表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
日本滅亡  作者: TAMAJI
39/137

No.039 三日目 09時 ~ 10時

 No.039 三日目 09時 ~ 10時


 彼女の体は、糸の切れた人形のようにその場にストンと落ちる。胸の辺りから大量の赤い液体が床の上へと広がった。


「我々は警告など一切しない。我らの指示に従わないものは、彼女と同じ運命が待っている。素直に従うことだ」


 この瞬間、記者たちは初めて自分自身が死と隣り合わせに存在していたことに気がついた。さっきまでヒステリックに平和を叫んでいた女記者が、今は物言わぬ肉塊として目の前に転がっている。武力をためらわずに行使する相手に、平和であろうが話し合いであろうが、何かを主張することは命と引き換えにやらなくてはならない行為であることを目の当たりにしたわけである。

 記者たちが戦慄して凍りついている状況の中で、三島はゆっくりと窓際に向かって歩きつつ耳栓を詰め込んでいた。


「全員、部屋の中央に集まれ! もたもたするんじゃない!」


 部隊長とおぼしき男が指示を出す。ただ、それに従う記者たちは、まったく初めて置かれた状況に戸惑い恐怖で体が固くなり、部隊長の言うとおりには動けなかった。

 もたついて動く集団を利用して、死角に入りさらに窓際によった。


「おい、そこの貴様。何をぐずぐずして……」


 部隊長が三島に気づき、苛ついた声で指示をだしてくるが、最後まで言い切ることはできなかった。

 突然窓ガラスが割れる、続いて外から何かが複数投げ込まれ、次々に強烈な音と光を発した。

 この瞬間、三島は窓から外に飛びだしている。


「スタングレネード! 敵襲!」


 視力と聴力を一時的に失った共社党軍の兵士たちは、敵襲を知らせるために大声を出すが、その場から動くことはできなかった。

 一方外に飛び出した三島は、窓の外に垂らされたロープを掴みラッペリングを行う。共社党軍の兵士たちがスタン状態から回復する前にはもう地上への降下を終えており、路上に停めてあった車に乗り込んだ。

 三島の後に続いて脱出を支援した上島が車に乗り込みドアが閉まると同時に車を発進させる。運転席にいたのは、乃木であった。


「箍誠という男はどうだった?」


 三島に向かって、運転席から乃木が聞いてくる。


「一言で言えばやっかい。極めて有能かつ底が見えない。共産原理主義的な言動はしているが、それとてもどこまで信じていいものかわからない……といったところでしょうか。少なくとも、これまでのような政治家としての仮面は脱ぎ捨てています」


 三島は記者会見を通して見た箍誠の総評を伝える。


「これほどのことを計画して、実行に移し今のところ成功してるんだ。大した男であることは間違いないだろうな」


 後部座席の三島の隣に座っていた上島が付け加えるように言った。


「あの、すみません。後に残された記者さん達はどうなるのでしょうか?」


 口を挟んできたのは、助手席に座っていた修だった。


「粛清対象となっていると言っていたので、粛清されるのでしょうね」


 それに答えたのはたった今会見場から脱出してきたばかりの三島だった。


「その、粛清の意味がよくわかんないんですが、具体的にはどんなことをするんですか?」


 修は具体的な説明を求める。それも無理はなく、他の三人と違ってこういった表現の中にある暗黙の含みなどこれまでずっと無関係に過ごしてきていた。それに、自分に何か関係がでてくる可能性すら想像したことがなかった。もちろんそれは特別というわけではなく、現代に生きる日本人にとって修のような考えこそがマジョリティであったのだ。

 自国ではなく、他国にとって少しでも不利となるような思想だと指摘を受けたら、徹底した取り締まりを行ってきた成果とも言えた。

 もちろん思想統制の思想であり、弾圧以外の何者でもないのだが、人権保護の美名の下により厳しく行われるようになった。

 これは、共社党政権においてなされた思想弾圧ではなく、前政権である民自党政権下によって実施された政策であった。その裏には日本に対して敵意を隠そうとはしない隣国の存在と、その意思を忠実に守ろうとする第三国寄りの民自党議員の存在があった。むろん共社党議員も関わってはいるものの、政権与党ではなかった共社党議員の貢献度はさほど大きいものではない。ただ、最もその恩恵に預かったのは政権与党となった共社党議員であることは間違いなかった。

 ただ、軍事革命が成功した今となっては、もうそれも過去の話に過ぎないのだが。


「粛清という言葉は状況と使用している人間にに応じて意味するところが違ってくる。ただ、共産主義者……それも原理主義的な共産主義者の使う粛清というのは、粛清対処者を殺害することだと思って貰えば間違いはないよ」


 教えてくれたのは三島だった。


「では、あの場にいたマスメディアの人たちは……」


 修が最後まで言えなかった言葉を三島が引き取る。


「全員殺される。あの場にいなかったマスメディア関係者も、おそらくは同じ運命が待ってるだろうがね。ただ、あの会見場にJHK関係者の姿がなかったことろこをみると、JHKだけは対象外というところだろうな。おそらくは、今回の共産主義革命に関与しているとみるべきだろう」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