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第八十三話 バルグフルとルグニアの架け橋

「じゃぁ、次は私たちの番ですね!」

リカードが剣とを構えた。


「行きます! マリオネット!」

直哉は周囲に防衛網を展開した。

「まとめて吹き飛ばしてやる!」

リカードの剣が光る。

(あれは、絶空! それならば)

直哉は透明の盾を取り出した。


「喰らえ! 絶空!」

直哉は驚いていた。

(絶空の筋が見える!? リカードの威力が増してるのか、俺の能力が上がったのか解らないけど。これなら盾で防がなくても避けられる)

そう思って、避けやすい方向へ動こうとしたとき、リカードがそちら側へ移動しているのが目に入ってきた。

(これは、罠か。それなら!)


「マリオネット!」

防衛網をその場に設置して、複数の盾を取り出して、絶空の中へ突撃していった。

「ほほぅ、ワザとそちらへ逃げるのか。面白い!」

リカードは更に絶空を放つため力を溜めた。

「また来るのか? こっちは、始めの絶空と戦っているのに」

直哉はリカードの周囲に設置した防衛網を見ていた。

(もう少しで、こっちの絶空を突き破れるから、それを凌いだら防衛網へ誘い込むか)


「絶空!」

そこへ、さらに絶空が襲い掛かってきた。

「まずいな・・・、あれに乗れるか?」

直哉は物理・魔法共にある程度まで防げる盾を造り出し、足の下へ装着して飛び上がった。

新しい絶空に合わせて盾を向けると、物凄いエネルギーが盾に集約されていったが、盾は壊れることなく絶空を逸らしていった。そのエネルギーで直哉は絶空の上を滑る様な格好になり、リカードへ襲い掛かった。

「うわぁぁぁぁ」

「なんだと!?」


リカードは二度撃った奥義の反動で、かなりの疲れが残っていたが、迎撃するために剣と盾を構えて直哉を待ち構えていた。

「マリオネット!」

そのとき、直哉は奥の手を出した。

「何? 何だあれは?」

直哉が飛ばしたのは、剣と盾を装備した機械人形をマリオネットで操作したもので、不意打ちが完全に成功した。


「四連撃!」

直哉とリカードを挟み込むように飛ばした機械人形が同時攻撃を仕掛けた。

「全て、×の字斬り!」

合計十六回の斬撃がリカードを襲いかかる。


「うぉ。直哉の攻撃はもちろん、こっちの攻撃もかなりやるな」

リカードは剣と盾を巧みに使い、直哉の連続攻撃を凌いでいた。

「さらに、マリオット!」

そこへ、さらに防衛網で襲いかかった。

「ふっ! それは来ると思ったぜ! 絶空!」

迫り来る防衛網を、絶空のエネルギーで吹き飛ばした。


(このまま、四連撃+×の字斬りが終わると負けるな。更に技を重ねないと駄目だな。だけど今のMPでは足りないから、こいつを使うか)

直哉は、魔畜棺を取り出して、装備した。

(よし、これなら、やれるか?)

「なんだと? 大技後の硬直を無くすのか?」

(出来るかどうかは、やってみてだな)

直哉は集中した。

最後の×の字斬りの動きから、流れを損なわないように、次の技を繰り出す動作を始めようとした。


(最後の攻撃で、身体が右側に流れていくから、左手の盾で攻撃が一番自然だな)

