リリアム、秘密を知る
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セシルがいなくなり、わたしはぽっかりと心に穴が空いている。花の館の自室のベッドに臥せり、自然と涙が流れてくる。
心配した母様はわたしのベッドへ腰掛けわたしの涙を拭う。
「リリアム、紫の乙女の話は知っているわね。」
唐突に絵本の話をしてくる母様。頷くわたしに話を続ける。
「紫の瞳の娘を花嫁に出すのには理由があるの。花嫁の存命中は災害が少ないと言われているわ。でも、リリアムあなたは違うの。あなたは外へ出たことがないと思っているけど、本当はわたくしの故郷へ連れて行こうとしたことがあるの。
でも、出来なかったわ。赤子のリリアムが泣くと予想にないほどの雨が降ったの。」
母様はわたしの頭を抱き寄せる。
「あなたは女神の血が強く出ているの。あなたを外へ出すと災害になる可能性があるの。」
「では、わたしは一生このままなのですか?」
「いいえ、城では何故大丈夫なのか調べたの。
そしてこの花の館にたどり着いたわ。ここには3人の王の骨があったわ。女神が愛した初代フルール国王の骨もね。愛する者の側にいると力が制御出来るみたいだわ。」
母様はわたしの手のひらに白い欠片を渡す。
「泣いてても始まらないわ。母様はひ弱な子に育てた覚えはありませんよ。」
妖艶な笑みを浮かべ、わたしを励ます母様。
「そうね。母様にはとても王女教育とは程遠い教育を受けましたからね。」
わたしは手のひらにを握りしめ、涙をふく。
「ロゼアムがシューエン国の戴冠式に出席するそうよ。リリアムは侍女として潜入するといいわ。」
「戴冠式はいつですか?」
「2日後よ。あまりにも急だわ。いくら大国だといえ無理矢理すぎるわ。どのくらいの国が出席するのかしら?」
眉をひそめる母様。急な戴冠式に苛立ちがみえる。
急な戴冠式に向かう準備が整い、父様と一緒に馬車にのる。侍女の服を身に付け、服の下に首からは骨の入った小瓶を隠してある。
心配するわたしを安心させるように、父様はわたしの肩をずっと抱いている。父様の肩に頭を預け、窓から見る初めての外の世界を見つめていた。いつしかの景色が変わり、広く青い海、切り立った山々。セシルに聞いたシューエン国の景色だ。セシルの国に着いたのだ。
高鳴る胸を深呼吸し落ち着かせる。しばらくすると宮殿が見えてきた。
「リリアム、無理だけはするなよ。」
父様はわたしに念を押す。頷くわたしに父様は微笑むと、一瞬で冷たい瞳の美しき王の顔になる。
馬車がシューエン国の宮殿に着くと、王紋を見た門番が慌ただしく誰かを呼びに行った。すぐに上位貴族らしい壮年の男性が出てくる。
馬車から降り立った父様に不躾な視線を送る。
「私はシューエン国の宰相でございます。アムールノ国王がこんなに早くお出ましになるとは思いませんで、急なことでろくな準備も出来てませんが戴冠式までゆっくり過ごして下さい。」
壮年の男性は宰相らしい。
「2日後が戴冠式だと聞いたので、急なことで出席する国が少ないと見栄えしないだろう。我が国が出席することで箔がつくといいが。」
父様は不躾な視線を無視し、冷たい視線を宰相に送り、大国である威厳を見せつける。たかが宰相が父様に勝てるハズがなく、いそいそと部屋へ案内する。わたしも父様の後ろから続く。
案内された部屋へ入ると父様が服をトランクから取り出した。
「リリアム、これに着替えるように。」
侍女の服のようですが、アムールノ国の紺のワンピースに白いエプロンと違い、白いリボンつきブラウスに黒のエプロンスカート。
「これはシューエン国の侍女の服だ。ビオラが作ってくれた。」
母様、やはり無駄にハイスペックですね。
わたしは服を着替え、セシルを探す。多分、セシルも宮殿のどこかへ潜んでいるはずだ。
わたしはゆっくり息を吐き、部屋から静かに消えた。