ゴーレムさん 1-6 生活向上2
1-〇となっていますが1章問い追うわけでは無いです。
似たような者ですが2と3もあります。それにあわせてあらすじの追記していく予定。
ところでエアコン直った
死ぬかと思った
魔獣の亡骸を観察し大きさを目算する。その様子をアイオラとルルが見守っている。特にルルの視線が好奇心に満ちており、何というか凝った事をしたくなる。魔鋼精製の術式を起動し荷車の車輪と枠を作る。素材はて軽い金属をイメージ。固さも大事だが形状記憶とかを考えながら術式を組み上げていく。頭に術式から伝わって来るのは魔鋼として強化され形状記憶となったチタンだ。アルタイトの様なフィクションにしか出てこない様な金属でなくても充分な強度である。
そこから少し拘りを加える。軸受けとサスペンションを車輪との間に取り付ける。見守る二人にはそれが何かわかっていない様子だ。前世で小型の車の玩具を組み上げた時。手を抜いて小さな軸受けパーツを付けなかった自分の車と、丁寧に組み上げた弟の車でレースさせた時の事が頭をよぎる。もう戻れないであろう世界の記憶は楽しい思い出程悲しいものだ。この世界の馬車や荷車を門の横に立っている時に観てきたが、構造が単純で結構揺れていた。なので知識として持っているものを便利な魔法で再現してしまおうという話だ。最初にアルタイトの様なトンでも金属が精製できたし、形も自由に出来る魔法の可能性は素晴らしい。もっともここまで使いこなすには、高い魔力の操作量と感知量、土魔法のへの適性が必要になる。この世界の文明が科学方面に張ってすれば再現可能だが、今は難しいものを作っている。
そんなこだわりの荷車に魔獣の亡骸とアルタイトの大瓶を積みこみ引いてみる。サイズ的に荷車というより荷馬車だ。馬でなくゴーレムが引くのだが。どうせなら御者台も付けてより馬車に近づける。アイオラに御者として乗ってもらい門へ向かう。乱暴に引くと瓶が倒れそうになるので途中で縛って固定した。ちなみに〈森の使途〉の効果が僕の引く荷車にも適応されたのでこだわりは無意味となった。こういうのは造る過程に意味があるのだ。術式の扱いが随分と洗練されたし全く問題無い。
視線の雨と共に門をくぐり、昨日も訪れたギルドの前で荷馬車を止める。アイオラが中に入り暫くすると職員と思われる人共に出て来て魔獣の解体所まで案内された。解体と素材の価値を計るのに時間がかかるとの事なのでその間に教会へ行くことにする。昨夜のアイオラの身元確認で知ってしまった事だが、彼女はこの街の教会が開く孤児院の出身者だった。3年前に15歳になり孤児院を出て一人で生活を始めたそうだ。教会へ向かう道での彼女の表情は決して明るいものでは無かった。
[アイオラ、お願いできるかい?]
ゴーレムの巨体では教会の門をくぐれず、中の人を呼んでもらう。
神妙な表情で教会のドアをノックするアイオラ。中へ入り扉が閉まる。
[ルル、出ておいで。ここは怖い人は居ないから]
「うん、ここに母様の事を知ってる人がいるんだよね」
洞から出てきて、それでも怖いのか僕の胸元に隠れるようにしている。
アイオラと共に神官と思しき人物が教会から出てくる。そしてルルの姿を確認し笑顔お浮かべる。
「レムリア様の息女がいらしたとアイオラから聞きましたが成程。確かにレムリア様に似た輝きだ。それに守り人殿はレムリア様の聖霊石を宿しておられるな。」
「母様を知ってるの?」
ルルが尋ねる
「はい、存じております。申し遅れましたが私、レスター・バルトと申します。この街の住人でレムリア様の事を知らぬ者は居りませんが、実際に出会ったことがあるのは私を含め数えるほどでしょう。」
「ルルは母様に会いたいの、どうすれば良いの?」
「聖霊様の復活の方法は存じておりません。ですがエルフの守る森では水の精霊が代替わりしたと記録にあります。それも含めこの協会の資料で有ればお役立て下さい。」
その後、ルルを連れてレスターは教会の図書室へ行った。教会の門の前にアイオラと残される。
[さっきのレスターさんの話で思ったんだけど僕は字が読めない。アイオラは読めるかい?」
「はい、孤児院を出た後、仕事に困らないように基礎的な教養は教わりますので。」
[そうなんだ。あとこの世界ではルルの存在はどういう扱いになるんだい。]
「様々な宗教において精霊は信仰の対象となっています。特に神格に似た属性を持つ光の聖霊は邪神教においても信仰されるほど人間に限らず亜人にも信仰される存在です。」
[それは凄いね]
「レムリア様はこの街に程近い森に住まう光精霊として言い伝えが残っていますし、実際に出会った人もいるのでルル様に関しても相応に。」
[それでタイカンさんも気を使ってくれたのか]
「それはあると思います。あの方もレスター様と共にレムリア様にあった事があるので。そうでなくてもこの街で活動する人なら少なからず協力的になると思います。」
