リリアム、とじこめられる
「無事で良かった。」
宮殿に戻ったわたしと人間の姿に戻ったセシルは、二人とも父様に抱き締められた。
「無理してすみません。」
「いや、いいのだ。お前は次の王になるのだ。王になるのなら、多少の無理は付き物だ。」
謝るセシルに父様は子供の成長を見守るように言った。
「僕は父上の無事を確かめたいのですが。」
「余は無事だ。」
声がする方を見ると、セシルそっくりな美男子がいた。しかし、顔色は明らかに悪い。
「父上…。」
セシルは父親の元へ走り抱きつく。セシルを受け止め、微笑むシューエン国王。
「セシル。大きくなった。本来ならお前に父親として色々教えたかったが、妻や親しい者たちをアゼルに殺されて、セシルをアムールノ国王に頼むしかなかった。余には皆を守る力がなかった。
しかし、セシルは立派に成長してアゼルを失脚させた。息子の成長が見れて嬉しいばかりだ。」
涙ぐみセシルを誇らし気に見つめる。
「父上、これからは僕が父上を支えます。まだまだですが、民に認められる王になります。」
力強いセシル言葉。
シューエン国の次期王として、また獅子の王に愛された子としてセシルは覚悟を決めたようだ。
その後、後処理などに追われ気付けば1週間経っていた。1週間の間、父様はセシルの後ろ楯となりセシルに協力していたが、一国の王が長期で留守にできるはずもなく、明日帰国する予定となっていた。
わたしは案内された父様とは別の部屋にいた。女性らしい壁紙や質のよい可愛らしい家具。ソファーで疲れを癒そうとゆったりと座り紅茶を飲んでいると、ノックの音が聞こえセシルの声がした 。忙しいセシルとはここ1週間顔を合わせていなかった。
わたしはセシルを迎え入れ、ソファーに二人で座る。
「リリアム、今日は本当にありがとう。それと、叔父上が危険にさらしてしまってごめんね。」
セシルが謝るのをわたしは手を振り否定する。
「わたしが勝手にしたことだから、謝らないで。」
「それなら、この話は終わりにしよう。明日にはアムールノ国に帰ってしまうのだろ?膝枕して欲しいな。」
セシルは上目遣いで可愛らしくお願いしてくる。
「いやよ!あんな大きな体を膝枕なんて出きないわ!」
「人間の姿ならいいだろ?」
セシルはわたしの膝の上に頭を預ける。
覗きこむわたしと瞳が重なる。
セシルの手が伸びわたしの髪を耳にかける。
「本当はアムールノ国に帰したくない。ずっとそばにいて欲しいリリアム。」
耳元のセシルの手に自分の手を重ねる。
「わたしもずっと一緒にいたいわ。」
セシルに思いを告げる。わたしの答えに満足そうに微笑むセシル。
「もう僕のものだからね。女神は愛しい人と添い遂げるために地上に降りたのだから。リリアムも僕のためにここにいてね。」
重ねたわたしの手をセシルは引き寄せ口づけ甘噛みして歯形をつける。わたしは付けられた歯形を舌でなめる。
わたしはセシルのそばから離れることができなさそうだ。でも愛するセシルの成長を一緒に過ごせるのは甘美な喜びである。
セシル、あなたにとじこめられてあげる。だからいつまでも幸せにしてね。