがです誉さん!」
晴香と奈津美が盛り上げてくれる
くじで何がさすがなのかわからないが喜んでおこう。
あと風里は早速厳しい目で判定に入ろうとするのをやめてくれ。
「よし……じゃあ2人がジャンプ10回」
「え、それだけ?」
「えっと……当たり障りはないですけど」
晴香と奈津美が首を傾げる。
反対に風里と陽助は俺の意図に気付いたのか冷たい目を向けてくる。
ジャンプを10回なんて遠慮し過ぎてつまらない命令に思えるが、この場には晴香と奈津美がいる。
彼女達が跳んだりしたらそりゃもうすごいことになる。
本音で言えばM字開脚かこちらに向けてブリッジして欲しいが却下されるに決まっている。
「これなら健全の範囲だから却下はできない。そして二人を指定すれば確率的には――」
俺は期待に胸膨らませながら人名札を引いた。
「9、10っと。これでいいか?」
「無様ね」
俺は力無くベッドに横たわり陽助と風里のジャンプを見つめる。
「……全然揺れない」
「放り投げるわよ」
次の王様は風里だ。
「AがBを口汚く罵る」
言いながら風里が札をひく。
「Aが……私ね。Bは双見君」
「イカサマしてないか?」
あまりにも都合が良すぎる。
「スケベ男……は屁とも思っていないわね。変態……は逆に興奮させる可能性があるわ。浮気男……ゲスな武勇伝と思っているかも」
「これもう罵倒されてるようなもんじゃないか?」
まあ風里に色々言われるのはいつものことだし、最近は彼女に罵られることが嬉しくなってきてもいるから何を言われても――。
「無能」
俺はパタリとベッドに倒れて毛布を被る。
「全然慰められてない。深く傷ついた……」
「ああっ誉が傷ついちゃったじゃない! 苺子のそういう漢字二文字みたいな罵倒、心に来るんだから! 次は私が王様か……なんとか誉を慰めないと」
晴香は俺の頭を撫でながらゲームを進める。
「慰め……慰め……AがBをお姫様だっこ!」
晴香は自分がされて嬉しいことを指定してくれたのだと思うが確率的に厳しい。もし陽助にでも抱き上げられたら深い傷が更に化膿するぞ。
待てよ奈津美あたりが抱く側になったらどうか。
俺を持ち上げるなんて無理だからそのまま転んでわちゃわちゃもごもごと……。
「あ、ちょっと元気になった。男の子もお姫様だっこ好きなんだね」
「違うぞ那瀬川。これはスケベなこと考えてる顔だ」
「うるさい陽助。俺は純粋にだっこされたいだけだ。さあ札をめくってくれ!」
そして――。
「行くよー。そりゃっ!」
晴香が陽助を持ち上げる。
「できるんだな……俺、普通に70kgぐらいあるんだけど」
抱き上げられた陽助が目を丸くする。
俺はベッドの上で丸くなる。
「……女マッチョ」
「それを言うなっての!」
奈津美が呟いて晴香が反応、拍子に陽助が落下して家が揺れ、紬の部屋で荷崩れが起きた気配がする。
陽助が晴香に抱えられたことに幾分か悶々とするが、それ以上に喜ばしいことがあった。
「男に触れても大丈夫になったんだな」
「ん-。まだ少し抵抗あるけど、体が引けちゃうほどじゃなくなったかな」
なら良かった。
それが一番嬉しい。
「最後は俺か。んじゃここは一つ……」
そんな俺の様子を横目で見つつ陽助が命令を出す。
「AとBがハグ。今の雰囲気ならいいだろ風里?」
「ま、手が変な所に伸びなければ良しとするわ」
この流れなら俺と晴香となるだろう。
そう思いながら人名札を引く。
「……ままならないな」
「……本当にそうだね」
「うぅ恥ずかしい」
俺達は晴香と奈津美の濃厚ハグを見ながら呟く。
「写メとっていいか? 奈津美は晴香の胸に顔を埋めて……恥ずかしそうな感じで……そうそう」
「人に見せないでね」
こうして王様ゲームは終わった。
「それじゃあ俺はそろそろ帰るかな」
陽助がゆっくりと立ち上がる。
確かにもういい時間だ。
「おう」
近くのコンビニぐらいまでは見送ろうと立ち上がるも陽助は首を振る。
