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第八十五話 ルグニアでの集大成

第八十四話 勇者直哉誕生で 銀狼をシロ へ変更いたしました。

「きゃぁ」

アンナは、リカードの攻撃に耐え切れなくなり吹き飛んだ。

「どうした? この程度は防ぎきってもらわないと!」

リカードの叱責が飛んだ。

「お願いします!」

アンナは武器を構え、リカードの前に出た。


そんな二人を見て、ゴンゾーが直哉のところに来て、

「回復薬の準備をお願いします。きっと、アンナ殿に必要になりますので」

直哉は頷いて、

「わかりました」

と言って、準備をしていた。


アンナは何度か吹き飛ばされた後、立てなくなっていた。

(私は何て情けないんだ。このような力量でルグニアの近衛騎士として、民を守ろうと思っていたとは、思い上がりも良いところだ)

そう思って立とうとしていたが、膝に力が入らず、その場から動けないでいた。


「よし、休憩だ。直哉! 回復薬をアンナさんに渡してくれ」

リカードの言葉に、

「お待ちください! 私はまだやれます!」

アンナは必死で訴えたが、リカードは取り合わなかった。

焦るアンナに、直哉が近づいてきて、

「アンナさん、焦る気持ちは解りますが、休憩も立派な鍛練なのですよ?」

と、言いながら回復薬を渡した。

「どういう事ですか?」

「簡単な事です。どの程度のダメージを負うと動けなくなるのか? また、そのダメージはどの程度の回復薬で回復するのか? 回復にはどの程度の時間がかかるのか? これを知るのも鍛練の時じゃないと安全に出来ませんから」

直哉の言葉に、

「そういうことも、必要になるのですね」

「はい。一度きりの戦いであればそれほど必要ありませんが、長期にわたる戦いの中だと必要になります。回復のタイミングが他の人と被らない様に調整したりしますよ」



直哉の説明に、

「わかりました。疲労を回復させます」

そう言って、直哉から受け取った回復薬を飲み干した。

「これは、市販されている物ではないですね?」

アンナは、いつも飲んでいる回復薬を飲んだ時とは、桁違いの回復を感じていた。

「はい。私の造った回復薬です。西門にある鍛冶場の販売所でも売っていますよ」

そう言いながら、さらに数本取り出して、

「一応先に渡しておきます。今日の鍛練で全部使ってしまって構いません。また、明日の出発前にお渡しします。持ち歩ける最大本数をお渡ししますので、何本必要か教えてください」

