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第八十六話 風と草原のソラティア共和国

新たなフィールドでの冒険が始まります。

直哉達が大きなイベントに巻き込まれて行きます。


それでは、本編をどうぞ。

大草原ソラティア共和国は、大小さまざまな国からなる集合体で、その中で一番国力の高い国が共和国のまとめ役として、共和国の盟主となり、共和国の名前となる。

現盟主のソラティアは、十数年盟主の地位に君臨する、共和国内で最も強力な国である。

第二位のアルカティア、第三位のパルジャティアとは一時期かなりの差を付けていたが、ソラティアの国王が変わってからは、その差が随分と無くなって来ていた。

それ以下は大きく離されていて、団子状態であった。




◆ルグニアを出て数日後


直哉達一向は雪山を下り、風通しの良い林を歩いていた。

直哉は周囲を見渡して、

「この辺は随分と気候が変わったけど、まだ、ルグニアなの?」

「いいえ、この辺はルグニアではありません。空白地帯です」

直哉の疑問にアンナが答えた。

「そうでしたか。それにしても、だいぶ暖かくなってきましたね」

そんな直哉の背中では、リリが気持ちよく眠っていた。

「むにゃむにゃ。お肉美味しいの・・・」

寝言を言うリリの頭を撫でながら、フィリアがつぶやいた。

「緑と風の匂いが気持ち良いです」


その反対側を歩いていたラリーナが、

「雪が無くなって、歩きやすくなったな」

「わん! わん!」

シロが同意した。

リカードとゴンゾーも、

「うむ。これで鍛練の幅が広がるな」

「そうですな」

そう言い合いながら、新緑の大地を踏みしめていた。

「完全に雪が無いのは、新鮮なのじゃ」

「そうですね、私の生まれはこのソラティアらしいのですが、始めてきたような感じです」



直哉は、ルグニアで貰った地図を広げながら、

「それで、レッドムーンの本拠地はどの辺でしたっけ?」

マーリカがその地図にある、湖を指差しながら、

「こちらの湖の傍にそびえ立つ、塔の中だそうです」

直哉は、自分のマップと座標を確認しながら、

「この位置は、ソラティア第三の都市、パルジャティアがある湖だね」

アンナは驚いて、

「パルジャティアをご存知なのですか?」

直哉は首を振って、

「いいえ、この世界のパルジャティアに関しては知りません。なので、知っている事を教えていただけると、助かります」


アンナは、

「私も、そこまで詳しくは無いのですが、ソラティア共和国に名を連ねる場合には、国名にティアの称号を付ける事が義務付けられています。ですので、パルジャティアもソラティア共和国に名を連ねているのは間違いありません。そして、その国の規模から考えて、第三の都市と言っても過言ではありません」

直哉は、情報を記録した。

「わかりました。とりあえず、行って見ましょう」

直哉の発言に、

「そうですね。ですが、あれから時間が経っています。既に封鎖が完了しているのでは?」


「俺の考えでは、鎖国し始めたのがソラティアなだけに、第二、第三の都市はまだだと思います。確か、ソラティア共和国は国力で盟主を決めるのに、鎖国をしてしまったら国力を大きく増やすのは難しくなるので、ソラティアがやれと言っても、そう簡単にはやらないと思います」

「なるほど、そういう事も考えられますね」

直哉の意見にアンナは賛同した。

「しかし、いつまでもソラティアの命令を無視し続けるのは無理ではないか?」

「そうですね。抵抗し続けると、最悪ソラティアに攻め込まれるかもしれません」

リカードとアンナの会話に、直哉が疑問をぶつけた。

「そんなにソラティアは好戦的なのですか?」


「エバーズ様の話では、先代の王は優秀でソリティア自体が大きく発展し続けていたと聞いています。それが、数年前に突然病に倒れ、現国王である息子に王座を受け継がせたと聞いています。しかし、その判断が、先代の国王が犯した最初で最後の間違いでした」

アンナの言葉に、リカードが続いた。

「きっと、良い父に負けないようにと頑張っているところに、周囲からのプレッシャーが加わり間違った方向へ進んでしまったのだろう」

「リカードでも、感じる事があるのですか?」

「無論だ。だが、俺にはゴンゾーが居てくれているので、間違った方向に進む前に止めてくれた。そして、直哉が居てくれているので、周囲からのプレッシャーで潰れる前に息抜きする事が出来る」

