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ゴーレムさんサン  作者: macchang
3/19

ゴーレムさん1-3 街待ち

やっとヒロインが出て来た

 街を囲む防壁、中に入るための検問にて止められる事は予想通りだ。ゴーレムは仮にも魔物扱いされる存在だ。素性のしれない魔物を街に入れることなど出来るはずはない。魔獣を使役する技能を有する者もいるが、そうして使役された魔物には、使役されていることが分かる様に使役の術式が確認できるらしい。創造主であるルルに使役されているわけだが、創造主に隷属するという術式はゴーレムの仮初の命の中に組み込まれていて表面化しないようで、確認が出来なかった。

「教会には伝えて便宜を図るよう頼んでおきますので、しばしお待ちください。」

そう言ってタイカン一行は街へ入って行った。ルルは街に近づき人が増えてくる怯えて洞の中に隠れてしまった。人が怖いというよりも自分より身体の大きい動物が群れていることに怯えている様だ。検問に立つ番兵の横に人の列を観察する。動き回って気を引いては仕事の邪魔になるだろうからじっと街から出入りしている人の流れを見続けていると日が暮れ、検問は閉じられ、その日に街に入れなかった人たちは防壁の外でキャンプを始める。門の外にも人の生活がある。そこで暮らす人々の視線が今、自分に一心に注がれているのが分かる。番兵の横にゴーレムが微動だにせずに立っているのだ。昼は通りすがりに向けられる視線だったが人の流れが無い夜は視線が一層濃く感じられる。

「なぁ言葉がわかるというのは本当か?」

自分の隣に立つ夜番の兵が意を決したように声をかけて来た。身体を少し捻り、新線を彼に向けると少し警戒しながらも

「反応した?本当にこちらの言う事がわかるのか?」

と言葉を続ける。

「おい、気を抜くな!」

門を挟んで反対側に立つ番兵が注意するので、話しかけて来た男から視線を外し、元の姿勢に戻る。その様子に二人の番兵は改めて驚き息を呑んだ。

「なぁ、言葉が分かるならもう少しテントから見えない様な所に行ってくれないか?皆気になって落ち着かないみたいだから。」

隣の番兵からそう頼まれたので、頷き外壁に沿って歩き始める。門から離れるにつれテントは疎らになっていく。あまり門から離れても、戻るのが面倒なので程よい所を探していると昔は小屋だったと思われる石の基礎と木の壁を見つけた。その壁に門の様から身を隠すように回り込むと先客がいた。

「え?魔物?そんな気配無かったのに」

壁の裏に居たの少女は驚きを怯えを顔に表しながら硬直している。年のころは十代後半と言ったところだろうか。街に入る人を観察してはいたが、通行する人の年齢などわからないので若いというくらいしかわからない。


 悲鳴を上げられると困ると思ったが、少女は緊張からか過呼吸状態になっており声を上げず息を切らしていた。悲鳴を上げられるよりはマシだがこの状態もそれはそれで問題なので、日が落ち洞で眠っていたルルを起こす。

「なによぉ、ルル寝てるのよぉ」

昼は人波に怯え日が落ちれば眠り、今日一日をほぼ洞の中に引きこもっていた光精霊が抗議の声をあげなかがら洞から半身を覗かせる。

「ごご、ゴーシュト?」

過呼吸が収まらぬまま声を出すから呂律が回っていない。

幽霊扱いに不満を感じたのかルルが洞から飛び出す

「違うよ!ルルは幽霊じゃないもん」

「え、何、何なのよ」

自身の周囲を飛び回る発光体に彼女の精神は混乱を極め、息も整わぬまま逃げ出そうとし、足がもつれ転倒する。ルルを起こしたのは失敗だった。話が出来れば何とかなると思ったのだが。誤解を招き更なる混乱を呼ぶ事態になってしまった。

 

 腰を抜かし倒れたまま、腰に下げていたステッキを掴み振り回す少女。その表情は絶望に染まり目と鼻から流れ出る液体と土埃に汚れている。こんなに怖がられるとさすがにこちらも穏やかじゃいられない。森林魔法に精神を鎮静化させるものがあるので使用する。昨夜の冒険者との遭遇時は魔法の使い方も知らなかったが、今回は相手の体力が尽きる迄待つ必要は無い。

 

 術式を展開、起動させると自分の体から芽が出て、花が咲きミントのような香りが漂い出す。

「ん、いや」

 絞り足すように拒絶の声をあげ、錯乱していた彼女は意識を失った。落ち着いた途端力尽きて眠ってしまった様だ。暴れたことで汗ばみ汚れた彼女を一先ず水と森林魔法で洗浄する。水魔法には水分を蒸発させる魔法もあるので、水の浄化魔法で濡れた服を乾燥させる。長袖のシャツとズボンの上からデニムの様な丈夫で厚い生地のワンピースを着たような彼女の服装は耐久性に重きをおいた装備の様だ。濡れても透けたり身体のラインが出ない程に生地が厚い。この服ならこのまま寝かせておいても風邪をひくことはなさそうだ。