「ありがとうございます。明日までに確認しておきます」

そう言って、アンナは頭を下げた。



「さぁ、そろそろ鍛練に戻っても大丈夫かな?」

後ろからリカードが声をかけてきた。

「よろしくお願いします」

アンナは立ち上がり、リカードに頭を下げた。

「よし、では構えから!」

「はい」

リカードはアンナと共に鍛練を始めた。




直哉はリリの方を見ると、

「ちぇっすとー」

「ほっほっほ」

リリの突撃を紙一重でかわすゴンゾーの姿を見て、

「俺もあの位動けたら、戦闘も楽になるのだけどな」

そういいながら、マリオネットの操作を鍛練していた。



直哉がマリオネットの鍛練用に五体のクマのぬいぐるみを操作していると、

「ワン! ワン!」

シロがそのクマに突撃を仕掛けてきた。

「ん? これならいけるか?」

直哉はクマのぬいぐるみを操作して、シロに触れさせないようにしながら、ぬいぐるみの方からは触るという操作をしていた。

「ワン! ワン!」

シロは殴られても痛くないし、ぬいぐるみもチョロチョロ動くので、物凄く楽しくなり、飛んだり転がったりしながら、クマのぬいぐるみとじゃれ合っていた。


「ほぅ、なかなか面白い鍛練方法だな」

シロのそんな姿を見ながら、ラリーナが直哉の傍へやってきた。

「鍛練になっているかどうかはわからないけど、これなら怪我することなく身体を動かせるよね」

そんな、楽しそうなシロの姿を見たリリが、

「おじーちゃん、また今度なの!」

と言って、クマのぬいぐるみ争奪戦に乱入してきた。


「ちょ!」

直哉は焦りながら、マリオネットの本数を増やし、操作に集中した。

「あちょちょちょちょちょちょ!」

リリは、シロの邪魔をしないように、クマのぬいぐるみに襲い掛かっていた。

「おっとっと」

直哉はその攻撃を何とか回避しながら、シロにもチャンスをあげようと操作していた。


「ふっ。これなら大丈夫だな」

ラリーナはそう言うと、ゴンゾーの元へ向かっていた。

「ゴンゾー殿、リリに振られたのであれば、私の鍛練相手をお願いできますかな?」

そう言って、鍛練用の長巻を装備した。

「よかろう」


ラリーナはシロの力を身に纏い、ゴンゾーへ突撃した。

「リズファー流、瞬迅殺!」

「第二奥義! 突刺牙崩!」

二人の突撃する力が、ぶつかり合った。

「ふむ、やはり厄介ですな。物理と魔法の同時攻撃は」

そう言うゴンゾーは、魔力でのダメージを負っていたが、物理のダメージはラリーナの方が受けていた。

「うぐぅ。まだ、ゴンゾー殿の方が威力が高いのか」

ラリーナは回復薬を飲みながらうめいた。

「まだまだ、若い者は負けていられないのでな」

ゴンゾーも回復薬を飲みながら答えていた。



「あーちょちょちょちょ」

「ワン! ワン!」

リリとシロの猛攻を、何とか凌いでいる直哉。

「うぬぬぬ」

精神疲労による、汗を額に浮かべていた。

「リリ、シロ、お互いにだいぶ動ける様になってきたから、今度は邪魔し合ってぬいぐるみを取りにおいで。ただし、リリは攻撃をするのは禁止で」

「押しのけるのは?」

「怪我をさせない程度で」

「わかったの!」

「ワン! ワン!」

それから、リリとシロはお互いを邪魔し合いながらぬいぐるみを追いかけることで、シロの鍛練となった。


全員が疲労で動けなくなるまで鍛練は続き、風呂場で倒れても平気なように、使用人達に一緒に風呂へ入ってもらって、アンナやラリーナは事なきを得た。

「ふぅ。やっぱり風呂は良いなぁ」

直哉が風呂に浸かっていると、

「そうだな。贅沢を言えば温泉じゃないのが物足りないけどな」

「リカード達は屋敷の温泉に来てくれていたの?」

直哉の質問に、

「いや、正直忙しすぎて、直哉の屋敷に立ち寄る時間が合っても、のんびり温泉に浸かる時間が無かった」

「そうでしたか」

直哉は、バルグフルの事を思い出していた。



「それにしても、ここルグニアは本当に寒いな」

「そうですね」

「この、老骨にも冷気が染み渡ります」

三人はルグニアでの風呂を堪能していた。


「そういえば、明日からソラティアへ向かいますが、お二人は本当に一緒に来てもらって、大丈夫なのですか?」

「前にも言ったが、俺は王子ではなく、リカードとして親友の直哉を手伝うのだ。何に問題も無かろう」

リカードの言葉に、

「完全に詭弁ですが、わかりました。よろしくお願いします」

直哉はリカードとゴンゾーに頭を下げた。




◆次の日


アンナは極限の疲労を感じていたが、身体に鞭打って起きてきた。


「おはようございます」

直哉一家と挨拶して、朝食の席に着いた。


