リリアム、頭をなでる
「リリアム、お待たせしました。一緒に遊びましょう。」
母様の王女教育でぐったりと疲れ、ソファーでくつろぐわたしの背後から声をかけるセシル。
「遊ぶなんて言ってないわ。…もう、いいわ、こちらにいらっしゃい。」
わたしは振り向き、遊ぶことを否定する。しかし、セシルの捨てられた猫の様な顔に耐えきれず、ソファーの自分の隣を勧める。
嬉しそうな顔で隣に座るセシル。するとわたしの膝に頭をあずける。
「遊ぶのではなかったの?」
膝にあるセシルの頭をぺちっと叩く。
「僕も双子と遊んだ後に、勉強と剣の訓練があり疲れました。一緒に休みましょう。」
わたしもだが、セシルも王子として忙しい毎日だ。わたしは母国だが、セシルは10歳で自国を出で頑張っている。
セシルの父親であるシューエン王は身体が弱く、実権は王弟が握っている。
セシルがただの子供であるなら、王弟にとって都合のよいお人形なのだが、如何せんセシルだ。子供らしからぬ頭脳と度胸を持っていた。アムールノ国に単身で来たのだ。
父様に気に入られ、こうして館へも度々来てはわたしにちょっかいを出してくる。10歳だと思うと可愛いところもあるのだが。わたしは膝の上の頭をなでる。金髪がサラサラで気持ちいい。
「なでてくれるのは嬉しいですが、子供扱いしてませんか?」
目敏いセシル。確かに10歳のお子さまと思ってますが…。あれ?そういえば声がおかしい。
「セシル、声がおかしいけど噴水で遊んで風邪引いてない?」
わたしが心配するとセシルは起き上がり、わたしのおでこと自分のおでこをくっつける。
ひゃっ!?天使の顔がわたしの目の前に。
「熱、ないでしょ?これは声変わりの途中ですよ。リリアムの方が熱ないですか?顔が赤くなってますよ。」
クスクス笑いながらおでこを離し、わたしの頬を指先で触れる。
セシルは自分の顔のことをよく分かっている。
天使の顔が目の前にあり、思わず赤面してしまった。
「僕も成長してますよ。僕の成長を近くで見守って下さいね。他の男を見たら……。」
セシルくん、天使の顔が悪魔の顔になってきてますよ?