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ストウン  作者: たくりょう
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新たなる石の騎士

城の中庭には城に仕える大多数の人間が集められていた。石の騎士の候補者が城に着いたという噂はあっという間に城内に知れ渡っていたので、ほとんどの者がそこに集められた理由を理解していた。

「皆のもの、紹介しよう。ワセカ王国より友好の使者として我がリヨース王国に来てくれた男ガイアだ」

 人々はどう反応してよいものか分からず、静まり返っていた。

「んっんっ、えー、リヨース王国の皆さんごきげんよう、ワセカ王国より参りましたガイアと申します。両国の友好を更に強固なものにしていきたいとの両国王の考えにより馳せ参じました。両国王の気持ちに応えるべく共に頑張ろうではないですか」

 ガイアがそう話し終えるとリヨース国王自らが拍手を始めたので、他の者もしない訳にもいかず中庭は拍手に包まれた。

「それでは早速ではあるのだが、ガイアの武の実力を見せてもらう事とする。エンザス!前に出てくるのだ」

 国王の言葉の後にあからさまに不機嫌な顔をしたエンザスが前に出てくると、二人を取り囲むようにして人々が広がった。

「悪いが手加減はせんぞ」

「まあそう言わず、お手柔らかに頼みますよ」

「おぬし、ふざけているのか?」

「いやいや、とんでもない。石の騎士を前に緊張しているもんでね、少しでもリラックスしようとしているだけですよ」

「・・・準備がよければ始めるぞ」

 二人が剣を抜いた次の瞬間、火花が散る。剣を交じあわせながら睨みあいが暫らく続いた。人々が固唾を呑んで見守る中、先に動いたのはガイアの方だった、剣を握るガイアの手が赤く光ったかと思うと炎が吹き上がった。エンザスは慌てて後ろに飛び避けたが髪の毛が燃えた臭いがエンザスの鼻をつく。今度はエンザスの手が赤く光り、剣の先から稲妻が走った。稲妻はガイアめがけて飛んでいったが、ガイアが剣を地面に突き刺し、その場を素早く離れると、稲妻は突き刺さった剣に命中して煙が上がる。黒く焦げた剣を抜き取ろうとするガイアに向かってエンザスが切りかかり、ガイアはギリギリのところで剣をかわすが、エンザスは攻撃の手を緩めず一気に畳み掛ける。何とか持ちこたえるガイアだったが堪らず再び炎を吹き上げた。二人の間に間合いができ、膠着状態となった。そしてタイミングを見計らったように国王が声をあげた。

「そこまで!うむ、ガイアの実力が石の騎士に匹敵するものである事が皆にも分かってもらえたであろう。ガイアよ、我が国の平和の為にこれからも頼むぞ」

「はっ、リヨース王国の平和の為、精一杯頑張らせていただきます」

 その場にいた人間の多くはガイアがエンザスにやられてしまう事を期待していたのだが、結果はそうはならなかったばかりか、国王はまるでガイアが石の騎士に決定したかのような言葉を発したのだ。確かにガイアはエンザスと互角に渡り合ったとも言え、その点では納得した人間も多かったが、その事を心から喜ばしく感じている人間は一部の特定の連中を覗いて皆無といえた。

「国王様ちょっとお待ちください」

 そこでエンザスが堪らず声をあげる。

「確かにその者の武の実力は確かなもののようです。だがしかし石の騎士に相応しい人間かどうかはそれだけで図れるものではありません、私にはその者が心よりリヨース王国を想い、力を尽くすとは考えられないのです!少なくとも、もう少し時間をかけて判断するべきではないでしょうか?」