「ねぇ、結局何がしたかったの?ルルもう寝ても良いの?」

もういいよ、ごめんね起こしちゃって

ルルも洞に戻る。そのまま朝が来るまで小屋の跡地に身を隠していた。


 朝日と共にルルが目覚め、次いで意識を失っていた少女が目を覚ます。そして自身の隣に座るゴーレムの巨体に表情を強張らせる。

昨夜に続き、何もそこまで怖がらなくても良いだろうに。

「え、あのごめんない?」

確かに暗い中で、大きなゴーレムが突然現れた怖いだろうし驚くだろうけど、そこで冷静さを失えば本当に危険な事になりかねない。

「はい、おっしゃる通りです」

冷静でいられなくても、あそこまで錯乱する様では敵味方の判断すら危うい。

そこまで思って違和感を感じる。ルル何か言ったかい?

「ルル何も言ってないよ?」

洞から出て来たルルが返事をする

「光の精霊?昨日のはゴーストじゃなかったの、私は何てことを。」

やはりこの世界の人にとっては精霊は神聖な存在のようだ。

「昨日の人、今は随分静かなのね。昨日の魔法のせい?」

鎮静魔法の効果はもう切れてるはずだよ。暗いと人間は怖くて不安になるから

「本当にすみません。私どうかしていたみたいで。」

謝る彼女の顔には一晩の睡眠で拭いきれない疲労の色が染みついている。そもそも門の周囲のテント村から離れた場所に一人で居たのだ。何かしら事情があるのだろう。

ところでルル、さっきから彼女は僕の言ってることが分かっているように感じるのだけどどう思う?

「ルル知らないよ?ゴーレムは人とお話出来ないの?」

おおっと、この精霊の娘さんわかってなかったのか。いや、僕も良くわかってないぞ。声は出せない身体のはずだよな。

「あの、私は花や木の声を聞くことが出来るのです。おそらく貴方様が木の体をしているから声をお聞きできるのだと思います。」

混乱している所に少女が口を挟む。やはり僕はこの出せない身体の様だ。それにしても偶々であった人物が植物の声が聴けて僕の声が聞こえるとは。都合が良過ぎるな。

「木の声が聴けるって貴女はエルフなの?」

「いえ違います。ただそういうスキルを持っているだけです。」

そのスキルとやらは何処までこちらの声を聞けるのだろうか?考えてる事が筒抜けという事はないだろうか。

「あの、こちらに伝えようと思った事しか聞こえない様です。先程から途切れ途切れというか、私を心配して忠告してくれてるのは聞こえますが。」

つまり自問自答してるような所は聞こえていないのだろうか。

[今の聞こえた?]

「いえ、聞こえた?の問いかけ以前は何も。」

[ルル、ちょっと相談したいんだけど良いかな]

「なぁに?」

[彼女と暫く一緒に行動してみないか?]

「それで母様を元に戻せるの?」

[その方法の手がかりを探すのを手伝ってもらうんだ。僕はルルが居ないと人と話せないけど、彼女が手伝ってくれればルルが僕の代わりに人から話を聞かなくても彼女が代わってくれる。]

「ゴーレムには母様を生き返らせてって命令は出してるし、それが役に立つとゴーレムが思ったなら良いよ思うよ。でもその人間の子は大丈夫なの?」

[そう言うわけだけど、聞こえてたかい?]

「はい、それで私はその、ゴーレムさんの通訳をすればよろしいので?」

緊張したまま未だに名前も知らない少女が強張ったままの表情をこちらに向けた。

[そうなるね、僕と他の人が話を出来る様にして欲しい。あと使えるなら使役の術式を僕に掛けてくれないかな?]

使役の術式は使役対象に何の制約もかけない、命令に逆らえる形だけ掛けるなら簡単な術式で扱える。彼女の魔法の適性がどのくらいあるのかはわからないが問題なく使えるはずだ。そして形だけでも使役の術式がかかっていれば、番兵が言う通りなら街に入ることが出来るだろう。タイカンさん達が手を回してくれているのは知っているが、こちらが何もしないというのも気が引ける。

[そういえばこれから使役されるのに自己紹介をしていなかったな。僕はプラントゴーレム。名前は無い。]

「ルルだよ」

「アイオラです。」


 そうして彼女に使役の術式をかけてもらい再び門を訪れる。

「お前さん、確かに使役されてないと入れられないとは言ったが昨日の今日で主人を見つけてくるとはな。しかも相手は寄りによってアイオラか。」

そう言って渋い顔をする門番。

アイオラに視線を向けると気まずそうな顔をしている。後で何か事情があるなら確認した方が良いかもしれない。

「と、とにかく私に使役するゴーレムですから一緒に入っても良いですよね。」

「確かに使役の術式は検知されているし構わないが、変な気を起こすなよ?」

訝しむ視線がアイオラに向けられる。

[わかってると思うけど、君の使役魔術には何の拘束力も無いから変な事させようとしても従わないぞ?]