「盾攻撃!」

リカードの顔面に盾が繰り出される。

「なんの!」

リカードは身体を捻って直哉の左側へスライドした。

「そこなら!」

直哉の操作する機械人形から突きが繰り出された。


「くっ!」

更に身をかわそうとしたが、直哉は既に体勢を立て直している最中だったので、

「まいった」

リカードは剣を下げた。

直哉は機械人形の技を強引に止めて、アイテムボックスへしまった。

「ありがとうございました」


回復用の珠を装備しながら礼を言った。

「ちきしょう。また負けたか。マリオットを使いこなすと、かなり厄介だな」

直哉は身体が金と銀に輝くのを確認しながら、

「始めの奥義での距離だと、俺も手も足も出ないので、焦りました」

「まさか、絶空に乗ってくるとは思わなかったぜ」

「あれは、たまたまでした。っていうか、奥義二連発とか、凄いじゃないですか!」

リカードは剣を見て、

「直哉にあしらわれて以来、無茶をしてきたからな」

直哉は焦りながら、

「あしらったつもりはないのですが」

「まぁ、そうだろう。私がそう感じただけだからな。だが、そのお陰で、やれる事が増えたのも事実だ」


直哉は複雑な顔をした。

「そういえば、手合わせ中に見せた人形は何だ?えらく直哉の様に攻撃してきたけど」

リカードの疑問に機械人形を取り出して、

「これですね? この前地下遺跡で拾った物です。マリオットの本来の使い方は、あれが正解の一つなんだと思います」

「人形自らが動くのではなく、直哉が動かしているのだな?」

「はい。まだ、人工知能を造ることは出来ませんので」

直哉は機械人形を手渡した。


リカードは人形をいじりながら、

「形は変えられるのか?」

「手足は、疑似四肢作成で造れますよ。俺の影武者とか造りたいのですが、今は無理です」

「何が問題なんだ?」

「手足は造れても、他の部分が厳しいですね」

「厳しいと諦めるなんて、直哉らしくないな」

「そうですか? それなら、今から考えてみますか」


「今からか! 相変わらず一直線だな」

リカードは職人モードに入った直哉を横目に見ながら、

「悪いが、MP回復薬を別けてくれぬか? 直哉に貰うつもりだったが、あの体勢になってはテコでも動かんからな」


リカードは、ラリーナ、リリ、フィリアから順にMP回復薬を貰って飲んでいった。

「ん? ラリーナさんのはお酒のアルコールが無い様な感じに仕上がっているな」

「そうだな。直哉は人に合わせて微妙に味を変えているらしい」

「ふむ。次はリリちゃんの奴だ。うん。甘い!」

リカードの言葉に、

「そうかな? 美味しいの!」

リリは、まぶしい笑顔で返してきた。

「フム。まだ、全壊しないな。それでは、フィリアさんのを飲んでみよう。んぐふ。苦すぎる」

リカードが途中でむせたのを見て、

「そうでしょうか? 私には丁度良いのですが」

「う、うん。先にリリちゃんのを飲んだから余計に苦く感じるよ」


「むー、そんな事無いのに。美味しいのに! もうあげないの!」

リリは頬を膨らませて抗議した。


リカードは、エリザとマーリカの視線を感じ、

「そうだった、お前達の相手をしなければならないな。どの程度の実力があるのか分からないから、打ってきなさい」

エリザとマーリカは立ち上がり、

「お願いします」

と、それぞれの武器を取り出した。



「ふむ。弓矢と短刀ですか。面白い、直哉パーティの遠距離部隊だな」

「撃ちます!」

エリザのかけ声と共に、マーリカは魔力を練り始めた。

「ほう、色々な角度からの矢か、面白い!」

エリザの放った矢は、全てたたき落とされていた。

「こんなものかね?」

リカードの挑発に、エリザは唇を噛みしめながら打ち続けた。その時、マーリカの忍術が完成した。

「雷遁:幻閃光!」

もの凄い光が周囲を包み込む。


「これは、目くらまし? いや、幻術か!」

リカードにはもの凄い本数の矢が、逃げ場もないほど打ち込まれているように感じていた。

「ふむ、全て本物に見えるが、幻術には重さがないか。それなら!」

リカードは力を溜めていった。


「マーリカよ、わらわの矢は大量に見えているのじゃな?」

「もちろん、そのはずです」

「全て躱されているように見えるのじゃが?」

「本当に全て躱しているのですかね?」

「だとしたら、直哉殿より速いと言う事になるのじゃが」