 誰もが尤もな意見だと思っていたが、それを大きな声で口に出来る者はやはり誰もいなかった。

「・・・ガイアが石の騎士に相応しいかどうかは私がしっかりと見届ける。もし、お前が心配するような結果だった場合は即座にガイアには国へ帰ってもらうとする」

「しかしそれでは手遅れになる場合もあります!」

「エンザスよ、お前までそう私に逆らうでない。これ以上に石の騎士が減ってしまうような事態は避けねばならん」

 話はそこで終わりとなった。五人いたリヨース王国の石の騎士は二人にまで減ってしまったものの再び三人となる日が近づいた。


 その日の深夜の話である。国王の寝室には国王とガイアの二人がいた。

「なんとか予定通りにいったな」

「しかし少しばかり強引だったかもしれませんな」

「ふん、ここまできた以上、多少強引にいったところでたいした問題ではないだろう。そんな事より、石の騎士となった暁にはたっぷりと働いてもらうから覚悟しておけ。差し当たりはヤクータのガキをなんとかしてもらうぞ」

「ヤクータのガキ・・・というとあのディネ人の子供の事ですか?まだ捕まらずに逃げているのか?さすがはディネ人といったところですな。しかしいくらディネ人とはいえ、そこまでこだわる必要は無いかとも思えますが?」

「そうもいかんのだ・・・こだわらなくてはいけない理由ができてしまったのでな」


 オオヤの村では不安を振り切るようにタミが修行に励んでいた。その成果は丸太の瞑想、マソウ釣り、剣術などすべてにおいて如実に現れていた。口に出すことはなかったが、その成長ぶりはジョビの予想を上回るものだった。

「タミよ、おぬしもずいぶんとこれまでの課題をこなせるようになってきたでな、そろそろ次の段階にはいるとしよう」

「次の段階ですか?・・・わかりました、よろしくお願いします」

 タミは平静を装ってそう答えたが口元はすっかり緩んでいる。

「知ってのとおり、石を呑み込む事によって石の力を得る事はできる、だがその力を自在に操る為にはそれなりの訓練は必要じゃ。それをこれからやっていこうと思っておる。集中力、静かなる心が大事じゃでこれまでの修行の成果が表れるじゃろう。石の力の種類によってその修行方法は考えねばならんが、おぬしの体を石化させるという力を考えると、まずはワシの言った体の部位をすばやく石化させるといった事から始めるかのう。どうじゃ?質問が無ければさっそく始めるがの」

「・・・はい、たぶん大丈夫です」

「ではいくぞ・・・左腕!」

 タミの体が赤く光り、左腕が変色する。石化したのを確認すると、右足、頭、腹、右腕とジョビは次々と指示を出す。左手、右太もも、左すね、といったより細かい指示が出されると、石化するのにさっきまでより、いくぶん時間がかかるようだった。

「左手小指!」

 タミの体が赤く光ると小指だけでなく左手の半分くらいが石化していた。

「なるほどの、やはり部位を細かく指定すると時間を要するようじゃの。まず全身が光ってから石化しておるからのお。必要最小限の力だけで済ませられれば、それだけ長く石の力を使う事が出来るし、反応時間も短くなり、戦いを優位に進めやすくなるでな・・・ともかく続けるとしよう」

 それからというもの、剣術の修行の時間は全て石化の修行に費やすようになった。そして三日もするとタミの体は全身が光るのではなく、指示された部位のみが光るようになってきていて、石化する時間もずいぶんと短くなっていた。

「だいぶ時間も短縮できてきた事じゃし、少しばかり修行方法を変えてみようかの。これからワシがこの杖でおぬしの体の一部を狙って殴りかかる、おぬしはそれを避けるのではなく石の力で防御するのじゃ。けっして体を動かしてはならんぞ、よいな?」

 タミは「わかりました」と頷いた。ジョビは杖を振りかぶり、タミの右腕めがけて振り下ろした。タミの右腕が赤く光ったが、それと同時にタミは反射的に体をよじってしまっう。杖は微妙な音を立ててタミの右腕に当たり、タミはほんの少しではあったがよろけた。

「・・・自分でも分かっておるじゃろうが、まず絶対に体は動かすでない。あくまでも石の力で防ぐのじゃ。それに少しばかり石化のタイミングが遅かったようじゃな」

 見るとタミの右腕がほんのりと赤くなっていた。そうして一日の修行を終えるとタミの体のあちこちに痣ができてしまっていたが、その後、修行が進むにつれ痣も少なくなっていったのだった。


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