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第六十三話 鍛冶場と宿舎と冒険者ギルド 前編

六人の要望は、

鍛冶スペースと住居スペースは分けて欲しい事。

鍛冶スペースは個室にして欲しい事。

大きな、素材の搬入や作品の搬出をやり易くして欲しい事。

造った作品を売れる場所が欲しい事。

炉や鎚等の商売道具は今使っている物を使用したい事。

等の、細かい指定が入った。


「なるほど、それでは始めに、建物を建てる範囲に柵を造りますか」

直哉は木材を使用して柵を造り、出していった。

「建てるのは、冒険者ギルド、鍛冶場、住居になります」

そう言いながら、建物の大きさを計算しながら、柵の場所を指示していった。


「お兄ーちゃーん、この辺?」

リリが奥から声をかけてきた。

「もう少し右によって!」

「ご主人様! このまま進むと、森が邪魔なのですが」

マーリカの声が頭に響いてきた。

「それなら、メントールさん達を連れて、邪魔な部分は伐採してくれる? 切った木は、素材として使うから乱暴に扱わないように伝えてくれる?」


直哉は、リリとマーリカに指示を出しつつ、必要数の柵を造ったので、MPの確保を始めた。

「マリオネット!」

いつもの宝玉をマリオネットで接続して、MPの回復量を見て、

「これなら、建物を造ってもMP切れにはならないよな」


直哉は、スキルを発動して、鍛冶場の建物を造っていった。

(まずは、10×10メートルの巨大な四角を造って、床と天井、左右の壁は燃えにくい石系の素材を重点的に、鉄や鋼を混ぜて造る。前後の壁は、ギミックを操作して、三段階の開け方が出来る壁にしたけど、使い勝手はどうだろう? 使ってみて貰ってから聞いてみよう)


一段階目は窓のように開ける事が出来、二段階目は扉のように開けられ、三段階目は壁そのものが開き大型の物を簡単に出し入れする事が出来る仕組みになっている。前後両方開くので、表側裏側どちらからでも、搬入出出来るように設計し、ここまでを、スキルに登録した。


(よし、この位なら消費MPが少ないぞ!)

そう思いながら、鍛冶場の配置を考えていた。

これを二列つくり、内側に出入り口を向けて配置する。間は30メートル空けておき、そこに販売用の店と住居となる建物を配置する。鍛冶場から販売スペースまで、そのまま進めるような


(鍛冶場は一部屋ずつ建てていく事が出来るから、必要に応じて建てて行けるな)

次に、酒場兼宿屋兼冒険者ギルドの構想を始めた。

(まずは、一階は酒場、二階がギルド、三階から宿屋、最上階には風呂場を完備する。後は、宿屋をどの位造るかが問題だな)

バルグフルにある直哉の屋敷を参照しながら、各フロアを造り上げていった。

(良し! 登録完了!)


さらに、販売スペース、住居の作成に入った。

一階部分は販売スペースを造り、その上に住居スペースを付け足した簡単な物であった。

(これも、登録完了! これで、大まかな形が出来た。あとは、建ててみてから細かい修正は、メントールさん達に任せるかな)

直哉の造る建物は、一部屋毎完結しており、部屋の増改築がやり易くなっていた。



「親方!柵の配置が終わりました!」

直哉は確認して、問題が無かったので次の段階へ移行した。

「よし、順番に造っていきますか」

MPを確認して、最大になっているのを確認した。



「まずは、鍛冶場を造ります」

直哉は、スキルを発動させ、先程登録した鍛冶場を選び、選択された素材が全て有ることを確認して、実行した。


ドーン!