「ほらほら、二人とも。ボサッとしてると絶空が来るよ?」

いつの間にか観戦していた直哉から注意が入った。

直哉が見ている。それだけで、二人のやる気は上昇した。


「ほぅ、直哉が注目しているかどうかで、ここまで能力に違いが出るのか」

そう言いながらも、闘気を練り上げて、放った。

「くらえ! 絶空!」


大きなエネルギーが二人を襲う。

「土遁:防風土流!」

以前使った《土遁:防火土流》の対風障壁版。

「コレだけでは、物理を完全に防げません」

マーリカの叫びに、

「それは、任せるのじゃ!」

エリザはそう言って、弓を操作するとエアシールドが展開された。

「これでどうじゃ!」

エリザは、正面から受け止めるのではなく、斜め下からすくい上げるように盾を構えて、絶空の威力を空へ解き放った。


「面白い!」

エリザ達が絶空をしのいだ時、リカードは既にエリザのそばへ来ていた。

「不味いのじゃ!」

「エリザ様!」

マーリカが短刀を持って前に出たが、

「ふん!」


ドゴン!


「きゃぁ」

大きな金属音と、普段聞かないマーリカの悲鳴が聞こえ、マーリカは後方へ吹き飛んだ。

直哉はマーリカが受け身を取れないと判断し、以前フィリアの為に造ったマットを取りだし、マーリカが激突しそうな壁に貼り付けた。


ボスン!


マーリカは受け身をとる事もできずに、マットにぶつかり意識を失った。

「マーリカ!」

エリザはマーリカに気を取られて、リカードを見ていなかった。

リカードは、そのエリザへ剣を突きつけていた。

「これで、勝負アリだな」

エリザは、闘っている最中だった事を思い出し、

「まいりました」

と、負けを認めて、マーリカの元へ走っていった。



その後、リカードとゴンゾーはリリとフィリア、ラリーナとエリザの四人と鍛練を行い、四人の連携についてを教え込み、マーリカが復活してからは、五人での連携を中心に鍛えていった。


直哉が自分の影武者を造るべく四苦八苦していると、いつの間にか鍛練の終わっていた全員が直哉の作成作業を見守っていた。

「あれ? どうしたの?」

「いや、直哉が物を造っている所を見るのはそうそう無いのでな。これは、直哉の身体になる部分か?」

「はい。やっぱり、疑似四肢作成だと手足は楽に造れるのですが、それ以外の身体の部分が造れなくて、四苦八苦しています」

「なるほどな、つまりは他のスキルが必要になってくる訳だ」

「そうですよね」


直哉はスキルを見て、

「この、サイボーグの書って何時何所から手に入れたのですか?」

リカードは考え、

「そういえば何時だろう? 直哉がこの世界に来てからだと思うけど、何所からだろう? どうしてそのような事を聞くのだ?」

「それがわかれば、もしかして続きがあるのかなと思いまして」

「ふむ、なるほどな。ゴンゾーは覚えているか?」

ゴンゾーも顎に手を当てて悩んでいたが、

「何所からはわかりませんが、いつかシンディア様がもの凄い本を手に入れたと言っていた記憶がある」

「あー。そう言われてみれば、偉くはしゃいでいた日と、次の日の絶望した感の差が凄かったな」

「つまり、シンディア様に聞いてみれば、もしかしたらわかるかもしれないという事ですね」

「そういうことだ」


直哉は一旦考えを切り上げた。

そこへ、アンナが晩餐会の準備がもう少しで出来るので、汗を流してから来るようにと伝えて出ていった。




◆ルグニア城


直哉達が会場に到着すると、豪華な料理が所せましと並べられていた。

「直哉伯爵一行よ、よくぞまいった。こちらへどうぞ」

「ありがとうございます」

直哉は礼を言っていつもの席についた。

リカードとゴンゾーは来賓席へ案内され、アシュリーと密かに話が出来る場所へ座っていた。



「さて、お集まりの皆様、本日はバルグフルより、第一王子であるリカード王子が和平のためやってまいりました。バルグフルと言えば、直哉伯爵を思いうかべますが、こちらは正規の王族です。これで、我がルグニアは過去のわだかまりを無くし、バルグフルと姉妹関係を築こうと思います」

アシュリーの威厳の満ちた声の中、

「お待ちなさい!」

シギノから待ったが入った。

「私は認めません。このような盗人どもと手を組むのは」

直哉は何の事か考えて、

(もしかして、バルグフルにあった預言の書かな?)


