第33話 ソフィアと 5月3日【裏】
5月3日(月)【裏】午後
「いやー大変だった。これで一つ区切りがついたよ」
ボロボロになった服を脱ぎ捨て頭から水を浴びて体を洗う。
シズリが手伝ってくれるのが嬉しい。
無言なのは気になるが。
「また服一つ駄目になったよ。これから夏だし服選びも大変なんだよな。半袖なんて怪物に掴まれたらヤバイから出来ないし、厚着すると汗で余計な水分失うから」
カオリが持って来てくれた新しい服を着る。
彼女も何故か無言だ。
「今日は記念だから豪勢だな。アオイ君も新しい場所に来て疲れたろ? ガッツリ食って明日まで寝るといい。こんな世界だけど食わなきゃちっこいままだぞー」
「うん、頂きます」
いつもより豪華で多めの食事を腹いっぱい食べる。
こちらも何故か無言のソフィアが隣に来て飯をよそってくれた。
俺は作戦成功の解放感からいつもより少し饒舌に話し、女の子3人は無言だ。
「じ、じゃあ今日はこれで失礼するよ。調達のことは明日また話そうじゃないか」
食事が終わると奇妙な空気を感じ取ったのかタイゾウがアオイを連れて部屋を出る。
18戸あるマンションに住んでいるのが俺達だけだから部屋は選び放題だ。
「ご飯ありがとう。また明日……誉おにいさん」
アオイははにかみながら手を振り、俺もにこやかに振り返す。
そして扉が閉まった瞬間、俺の目は年下の少年を見る目から獣のそれに変わった。
今回も死ぬかと思った。
用意していた奥の手も本当は仕留め損ねた三脚を轢いて確実に止めを刺すぐらいの気持ちで用意したものだ。まさかあんな怪物を引きずりながら120kmでビルに突っ込むことになるとは思ってなかった。
思い返すと死ななかったのが不思議なぐらいで全身に震えがくる。
何の躊躇もなく実行できたのは脳内で変な物質が出ていたからだろう。
敵を倒して屋外で咆哮なんて普段の俺が見たら卒倒するレベルのバカだ。
そして状況が落ち着くと、その死への恐怖が性欲になって沸き上がる。
俺は女の子達を……いや彼女達の体を凝視する。
血走った視線を彼女達の胸や足に送りながら息を荒くする。
情けない姿なのはわかっているがどうにもできない。
女の子達も勿論気付いていてチラチラと俺を伺っている。
全員の視線が下に落ちたのを見ると、下半身も大変で情けないことになっているのだろう。
興奮する俺につられてか女の子達の息もどんどん荒くなっていく。
室内の雰囲気どころか匂いまで変わる。
男女の性欲をかき混ぜて蒸発させたような、ネトつき甘く毒々しい香りだ。
失われつつある理性で考える。
カオリはそもそも俺を好きになってくれてはいないはずだ。
襲い掛かったら完全に嫌われる。
ソフィアは好意を見せてくれるが一番幼くて体格も小さく初体験どころかファーストキスもまだという顔をしている。
やはりここは年上で何度も体を重ねたシズリに面倒をみて貰いたい。
俺は結論を出して頷き……一番近くにいたソフィアを押し倒した。
「ふにゃー!?」
驚いて見開かれる青い瞳と、床に散らばる長い金髪。
俺はソフィアの両手を掴んで頭の上で押さえつけ、そのまま首筋に吸い付く。
体が性欲に支配されて近くにいる女の子を抱くことしか考えられない。
そこでシズリとカオリが我に返った。
「わー! 誉君、無理やりは駄目だって! 吸い付いちゃダメ!」
「こ、この強姦魔! 押さえてるからソフィア逃げて――!」
俺が二人がかりで取り押さえられたが、ソフィアは俺の下から動かない。
拘束の解かれた両手も頭の上にあげたままだ。
顔を赤くして息を荒らげたままポソリと呟く。
「わ、割と平気なのでその……助けなくても大丈夫……ですよ」
ソフィアは恥ずかしそうに顔を背けながら白く綺麗な足で俺の太ももを擦る。
「うわぁ中高生の性欲爆発してるねぇ……」
「二人共ご飯食べるところで盛るなぁ!」
カオリが俺の頬を張り、ソフィアの鼻をデコピンしてなんとかこの場は収まった。
――そして夜。
俺はいつものようにシズリと同じ布団に入る。
挨拶代わりのキスの後、抱きしめ合って転がり、舌を絡める濃厚なキスに繋がる。
一通りじゃれ合ってからシズリは俺の腹に馬乗りになって言う。
「誉君、カオリちゃんとソフィアちゃん。どっちともエッチしたいんでしょ?」
「したい」
「この浮気者ー」と腹の上に乗られて呻く。
「いいよ。誉君は恰好いいもん。もてるの仕方ないよね」
ソフィアはともかくカオリはさせてくれなさそうだけどな。
ダメ元で頼んで拒絶されたら諦めよう。
