1章 私って私じゃなかったのよ
メルカド公爵家のヴァルネア様に、装備についての相談をうける事になった私。
何故?って事を思われるでしょうし、普通はありません。
男爵家令嬢が、公爵家長男の装備を考える理由。それは…
私が生まれる前、私が私になる前、わたしは引オタニートをしていた。
名前はバーニア・レティスではなく、倉本谷明。
23で結婚、子どもも生まれたが、元来人当たりは良いがあまり自分以外の人間の感情や機微を察するのが苦手で、奥さんが子どもを連れて出て行って以来、他人と接するのも億劫になり、次第に引オタニートとなっていった。
見目悪い訳では無いが、イケメンではなくブサメンよりな顔、テストではそれなりな点数取れる器用さはあるが、世渡りの仕方は不器用、人当たりは良いが、人の機微を察するのが苦手で親友と呼べる相手も居ない。
元々は比較的明るい性格だったのが、離婚をきっかけにネガティブになっていき、やがて40になるあたりで限界に到達。自殺では無いが、フラフラと珍しく外に出たと思ったら、高い所から足を踏み外して転落死してしまった。
落ちる直前、谷明自身「落ちたら何も考えないで終われるかな」なんて考えていたのだから、限りなく自殺に近い事故だった。
死亡した谷明だったが何故か目が覚め、明るい空間で椅子に座っていた。
目の前には何故か有能美人秘書!って感じのスカートスーツ姿の女性が、15枚程だろうか、書類を読みながら谷明が目を覚ますのを待っていたようだった。
「倉本谷明さん、貴方、死ぬわよ。」
「いや、死んだでしょ」
目が合った途端に言われて、何故かすんなりツッコミを入れてしまった。
「いや、確かに倉本谷明さんは亡くなりました。しかし、これから転生したあともまた、同じ様な人生を送り、似たような死に方をしてしまうでしょう」
怖っ!いきなり来世の話しとかされた。確かに死んだと思うからここは死後の世界なのかなって思ってみたり、だけど普通はパニックになるだろうに落ち着いてる自分を不思議に思ったり、目の前の秘書さん(?)は誰だろうと考えたり、頭の中はフル回転しているが、来世の話しをされて、目の前の女性は占い師かなんかかな?と考え、ちょっと不躾だが女性をまじまじと見てみた。
美人だし、大半の人は好きそうな容姿だなー(倉本谷明は実はロリコン)なんて思っていたら、ちょっと冷たい目で睨まれた。
「私の事が気になるのは仕方ないけど、そんな欲情した目で見ないでよ、ダサオタニート」
「え?欲情なんてしませんけど?貴女、全然好みじゃないし、これっぽっちも反応しませんけど?あれ?勘違いしちゃった系?」
ちょっとキツい言葉で言われたので、20倍くらいにして毒を吐いた。…こんな事してるから仲良い友達とか出来なかったんだけどね(笑)
どうやら女性は存外に打たれよわかったらしく、リアルORZされていた。
確かにちょっと言いすぎたとは思っていたのであわてはしたが、人間関係が不得意な谷明ではこの場面での声のかけ方がわからない。
互いに無言でかなりの時間が経ってしまった。
「はぁ、こんな事してても仕方ないわね、さっさと話し終わらせましょう」
どうやら女性がなんとか落ち着いて言葉を投げかけてきた。
「倉本谷明さん。貴方はネガティブ思考になり、本来助かる様な状況だったにも関わらず、簡単に諦めて死んでしまいました。その事についての自覚はありますか?」
「はい、助かるかは分かりませんでしたが、死んだ自覚はあります」
女性の質問に対して冷静に考えて答える。本当は女性が持ち直したか少し心配だったが、もしやぶ蛇だったらと返答だけにした。
「なるほど。それで、貴方も聞いた事はあるでしょうけど、人間、というか全てのものは輪廻転生を行います。貴方も生まれ変わります。ただし、一般的に言われる輪廻転生と本来の輪廻転生は実はかなりの差異があります。説明しますか?」
「あ、輪廻転生ってあるんですねーってか死んだら無になるって言うか、全て無くなるもんだと思ってました。それで差異?ですか?ちょっとわからないのでお願いします」
女性の言葉に少しガッカリしながらも疑問に思ったので説明をお願いした。
女性も似た説明を何度もしたのだろう、慣れた感じで説明を始めた。