「今日は良い天気に恵まれました。メントールの話によると、この後すぐにドームのテストが行われます」

直哉は朝食を取りながら話していった。

「動作確認後、問題が無いようでしたら、屋敷で支度後、西の地へ向かいます」

直哉は皆を見て、質問が無いので話を進めた。

「この屋敷は、このまま残しておきますので、イザベラさん達はそのまま使ってください」

使用人達は頭を下げた。



朝食後、ドームの動作確認会会場に足を運ぶと、メントール達が、ベドジフ・ダヴィットを中心としてドームの最終確認をしていた。

「親方! おはようございます」

「みなさん、おはようございます」

直哉に気が付いたメントール達が直哉の周りに集まってきた。


「本日は見に来てくださってありがとうございます」

「それ程集まっている訳ではないのですね?」

直哉は周囲を見渡した。

「はい。ですが、アシュリー様はいらっしゃっていますし、若い鍛冶職人見習達が集まってくれています」

「メントールさん達の弟子ですね?」

「いえ、親方の弟子候補ですよ。俺たちの弟弟子です」

「そうですか?」


「えぇ。ここに集まった見習い達も、そのつもりですから」


「俺はこれから旅に出てしまいます。だから、直接教えるのはメントールさん達になります。だから、メントールさん達が親方の方が、名実共に良いと思うのですが?」

直哉の言葉を聞いていた、集まった鍛冶職人達に聞いていた。

「と、言うことですが、集まった方々はどう思いますか?」


メントールの問いかけに、

「私達はルグニアを変えてくださった、直哉様を親方としたくて来ました。メントールさん達に教えていただく事になるのに、心苦しくはありますが、メントールさん達は兄弟子と呼ばさせてほしいです」

メントールは頷きながら、

「みんなはどうだい?」

と、同期の鍛冶職人に聞いた。

「そりゃあ、俺達は親方の弟子だし、弟弟子を指導するのは当たり前の事だから、問題ないです。むしろ、新しい弟子を育てる事で、我々もスキルの向上になると思うので、良いですよ」

と、口々に賛成してくれた。


「わかった。みんながそこまで言うのであれば、俺がみんなを受け入れるよ」

そう言いながら、ルグニアに相談しようと思っていた。

(彼女なら、面倒を見てくれるだろう)

そして、準備が整いアシュリー達が会場に現れた。


「それでは、ルグニアの技術力を見せてください」

アシュリーの合図にベドジフとダヴィットは一礼して操作した。


すると、速くはないが中央部分からドーム状に覆いが出来上がっていった。

「おぉ!」

「これは、凄い!」

「これほど大きな物を!」

集まった人々は口々にそう言って感動していた。


「上手く動作していますね。これなら問題無さそうです」

「そうですね、親方もそう思いますか?」

ベドジフとダヴィットが直哉の元へ駆け寄っていた。

「うん。これ程スムーズに動いているのであれば、大丈夫でしょう」

「ありがとうございます!」

ベドジフとダヴィットは直哉に礼を言った。

「あとは、細かい調整ですね」

「はい。それは、弟弟子達と調整して行こうと思います」



近くで聞いていた、鍛冶職人見習い達は驚いていた。

「私たちも参加してよろしいのですか?」

驚いている若手達に、

「はい。この親方はそういう方でした。とにかく鍛冶に参加してもらって、スキルを磨いてもらう。そして、自分の方向性がわかれば、それに向かって精進してもらう。そうすれば、みんなの力が上がっていくことになる。それは俺たちにとっても、ルグニアにとっても良いことだと親方は仰っておりました」


「直哉はそんな事まで考えていたのか?」

驚いたリカードの問いに、

「えぇ。ルグニアの職人さんを預かる身としては、その位は考えておかないと」

「お、親方~。ぼくたち何処まででも親方についていきます!」

すがって来る弟子たちをなだめながら、

「そうですね、まずはココで己の力を磨いていてください。必ず、皆さんの力を借りる時が来ると思います。その時まで、己の限界に囚われずに上を目指してください」

「わかりました!」



職人たちが去った後、リカードは直哉に、

「凄いことを言うのだな」

「ん? 何の事ですか?」

「職人達との会話だよ。己の限界に囚われず上を目指すって、口では簡単に言えるけど、実際に限界を迎えたら普通は挫折するものだ」

直哉は、メントール達を考えながら、

「そんな時は仲間が支える。基本でしょ? 俺だって、一人で居たら直ぐに壁にぶつかって、そこで終わりだけど、今はリリ達が居る。そして、リカードも手伝ってくれるのでしょ? これ程、心強いことは無いよ」

