No.049 三日目 13時 ~ 14時
No.049 三日目 13時 ~ 14時
最終確認を長瀬陸士長が行ってくる。それを受けて、上島が突入の合図を西織三尉に送ると西織三尉は了解したとジェスチャーで返してきた。
「3で突入を開始する。タイミングを合わせてくれ」
上島はそれだけ言うと、間をおくことなく回線を開いたままカウントを始める。
「1、2、3」
3と言ったと同時に上島は隠れていた場所から飛び出した。
すぐに歩哨は気がついて、89式小銃を向けようとするが、上島のほうが早い。上島の手に握られていたのはサイレンサー装備のファイブセブン。走りながら、基本に忠実な三点射撃を行い全弾命中した。
倒れた歩哨の下に西織三尉が駆け寄り、建物内から死角になる場所に担いで運ぶ。上島は入口から死角になるように建物の壁に張り付いた。
「上はどうだ?」
上島が回線を開いて長瀬陸士長に状況の確認をする。狙撃を受けてない以上敵の排除は速やかに行われたと考えていいが、想定外のことが起こっていないかの確認でもある。
「スナイパーは排除しました。ただ、こちらからの死角になる位置に、無反動砲を所持した敵兵を新たに確認しましたのでこれも排除しました」
長瀬は当然のように答えたが、かなり危険な状態であった。
確かにスナイパーは非常に危険な存在だが、それはアウトレンジからの狙撃を受けた場合の話だ。至近距離ならアサルトライフルやサブマシンガンの方が遥かに優位にたつことができる。だが、無反動砲はじつにやっかいで、何かの遮蔽物に隠れたとしても、遮蔽物ごと破壊されかねない。その上、正確な狙いは必要ないので、上から適当に撃たれるだけで致命傷になりかねない。さらに一番の問題は、そんな物を使用されたら確実に侵入がばれてしまう。運が良かったとも言えるが、長瀬陸士長をスナイパーとして援護に張り付かせたことは正解だった。
「よくやった。こちらは、これから内部に潜入する。引き続き監視とサポートを頼む」
上島はこの後通信を切り、入口から建物内に入った。ただ入ったとたん上島は違和感に包まれる。まず人の気配がしない。歩哨を立てて、スナイパーに無反動砲まで用意していたというのに、まったく人気がないというのは不自然過ぎた。
何が起きているのか調べる必要があると判断した上島は、西織三尉に建物左側に行くようにジェスチャーで指示を出す。
西織三尉はMP7を構え敵の存在を確認しながら左側の通路を進んでいく。上島はファイブセブンをP90に持ち替えて、右の通路を進んでいく。
敵の姿を探しながら進んでいくが、気配はまったく感じられない。フロア自体は広くないので、一階の索敵はすぐに終わる。階段を使って二階へと上がると、すぐにどういう状況なのかが理解できた。制服を着た自衛官の死体がそこかしこに転がっていたからだ。だれも武器を手にしてはおらず、襲撃を受けて有無をいわさず射殺されたことが伺える。
ただ、この死体の中に敵の死体が混ざっているかどうかまでは識別できないが、状況を見るにそれはなさそうである。
さらに調べると、起動しているノートパソコンを見つけた。LANケーブルによって、内部のネットワークと直接接続されているようだ。それだけでなく、スマートフォンがUSBケーブルによって接続してあった。
「西織三尉! こっちに来てくれ!」
他の場所で索敵をやっていた西織三尉を上島が呼ぶ。
「何をやっているか分かるか?」
上島は作動中のPCを示して西織三尉に尋ねる。すぐに西織三尉がPCを確認する。少しの間色々と確認していたが、諦めたように首を振った。
「さっぱりです。兵器用の管理システムならある程度わかりますが、これは自分の手におえそうもありません」
実質的に根をあげる形になってしまったが、それも当然である。コンピュータ技術というのは、基本的に個人的なスキルの問題であり、陸上自衛隊の普通科連隊所属の下士官にそのような技術は必要ない。ようするに、わからなくて当然であった。
そこの所は上島も理解しているので、すぐに無線の回線を開いて外にいる二人向けて話しかける。
「三島と修くん、俺たちのいる建物はわかるな?」
後ろから距離を置いて上島と西織三尉をフォローしているはずなので、当然どの建物に侵入したかも見ていたであろう。それでも一応確認しておく。
「ちゃんと見てましたよ。それより、何かおかしくありませんか?」
答えたのは三島だった。上島が感じているのと同様の違和感を感じているらしい。ただ、その原因が何かまではたどり着いていない。そういうことらしい。
「どうやら、その疑問の答えを見つけたようだ。急いで、こっちに来てくれないか?」
上島は外で待機していた二人を急かすように呼ぶ。
「了解、すぐに修くんとそっちへ向かう」
ここで一旦二人との通信が切れる。
「長瀬陸士長。その位置から見て、駐屯地内でなにか動きがあったか?」
すぐに上島は長瀬陸士長へ向けて呼びかけ質問をする。