「我々が盗人とは、どういう事ですかな? 事と次第に寄っては、宣戦布告と取らせていただきますが?」

流石にリカードはシギノを睨み付けた。

「あっ!」

その時直哉は何かを思い出した。

「ダライアスキーさん! 宝物庫にあったあの本は何でした?」

「あっ! 少々お待ちください」

ダライアスキーは自室に戻り、厳重に保管していた本を持ってきた。



「まだ、解析が途中なので確定ではありませんが、恐らく、ルグニアの伝承にある預言の書です」

「何ですって!」

シギノはおろか、その場に居るルグニアの者はみな驚いた。

「では、あの言い伝えは何だったのですか?」

シギノの疑問に、

「恐れながら、先代の冗談だったとこれには書いてあります」


ダライアスキーの報告に、直哉を見て、

「まさか、貴方が宝物庫に入れたのですか?」

直哉は首を振って、

「そのような事をする意味がありませんが」

シギノは本を受け取り、中を確認すると、

「紛れも無く、これはルグニアに伝わるもの。だとしたら、私は今まで一体何を・・・・・」



アシュリーは、

「ダライアスキー! 母上を別室へお連れしなさい。また、バルグフルの方々に対しての非礼、謝罪いたします」

アシュリーはリカードへ頭を下げた。


「アシュリー殿、まずは頭を上げられよ。詳細を話してもらえると、助かるのだが」

リカードは、糾弾していたシギノが下がったため、落ち着きを取り戻した。

アシュリーは、これまでの事を話した。

母がバルグフルの冒険者を何故嫌っていたのか、半鎖国のようになっていた事、直哉伯爵に助けられた事。

「そして、今回の予言の書も直哉伯爵が見つけてくれていたのです」

アシュリーの話を聞いて、

「ふむ、という事は、アシュリー殿の母上が勘違いをしていたことが原因と言うことですかな?」

「お恥ずかしい限りです」

「それを、直哉が正しき道を示したと?」

「そうです」


リカードはちらりと直哉を見てから、

「それでは、提案があります」

アシュリーは何を言われるのかビクビクしていた。

「あちらに居る直哉を、国という枠で括るのではなく、この世界の共通の勇者として称えようと思うのだが、如何かな?」

アシュリーは、予想外の事だったので、

「どういう事ですか?」


「現在直哉は、バルグフルの伯爵であり、ルグニアの伯爵である。それを、この世界の勇者であると私たちで宣言するのですよ。無論、公の効果ありませんが、少なくとも自称ではなくなります。私たちの後ろ盾があるのだから。あとは、この世界の勇者の称号を、この世界の全ての王族が認めれば、直哉はワンランク上の存在となる。如何ですか?」

アシュリーは震えた。

「リカード王子は、私たちが認めるだけでも、彼は私たちより上の存在となる。その意味はわかっていますか?」

リカードは迷うことなく、

「もちろんです」

その姿を見て、アシュリーは決意した。

「わかりました。私も直哉さんを信じていますので、賛成します」


その答えを聞いて、リカードはアシュリーに笑顔を向けた。

「良かった。これで、直哉の事を信じていなかったら、この話は無かった事になったのでしょうね」

「そうですね。それは間違いありません」



直哉は遠くから二人が何か話していたのは見えていたが、内容は解らなかったが、シギノが退場してからは笑顔が増えて居たため、問題は無いだろうと思っていた。

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