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リリアム、椅子を贈る

今日はセシルの11歳の誕生日。家族皆でセシルを祝うことになっている。


母様は料理を、エルとミルは飾りつけ。

父様はセシルに気づかれないように稽古をつけると言ってウキウキと出て行った。


わたしはセシルのために丹精込めて作った椅子の最後の仕上げをしていた。




夢中で仕上げを行っていると、やっと出来上がった頃には夕方になっていたみたいだ。

後ろから熱い視線を感じる。


振り向くと思った通りセシルがいる。


夕日に彼の金髪が映える。金色の長い睫毛が縁取る榛色の瞳は物言い気にわたしを見つめている。


「セシル?」

わたしはセシルに声を掛ける。


「リリアム、これ僕へのプレゼントですか?」

セシルはわたしの側に来て手を握る。


「ええ、そうよ。11歳おめでとう。」


わたしはつないだ手を引き、セシルを椅子に座るように勧める。

セシルはゆっくり椅子に座ると、木製のひじ掛けの彫刻に気づいたようだ。


「この彫刻、獅子と百合ですね。」


そう、本当は獅子だけだったのだが、百合を仕上げに入れた。


「僕とリリアムだ。」

セシルは座ったまま、わたしの腰に抱きついてくる。小さく震えている。泣いているのを知られたくないのか腕の力が強まる。


「セシル、ゆっきりでいいから、はやく大きくなって。」

わたしは矛盾する言葉を言って、セシルを抱き返す。


本当は気づいていた。セシルに引かれている自分に。婚約者候補たちに会っては、いつしかセシルと比べていた。婚約者たちを負かしては両親へ言い訳をしていた。


セシルはわたしを対等に扱ってくれる。


わたしのセシル。

はやく大きくなって。

はやくわたしを捕まえて。


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