「ふふ、絶対いけるって。今日のあの子達の顔見てないでしょ? 発情期みたいになってたじゃん」
シズリが俺の胸板に指を這わせる。
妙に口数少なかったのはわかったがそこまで見る余裕なかったな。
「でも今日はまずあたしとエッチしてからね。女のプライドもあるし……それしかできないから、あんなかわいい子のところへ先に行かれたら不安になっちゃう」
俺がフォローの言葉を言う前にキスで唇を塞がれる。
「フフフ……中高生にはできないようなことさせてあげる。してあげるから」
ならばと一つ聞いてみる。
「それは無理! 限度があるってこの変態誉!!」
俺とシズリは笑い合いながら体を重ねた。
――2時間後。
「ほ、誉さん……いらっしゃいませ」
本当はカオリとソフィアが一緒に寝ているはずだが、気を利かせてくれたのかソフィア一人が布団の上に座っていた。
ソフィアに促されるまま隣に腰かける。
俺が布団の隣にXLを置くとソフィアはビクリと震えた。
彼女のOKサインは既に受け取っているのだが……。
「あの!」
意を決したように切り出すソフィア。
「結論から言いましてキスもエッチもOKです! どちらも初めてなのでリード宜しくお願いします!! その上で……」
ソフィアはスリスリと俺から距離を取った。
「く、口説いて頂けませんか? 今更だとは思うんですけど、甘く口説かれてそのまま……というのを夢見ていて。ダメですか?」
慣れている女性ならともかく、ソフィアは何もかも初体験なのに、さあヤろうの流れで喪失するのはあんまりだもんな。
「わかった」
さてどう口説こうかと考える。
変に捻らず一番に思うのは――。
「ソフィア、綺麗だ」
青い目、綺麗な金髪、そして透き通るような白い肌、目鼻口と各パーツが整いながら、全体のバランスも完璧な顔立ち――全てを褒めちぎる。
「あ、ありがとうございます……」
嬉しそうに礼を言うソフィアだが今一つ満足していない。
ならば次だ。
「可愛い。天使みたいだ」
美人になること確定ながら幼さを残す顔立ち、愛らしい仕草の全てを褒める。
「あ、はい。ありがとうございます。嬉しいです」
これも響いていない。
よく考えたら当たり前だ。
ソフィアはジュニアアイドルをやっていたと言っていたじゃないか。
アイドルなら綺麗・可愛いなんて挨拶代わりに言われていたはずだ。
せっかく口説くならもっと印象的な言葉が欲しいに違いない。
『君の心がみたい』いやいや臭すぎる。
『美しい体だ』性欲が湧き出ていて駄目だな。
ならば間を取って『美しい心』これで口説こう。
心を美しいと褒められて嬉しくない女の子はいないはずだ。
俺はソフィアの肩を掴む。
いよいよ彼女も本命が来たかと身構える。
「君の体が見たい」
「へ?」
間違えた。
間をとって、余った部分を繋げてしまった。
「……」
沈黙してしまうソフィア。
当たり前だ、こんな最低の口説かれ方で落ちる女はいない。
ゆっくりと顔をあげた彼女は般若のような……いやトロンとしてるな。
「嬉しい……」
ソフィアは俺の手を両手で掴み、身を預けてくる。
「アレ以来、ご飯も満足に無くて運動もできなかったけど頑張って維持したんです。嫌な人の言うことも聞いて、腐りかけたものでも何でも食べて……お肌もボロボロにならないように気をつけて」
ソフィアは何の躊躇もなく服を脱ぎ捨て下着姿になる。
可愛らしくセクシーなデザインの下着はとても状態が良く汚れ一つない。
「定期的に服も調達して取り換えて……カオリちゃんには迷惑をかけていたと思いますけど、どうしてもこれだけは譲れなくて……だから嬉しいです。私の体いっぱい見て下さい!」
ソフィアがグラビア撮影のようなポーズを取る。
世界が壊れた後も彼女の心が壊れなかったのはこうしてアイドルとしての自分を維持していたからなんだろう。
俺は転がっていたスマホの電源を入れる。
「撮ってもいいか?」
「是非!」
二人だけの撮影会が始まり、俺は次々とシャッターを切る。
そして最後に両手を広げるソフィアを至近距離で一枚撮り、そのまま覆いかぶさっていった。
主人公 双見誉 生存者
拠点
要塞化4F建てマンション丸ごと 居住6人
環境
周辺ゾンビ激減
人間関係
同居
シズリ#18「満足」カオリ「悶々悶」ソフィア#4「喪失」タイゾウ「耳栓」アオイ「熟睡」
中立 生存者
サラリーマンズ「社長引退」女性三人「不審者?」
敵対
変態中年「負傷」
備蓄
食料7日 水2日 電池バッテリー5週間 ガス2か月分
経験値40+X
次回更新は明日19時頃予定です!