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ゴーレムさんサン  作者: macchang
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ゴーレムさん1-2 道行く人

ゴーレムとして転生した主人公。転生先の人間に接触し世界に関して知識を得ます。

ダンゴムシの様に小さい存在なら人並みで充分チートになるという前作の考えから、

今回は結構大胆なチートを描写しようとしています。話が進むごとにインフレしていけるように精進です

 人の住む街を目指すと決めた所でルルに今いる場所が何処かなのか尋ねる。

「知らない。母様はいつもハトルの木の所にいたからワタシも傍を離れたことが無くて。」

ハトルの木?

「アンタの身体の元になった木よ。この世界で最後のハトルの木だって母様は言ってた。」

うわぁ知りたくない情報。親子なんだなぁ。レムリアの知識もさらっと嫌な情報を後に付けてくるし。

「昔は偶に人間がハルトの実を取りに来たらしいからそこまで街から離れてはいないんじゃないの」

ルルはあまりあてにならない様だ。母親とずっとハルトの木の下で過ごしていたようで、天然物の箱入り娘だ。

「アンタは何か知らないの?」

そう言われてもこの世界に来たばかりでどうしようもない。そう思いながら周囲を見回すと何となくどちらに向かえばいいか分かった。理由も無い確信が湧いてくる。そういえば自分についての情報をレムリアの知識で参照した時に「森の使途」とあったような。


〈森の使途〉

『自然物から様々な恩恵を受ける。その効果は多岐にわたる。行き先は森が教えてくれるわ』


そういう事らしい。ルルに付いてくるように言い、森に誘われるままに歩を進める。途中、ゴーレムの巨体で木々の密集した森の中をスムーズに歩ける事に気が付き注意してみると、木々や岩が自分に道を空けるような感覚で、通り抜けられないような隙間を抜けて居る事がわかった。これも森の使途の恩恵の様だ。


 そうして暫く森の中を進むと木々か途切れ、森を抜けた。背の高い草の生い茂る平原に出る。そこから少し進んだところで、ようやく街道と思しき道に出る。舗装されてはいないが踏み固められた道に車輪の跡が観られる。この道に沿って行けば人のいる所にたどり着けるのは間違いないだろう。

「ねぇ大丈夫なの?人間って怖い人もいるんでしょ。」

こちらの世界の人とあった事が無いから何とも言えないがきっと良い人のいるだろう。

「そうなの?」

そうだよ。もし怖ければ隠れてて良いよ。

「そうするわ」

そう言って目の様に空いた洞の中に入って来た。そのままルルを中に入れたまま自分は道に沿って歩き続ける。この道沿いに歩いて途中、誰か人に出会えれば良し。会えなくても道の先には人の住む所があるだろう。幸いな事にゴーレムとなった身体には疲れはあまり感じない。空腹感も無い。また光合成の様に光を浴びる事で魔力を補給、蓄積しているようでルルの光や、核となるレムリアの光の精霊石から魔力を補充している様だ。


 そうして道に沿って歩いて行く。疲れを知らない身体に昼夜は関係なくルルと他愛ない話をしながら進んでいると、道に行き当たってから二日目の夜に道沿いに明かりを見つける。どうやら野営をしている様だ。近づくと止められた馬車と焚火の火の粉が草の向こうに見えて来た。どうやら第一異世界人との遭遇できそうだ。草をかき分け焚火の所に顔を出す。その瞬間鈍い音共に顔に衝撃が走る。顔と言っても人間の様に頭は無いので胴体の上部、人で言うなら胸の辺りだ。

「なに?どうしたの?」

衝撃驚いて隠れていたルルが声を上げる

「人の声?」

その音と声に焚火の傍のテントと止まっていた馬車から顔を出したのが4人。自分の体に剣を叩きつけたのが一人。剣は胴体に少しめり込み、その刃を挟み込んで抜けなくしている。その為剣の持ち主は必至な顔で剣を引っ張っている。まだ若い、20歳くらいだろう。指で弾いて剣を外すと勢い余って後ろに転がる。

「クソ!なんだこいつは」

起き上がって毒づく若い剣士の男。とりあえずルルには出てこない様に告げて、彼が剣をこちら打ち付けるのをされるがままに受け続ける。テントと馬車からその様子を彼の物と思われる視線が向けられている。剣はコめり込み外れない時に手を貸すだけで彼が疲れ切るまで待つ。

