第八十八話 直哉の弱い心
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第八十六話 風と草原のソラティア共和国
第二位のアルカディア → 第二位のアルカティア
第八十七話 ソラティア共和国の闇
前半部分の ソリティア → ソラティア
に修正しました。
指定の場所へ向かう途中大きな戦闘も無く無事に辿り付いた。
そこは、パルジャティアの湖畔にある大きな建物であった。
「あれ? ソラティアの依頼じゃないの?」
そう言って、ガリウスに聞いた。
「へぇ、間違いなくソラティアからの依頼です」
「それなのに、パルジャティア直ぐ傍に集めるなんて、パルジャティアから何も言ってこないのかな?」
直哉達は疑問に思いながらも指定の場所へ近づいた。
その時、上空に居るエリザから警告が飛んできた。
「直哉殿。気をつけるのじゃ! レッドムーンらしき人物が居るのじゃ!」
「何だって?」
直哉達は戦闘体制を取った。
出てきたのは、通常の人で、腕に赤いスカーフを巻いていた。
「一般の兵士か?」
直哉達が来たことに気がついたレッドムーンの兵士たちが出てきた。
「新しい村人を連れてきたのではないのか?」
兵士は訝しげに直哉達を見ていた。
(ここには、非戦闘員しか居ないのか?)
そんな視線も気にせず、周囲を確認していると、
「村人を連れてきていないのなら、金は渡せないな、とっとと帰りな。俺たちは忙しいんだ!」
そう言って、建物の中へ帰っていこうとしていた。
「あれ? 本当にソラティアの人ですか?」
戦闘にならないと思い武器を仕舞った直哉の疑問に、
「何故、そんな事が気になるのだ? お前たち賊は金さえもらえればよいのであろう?」
そう言ってニヤニヤと薄笑いを浮かべていた。
「薄気味悪い」
フィリアは嫌悪感をあらわにした。
「ん? そこの女、良い女ではないか! 賊と居るのではなく、俺達の相手をしてくれよ!」
馴れ馴れしく触ろうとした兵士をフィリアは振り払った。
「この、アマ!」
激昂した兵士がフィリアに斬りかかろうと剣を抜いた。
「流石に、それ以上は俺が許しません。早く剣を仕舞いなさい」
直哉は丸腰のまま、兵士とフィリアの間に立った。
「あん? いっちょまえにナイト気取りかよ」
イラっとした顔で直哉に近づいてきた。
「お前は死んじゃえよっと」
兵士は持っていた剣を振り上げ、直哉の頭の上から振り下ろした。
「ほっと」
振り下ろされた剣の腕を掴みその動きを止めた。
「放せ! 放せよ!」
兵士はジタバタしていた。
そうして騒いでいると、
「何事だ!」
兵士たちが建物から大量に出てきた。
「さて、どうするかな」
直哉が呟いているうちに周りを取り囲まれた。
「みんな、助けてくれ!」
直哉に腕を掴まれていた兵士が助けを求めていた。
直哉は周囲の兵士たちがどう出るか確認していた。
兵士達は剣を抜き直哉に襲い掛かってきた。
「はぁ、話し合いの余地は無しかな?」
直哉はため息をつきながら、捕まえていた兵士を放し、ついでに鳩尾に肘を叩き込み気絶させた。
そして鍛練用の剣と盾を取り出して、迎撃を開始した。
兵士たちの腕は直哉が来る前のルグニアの兵士たちと同じレベルであったため、軽くあしらっていた。
「よっ、ほっ、とりゃ!」
直哉の所に来た兵士は、打ちのめされるだけであったが、リリやラリーナのところに来た兵士達は、大きなダメージを負って転がっていた。
「ぐぁー」
「痛い!」
「はん! どうしたどうした! その程度か? その程度で私たちに挑もうなんて1000年早い!」
その光景を見ていた上官は、
「このままでは、我々もキメラにされてしまう。そうなる前にキメラを出して、殲滅するんだ!」
「はっ!」
上官の命令により、複数のキメラが投入された。
「お兄ちゃん!」
「直哉!」
リリ達の声に、
「フィリア、浄化できる?」
「やってみます」
直哉はフィリアに声をかけ、リカード達にも声をかけた。
「リカード達はフィリアの援護をお願いします」
「任された!」
「リリ達はそのまま一般兵士を無力化させていって」