リカードはむず痒くなって、鼻をかいて照れていた。

「直哉は恥ずかしいことを言うのだな」

「そうですか? 俺の本音ですから」


「そうだ。あのドームとやらは、バルグフルに導入できるのか?」

「はい。導入する予定です。ただ、街と街の間を、簡単に行き来出来る事が条件ですが」

直哉の言葉に、

「ゲート、とか言うやつの事か?」

「はい」

直哉を見ていたリカードは、

「その目は、何か思い当たる節があるのだな?」

「はい。実はこのルグニアを襲っている、レッドムーンの人間が、ゲートに近い物を使っていたのを、思い出しました。もしかしたら、ゲートの劣化版、若しくは用途が限られた限定版ではないかと。しっかりと見ていたわけではないのですが、魔方陣のような感じでした」


リカードは、直哉の話しを聞いていたが、

「それは、召還魔法ではないのか?」

「俺が見たのはそうなのかもしれません。火トカゲのみを呼び出していたので。ですが、その前は、サーベルタイガーやゴブリン、コボルト、オークに巨人を呼んでいました」

「ふむ。それほどの多種を呼ぶ召還魔法は無いな。一体どれほどの魔力をつぎ込む事になるのか」

「ですよね。リカード達は先に屋敷へ戻っていてください。俺はルグニアさんに、弟子たちを頼みに行ってきます」

リカードは会ってみたいようで、ウズウズしていたが、

「わかった、先に戻って支度をしておく」

リカードが空気を読んでくれたのを感じたので、

「すみません、ありがとうございます」

礼を言って、ルグニア城へ向かった。




◆ルグニア城


「それでは、ルグニア様の所へ行ってきます」

「わかりました。帰るとき、声をかけてください」

「了解です」

アシュリーに話を通そうと思ったが、エリザと話しているとの事で、ダライアスキーに声をかけた。



ルグニアが、画面の向こうから離しかけてきた。

「おや? 直哉さんではありませんか。お元気そうで何よりです」

「こんにちは」

「それで、どうかしましたか?」

直哉はこれから旅に出るため、弟子たちの事をお願いしに来たことを伝えた。

「なるほど、わかりました。私にとっても、遠い弟子達ですから見ておきますよ」

「ありがとうございます」

直哉は頭を下げた。



ダライアスキーに終わったことを伝えると、エリザが出てきた。

「直哉殿、行きますか?」

「はい。決着を付けに行きましょう」

直哉とエリザが話していると、

「勇者直哉さん。お気をつけて」

と、アシュリーが送り出してくれた。

「では、行ってまいります」

直哉とエリザは、城を出て屋敷へ向かった。




◆直哉の屋敷


直哉達が屋敷へ戻ると、大量の料理が一階に、大量の物資が地下鍛練場にまとめられていた。

「これ程の量、持てるのか?」

リカードの疑問に、

「何とかします」

直哉は、アイテムボックスをフル活用し、何とか収めることが出来た。

「ちゃんと整理しておかないと、取り出すとき不便だな」

直哉はアイテムボックスを見ながらため息をついた。



「それでは、行ってきます。昨日言ったとおり、この屋敷はこのまま残しておきますので、イザベラさんを中心に屋敷を維持してください。新しい人を雇うのであれば、城に相談してください。この屋敷の管理をイザベラさんに任せますので」

「かしこまりました。いつ戻られても良いようにしておきます」

イザベラ達は頭を下げて見送ってくれた。



今回の旅は大所帯の上、馬車が使えないので、苦労しそうだと直哉は考えていた。

直哉・リリ・フィリア・ラリーナ(シロ)・エリザ・マーリカ・リカード・ゴンゾー・アンナでの新たな旅が今始まろうとしていた。

これで、ルグニアでの話は終わります。

次話から、西の大草原ソラティア共和国でのお話です。


お楽しみに。

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