「ホントなんだコイツ」

もう剣を振り上げる力も尽きた剣士が此方を見ながら言う。

「もうよせタイカン。恐らくソレはこの森の守り人だ。悪意ある魔物ではない。」

テントから出て来たローブの男が言う。まもなく中年に差し掛かりそうな外見の如何にもベテランな空気を纏った男だ。

「申し訳ない、貴方の森に害をなすつもりはない。朝になれば火を消し立ち去るので許してはもらえないだろうか?」

ベテランがそう言う。散々若い連れに攻撃された相手に許しを請うには少し態度が大きい気もするが気にしないでおき、頷いて肯定の意思を伝える。そしてルルにもう出てきても大丈夫だと伝える。

「平気?怖くない?」

そう言いながら洞からルルが半身をのぞかせる。

「光精霊!!」

ベテランの驚く声。剣士の若者やテントと馬車からの方からも息を呑むのが聞こえた。驚く彼らを尻目にルルに彼らに街の場所を聞いてはどうかと伝えると慌てたようにルルが彼らに質問を始める。一連の流れでやはり自分は声が出せず、こちらの意思を伝えられるのはルルだけなのだと確認した。当然のゴーレムと光精霊の出現に戸惑いながら、ルルの質問に答えるベテランっぽい男。彼らは馬車の主の商人の護衛を受けた傭兵との事だ。ベテランの男、ダイクをリーダーに剣士のタイカンにテントに居た斥候のニグクの男3人のパーティ。馬車の方に居たのは護衛対象の商人との事だ。

「ではこのゴーレムは森の守護者では無く、精霊様の守護者であられましたか。」

「この森に光の精霊が住んでるって話は本当だったのか」

ベテランと商人の男が驚愕の声を上げる。精霊の住まう森というのも人間の間では神聖なものであり、それが光の精霊ともなると、その驚愕は一層増す様だ。

「先程の非礼をお許し下さい。」

畏まって若い剣士が頭を下げる。こんなに敬われてルルの教育に良くないのでは無いかと思ったが、彼らの態度はどこ吹く風、

「そんな事より、誰か母様を助ける方法知らないの?」

彼女の問いに応えられる者はおらず、今は少し拗ねてしまっている。


 合流した商人とその護衛達に合わせて夜営し朝を迎えてから、彼らの目的地である街へ同行する。夜営の間、眠る必要の無い体を生かし一晩中見張りすることにしたが、いかんせん暇である。ルルは洞の中に入って寝息を立てている。精霊も睡眠が必要なのか、はたまた彼女が幼いから成長の為に眠るのかは不明である。そんな彼女が眠りにつく前に、ローブのベテラン、ダイクにルルを通して頼み事をしておいた。やがて見張りの交代でダイクがテントから出てくる。

「ゴーレム様に魔法の使い方を教えて欲しいと精霊様に伺いましたが?」

問いかけに頷く

「自律しながら魔法まで使えるゴーレムなど聞いた事もありませんが精霊の手によって生み出された存在ですからな」

魔法を使えるゴーレムは珍しい様だ。

「魔法を使えるのではなく体に術式を埋め込み、任意に発動させるという高度な機能を備えた人造生命やゴーレムは居りますが、自ら魔力を行使して術式を組み上げるというのは、どこまで私に指導できるやら。」


 そんな言葉からダイクの魔法に関する講義が始まった。彼の解説によると、自身の体内や周囲に漂う魔力に干渉し、属性を持たせ術式という形にして発動させるのが基本的な流れであり、個人により感知できる魔力量と操作できる量が違うらしい。そもそも魔力というものが無い世界から来た自分ではあるが、言われている事はなんとなくわかった。自分の中。レムリアの精霊石から湧き上がってくるものが多分魔力だ。昨日、弱ったルルに光を浴びせた時の感覚で今度はその光を自分の胸の前に集める様に意識する。光という形態にならない様にあくまで感覚で感じられる状態のまま収束させている。

「なんと!この奔流を制御されているのかなんという」

どうやら操作量も感知量も人並み外れている様だ。そのままレムリアの知識にアクセスし術式を探す。解らない事を検索しようとすると眠ったレムリアの意思に干渉するが、一覧から参照するように知識に干渉する分には問題無い様だ。あまり干渉して欲しく無い様だから気を使う。そして試し打ちに適した魔法を探す。攻撃系は論外。回復も怪我人の居ない今使っても効果の実感は薄そうだ。そこで試すのが土の魔法。魔鋼精製の術式を組み上げる。最も複雑で高位の鉱物を生成する。何が出来るか、その出来栄えでもって魔法というものを探ってみようと思う。


