兎兎ルート【第0話】六畳間のリビング
!は強調であって、大声ではありません。
この話は飛ばしてもらって構いません。
むしろ読まない方がいいかも。
『前文』
修羅場。
それは刺される一歩手前の浮気現場。
三角関係から導き出される答えは、悲劇のみ。
一夫一妻の感覚が身に付いた日本人が、愛人、妾、第2夫人など、受け入れられる訳が無い。
セカンドパートナーという言葉が流行った時代があった。恋人だが肉体関係には至ってないから許してくれよ配偶者。という扱いだ。
ふざけているのかと、配偶者、改め夫や妻は言うだろう。
では何か?肉体関係のある私はセフレだったのか?結婚してはいるけど、子供は産んだけど、セフレ同然だったのか? と、そう言いたいに違いない。
結婚相手とちょっと違うタイプの相手とも、たまには性行為したい、と言えば私にも理解はできる。許しはしないが理解はできる。
甘いものばかり食べていては飽きて気持ち悪くさえなる、とそういう事だろう。わかるとも。
だが、
セカンドパートナーはなんだ?恋人だぁ?
肉体関係は無いから良いだと?
心が動く方が浮気に決まっているだろう。
バカなのか?
性欲はしょうがないかもしれない。
人間は万年発情期と言うが、正しい見解だ。
妻が妊娠していたって性欲は盛る。
手や口でするからと願い出て、腰振る欲望を叶えられるだろうか?残念ながら否であるのが現実だ。
性欲は溜まる。
それを否定してしまえば、なんの為の風俗嬢か、と言われてしまうだろう。
学生を相手にした援交や、セフレなどとされるより、堂々とプロに処理してもらう方がまだ幾分かマシだ。
なんにせよ、それも最終手段の更に先だ。
セカンドパートナーと言い張るやからには、離婚してからにさせるのが良いだろう。
捨てられたくないと思っても、仕方が無いだろう。
日本人に、2人目を受け入れるなどという文化は無いのだから。
我が国は無宗教だ。国教は無い。ほとんどの国民が無宗教である。
それぞれの宗教や文化のいいとこ取りをするのも日本人の文化ではあるが、本当に信仰している教えがある人など、過半数にも上るまい。
キリスト教は一夫一妻を強く諭しているが、日本はそうではない。
ではなぜ一夫一妻制なのかと言うと、単に法律だ。
法の施行時がどんな状況下にあったのかは知らないが、何か理由はあったのだろう。
昔は大奥などと言う後宮もあった様だが、こんにちの日本人には、夫婦は2人1組という慣習が根強く根付いてる。
だから毎年、何十何百という数の不倫、浮気現場が朝と昼にテレビで放送されている。
再度言うが、修羅場は悲劇しか生まない。
…という事もないが、十中八九そうなるものなのだ。
しかし、もし初めから同意の上で、複数の相手がいる状態で、交際、婚約、結婚すればどうか?
その妻達、夫達が、相手そっちのけで中睦まじかったらどうか?
……馬鹿馬鹿しい。
ウサトルート
第0話「兎兎starting」
「兎兎に好かれ、告白され、愛されている私が、許可してあげるけれど、
他にも恋人になりたい人は、いるかしら?」
そしてこの発言である。
ちなみに俺、兎兎っす。御門兎兎。
状況を説明すると、場所は俺んちのリビングで、集まっているのは、今の爆弾級発言をした彩花さんに呼ばれて来た10人の女の子たち。
もちろん全員知っている顔だ。というか俺に親しい人しか呼んでない。
いや、2人ほど訳分からんのがいるけども。
みんな一様に顔を見合わせている。…訳でも無いな──
「はい!是非お願いします!」
口火を切ったのは山本秘菜ちゃん。俺の一年後輩。
「あ、私も!」
こちらは倉木明梨さん。俺と同じ学年だけど違うクラスの子。小学生から知ってはいるし、一緒に遊んでもいたけど。
って、これ以上話を進めさせる訳にはいかん!!
「彩花さん!状況を!状況説明を求めます!」
「はい兎兎くん、良い質問ですね。ではお答えしましょうか。事の発端は今朝の下駄箱ラブレター事件から始まります。」
「はいそこは知ってるから俺が簡潔にまとめますよ。今朝俺の下駄箱にラブレターが。内容は呼び出し、」
だんだんと一人の女の子の顔が赤みを帯びていく。
「放課後屋上へ。中村結莉さんに告白された俺はそれを断り、その時俺は、俺にファンクラブがある事を知りました、」
ギャラリーがざわめく。みんな会員だもんな。当人に気づかれるべからずの掟を破った事をざわざわしたんだろうけど、ナンバー012の中村先輩は既に会員証を返還している。
規約の縛りは囚われない。規約に、脱退後も秘密を守る義務を付け加え損ねた彩花さんの落ち度だ。
「その後、図書当番にて事のあらましを優果理に話すと、何かを知っている風なのを察知し、尋問しました。その末、ファンクラブの詳細などを知りまして、その時優果理の気持ちも知っちゃった俺は、フワフワした空気を醸し出していたんでしょうね、図書室を閉めてから2人で部室に行くと、たちまち彩花さんに何かを勘づかれて、事情を説明すると、彩花さんはこの会議を急遽召集したのです。と、俺はここまで知ってるんですが、この会議の主目的もさっきの発言が全てなのもわかってるんですが、」
「じゃあ何が知りたいの?」
「このメンバーの選定基準は?」
「ファンクラブのメンバーから特に兎兎に親しい女子を集めたの」
「え?失礼な言い方ですけど、中村先輩は特に親しい仲じないし、今日お断りしてしまったばかりで酷……いや、挽回のチャンスだからか」
「そういうこと。」
「でもじゃあ300人いるって言うファンクラブのほかの会員さん達はどうなるんですか。平等じゃないと思いますけど」
「んー…それはそうなんだけどね、それはさすがに多いから。中村さんとかは、兎兎と趣味も合うから呼んだの」
「じゃあ、桜がいるのはなんなんですか?」
「たしかに彼女は会員じゃないけれど、一応呼んだのよ。ダメ?」
「いえ、ダメじゃないですよ」
「兎兎はもう桜の事嫌い?」
「大好きですが」
「それを求婚中の相手に言う度胸が好きよ」
「ありがとうございます」
と、いう事らしいのだが、これどうなるんだ?