「帰るのは俺だけだよ」
「あん?」
よく見れば女性陣は帰る準備をしていない。
なにやら大きめの荷物をごそごそとはしているが。
「お前にはもう少しだけボーナスタイムがあるってよ。良かったな」
それだけ言って陽助は俺のマンガを数冊持って帰っていった。
「なんだあいつ」
とりあえず玄関まで見送った俺が首を捻りながら部屋に戻ると、そこには桃源郷が待っていた。
まず晴香がウサギになっている。
言わずと知れたバニーガール衣装……胸の谷間ははっきりと見え、競泳水着のように切れ込んだ股下、そして網タイツに包まれた大きな尻と長い美しい脚。
「ちょ、ちょっと恥ずかしいかな……あはは。似合ってる? ほらピョンピョンって」
晴香が頭につけたうさ耳を強調しながら笑ったところで思わずよろけてしまった。
「なんてこった」
大きな胸、しっかりくびれた腰、肉感的なお尻、長く細すぎない足、バニーガール衣装を良く見せる全ての要素を晴香は持っているのだ。
こんな極上のウサギが目の前に出てきたら男はみんなたまらない。
もし2人きりなら即座に押し倒して体中の水分を注ぎ込むところだ。
「あ、あの私は……どうでしょう。晴香さんの次だとその……見劣りすると思いますけど」
視線を移すと奈津美が不安げな上目づかいでこちらを見ている。
「ははは、可愛い牛じゃないか」
奈津美が着ていたのは顔だけの出た、尻尾付き全身牛パジャマだ。
ある意味晴香より似合っているといえる。
「わ、私には牛さんが似合うって言っていたので……用意してみました!」
「おう。最高に似合ってるぞ」
本当はもっとスケベな意図があったのだが、これはこれでたまらなく可愛いので良しだ。
「可愛すぎてハグしたくなる。そらおいで」
「あぅ」
俺は奈津美牛を抱き抱えて撫で回す。
晴香と風里も露出が少なくマスコット的な姿だからか、微笑ましいものを見る目で奈津美を見ている。
しかしこのパジャマ、体の凹凸が随分はっきりわかるな。
胸も奈津美サイズなら当たるのは当然だがちょっと柔らかすぎる。
もっと言うなら体温や湿り気まで伝わってくるのだが。
「って奈津美!?」
晴香が指差す先には奈津美の服一式とブラにパンツまでが綺麗に畳まれていた。
「貴女まさかそのペラペラの布地の下に何も着ていないの!?」
「あうあうー!」
慌てて連れ戻しに来る晴香と風里から俺は奈津美牛を抱えて逃げる。
「この牛はもう俺のものだ! 風呂でしゃぶしゃぶにして食べるんだ!」
「なに言ってるのスケベ誉! 牛さん返しなさい!」
「奈津美さんも抵抗しなさい! 本当に食べられるわよ!」
「はう美味しく食べて下さいー!」
一通り騒いだところで奈津美を降ろして下着とアンダーシャツをつけさせ、次は風里だ。
「ねこちゃん」
「張り倒すわよ」
風里は晴香や奈津美のように全身衣装ではなく、ただ猫の耳と尻尾をつけただけだ。
それでも雰囲気が似ているせいか十分ネコっぽく感じる。
「可愛いにゃんこだ」
「張り倒すわよ」
甘い声で褒めても威嚇してくるところが更に猫っぽい。
「膝に乗せていいか?」
「バカじゃないの」
威嚇しながらも嫌々乗せられる様はもう本当に猫だ。
「ところでその尻尾なんだけどさ。どこについて……もしかしてその……」
俺は手で作った穴に指を突っ込む仕草をしてみる。
「シャー!!」
思い切りひっかかれたが満足だ。悔いはない。
主人公 双見誉 市立両河高校一年生
人間関係
家族 父母 紬「帰宅」新「妄想」
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中立 元村ヨシオ「ラーメン」上月 秋那「不明」
敵対 キョウコ ユウカ「復帰間近」タカ君「浮気相手の彼氏」
経験値85
ちょっと半端になってしまいました。
次回は会の残りから裏まで書きたいですね。