「了解!」
「エリザとマーリカはそのまま上空で監視をお願い」
「承知!」
直哉はそう言って、目の前の兵士達を昏倒させて、上官の元へ向かった。
後方では、フィリアが浄化のための魔力を練り始めた。
「天より来たりし光の精霊よ、我が魔力と共に邪悪な力を祓いたまえ!」
物凄い光の力にキメラ達は引き寄せられていった。
「ブレイクウィケンネス!」
大きな光のエネルギーにより、キメラ達は浄化されていった。
「安らかに眠りなさい」
フィリアはキメラを造るための犠牲になった人達に祈りを捧げていた。
投入したキメラが全て浄化され、上官は焦っていた。
「このままでは、エルムンド様に本当にキメラにされてしまう。こうなればアレを使うしか無いか」
部下達が直哉の足止めにならないとみて、建物の奥へ引っ込んだ。
(む、何をするの気だ?こいつらは、弱いのにまと割りつくから、進むのに時間がかかってしまう)
直哉も焦りながら、一人また一人と意識を刈り取って行った。
だいぶ建物に近付いた時、建物に異変が起こった。
建物の奥の部分が崩壊して、そこから巨大な鳥のような何かが飛び出した。
「あれは何だ?」
「お兄ちゃん、気を付けて、アレから物凄い力を感じるの」
「そうだな。リリの言う通りだ」
回りの雑魚を撃破したリリ達が、直哉の横へ駆け付けた。後ろを見ればフィリア達もこちらへ向かっていた。
(さて、どうするかな?見た感じ巨大な鳥何だよな。遠距離のエリザに任せるか、俺達で叩き落とすか)
直哉が考えながら剣と盾を構え直した時、敵から灼熱のブレスが放たれた。
灼熱のブレスが直哉達に襲いかかる。
「あちち!」
直哉は持っていた盾で顔をガードした。
「舞い散れサクラ! お兄ちゃん達を守るの!」
リリはサクラを展開して直哉とラリーナを防御した。
リリはサクラのコントロールに全神経を注ぎ、サクラが燃え尽きないように動かしていた。
直哉は手足に痺れが無いことを確認して、アイテムボックスから耐火のマントを取り出して装備した。
(これで、少しは防げるかな?)
灼熱のブレスを放ち終わり、空高く舞い上がった鳥に、リリが飛び付きに行った。
「大気に宿る、風の精霊達よ! 我が魔力に呼応し敵を絶て!」
「こんのー! スライスエア!」
空中で格闘戦を始めた鳥とリリ。
「熱いから冷やすの!」
リリは格闘戦をしながら、氷の魔法を唱え始めた。
「氷を司る精霊達よ、我が魔力にひれ伏しこの大気を凍結させよ!」
「マリオット!」
直哉は鳥の周りに防御網、リリに回復薬を振り掛けて援護していた。
だが、その時、建物の奥から巨大な人が出てきた。
三つ目で赤色の皮膚を纏い、角が二本生えていた。
「鬼か?」
直哉が愕然としていると、
「私が斬り込もう」
「リカード!」
「ゴンゾー! 行くぞ!」
「承知」
直哉の返事も待たず、二人は疾風となって赤鬼に斬りかかって行った。
「くっ。このままでは、敵の増援が止まらない。やはり上官を倒すしか無いか」
直哉は仲間の動きを確認した。
「クールブリザード!」
「魔神氷結拳!」
グシャ
巨大な鳥にクリーンヒットさせていた。
「ギャーッス!」
「むー、しぶといの!」
それでも倒れない敵にリリは、
「せぃ!」
直哉の張った防衛網へ巨大な鳥を誘導し、叩き付けた。
「ギャーッス!」
ジタバタと空中でもがく巨大な鳥。
「ふぅ。一気に決めちゃうの!」
リリはMP回復薬を大量に飲み、
「氷を司る精霊よ、我が名の下に集いその力を示せ! 我が名はリリ。ここに集いし精霊に命ずる! 目の前に広がる色彩豊かな世界を白銀に変えよ! 全ての動きを止める輝きを!」
膨大な魔力が空中に集まっていく。
「アブソリュートゼロ!」
巨大な鳥を中心に、膨大な冷気が周囲を包み込んだ。
ピキピキピキピキ
巨大な鳥は氷漬けのオブジェとなり、凍った防衛網と共に地面に落っこちてきた。
落ちていく巨大な鳥を見ながら、
「やったの」
そう言いながら、意識を失った。
「リリ!」
直哉はマリオネットを操作してマットを最速でリリの落下地点へ送り込んだ。
「間に合えー!」
パリン!