「王族は王族で大変なんですね」

リカード達の会話にアンナが驚いていた。


「そうだな。王族といっても、玉座にふんぞり返っているだけという訳にはいかないからな。国民全てが豊になるように政をする。これが王族の勤めだと思っている」

そんなリカードに、

「国民全てが豊になるなんて不可能ではないのですか?」

アンナが突っ込みを入れた。

「あなたはそう思いますか?」

「私はルグニアで産まれ、ルグニアでしか生きた事はありませんが、そのルグニアでさえ全ての人が幸せだったと言えるか? と聞かれたら、いいえと答えます」


リカードは少し考え、

「しかし、直哉が来てからはどうだ? 無論直哉だけで幸せにはならないが、幸せに向けて前進したのではないのかな?」

アンナは直哉がルグニアに来てからの事を考え、

「確かに、その一面はあります」

「私は、彼を見習い、良き物は新しくても取り入れる決断を、そして、古く長く続いてきた物でも悪き物は、改善策を探して、見つかれば改善し無ければ排除する決断をしたい」

アンナは、

「それは、王として国を守る者として間違っていると思うのですが? 古き長く続く物はそれだけで意味があると思います。それを、廃止にするという事は国の伝統を軽んじるという事になるのではないですか?」

リカードは首を横に振って、

「国の伝統より、民の暮らしが優先です」

「それでは、国政は持ちませんよ!」


「まぁまぁ。そこまでにしましょう」

リカードとアンナの間にゴンゾーが割り込んだ。

「今ここで、言い争っても水掛け論ですぞ?」

ゴンゾーの仲裁によって、二人は黙り込んだ。

「アンナどの。もしよろしければ、リカード様とご一緒にバルグフルへいらしては如何ですか? 実際にリカード様がどのように王政をしくか見てみるのは如何ですか?」

「申し訳ありません。今はまだ、兄の事がありますので、それが解決するまでは考えたくありません」

「これは、差し出がましい事を。今はお忘れください」

ゴンゾーはすぐに引き下がった。




◆ソラティア共和国の小都市、アフターン


パルジャティアを目指し街道を歩いていると、林が終わり視界が開けた。

「おぉ! 所々に木々が見えるけど、ほとんどが草原地帯だな」

フィリアは全身に風を浴びながら、

「うーん。気持ち良いです」

と、風を満喫していた。


その時、パルジャティアへ向かって左前方に、黒い煙が立ち上っているのが見えた。

「あれは何だ?」



声をあげる直哉に、

「ひどい臭いだ」

ラリーナが呟いた。


「状況を確かめる。リリ、フィリア、共に来てくれ」

「はいなの!」

「わかりました」

「エリザとマーリカは上空にて待機。いつでも射てるようにしておいて」

「わかったのじゃ」

「承知!」

「リカード達はこの場で待機。繋ぎにはラリーナを使います」

「うむ」



直哉達が近付くと、小さな集落が燃えていた。

「リリ。何か感じる?」

リリは周囲を探るため集中した。

(ご主人様!)

(ん? どうしたの? マーリカ)

(エリザ様が、村から離れていく一団を見付けました)

(どっちへ向かってる?)

(パルジャティアの方です)

(わかった。他に動きが無いか、見ててもらえるかな?)

(承知しました)

マーリカからの通信が終わった。


「お兄ちゃん! 奥に生存者が居るの」

「わかった。助けに行こう」

「わかったの!」

直哉は、ラリーナとマーリカに連絡を入れ、救護活動に入った。

「大丈夫ですか?」

すっかり怯えてしまった村人にフィリアは優しく語りかけた。

「他に生きている方はいらっしゃいますか?」


すると、燃え盛る家を指差した。

「マジか。でも、諦めないぞ」

直哉は忍の里で使った、消火風呂を造り、消火にあたった。

「水を司る精霊達よ、我が魔力と共にその姿を現せ!」

リリも水魔法を放つために、魔力を練った。

「ストリングウォーター!」


ばっしゃーん


大量の水が屋根からかかり、火の勢いは和らぎ、下火になった。

「これなら、行けるか?」

直哉は、防火のマントを着けて、家のなかに飛び込んだ。

中には数名の人間が目を見開いた状態で転がっていた。

(間に合わなかったか? いや、こいつらは村人じゃない? では何者だ?)

直哉が考えていると、リカード達もやって来た。

「これは酷いな。村人はこの子だけか? ただ、他の村人の死者がないぞ?」

外から声が聞こえてきたので、表に出るとリカード達がやってきていた。


「ここの家の中で数名亡くなっていますよ」

直哉の言葉に、リカードが中を覗くと、

「こいつらは? まさか、エリザさん、見てください。逃げていった奴らでの仲間では無いですか?」

エリザが覗き込むと、

「間違いないのじゃ、こいつらと同じ衣装を着ておったのじゃ」

「そういえば、どんな感じでした?」

「大きな荷物を運搬していたのを確認したのじゃ」



「と、いう事は、この子以外の村人はパルジャティアへ向かっていった奴らが連れて行ったと見るべきか」

「そう考えるのが妥当だな」

直哉はマップを開いて確認していた。

(ここからパルジャティア方面という事は、途中に塔があるな。あれは風の塔? な訳無いか。それなら風の塔のダミーの一つだな。そこに一体何があるのか? 行ってみるか、パルジャティアへ急ぐか、イベントが発生しそうだよな)

