第七十五話 直哉達の進む道
直哉は自分の納得の行く鍛練を終わらせ、リリが終わるのを待っていた。
その視線に気が付いたリリは、
「なあに?」
鍛練を中断して直哉に聞いてきた。
「先程の手合わせで使ったスキルの事を話そうと思ってさ」
「わかったの! もう少しで終わるから、それまで、待っててほしいの」
「もちろん待つよ」
リリは嬉しそうに鍛練を続けた。
直哉は全体を見渡すと、ラリーナは先程の問題点を解決すべく、色々な動きを取り入れていた。
フィリアは、いつも通りの鍛練をしていて、意識を取り戻したマーリカも通常の鍛練を行っていた。
エリザだけは、先程の鍛練を引きずり精彩を欠いていた。
「あれじゃあ、エリザの鍛練は意味を成さないな」
直哉はそう思いながら、エリザの動きを確認していた。
「お兄ちゃん、お待たせなの!」
リリが鍛練を終え、直哉の元へ走ってきた。
「おつかれさん」
直哉は、タオルを取りだして、リリの頭からかけてあげた。
「あー、いい汗かいたの」
リリが一息ついた所で、
「さっきの手合わせの時、魔法を連続で撃つなんてすごいじゃん!」
「えへへ! なんかね、新しい魔法が出来た時に、思い浮かんだの。お兄ちゃんの武器は、撃った後の魔法をある程度操作できるの。でも、撃つこと自体を操作できれば、攻撃の幅が広がるだろうし、役にたてるのかなって思ったの!」
リリは身振り手振りを入れて説明していた。
「なるほどね。ちなみに現状ではいくつ貯められるの?」
「今は一つが精一杯なの。でも、すぐにでも増やすの」
直哉はカソード時代の事を思い出して、
「そっか。でも無理すると魔法が暴走するから、気を付けてね」
「魔法の暴走?」
リリは首をかしげた。
「そう」
「どうなるの?」
「膨大な魔力が溢れだし、それが嵐となって、自分を含めた周囲を巻き込み魔法ダメージを与え、その魔力が魔法に吸われて、一気に爆発する」
カソード時代に爆死しまくった事を思い出した。
「爆発ってどのくらい?」
「吸われたMP次第だけど、最悪爆発系上級魔法と同等かそれ以上になるよ」
「うわぁ、それは恐いの」
「まぁ、ゲームだったら、死に戻りが出来るから、ガンガン暴走させられるけど、この世界じゃやらない方が良いね」
「お兄ちゃんも爆発したの?」
「うん。新魔法を造っている時に良く爆発したよ。それと、一部の敵が魔法を暴走させる能力を持っているから、それも注意しておかないとね」
「うーん。難しいの」
リリは頭を悩ませた。
少しの間、リリは悩んでいたようだが、思い出したように聞いてきた。
「そうなの! 話は変わるけど、リリは風の究極魔法を覚える事が出来るの?」
「ゲームの世界では、風の究極魔法を覚えるための下準備は問題無いよ」
「どうすれば、覚えられるの?」
直哉は昔の記憶を引っ張り出した。
「まずは、風魔法の導き手である風の精霊にコンタクトを取って、究極魔法を使えるか判断して貰い、その後、各魔法の試練を乗り越えれば、使う事が出来る」
「風魔法の導き手?」
リリは始めて聞いたようで、はてなマークが並んでいた。
「そう導き手。古い文献を頼りに各地を彷徨う事で、ようやく見つける事が出来たんだよ」
リリは興味津々で、
「お兄ちゃんの世界では、何所にあったの?」
「風魔法の導き手は、西の大草原ソラティアのどこかににそびえ立つ、風の塔にいた」
「リリ、究極魔法を覚えたいの! でも、ソラティアは遠いの」
リリは興奮してその後、ガッカリした。
「そうだね、でも、ルグニアにも魔法の導き手はいるよ。だけど、リリは下準備が出来ていないけどね」
リリは目を輝かせて、
「ここでは、何が覚えられるの?」
「氷と土の究極魔法だね」