巨大な鳥の割れる音が起こりその後に、
ボスン!
と、リリがマットの上に落下してきた。
「ふぅ、間一髪だな」
リリの方へ走り出していた、ラリーナとフィリアはリリが無事なのを確認してから、ラリーナはリカードの変後に、フィリアはリリの治療に入った。
と、そこへマーリカから連絡が入った。
(ご主人様!)
(ん? どうしたの?)
(エリザ様から伝言です、建物が崩れた所から、ルグニアの西門方面に出来た穴に酷似した穴が出来ているそうです。壊しても良いか聞いてきています)
(もちろん、壊してくれる?)
直哉の頼みをエリザに伝えたようで、穴に向けて空からの射撃が行われていた。
地上では、リカード・ゴンゾー・ラリーナ・アンナ・ガリウスが赤鬼と交戦していた。
「じ、冗談じゃない! 何だあの化け物は! 俺達で何とかなる相手なのか?」
ガリウスは悲鳴を上げていた。
「相手になるかどうかは、己の力量で計るべし。ここは、ゴンゾーにお任せを!」
リカードに突撃されるのは困ると思ったのか、ゴンゾーは自ら突撃する事にした。
「私も行くぞ!」
ゴンゾーに続きラリーナも突撃に加わった。
「しまった。乗り遅れた」
リカードは戦力の二人が行ってしまったので、その場の護衛にまわった。
「第二奥義! 突刺牙崩!」
「リズファー流! 瞬迅殺!」
二人の最速の刃が赤鬼の足を斬りつけた。
「ぐるぁぁぁぁぁ」
手に持っていた、金属製の棍棒をブンブンと振り回して、二人を振り払おうとしていた。
「ふん!」
「ほぃ」
二人はその攻撃を完全に見切り、さらに追撃を繰り出していた。
「そらそらそら!」
ラリーナの長巻が赤鬼の右足を切り刻み、
「ほぃほぃほぃ」
ゴンゾーの魔法の剣が左足を切り刻んでいった。
「ぐるぁぁぁぁぁ!」
怒り狂った赤鬼は両手を組んで叩き付けようと振りかぶった。
ラリーナとゴンゾーはお互いが、
「チャンス!」
と、思いその腕に攻撃を開始した。
「奥義! 天翔乱撃!」
「リズファー流、月牙双輪!」
ゴンゾーのもの凄い数の斬り上げと、ラリーナの力強い攻撃が交差した。
「ぎゃぁぁぁぁ」
流石の赤鬼も苦悶の表情を浮かべた。
「何をしている! さっさと奴等を倒せ! それと、召喚陣を破壊しているあの蝿をたたき落とせ!」
レッドムーンの上官は思い通りにならない苛立ちを、赤鬼にぶつけていた。
赤鬼は上官を睨み付けながら、理不尽な命令に怒りを露わにしていた。
「ギャオーン!」
それでも、一鳴きした後で、ちぎれかけた腕を振るい鉄の棍棒をエリザに投げつけた。
超重量の棍棒は、狙いがそれたが、リカードの上を通り、エリザの下を通過して、非戦闘員に向かって飛んで行った。
「不味い!避けろ!」
ガリウスは力の限り叫んで危険を報せようとした。
その棍棒に狙いをつけ、弓を引いていたエリザは、
「マーリカさん!鉄の破片を防ぐ忍術をお願いするのじゃ。今から、棍棒を破壊するのじゃ」
マーリカは、地上に降り立ち、そのまま魔力を練り上げていった。
「撃つのじゃ!」
エリザの叫びと同時に強力な矢が打ち出された。
ドガン!