「そんな事しませんよ。この門番の人が私を誤解してるだけです。」

泣きそうな声で訴えるので信じる事にする。昨夜の取り乱し様を見る限り、大それた事は出来なさそうだし。そのままアイオラが手続きを済ませて街に入ることが出来た。

「これで街に入ることが出来ましたが、最初はギルドに行って使役獣の登録をしないと駄目です。ついてきて貰えますか」

そう言われ街を進む。ここでも森の使途の効果は有効で、明らかにぶつかる場面ですり抜けるようにすれ違う。衣服や装飾品などには効果は無いようで袖が触れたり、腰に下げた剣が当たる程度の事しか起きない。

すれ違った人が不思議そうにこちらを振り返っている。

「ここです。手続きをしてきますから待ってて下さい。」

そう言ってアイオラが町中で一際大きな建物へ入って行く。周りは宿屋や商店が集まっている。この辺りはギルドを中心に街が形成されている様だ。門の時の様にギルドの入り口の脇に立ち、通りすがる人を観察する。街並みや人々の服装から前世の世界と違い科学的な進歩は少なく、代わりに魔法に寄る生活水準の向上が観られるようだ。何かしら魔力を感じる道具を身に着けている人がチラホラいる。分かり易いのが眼鏡だ。レンズに加工されておらず、唯のガラス板に望遠の術式が組み込まれている。そういう発展をしてきたのだなと感じる。


「おお?おおおおおおおおお」

聞いた事のある落ち着きのない声が視界の外から駆け寄って来た。

「守りて手様が街に入ってる?タイカンさんはさっき迎えに行くと言ってたのに」

声の主はタイカン一行の剣士ダイクだった。軽く会釈を返しておく。どうやらタイカンさんとは行き違いになった様だ。少し悪い気もする。

「使役紋がついてるって事は誰かに使役されてる?そもそも使役できたのか?それより精霊様は?」

まくしたてるダイク。彼は本当に落ち着きがない。

「そうだ、タイカンさんに伝えないと。」

言うなり門の方へダイクは駆け出した。

「あの彼とはどういった間柄で?」

折よくギルドから出てきたアイオラに声をかけられる。

[街に来る道すがらに出会って門のところまで一緒に来たんだ。タイカンさんってベテランっぽい人も一緒だったね。]

「そうでしたかタイカンさんはこの街でも知られた魔法使いで、彼はその教え子なんです。」

教え子と言っても魔法ではなく、護衛や魔獣退治の様なギルドの仕事についての教え子という事らしい。新人はベテランに組んでもらって安全に成長するという構造になっているそうだ。

[アイオラは誰に教わっているんだい?紹介してくれるかな]

「わ、私にはそういう人は居ません。街の周りで薬草積んで来るくらいしか仕事は受けてませんから。」

その辺りは何か含むところがありそうだが、深くは聞かないでおく。


「使役獣としての登録はしましたが、その宿とかはゴーレムさんはどうされるのですか?」

 こちらも何か他に言いたい事がありそうな顔で聞いてくる。

[この世界の通貨など持っていないので何処か邪魔にならない所でじっとしているつもりだよ。そしてアイオラの仕事を手伝いをしながら情報を集めようと思っているんだけど、普段アイオラは何処で過ごしてるのかな]

「あの依頼の報告と受領の為に街に入るだけで、普段は壁の外にいます。」

どうやら普段は出会った小屋の跡地で野宿して過ごしていたらしい。

[仕事はもう受けたの?]

「はい、薬草の採取は常に出ていて持ち込みで料金を貰う依頼なので。」

薬効の草を持ち込み、その質に応じて報酬を受け取る依頼で、草木の声を聞ける彼女にはもってこいの仕事である。高価な薬草は危険な森の奥にあるが、彼女の能力があれば町付近でも何とか生活できる程度には稼げるようだ。


門に向かう途中でタイカンさんと再会。昨日別れてからの経緯をアイオラに話してもらい、また街の外へ出ることを伝えた。

「次に待ちに入るときは一度教会へ行って下さい。光の精霊様の事であれば協力してもらえるよう話してあります。」

タイカンさんは色々と顔が利くようだ。有難い事である。感謝の意を告げて待ちを出た。

話が進まない

書くしかない

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