(この、究極魔法に関しては、思いっきり探したから、良く覚えているよ)
「じゃぁ、リリは氷の究極魔法を目指して頑張るの!」
リリと直哉が話していると、
「その話しは、気になりますね。私の光魔法、及び聖魔法の究極魔法はどこで覚えられるのですか?」
フィリアが参加してきた。
「光魔法は、バラムドの教会だったな、ところで聖魔法って何だい? ゲームには無かった系統だな」
直哉は答えながら、聞いた事無い単語が出てきたので、聞き返してしまった。
「聖魔法は、光魔法の上位版です」
「火魔法と爆発魔法の様な関係かな?」
「そうですね」
「そっか、と、言う事は闇魔法の上位もあるのかな?」
「聞いた話によると、魔族魔法という系統だったと思います」
(そんな系統カソードの時代には無かったよ。大幅アップデートの時に実装されたと思いたい)
「うーん。なるほど」
「正確な名称はわかりませんが、そのような事を耳にした気がします」
「わかった。とりあえず、その二つは今はじめて聞いたから良くわからないけど、その他はわかるよ。火山の噴火にけりを付けたら、究極魔法を覚える旅に出ますか?」
直哉がみんなを見渡すと、
リリは、
「リリは強くなりたいから賛成なの!」
続いてフィリアが、
「私もです」
ラリーナは、
「私は、どちらでも良い」
エリザが、
「わらわは、レッドムーンさえ何とかしてくれれば、後は、何所へでも付いていくぞ」
最後にマーリカは、
「ご主人様と共に」
「そっか。候補に入れておこう。何にしても、このルグニアが俺たちが旅に出ても崩壊しないだけの力を付けさせないと駄目だよな」
ルグニアでやって置くべきことを考えた直哉は、
「そういえば、レッドムーンの情報が無いね」
直哉の言葉にマーリカは、
「今、アシュリー様の命令で、父様たちが本拠地を探しています」
「そっか。じゃあ、本拠地の情報待ちにするか、独自に調査するかだな」
直哉が悩んでいると、
「調査に出るのであれば、一度、父様と話して見るのが良いですよ」
と、マーリカが提案してきた。
「そうだね。でも、遺跡の調査、レッドムーンの調査、噴火の調査。ルグニアの強化。今すぐの案件がたくさんあるよ」
「やはり、手分けするのが最良ですね」
「と、言うことは、レッドムーンは忍び達、遺跡はギューサ達、噴火の事はリカード達に任せて、俺達はルグニアの強化かな?」
「それと、私達の強化ですね」
直哉の言葉にフィリアが付け足した。
「わらわも、強くなりたいのじゃ」
「もちろんリリも!」
「そうだね。俺だってもっと力が欲しいよ」
「そこに、私の銀狼関連を追加してくれ」
直哉達は今後の事を話しながら、朝食を取り始めた。
朝食を取っていると、メントールがやって来た。
朝からやって来たメントールに、
「何かあったの?」
と、聞いて見ると、興奮気味に返事が返ってきた。
「冒険者ギルドのギューサ様から、武具アイテム等の作成依頼が来ました」
直哉は喜んで、
「おぉ! 良かったじゃないですか! 出来そうですか?」
「やれるかどうかは、やってみないと判りません」
メントールは情けないと言わんばかりに返事をした。
直哉はそんな姿を見て、
「わかった。後で見に行くよ」
「ありがとうございます」
メントールは工房へ帰っていった。
メントールと別れ、城へ到着した直哉達はアシュリーと話していた。
アシュリーは直哉達のまとめた報告書を読んだ。
「昨日の遺跡に関しては新情報は無いようですね」
その後、忍びからの報告を読んだ。
「レッドムーンの拠点は近日中にわかる様です」
遺跡への対応として、
「遺跡調査は冒険者ギルドの方へ依頼を出しました」
そして、噴火に対する防衛用の装置の作成を依頼した。