棍棒に直撃した。
その衝撃で棍棒は粉砕され、細かくなった鉄の破片が非戦闘員達に襲いかかった。
「ぎゃー」
非戦闘員達は、与えられた武具の事も忘れ、逃げ惑っていた。
マーリカはそんな者達を尻目に、
「これなら!」
そう言って魔力を解放した。
「土遁! 土石波壁!」
マーリカの前方に、土と石で出来た波状の壁が出現して、鉄の破片を飲み込んでいった。
「流石じゃの。あれなら死者が出る事は無さそうなのじゃ」
全てを防ぐ事は出来ないが、威力をなかり押さえることで、貫通した破片を受けても、致命傷にはならなかった。
「ギャー、痛い、痛い」
破片を受けた非戦闘員達が叫んでいた。
「あれだけ叫べるのなら、大丈夫じゃろう」
エリザはそう判断した。
最後の攻撃を防がれた赤鬼には、攻撃手段が残されていなかった。
ラリーナとゴンゾーのタッグの前に善戦むなしくキラメキながら消滅した。
「後は、逃げた残党だけですな」
「直哉、今行くぞ!」
ラリーナ達は、直哉を追って建物の内部へ侵入した。
直哉は、建物の最深部へ到着していた。
そこは、周囲に複数の牢があり、中に村人が収容されていた。そのうち一つを除き全ての村人が、牢の中で倒れていた。
「貴様! 何をした?」
直哉はレッドムーンの上官に問いかけた。
「口の聞き方がなっていない餓鬼だ! ここにいるのは燃料だよ。私が召還するためのな!」
そういって、一つだけ残っていた召還陣に村人から魔力をかき集めていった。
「うぁぁぁぁぁぁ」
「いやぁぁぁぁ」
(このまま魔力を奪われ続けると、魔力欠乏症で死に至るな。魔力を吸い上げる動力はあれか?)
「マリオネット!」
直哉は、マリオネットで魔力を吸い上げる機械の動力にあたる部分を切断した。
それと同時に防衛網を上官へ飛ばし、絡め取ろうしていた。
ドサドサドサ
魔力の吸い上げが無くなって、村人達はその場に倒れこんだ。
(まだ、大丈夫なのかな?)
「くそぅ、強制的に吸い上げる力がなくなったか。だが!」
そう思いながらも、上官の捕縛を優先させようとしていた。
上官はチョロチョロ逃げながら直哉に言い放った。
「貴様らさえ来なければ、ココにいる燃料が今死ぬ事は無かったのに、残念だなぁ」
「なんだと?」
直哉は、その言葉に動揺した。
「ん? 貴様らが来なければ、こいつらは死ななかったと言っているんだ!」
「まさか、俺がココへ来たから、村人たちが死んだのか?」
上官は直哉の追撃が緩んだので、ニヤリと笑い逃げようとした。
そこへ、ラリーナたちが到着した。
「直哉! どうした!」
直哉の覇気が無いと判断したリカードは、状況を見極めるべく周囲を見渡した。
「ラリーナさん! この目の前の牢を壊せますか?」
リカードの質問に、
「やって見よう」
「頼みます」
アンナとガリウスを見て、
「二人は、あの上官を殺ってください。これ以上直哉に危害は加えさせない」
「わかりました」
最後に直哉を見てからゴンゾーに、
「私たちは、この施設を破壊する」
「承知しました」
リカードとゴンゾーは、直哉が壊したパイプに繋がっていた機械類を、徹底的に破壊した。
「くそう。機械は壊されたが、その牢は特別製だ、壊す事は不可能だよ! わっはっは!」
上官は、二人の攻撃をチョロチョロと避けながら、大笑いをしていた。
その時、ラリーナの身体に闘気が集まり、それを解き放った。
「リズファー流、第一奥義! 大地割り!」
ドゴン!
目の前の牢は大きな音を立てて、崩壊した。
「な、何だと! あのお方が造りし牢が敗れるとは・・・・。無念」
二人の攻撃範囲外から、負け惜しみを言っているのかと思い、上官を見ると、口から血を流して死んでいた。
「毒か?」
「受け入れがたい事がおこり、自殺を図ったか。愚かなり」
リカードやゴンゾーは吐き捨てるように言った。
リカード達は村人達を救出して、直哉の元に来ると、直哉が放心状態だったのに気がついた。
ゴンゾーは、
「直哉殿が責任を感じる事はありませんぞ。直哉殿は優しすぎる」
リカードも、
「それでも、考え込むのであれば、リリちゃん達を頼りな!」
直哉へのフォローをしてくれていた。
放心状態から戻ってきた直哉は、涙を流しながら、
「ありがとう。でも、悲しいよ」
と言って、魔力欠乏症で無くなった村人たちの事、レッドームーンの兵士たち、キメラにされた人々の事を心に刻み込んだ。
「直哉。とりあえず、一息つかないか?」
リカードの言葉に直哉は頷き、大きな建物の横にいつもの屋敷を建てたところで、直哉の意識は闇に飲まれていった。




