リリアム、絵本の中
やっと、名前だけ出せました!どんなヒーローかは更新をお楽しみに。
16歳で婚約者がいないわたしは母様の悩みの種らしい。父様はずっと一緒にいるから嫁には出さんって言ってるみたい。昔は花の館から出ることが少なかったけど、護身術を習い始めてからは、父様は少し安心したのか、今はお城内なら自由に散策出来る。でも、城の外に出ることはない。
「姉様、ご本読んで下さい。」
妹のミルアムがわたしの手を引っ張りお願いしてくる。
「いつもの紫の乙女の話?いいわよ。ミル、エル、父様たちの隣で読みましょう。」
父様と母様たちがラブラブなのは、いつものことなので気にせずに双子に絵本を読み聞かせる。
両脇から父様に似た双子の同じ顔が覗いている。何度も読み聞かせた絵本を読む。
豊穣の女神の神話『紫の乙女』
昔、3人兄弟がいた。
長男は叡智の神に愛され、賢い王となった。
次男は獅子の王に愛され、不動の王となった。
三男は二人の王を支える役目を担った。
賢い王は国の山を開拓しようとする。
不動の王は国の海を埋め立てようとする。
自然を愛した三男は二人を止めようとするが、二人の王は三男を非難する。
自然の理を無視する二人の王に豊穣の女神は悲しみ涙を流す。すると地上で雨が降り続ける。行く日も行く日も降り続ける。
二人の王は豊穣の女神に祈りを捧げるが、豊穣の女神は紫の瞳から涙が止まらない。困った二人王は自然を愛する三男へ相談する。
豊穣の女神の悲しみにひどく心を打たれた三男は豊穣の女神へ自らを捧げようとする。
自然を愛する三男の行動に喜んだ豊穣の女神は地上へ降り立ち、雨は快晴へ変わる。
二人の王は心を入れ替え、三男のために自然豊かな場所を与えた。
三男は豊穣の女神に愛され、大地の王となった。
三人はお互いに協調し、やがて3つの国となる。
豊穣の女神は紫の乙女となり、地上に残り愛する大地の王といつまでも幸せに暮らしました。
「本当にこの絵本が好きね。」
暗記できるほど、何度も読み聞かせた絵本。
「だって、女神さまは姉様にそっくり。」
挿し絵を指差すエル。挿し絵の女神は緩やかに波打つ黒髪に紫の瞳。ずっと前からある絵本なので、もちろんわたしがモデルではない。
「賢い王は父様みたい。」
ミルが長男の挿し絵を指差す。確かにアムールノ国の初代王の話なので間違いではないだろう。
「不動の王はセシルみたい。」
エルが次男へ挿し絵に指差す前にわたしは絵本を閉じた。
「セシルには似てません。セシルは獅子というよりにゃんこです。全くもって似てません。」
シューエン国の初代王の不動の王、彼の子孫であるセシル。わたしの天敵となる相手です。セシルに獅子なんて勿体ない。
にゃんこで十分なはず?