「噴火に関しては、小規模の噴火は起こっているようです。そこで、降り注ぐ灰を防ぐ物を造ってほしい。そして、ルグニアの強化はもちろんお願いします」
直哉はその依頼を受け、
「それでは、工房の方へ戻ります。アシュリー様の依頼を伝えに」
「よろしくお願いします」
アシュリーの願いを聞いて、仲間にこの後の行動を聞いてみた。
「俺は工房で弟子達と作成に入るけど、みんなはどうする?」
リリは力強く、
「氷の魔法を頑張るの! 目指せ究極魔法なの!」
「暴走には気を付けて!」
「はいなの!」
直哉の応援に、リリは喜んだ。
「私は皆を守る魔法が欲しいです」
「私はリズファー流の修得に力を注ぎたい」
「わらわは、弓での戦いを鍛えたい」
「ご主人様の御身を御守りしたいです」
仲間の意見を聞いて、
「わかった。それじゃぁ、それぞれ頑張ろう」
直哉は皆と別れ、マーリカを連れて工房へやって来た。
直哉はメントールに、
「ギューサさんからの依頼は、何ですか?」
メントールは、ギューサからの依頼の紙を直哉に見せて、
「親方の持っている剣と盾が十セットと、弓と杖を五セットの依頼です」
直哉へ報告した。
「弓と杖はわかるのですが、親方の剣と盾を構成している物質がわかりません」
「あぁ、それなら教えられるよ」
直哉はそういって、予備の剣と盾を取り出して、リサイクルを発動させた。
「こっちが剣で、こっちが盾の材料ね」
「これで、造れるのですか?」
「やり方を教えますよ」
直哉は丁寧に実践しながら、教えていった。
メントールからは、具体的な質問や感覚の問題など多数の多岐に及んだが、全てを丁寧に答え、数時間後には依頼の品を揃えるとこが出来た。
「それでは、これらを冒険者ギルドの方へ納品してまいります」
メントールは、商品と納品書と請求書を携え、冒険者ギルドへ向かった。
その間に、直哉はアシュリーからの依頼をまとめていた。
(皆の力を強化するのだから、どういうものにするかは皆に考えてもらい、俺は技術的な面で口を出すことにするか)
「ご主人様、大丈夫ですか?」
急に黙ってしまった直哉を、マーリカは心配していた。
「あぁ、ごめん。考え事をしていたよ」
「アシュリー様からのご依頼のことですか?」
マーリカは状況を判断して、
「そうだね」
「僭越ながら、ご主人様がやってしまうのが、最短ではないのですか?」
マーリカなりの解決方法を提示した。
「うん。確かに俺が造れば、それなりの物が今すぐにでも出来るよ。でもね、それじゃぁ、この国は何時まで経っても俺に依存する国になってしまう。おれは、いずれ旅に出るのだから、それまでには俺が居なくても問題ないようにしておかないとね」
「そうでしたか。差し出がましい事を、お許しください」
「ただいま戻りました」
そこへ、メントールが帰ってきた。
「親方! やりました! 初仕事を終えました!」
「おめでとう! この調子で次の依頼もよろしく頼む」
「何があるのですか?」
「ルグニアを守る物を造るのだが、ベドジフさんとダヴィットさんを呼んで来てくれないか?」
そして、二人が来て、三人にアシュリーからの依頼を伝え、どうするかを考えさせた。
「灰から街を守るなら、ドームで覆ってしまえば良いのでは?」
「しかし、それでは、日光や風などが無くなるという弊害が出るぞ?」
「我々ドワーフでも、日光が必要だし、風も必要だぞ」
「ならば、天井を開けるか?」
「それでは、意味がない」
色々な意見が出ては消えていった。
「親方のご意見をお聞かせください」
メントールは、話し合いを見ていた直哉に聞いてきた。
直哉は少し考え、
「そうですね、今までの意見を合わせてみるのはどうですか?」
