1章 初めに説明しなきゃだけど、いきなり始まる相談
はじめまして。
初ですが、無謀な事をしています。
よろしければごゆっくり読んで笑ってくださいね(笑)
「こんにちは」
扉を開けて、中に居るであろう人物に挨拶の声をかけた。
まだ昼過ぎ、約束の時間よりも少し早いが訪れたのは仲良くしてもらってる友人宅。約束の相手は友人ではなく、その兄である。
「やぁ、フィアちゃん。来てくれてありがとう。」
まだ25になったばかりの若さと働き盛りの明るさ、人目を惹く容貌に反して落ち着いた感じの少し低めな声で私に返事を返してくれた。
「少し時間より早かったですが、ご迷惑でした?ちょっと時間が空いてしまったので伺わせてもらいましたが。」
お昼を食べて、今日は予定も無いし買い物するには半端な時間で、ちょっとでも夢中になったら時間に遅れると思ってまっすぐ、だけど少しゆっくり来たつもりだが、約束の時間までまだ30分くらい(日本時間的に)早かったので、少し不安になり聞いてみた。
友人の兄であるアルフォンス―私はアルさんと呼んでいる―は、私のこういった行いに対して怒ったり機嫌を悪くしたりしないとは思うが、やはり親しき仲にも礼儀ありで、あまり早すぎる訪問は迷惑じゃなかろうかと心配になる。
そんな私の不安げな様子を見て、普段から柔和な顔をさらに優しくみせるように変え、ゆっくりと応える。
「大丈夫だし、ニアちゃんなら大事な用事でも無い限りいつでも歓迎するよ。あの妹の友達だし、我が家にとっても私にとってもニアちゃんは家族みたいに思ってるんだから」
常日頃から言って貰える言葉を当たり前のごとくいただく。
私の方こそお世話になってますといった返事をしながら中に入らせてもらった。
「それでニアちゃん、今日はどういった内容の相談なんだい?あまり人前では話せないって事だったから妹も居ないこの時間にしたけれど。なんか困ってるのかい?」
居間に案内されソファーに腰掛けると、アルさんが早速とばかりに今日の訪問の内容を聞いてくる。
アルさんには珍しく急かすような態度で、やはり迷惑だったかな、と態度には出さないが不安になる。
ただ、いつまでも約束した理由、相談したい事を話さないのも迷惑だと思い、意を決して口に出す。
「あ、はい…実は相談したい事がありまして…ミュウ(アルさんの妹、つまり私の友人)に相談するのが少し難しいですし、他の人にペラペラ話すのも違うかと思ってアルさんにお願いさせていただきました。」
いったん他の人、友人や他の人じゃなく、アルさんに相談を持ってきた事を前置きに話し出す。
「じ、実は、相談したい内容なんですが…男性と休日に出掛ける時の色々を聞きたいと思いまして…」
「え?ニアちゃん、誰かとで、デ、デートするの?」
話し出してすぐにアルさんから質問が飛んできた。
た、確かに今の話し方ならデートみたいにとられるかもだけど、そんなに焦って質問する内容かなぁ?と不思議に思う。
私ことニア、フルネーム「バーニア・レティス」は今年で18。そろそろ結婚も考える乙女(笑)だ。
下級ではあるが貴族、レティス男爵家の次女に生まれ、貧乏とは関係ないと思うような、だけど贅沢できるほど裕福でもない家庭で育った。
去年までは義務教育では無いものの、貴族や商人、軍人の子息が通う学校に通っていて、そこでミュウと友人になった。
学校では、ミュウとあと2人ほど友人と呼べる人が出来たが、他の男女、クラスメイトでさえあまり話しかけられることすらない少し孤立気味な生活だったが、友人達のおかげで楽しい思い出にする事ができた。本当に感謝である。
容姿に関しては、主観だと派手さも観るべき所もない、至って普通な、少し小柄で肉付きがあまり良くない、金髪で琥珀色の目をした、どこにでも居そうな女子Aといった感じだと思う。
友人達いわく、「ニアは人形みたいで可愛い」らしいのだが、本人には理解できない感想である。
性格に関しては…まぁおいおい話していこう。ここでは「淑女らしくないが、誰よりも淑女」と言われた、とだけ語っておく。
まぁその性格のせいなのか、容姿が目立った所の無い普通な感じだからなのかは分からないが、友人以外の女子に限らず男子にもほとんど声をかけられた事すらほとんど無かった。
数少ない男性で会話をするのは、父親か4つ上の兄、今現在相談しているアルさん、あとは家で仕えてくれている執事さんや庭師さんくらいと、親戚くらいだろう。
そんな私が、男性と今日に外出すると聞いて、真っ先にデートと勘違いするのは仕方ないのかなぁ、とちょっとズレた思考を相談の内容に戻しつつ、会話に戻る。
「あ、いえ、デートでは無いとは思いますし、外出先も防具屋さんと薬屋さんなんです。相手の方もそんな誤解されたら困るでしょうし…」
「場所は関係ないよ!相手がどう思うかだし、ちょっと休憩がてらレストランやカフェなんか行けば、傍から見てもデートでしかないよ!」
私の意見を何故か真っ向から否定しながら珍しく少し暑苦しい感じで断言してくるアルさん。
何故か目がちょっと座ってる気がする…
「そうですかねぇ?ただ、相手はメルカド公爵の子息、ヴァルネア様ですよ?私なんかとデートしたいと思わないでしょうし、ちょっと装備についての相談に乗るだけですし」
メルカド公爵は、この国「シャルマンド王国」に仕える、4つある公爵家の一つ。ヴァルネア様は、そのメルカド現公爵の長男である。
メルカド公爵家はレティス男爵家の上司のような関係で、共に軍閥家系であり、多くは無いが友好関係を築いてきた。
ただ、爵位も公的な権威も財力も何もかもに差があり過ぎて、若干所ではなくレティス家がメルカド家に寄生しているように見えるのは間違いないし、あながち間違いでもない。
あえて言うならば、レティス家は爵位にも権威にも名誉にも興味が無く、貴族特有のゴタゴタが嫌だからメルカド家に盾になってもらっているといった感じで、事実現レティス男爵である父親は、「家族が家族らしく暮らせて、子ども達が自由に成長できる事が大事」と言い切って、実は伯爵位の要請を蹴った程である。
そんな関係からか、多少付き合いが有ったメルカドの坊ちゃんであるヴァルネア様から相談が来たのである。
しかし、何故私なのか、という点については次で説明しよう。
まぁ、私からしたら、「私じゃなくても良いのに」という思いは少なからずあるわけだが。