[ルルは結構良い所のお嬢様なんだね。変な人間に目を付けられない様に気を付けないと。]
「ゴーレムさんはそういった面でもルル様をお守りになるのですね。」
[僕が面倒だから避けてるだけだよ。有名な光の精霊レムリアの復活の為と謳って、ルルを表に出せば結構な協力者が出てきそうでしょう。]
「国が動きますよ。それも複数。」
[そんなの後が怖いよ。後で何を要求されるやら。]
「そんな事は無いと言えないのが」
申し訳ないといった表情をアイオラが浮かべる。
[他の人はともかくアイオラの事は信頼してるし感謝もしてるよ]
そう伝えると疑問の色が顔に浮かぶ。
[昨夜は僕を落ち着かせてくれたろう?あの時君が声をかけ一緒に勝ち鬨を上げてくれなかったら周りの人に襲い掛かっていたかもしれない。それくらい僕は危険だったんだ。君との出会いに感謝しているよ。]
そう伝えるとアイオラは暫し呆然とした後黙りこくってしまった。そのまま沈黙の時間が流れ、ルルとレスターが戻ってくるまで続いた。
「ゴーレム!時の精霊だよ。時の精霊なら母様の時間を巻き戻しせる」
開口一番、何を目標とするのか告げてくれるルルは分かり易くて良い子だ。
[どこに行けば会えるんだい?]
「えっとねぇ、精霊のみちびきがあるんだって!」
間違いなくこの娘は自身が精霊という自覚は無い。
「かつて時の精霊と出会った者は多くの精霊の祝福を得て導かれるままに時の精霊に邂逅したと言います。主だった記録が此方になります。」
そう言ってレスターが羊皮紙を差し出した。
「アイオラ、聖霊とその守り人様の力になって御上げなさい。」
受けっとったアイオラにレスターが告げる。アイオラは無言で羊皮紙を受け取る。
「一番近いのは土の精霊の所なんだよ。土の精霊は地面の下ならどこでも居るから会いやすいって、ルル覚えて来たよ。」
[ルルは賢いなぁ。流石レムリア様の娘だな]
褒めると光り方が変わる。恐らくドヤ顔してる時はこういう光り方なのだ。詳しく話を聞くと馬車で二日ほどの場所の山間の村に土精霊の住む洞穴があるという。過去の記録を見るに、俗にいう4元素、火水土風に光と闇。それに加え分類不明の精霊の祝福があるという。
特徴として光に似て閃光と轟音を纏う精霊は雷が電気か何かだろう。火と氷を司る精霊というのは温度その物を司るとうことだろうか?それとは別に氷の精霊も居るらしい。あらゆる物精霊は宿るのだそうな。ファンタジー過ぎる世界だ。ちなみに亜人含めた人属全てを司る精霊もいるらしく。人型の生物の信仰の中で主神一中は必ずその聖霊の事であり、一神教では神そのものであることが多いらしい。時の精霊に合うのに関係は無いらしいが羊皮紙の隅に解説があった。元は人間だがゴーレムの自分を司ってくれるか気になる精霊ではある。そのほかにもいくつか精霊の解説が書かれている。
ルルは時の精霊に解決の糸口を見出したようだが、僕が気になったのは精神と心を司る精霊である。肉体的寿命を持たない精霊の寿命は精神的なものであると僕は考えている。レムリア自身、生きる事に飽きてると本人が言っていた。案外心変わりを誘引することで復活する様な気がする。
それでも当面はルルの意見を尊重し各所の精霊を訪ねて回る事になりそうだ。そうと決まれば先立つものがあるのは何かと救いになるだろう。期待を持って解体の結果を聞きに解体所を訪れる。首の骨を折っただけなので素材の状態としては良いと思ったが、その期待通りかなりの高額がつけられていた。特に外殻の鎧と角の評価が高い。なのでそれらは全て換金する事にした。皮の外殻の一部と食用に出来る肉と内臓をそのままもらいアルタイトの大瓶に入れる。中では時間の影響を受けないので保存に問題は無い。肉体を持たない自分が食べる事は無いが、お金と食べ物はあって困るものでは無い。
足取り軽く、一度では運び出せない肉を解体所から往復して運搬していると、何度目かに振り替えった時にアイオラに見知らぬ二人組が話しかけているのが目に入った。話しかけられたアイオラはの様子がおかしい。普段も少しおかしいがそれとは明確に違う顔色だ。肉を運びながらアイオラの後ろに立つ。
「それが話題のゴーレムか、本当に君に使役されているようだね。何があったかは知らないけど幸運に恵まれたようだね。」
「かつてのパーティメンバーの活躍を耳にするのは良いモノだわ。」
話しかけていたのは以前アイオラと組んだことのある様な男女二人組だ。
「これから仲間としてさらに親睦を深めようという時に、突然にいなくなるから心配したんだよ?」
アイオラは黙って聞いている。後ろに僕が経っていることに気が付いてい無い様だ。
「でも一緒に買った装備をまだ使っていてくれてうれしいよ。仲間だったつながりを感じるからね。今からでもどうかな?新たな戦力も加わるし歓迎するよ。」
「今夜にでも宿へ来てくれれば良いわ。部屋は覚えてるわね」
そう言い残して去っていく二人をアイオラは黙って見送った。
[あの二人は、以前の仲間かな?]
