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ストウン  作者: たくりょう
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真の姿へ

必死で国王から逃げるタミは気が付くと建物の外へと出ていた。国王はいよいよ自分のディネを手に入れようと動き始めた・・・それも一番手っ取り早い方法で。タミはヤクータやジョビが城内の何処かに潜んでいる事を心から願わずにはいられなかった。そして何処か身を隠す場所を探して後ろを振り返った時だ、足元の土が噴き出すように盛り上がったかと思うとタミの頭から降り注ぎ、タミの姿はみるみる見えなくなっていった。もがくようにして土から顔を出したところに剣が振り下ろされる。

「・・・お前を剣で殺すのはなかなか難しいらしい・・・もうよい、土に埋もれて死ぬがよい」

 石化したタミの体を土が飲み込んでいく。再び必死に土を掻くが、地中に沈みながら上からも土が降ってくる状態にタミは追いつけないでいる。口には容赦なく土が入ってきて、もう息が続かないと諦めかけた時だった。タミの周りの土が勢い良く風と共に舞い上がっていった。

「父さん!」父の存在を確信したタミは叫んでいた。国王が見つめる先に父の姿を見つけ涙が出そうになる。

「きさまら・・・」

 黙って国王を睨みつけるヤクータに隣にいたジョビが話しかける。

「土の力を使っておったぞ、おそらく奴の体は・・・」

「おそらく間違いないでしょう・・・だが絶対的な確証を得るまでは体を傷つけるわけにはいかない」

 国王の出した氷柱が二人を襲う。二人は剣を抜き、氷柱を破壊した。


 子犬を抱えたユーウはどうしたものか考えていた。シューミにはヤクータの元へ行くようにと言われたが、いくら城内と限定されてもヤクータが何処に居るのか見当もつかない。シューミの様子からしてこの犬は何か特別な存在なのだろう。一刻も早くヤクータに届けたいが、自分も追われている身であり、目立った動きをする訳にはいかない。考えを巡らせているうちにシューミが味方になっている事が鍵となっているのではないかとの考えが浮かんできた。自分の直感を信じたユーウがシューミの私室へ向かおうと再び上空に舞い上がると、前方に竜巻が色々なものを巻き上げている様子が目に入ってきた。ヤクータの力と確信したユーウは全力で竜巻が見えた付近へと向かうが、ヤクータの姿よりも先に思いもよらない人物の姿を見つけて慌てて地上へと降り立った。

「おい!ナイカじゃないのか?」

「おおユーウか!」

「やはり無事だったんだな」

「ああ、だが詳しい話は後だ。どうやらあの先でヤクータ達が戦っているようだ・・・ちょっと待て!お前の抱えているのは?」

「こいつかい?こいつはさっき塔の窓から落ちてきたところを思わず助けたんだが、その後にシューミに言われてヤクータに渡そうとしているところなんだ」

「シューミは他に何か言ってなかったか?」

「いや、特には何も言ってなかったぜ・・・と言うか、ゆっくり話が出来る状況でもなかったみたいだけどな」

「そうか・・・おそらくは戻し屋の力が及ばなかったという事か。となれば仕方あるまい。よく聞くんだユーウ、その犬はリヨース国王である可能性がある、ヤクータが持っている石の力で元の姿に戻せるかもしれないんだ」

「・・・なるほどね、あの先にヤクータは居るんだな?よし掴まれナイカ」

 差し出さした腕にナイカが捕まるとユーウはヤクータを目指して飛び立った。


 北の塔の出口からはガイアとユニコが飛び出してきた。

「あのやろう!無茶苦茶やりやがる!あんな狭い場所で石の力を使いまくりやがって、洒落にならんぜ」

「どうするよ?」

「戻って戦う意味もねえだろう、肝心の犬はユーウの奴が連れてっちまったんだ。元の姿に戻される前に取りも・・・」

「うん?どうかしたのか」

「まったく!次から次へと石の騎士って奴は」

ガイアがぼやきながら見つめる先には難しい顔をして自分達に向かって歩いてくるエンザスの姿があった。

「隣の男は何者だ?初めて見る顔だが」

「あんたには関係ねーよ!」

 ガイアはいきなりエンザスに向かって炎を投げつける。エンザスの正面に雷の壁が作られ炎を遮った。

「そういえば、お前とは決着が着いていないままだったな。丁度いい、はっきりさせようではないか」

「決着だと?そんな事はどうでもいい、ユニコ!手早く片付けるぞ」

 剣を抜き、ガイアに向かい走り出したエンザスの足が急に重くなる。

「何!?」

 ガイアの隣の男が赤い光を放っているのに気がついたエンザスは男に向かい剣を投げつけた。だが剣はユニコに届く直前でガイアの振り下ろした剣によって叩き落される。徐々に体が重くなるのを感じながらもエンザスは雷を投げつけたが雷は二人の脇をかすめ壁の一部を破壊した。今度はガイアが炎を投げつけてきた。エンザスの全身が青く光り、ほんの2,3コンプだったが瞬時にエンザスの体が右方向へと移動して炎はエンザスの後方へと消えていく。