と、指定した場所に、土台部分が出現した後で、一部屋完成した。

「おぉー? 小さくない?」

メントール達は、置いた柵に比べて遥かに小さい建物に困惑していた。


「さぁ、中を確認しましょう」

直哉はギミックを第二に合わせると、扉として使用出来るようになった。

直哉に促され、中に入ると、何もない空間が広がっていた。


「ここから人数分、区切るのですか?」

バーヴロヴナの質問に、

「いいえ、これで一人分です」

「あぁ! そうですか! 良かった!」

安心したようで、床や壁の材質を確認していった。


「搬入口は何処ですか? 先ほどの扉だと、炉や素材が入れられないのですが」

ダヴィットが不思議そうに聞いてきた。

「それはですね、ここを、こうしてから」

直哉はギミックを操作して、壁全体が動くようにセットして動かした。

先ほどの扉もろとも、壁が上にせり上がっていった。


「壁自体が無くなるとは! スケールが大きすぎる!」

ミハイロヴィチも、直哉の考える事の桁違いさに驚きを隠せないで居た。

「反対側にも同じギミックを用意してあります」


メントール達はギミックの操作を覚え、操作していった。

「あのー、親方。よろしいですか?」

ベドジフが恐る恐る聞いてきた。

「何でしょうか?」

「この壁のギミックですが、扉は常に出すようにして、窓をもっと大きな物にして貰えませんでしょうか?」


「えぇ、出来ますよ? 皆さんはどうしますか?」

皆の意見をまとめると、扉と窓は常にあった方が良いとの事なので、段階別ギミックを無くして、壁の開け閉めのみの操作に切り替えた。


「では、部分的に変更するので、壁から、離れてください」


直哉は、壁の部分を変更して、メントール達が納得した所で、登録してあった鍛冶場のデータを更新した。

そして一列に五箇ずつ、計一〇個のスペースを造り上げた。

「内装は、皆さんにお任せします」

そう言って、消費したMPの回復のため休憩していると、リリとマーリカが寄ってきた。



「お疲れ様です」

「お疲れなの!」

「二人とも、お疲れ様」

三人がくつろいでいると、メントール達は各々の場所から自分の荷物を運び込んでいた。

よく見ると、忍びの里で消火作業をした時に造った台車と同じような大きな台車を使い、一気に運び込んでいた。


「あっ、親方! 鍛冶場が完成したら呼びに行きますので、親方達は、お屋敷で休んでいてください」

「僕たちも鍛冶場が整えば、お手伝い出来ますので!」

メントールとベドジフは直哉を気遣った。

「そう? それじゃぁ、屋敷で休憩してくるけど、何かあったらすぐに呼んでください」

「了解!」

三人は屋敷に戻った。




◆直哉の屋敷


「直哉様お帰りなさい」

フィリアに出迎えられ、食堂でお茶を飲みながら休憩していた。

使用人たちも次々と挨拶しながら、割り振られた仕事をこなしていった。

「そういえば、ラリーナとエリザは?」

「地下の鍛練場でエバーズさん達の相手をしています」

「あぁ、鍛練に来ていたんだね」


直哉は納得して、お茶の続きを楽しんでいた。

「お兄ちゃんは行かないの?」

「このお茶を飲み終えたら、挨拶しに行くよ。リリとマーリカはどうする?」

「リリも行くの!」

「お供いたします」

直哉はお茶を飲み干し、

「それじゃ、挨拶しに行きますか」

そう言って、地下へ降りていった。


地下では、ラリーナとエリザ、そしてエバーズとアンナ、さらに近衛騎士達が所狭しと鍛練をしていた。

中でもエリザはアンナと近衛騎士達を相手に、近接戦闘の鍛練をしていて、弓を器用に振り回してアンナ達を圧倒していた。

「せぃせぃせぃ!」

「ぐぁ!」

「うわ!」

近衛騎士達は蹂躙され、アンナも防戦一方であった。



「うー!」

隣にいたリリが、ウズウズし始めた。

「リリも行ってきたら?」

「良いの?」

「大丈夫だと思うけど。エバーズさん!」

直哉はエバーズに声を掛けた。


「おぉ、直哉伯爵、鍛練場を借りてるよ」

「どうぞ。その鍛練にリリを加えて貰っても良いですか?」

「もちろん。俺一人じゃラリーナさんを押さえるのが困難だったのだよ」

リリは喜びながら、

「それじゃぁ、行ってくるの!」

直哉も一緒に鍛練してくれると思っていたエバーズは、

「あれ? 伯爵は鍛練していかないのかな?」

「はい。俺は西門前の建築がまだ残っていますので」

「そうか、それは残念だ。仕事が終わったら、是非鍛練を頼むぞ」

「わかりました。では、リリをお願いします」



直哉はマーリカを連れて一階に戻ってきた。

そこへ、屋敷での作業を指示していたフィリアがやってきた。

「あら? リリちゃんは鍛練ですか?」

「そうだね、エリザが強くなっていたのを見て、ウズウズしていたよ」

「なるほど、リリちゃんらしいですね」

フィリアは直哉に合流してくつろぎの時間を過ごしていた。



しばらくすると、メントールが呼びに来た。

「親方様! こちらの準備が出来ました!」

直哉は肯いて、

「わかった、それでは販売スペースの建築に取りかかりましょう」

「私も一緒に行きます」

「それでは、後の事はお願いします。行ってきます」

直哉はイザベラに後の事を託して、西門の方へ向かった。




◆西門 建設予定地


直哉が鍛冶場へ戻ってくると、若手達が内装用の家具を造り始めていた、

(ここから、ルグニアを鍛冶場の街として大きくしていけたら、俺も嬉しいな)

直哉はそう考えながら販売スペースの建設を始めていた。

(まずは、一階の販売スペース部分だ。二階以上の重量を支えるための柱を置いて、どのように区切るかはメントールさん達に任せよう。それと、販売スペースと鍛冶場の間には透明な屋根を配置すれば、雨が降り注ぐ日でも、問題無く販売スペースまで運べるだろう)