 術式を発動すると胸のところで渦巻いていた魔力が急速に収束し、ゴトリと重い音とともに地面に落下した。足元には人の頭ほどの大きさの金属の塊が落ちている。

「これは、見た事も無い金属ですな。形は歪ですが純度は高い。形は慣れれば好きな様に形成できますが純度がこれほどとは、恐れ入りました。」

ダイクが感心したように言う。純度が高いのは評価が高い様だ。この金属塊が何なのかレムリアの知識を参照する。


〈アルタイト〉

『空間と時の干渉を受けない魔導鉱。見かけ以上に物が入る魔道具の材料となる。魔導鋼として最上位の物の一つ。』


 流石土魔法Lv10.とんでもないものが出来た。

「してこの鉱物は何なのでしょうな?高位の魔導鋼物なのは間違い無いのですが。」

ダイクにはこれが何かわからない様だ。相当珍しい物だろうし当然はあるが、あまり凄いものと知られるのも怖い所である。とりあえず今ので感覚はつかめたので次の土魔法、鉱物操作を発動。アルタイトを人間が両手で抱えると丁度良い位のサイズのネジ口の瓶に成型する。すこし括れた淵に森林魔法で生み出した蔓を巻き付け、肩に掛けて運べるようにする。何となくだが、この瓶の中は見かけ以上に物が入り、中身は外の時間の流れから隔絶されるのだろう。魔法のお試しでとんでもない物を作った気がするがそこは深く考えないでおく。

「どうやら魔法が使えるというのは誇張では無かったようですな。あれだけの説明でここまでの術式を行使されるとは。」

一般に魔法を使えるといのは、それなりの水準の術式を行使出来ることをさし。低水準のものは誰でも訓練次第で使えるので、使えるとは見なされないようだ。一定の操作量と感知量とは別に属性の適性があり、その適正により行使できる術式が左右される。それ以外にもいろいろあるようだが複雑で一晩で覚える事は出来そうも無かった。レムリアの知識もそういう解説には応えてくれない様だ。折角凄い事が出来そうなゴーレムの体を手に入れたのに説明書が無いので使いこなすことはまだ出来なさそうである。


 ダイクが交代しニグクと番をする。いつの間にか背負っている瓶に反応する事も無く。黙って神経を研ぎ澄ましている。自分も声を出せない身体なので、薪の弾ける音と夜の森の音だけの時間が過ぎていく。そしてゆっくりと空が白んで来る。

「朝なの」

それに合わせてルルが目覚める。目覚めて母親が居ない事を確認し洞の中で悲しんでいる。精霊石から母の気配は感じられるが、彼女の声に今までの様に返事をする声が無く、母が居ない事に合わせて一人になった孤独も同時に感じて余計に悲愴な気持ちになっているのが幼い彼女にはまだ理解できていないのだ。

おはようと呼びかけると、少し気持ちが和らいだようだ。何も言わず出てきて頭の上で漂っている。そんなルルの姿をチラチラとニグクの視線が追う。人間にとって精霊は珍しい存在というし分かり易い反応だ。無口だが案外感情的な男なのかもしれない。


 朝日が森の木々の隙間から漏れ出した頃に休んでいた面々を起こし朝食にする。その時にまた試してみる事があった。夜の間に魔法の使い方を覚えた時にわかったのだが、核の精霊石の魔力とは別に自身を構成するハルトの木の部分にも魔力が蓄積されており、それを使い身体の形状を変えたり出来る事がある様なのだ。試しに指先に新芽を生やしてみる。更に新芽に魔力を注ぐと芽は成長し花を咲かせる。生前の桜に似た、桜を一回り多くしたような花が咲いた。なかなかに綺麗な花である。そのまま成長を促進すると花は散り果実がなった。果実の形状は桜と違いハート型に大きさも食用のサクランボより大きい。手のひらサイズの実がなった。色は斑の無いピンク色だ。光沢ある皮に包まれている。生殖をしていないので中に種は無い様だ。他の木と受粉すると種が出来るらしいが、自身が最後の1本らしいので永遠に種無しである。毒も無いので朝食のデザートにタイカン達に味を確かめてもらうと、甘くて美味だと好評だった。食感は少しアメリカンチェリーの様な固めのサクランボのようだ。自分で味が確かめられないのが少し、いや結構残念だ。商人の男は売り物に出来ないかと独り言をつぶやいている。


 お代わりを欲する視線をゴーレムの完全なポーカーフェイスで受け流し街に向かい歩き出す。それに馬車がゆっくりと並んで進む。やがて道の先に街を包む防壁が見えて来た。


読者様に感謝


いろいろと、このスペースの使い方も考えないと

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