直哉が思考から帰ってくると、リリ達が見つめていた。


「お兄ちゃん。この子のお母さんが連れて行かれちゃったの。助けてあげたいの」

「直哉様。私からもお願いします」

「直哉、私からもお願いする」

嫁達から、救出をせがまれ、

「わかった。これも何かの縁だね。助けに行こう」

直哉の言葉にリリ達は喜んだ。

「では、マーリカ。マーリカは残ってその子とシロを守ってやってくれ。何かあったら連絡を頼む」

「ワン!」

「承知しました」


「あの」

アンナが声を上げた。

「私も残って護衛をしたいのですが、駄目でしょうか?」

直哉は首をひねって、

「どうして、そのような事を?」

「まだ、私には実力が足りません。鍛練をする時間がほしいのです」

直哉がリカードを見ると、

「そういう事なら、私も残ろう」

リカードとゴンゾーがアンナの鍛練相手として残ることになった。



直哉はリカード達をその場の護衛を任せ、ほかのメンバーで追うことにした。

「戦力が随分と落ちたけど、大丈夫ですか?」

フィリアの懸念に、

「ある程度の賊ならば、リリとラリーナが居れば十分だし、強力な敵が来ても、エリザの力があれば、何とかなると思う」

「そうですか。わかりました」

「大丈夫なの! リリが全部ぶっ飛ばすの!」

リリがシャドーボクシングで敵を吹き飛ばす真似をした。




◆ダミーの塔


「あれが、風の塔のダミーか。ガーディアンとか居るのかな」

直哉が塔を確認していると、

「あそこに、奴らが運んでいた大きな荷物があるのじゃ!」

エリザが興奮していた。

直哉達がそちらを確認すると、賊達数人が大きな荷物の前で話し込んでいた。

「あれで、全部かわかる?」

その場の全員が首を横に振った。



「尻ごんでいても仕方が無いので、突撃しますか」

「はいなの!」

直哉はみんなを見て、

「エリザはこの場の空から空爆を。ラリーナとリリは俺と共に突撃。フィリアはこの場で周囲の警戒を!」

「了解!」

「それと、殺さないように!」

「はいなの!」

直哉の指示通り、みんなが動き始めた。



「ちぇっすとーなの!」

リリが大空へ舞い上がり、上空から強襲をかけた。


「なんだ?」

賊が空から声がするので上を見た瞬間、ピンクの物体が落ちてきた。

「て? き?」


ゴン!


そのままの勢いで、リリに殴られ、意識を刈り取られた。

「なんだ? こいつは?」

他の賊もリリを見て、呆気に取られている間に、近づいていたラリーナの攻撃をそのまま受けた。

「ぐはぁ」

そのまま、何も無く制圧を完了した。




「よし、荷物を確認しよう」

直哉達が荷物に近づくと、それは大きな牢であった。

「良かった! 村人達はまだ息がある! ラリーナはフィリアの所に行って、エリザに周囲の警戒を頼んだ後フィリアを呼んできてくれる? ラリーナはそのままエリザと連携してくれるかな?」

ラリーナは頷いて走っていった。


入れ替わりでフィリアがその場に駆けつけ、村人たちの治療を開始した。

しばらく治療に専念していると、ラリーナから通信が入った。

(直哉! エリザがこちらに来る一団を見つけたと言っている)

(どの位でどの様な集団なのか聞いてくれる?)

(服装は、賊と同じ。数は八名)

(よし! 先制攻撃を仕掛けよう)

「リリ、戦闘準備。フィリアはそのまま治療を続けて」

直哉の言葉に二人は頷いた。



(こっちの準備は出来ている。エリザに先制攻撃の狼煙を上げさせて)

(了解した!)

「エリザの攻撃が合図で突撃するよ?」

「わかったの!」

リリとラリーナは意気込んでいたが、エリザの一撃を受けた賊達は満足に動ける者は居なかった。

「なんか、呆気なかったの」

「いや、それだけリリ達が強くなっているのだよ」



「直哉様、村人たちの治療は完了しました」

直哉は牢から出ていた村人達に、

「みなさんの村に帰りましょう」

直哉の言葉に、村人達は涙を流した。

「ありがとうございます。このご恩は決して忘れません」

折の中には村人の代わりに、戦闘不能になった賊たちを放り込んでおいた。

(賊の背後に何者が居るのか解らないけど、この村はもう危険だよな。何とかしておかないと、大変なことになるな)


直哉はため息をつきながら、解決方法を考えていた。

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