直哉は巨大なアーケード街を意識しながら、工場と販売所が直結するような場所が出来たら良いと思いながら造り上げていった。


「ほぇー。親方の考える事は俺たちの斜め上を行ってますぜ!」

バーヴロヴナは透明な天井を見て、唸っていた。

「これなら、鍛冶場にそのまま販売所を設けても良いな」

オルドジフは、そんな感想を言っていた。

「さて、販売所も造ってみたのですが、どうですか?」

直哉はメントール達を呼んで、感想を聞いてみた。


「正直なところ、わかりませんと言うのが精一杯です。何ですかこの空間は!」

メントールが興奮しながら詰め寄った。

「一応、透明な屋根の所で、外で使う商品を並べ、上に住居スペースを建造予定の場所には、室内で使う商品を並べれば、見た目が生きてくるのかなって思ったのですが、見当違いでした?」

「そんな事まで考えながら建てていたのですか?」

バーヴロヴナは驚き、外と中の違いを見比べていた。


「何処をどのように使えば良いのですか?」

ミハイロヴィチは頭を悩ませていた。

「俺が勝手に造っても、足りないところや要らない部分が出てくると思うので、使う皆さんにお任せしますよ」

直哉は問題を丸投げした。

しかし、メントール達は任される事が嬉しいようで、

「はい! お任せください!」

と、大見得を切っていた。


直哉はMPを回復させるため、休憩していた。

その前をメントール達が、所狭しと自分たちの活動拠点を構築していった。

販売スペースは、人が流れやすいように通路を造り、なおかつ、鍛冶場から搬入しやすいように、搬入用のレールを造っていた。

「流石ですね。見習いなのに、ここまでの仕事が出来るとは思いも寄らなかった」

ルグニアの鍛冶レベルの高さに驚きを隠せなかった。


十分に休んだ直哉は、上の階を造り始めた。

「おぉー、さすが親方様! あっという間に居住区が出来上がったぞ!」

メントール達は、販売スペースに加え住居スペースを整えていった。


「ここね!」

ドワーフの集団がやって来た。

「あなた方は?」

「私たちは、メントール達の知り合いです。この住居スペースと販売スペースの管理を任されました。親方様。以後お見知りおきを!」

「よ、よろしくお願いします」

直哉は気圧されていた。

「おぉ! よく来てくれた!」

メントールが話しかけてきた。

「ちょっと! 親方様に話をしてくれてないから、親方がビックリしているじゃないですか!」

「いやぁ、すまんすまん」

どうやら、本当に知り合いだったようなので、

「それでは、この場はお任せいたします」

直哉はメントール達に後を任せてMPの回復に努めた。



しばらく回復に専念していると、軽い感じの人間族の男が近づいてきた。

「どもー、こんちわーっす。ギューサです。ここに冒険者ギルドの支部が建つって聞いて、職員を連れてきたのですが、これが支部ですか?」

「どうも、始めまして、上級鍛冶職人の直哉です。支部はあちらが建築予定地です」

そう言って、柵しかない場所を指差した。

「あらら。まだ早かった見たいっすね。それじゃ、こっちは何ですか?」

「こっちは、鍛冶場とその販売所です」


直哉の言葉に、頷いて、

「なるほど、冒険者ギルドの横に大規模な販売所が出来るっすね。ここは、鍛冶場で造った物のみを販売する予定っすか?」

「それは、まだ考えていませんが」

「だったら、食料品とか色々売ってる場所にしてくれたら、今後こちら側が大きく発展するとおもうんだけど、どうっすかね?」

ギューサの提案に、

「中々面白いですね」

直哉は納得していた。


「それで、冒険者ギルドはどのくらいで出来るっすか?」

ギューサの質問に、残りMPを見て、

「そうだ! 新しく建てる冒険者ギルドは、一階に酒場、二階がギルド、三階より上が宿屋、最上階にお風呂としても良いですか?」

ギューサは腕を組みながら、

「建物に関しては、お任せします」

「宿屋はどのくらいの規模を考えていますか?」

「その宿屋は、後で部屋数を追加できるっすか?」

「もちろん出来ますよ」

ギューサは目を輝かせ、

「それなら、今のところ必要が感じられないので、三階のみ宿屋としてください」

「わかりました」


直哉は、階数を設定してスキルを実行した。


ドーン!


冒険者ギルド支部の建設予定地に四階建ての建物が現れた。

「おぉ! これが噂の勇者専用スキルっすね! 良いなぁ、俺も欲しいっす」

直哉は、汗を拭いながら、

「流石に、教えられないと思いますが」

「わかっているっす。では、職員の皆様! この建物を攻略しちゃいますよ!」

そう言って、職員たちと共に、冒険者ギルドの中に消えていった。



(ふぅ、とりあえず大まかな建築は終了したな。後の細かい所は、メントール達に任せておけば問題ないかな? 部屋の使い方は、イザベラとジンゴロウを派遣することにしよう)

そんな、直哉の意図を読み取ったのか、

「ご主人様、イザベラさんとジンゴロウさんを呼んでまいります」

マーリカはそう言って屋敷の方へ走っていった。

「じゃぁ、俺たちは何も問題が起きないことを祈りながら、ここで休憩でもしますか」

フィリアにそういうと、フィリアは喜んだ。

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