「なかなか便利な力を持っていやがる。望みどおり決着を着けてやれなくて残念だが、これくらいにしといてやるよ。もう行くぞユニコ」

 塔から現れたシューミの姿を見てガイアは慌ててその場を離れると建物の中へと消えていった。

「大丈夫かエンザス?」

「ああ、ガイアの傍にいた男が力を使い出した途端に体が言う事を聞かなくなっちまったが、今は問題ない」

「ところでユーウを見なかったか?」

「ユーウだと?ユーウが城内に居るのか?」

「そういうことだ」

「ふむ・・・関係あるかどうか分からんが、さっきから城の東側で赤い光が見えているんだが」

 エンザスがそう言う傍から夜空に赤い光が何度も光っては消えた。

「確かに誰かが戦っているようだ。急ぐぞロマ」

 そう言って光が見えた方へと走るシューミの後にエンザスも続いた。

 

ヤクータとジョビの二人は偽国王を傷付けずに取り押さえようとしていたが、それを実行する事は二人の力をもってしても簡単な事ではなかった。その様子を祈るように見つめているタミの横にユーウとナイカの二人が着いたところだった。

「あ、ユーウさん!」

「おうタミ!無事だったか?母さんと二人、置いて逃げちまってすまなかったな、何て言うか、流れを変えなきゃならないと考えてな」

「大丈夫、分かってますよ」

「うん、そうか・・・ありがとな」

「ところでその子犬は何なんですか?」

「ああ、やっぱりそう思うよな。どうも今回の事件の鍵を握っているのがこの犬らしいんだ」

 そう話す二人を素通りしてナイカは真っ直ぐにヤクータ達の元へと急いだ。

「ヤクータ!一旦、合成石を俺に渡してくれ!」

 ヤクータはナイカの顔を見て頷くと手にしていた合成石をナイカへと投げつける。石を受け取り踵を返すナイカの姿に驚いた偽国王は氷柱を連射すると城壁に向かって走り出す。飛んできた氷柱を全て破壊したヤクータとジョビの二人も急いで後を追う。

子犬を抱えるユーウの所に戻ったナイカは子犬を地面に降ろさせると掌に乗せた合成石を子犬の口元に差し出しながら問いかける。

「もし、あなたがリヨース国王ならば私を信じて、この石を呑んではくれませんか?」

 子犬はナイカの顔を見上げてクウンと一声鳴くと、掌から石を口にした。三人が見守る中、子犬が咳とともに小石を吐き出し、直後に体が赤黒く光り出すと一際輝いて、やがて収まっていった。

「え?どういうこと?」

「おいナイカ!どういう事だ?俺には国王の姿には見えないぞ!」

「まあ待ってくれ、段階を踏まねばならんのだ・・・よし、来たぞ」

 ナイカが手を上げた方向を見るとこちらに向かって走りよるシューミ達が見えた。

「ウサギの姿にはなったぞ」

 子犬の吐き出した石を拾いながらナイカがシューミに話しかけると、シューミは分かっていると言うように手を上げ、後ろにいたロマに問いかける。

「力は戻ってきているか?」

「へい、完全じゃないですが何とかなるかと思いやす」

 ロマは再びウサギを包み込む手を青く光らせ始める中、一足遅れて着いたエンザスはナイカに気が付き興奮した様子で話しかける。

「おいナイカじゃないか!本物なのか?」

「ああ俺だよエンザス、話は色々あるんだが後でゆっくり説明させてくれ」

「ああ、確かに今はそれどころでないようだ」

 ウサギを取り囲んだ六人の周りには既にかなりの数の衛兵が集まってきていたが、その誰もが混乱していた。現役の石の騎士二人に加え、かつての石の騎士二人もいる。しかも一人は先日、葬儀を済ませたばかりの人物だ。そんな衛兵の様子に気が付いたシューミが衛兵に向かって声を上げた。

「今夜、全てを片付ける。私達を信用するのだ!」

 シューミのその言葉で衛兵達が落ち着きを取り戻していった時、ウサギに変化が現れ始めた。体の中心あたりから赤黒い光が現れると徐々に光は強くなっていき、最後に弾けるように強く光ると消えてしまった。

 ガイアはその様子を城の廊下の窓から見ていた。

「どうやら引き際らしいな」

「クリミマ様はどうするんだ?」

「・・・石の騎士があれだけ集まっちゃ俺達にはどうすることもできんだろう、うちから送り込んだ連中に撤収の合図を送るんだ」

 顔色ひとつ変えずにそう話すガイアの顔を見つめながらユニコはどちらについた方が自分に利益があるかを必死で考えた。


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