そう問いかけた所でようやく後ろに立つ僕に気付いた様だ。
[僕としては、これから街を出て旅に出るにあたり、アイオラには来てほしいと思っている。あの二人に元に行くなら一人で戻ることになるけど大丈夫かい]
行って欲しくないので少し意地悪な言い方をする。
「あの人達の所は戻りません。教会でレスター様に言われましたが聖霊様の旅の助けになるなら私で良ければ連れて行ってください。」
その答えを聞いて心から安堵する自分の心に少し驚く。
[人恋しいなんて気持ち、久しぶりだな。]
つい心情を漏らしてしまう。
「それはどういう?」
[深い意味は無いけど、僕もずっと寂しかったんだなって思ったんだ。]
前世で、最後に事務的な話以外で人と話のは何時だったろうか。新年度から弟が引き取られてから、あまり記憶が定かでない。
「あの、それで何時出発するので?」
[もう少し準備したいと思うけど、アイオラは何かあるかい?]
「いいえ、私には荷物も何もありませんから。」
そういうことらしいのでこちらの用意を進める。真っすぐに足を進めるのは被服店だ。
[アイオラの服を買う。あと上に着てるワンピースみたいなのは、昨夜の魔獣の皮で作り直そう。]
そう告げるとアイオラは驚くアイオラに勢いのまま通訳させる。魔獣の皮は魔法で鞣して直ぐに加工可能にして特別料金を払って最優先で作ってもらう。その下に着る服は、熱い所に薄手で袖の短い物を2セットと、寒さ対策の物をもう2つ。さらにフード付きのロングコートも季節でもないのに倉庫から出してきて貰って一つ。あとワンピースと思っていたものは固い布で作ったドレスアーマーだと教えてもらった。アイオラのサイズなら外殻の欠片でも充分な胸当てが作れそうなので取り付けてもらう事にした。年齢的に太りでもしなければ成長して着れなくなる事も無いだろう。本人に聞こえない様に心を静めるのには気を使った。
完成は明日の昼になるとの事なので一度街の外のいつもの場所へ。
「あの、こんなに買って貰って良かったのですか?」
[僕もルルも装備を必要としないからね。]
そう言いながら服を入れる入れ物を作る。イメージは樹脂製で深めの引き出し3段重ね。土魔法と森林魔法を重ねて、精錬した物を作ると琥珀の様な透明な宝石になるので、中が見えない様に濁らせる為に少し術式に余分な物を混ぜる。完成品を荷車に乗せる。アイオラに服をその中にしまっておくように言い、自分は次の製作に取り掛かる。
魔獣の体は大きく、まだ皮は大分残っているがそれを乗せる為に作った大きめの荷馬車を覆う程の幌を作るには足りない。なので再度、森林魔法と土魔法を駆使して荷馬車に設置できるサイズのテントを作る。これもアイオラが中で着替えたり寝泊まりするためのものだ。その中にタンスもいれさせて僕の気分は満足した。
[明日、アーマードレスを受け取ったら出発しようか。行き先までの荷運びや護衛の仕事があれば受けておくと良いかな。]
「わかりました。依頼の出発が明日でない場合は?」
[その時は依頼主の日程に合わせよう。急ぐ旅ではないからね。]
アイオラの疑問の声に被せる様に答える。ともあれ明日になってこちらがいつでも出発できるようになった所で、都合の良い時期を見計らい出立だ。