既に乗り気なのが2人ほど居るけど、俺がこんなに何人も平等に愛せる程器用だとでも思われてる訳でもあるまいに。
とりあえずメンバーを紹介しておく。
幼なじみの小林希恵。
希恵の親友の倉木明梨。
俺の心友で悪友な相棒、水戸優果理。
俺の隣の席の癒し系天使、小沢聖。
クラスメイトで最も美麗な百瀬涼香。
部活の後輩、山本秘菜。
今日告白してきた先輩、中村結利。
元カノ、吉田桜。
異母姉で従姉、御門歌歌。
義妹の御門美美。
俺が愛してやまない文芸部部長、伊藤彩花。
のべ11人。
「私、考えてみたんだけど、複数の妻を持つって、3人くらいまでなら日本でもなんとかなると思うのよ」
再び彩花さんの演説が始まる。
「国に届け出しないで内縁の妻って形なら1人に限らなくてもいいし、どうしても公的に名前が必要な妻がいればその名前で提出すればいい。でもこの人数はさすがに難しいのよ。」
そりゃそうだろう。同じ場所で暮らしていればご近所さんには当然気づかれるし、世間体はある。
「だからって、もしここで全員が賛成を表明しても、誰かを蹴落として丸く収めようなんて思わない。だから安心して、私と同じ立場に立って欲しい」
「あ、言っとくけど俺は反対してないから、そこは気にしないで。俺も今さっきこの話をみんなと一緒に聞いたばかりだけど、俺にとってはウハウハな話でしかないからさ。でも、それを聞いて嫌悪感を覚えてしまうようならやめておいた方がいいかもしれない。」
「あれ…意外とあっさり同意してきた。一番の問題は兎兎の説得で、みんなの賛成を得てから数の力でゴリ押ししようと思ってたんだけれど…」
「ハーレムは男の夢ですから」
「このラノベ主人公っ」
「やらせてるのは彩花さんでしょうに」
「私がこれを決意したのはあなたがモテすぎるからなんだけど」
「すみませんでしたorz」
「私だって独占欲くらい持ち合わせてるんですからね。そこは覚えておいてよ?」
「えぇ……じゃあどうしてこんな企画を?」
「たとえ私相手でも兎兎が誰かとくっつけば、また歌歌が泣くじゃない」
「あ、あぁ…いい親友じゃな」
「え、私?」
「泣くでしょうに」
「…ごめん」
「いいわよ」
「でも彩花さん。姉さんは半分は血が同じなんだけども」
「法をぶち破ってやりましょうなんて話をしてる所でそれ?」
「血が濃すぎると子供が奇形児になりやすいんですよ」
「もう子供の話とは…やるわね。実の姉を孕ませる気満々じゃない」
「茶化さないでくださいよー」
「まぁ、そうなりそうならあんたがなんたら術やらどうたら魔法で何とかすればいいじゃないのよ」
「あぁ。たしかに」
「解決した?じゃあ秘菜と倉木女史以外にも聞いていきましょうか」
…そして、全員が同意した。
「さて、ここで問題になってくるのが」
「お金?」(秘菜)
「すまんけど俺の稼ぎが現時点で年2000万を超えてる件」
「「「「「「「え!?」」」」」」」
「という事で、金の問題は大丈夫よ。私達の未来の夫様は甲斐性ありまくりだから。問題は両親を納得させられるかと、住む場所ね」
「うちは大丈夫じゃない?お姉ちゃん」(美美)
「そうだね。むしろ大騒ぎしそう」(歌歌)
「そういやこの家は今妻2人持ちがいたんだったわね…」(彩花)
うちの親父は、俺と姉さんの母である双子姉妹の両方を孕ませて婿に来たやべぇヤツだ。
ちなみに妹は養子。闇市で親父が買ってきた。必要だからとかでなく、単に可哀想だかららしい。
まぁ金はあるからいいんだが。
「いっその事神隠しとして異世界に飛んじゃいますかw」
それがフラグだったのか、リビングの広さいっぱいいっぱいに魔法陣が浮かび上がった。
「ちょっと兎兎!悪ふざけはやめて!」
彩花さんがめずらしく焦った顔で俺に言う。
しかしなぁ…これ俺じゃないんすわ。
「違う!俺はやってない!」
こんな時にうっかりギャグをかましてしまった。
「じゃあとりあえず停止させなさい!!」
「そんなすぐには無理じゃーー!!!!!」
「「「「「「「「「「「キャー!」」」」」」」」」」」
というように俺たちは召喚されて行った。
敢えて今回はしゃべるヒロインを少なくしました。