メントール達は驚いた表情で、
「合わせるですか?」
「そう」
今までの意見を合わせた物を考えて見ると、
「ですが、今までの意見だと、矛盾してしまいますが?」
「そこは、職人としての技が光るところでしょう」
メントール達は悩み、
「もう少しご教授をお願いします」
直哉はヒントを出した。
「例えば、俺が建てたこの工房の始めを思い出してください」
「始めですか?」
三人が工房を見ると、窓が目に入った。
「あ!」
「壁の三段階活用?」
「そうです。規模は変わりますが、基本は同じだから、何とかなると思いますよ」
直哉は、三人が直哉の考えている事にたどり着いたので、嬉しくなった。
「是非ともやり方を!」
職人達に、可変式の小さな扉を造り、さらに可変部分を大きく造り上げた。
「これは、解りやすい!」
メントール達は可変部分の仕組みを理解することに時間を費やした。
ベドジフとダヴィットは、実際に可変部分の作成をして見て、根本がわからない事は直哉がしっかりと教え、応用に関してはちゃんと考えさせた。
「こんな感じでどうですか?」
ベドジフ達は、防灰用のドームのミニチュアを完成させた。
直哉が確認すると、
「うん。良い出来ですね」
「よっしゃ!」
ベドジフ達は満足そうな顔をして、頷き合った。
「では、これと、実際にドームを造る時の費用と材料数等を計算して、アシュリー様へ報告しに行きましょう」
メントール達三人は直哉に連れられ、謁見の間へ到着した。
メントール達が平伏するなか、直哉は会釈で済ませた。
「一同面を上げよ」
メントール達は、一斉に顔を上げた。
「直哉伯爵よ、例の物が完成したと聞いたが、真か?」
「構想が完成しました。後は予算次第です」
「ふむ。申してみよ」
「ベドジフさん、例の模型を出してください」
ベドジフは、先程造った模型を取り出して直哉の前に置いた。
「こちらをご覧ください」
直哉はベドジフ達の力作を見せた。
ダライアスキーとエバーズは模型に近づいて直哉の説明を聞いた。
「このドームの様な建物の中にルグニアが入るのか?」
「そうです」
「だが、それだと、普段の生活が不便じゃぞ?」
「それは、こういう事です。ベドジフさん、お願いします」
直哉の指示でベドジフは可変部分を操作すると、ドームが完全に開き、普段と変わらなくなった。
「おぉ! これはすごい!」
二人はドームが動き、用途によって、使い分けをするというところに驚いた。
「これがあれば、問題ないのでは?」
エバーズは関心していたが、ダライアスキーは、
「これを、ただ設置しただけだと、徐々に灰がドームの天井に溜まってしまうのでは?」
「それは、これで対応します」
操作すると、水と風の魔法石が作動して、上に積もった灰を洗い流した。
「なるほど、これならば定期的に清掃が出来ると言うことですね」
「そうです。それが目的です」
直哉の説明に納得して、アシュリーを見た。
「ここまでは、良くわかった。他に機能は無いのかな?」
「もう一つあります」
直哉の指示で可変部分を操作すると、天井部分に屋根が残った状態で周囲が開けた。
「ふむ。これは、雨や灰、日差しを遮る為の形状ですね」
「その通りです」
直哉の答えに、
「弟子達の考えに直哉伯爵が助け舟を出した、という感じかな?」
アシュリーは思った事を言ってきた。
「まぁ、何れにせよ、料金の見積もりを見せよ」
直哉は、先程考えた見積もりを提出した。
「では、これより見積もり内容の精査に入る。結果は明日になるので、伯爵達はお帰りください。結果が出次第、こちらから連絡します」
そう言って、ダライアスキーを連れて、謁見の間を出て行った。




