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第六十話 地下迷宮の実態

◆宝物庫


「新たに怪しいと思った箇所は、入り口横にある四角い枠と、本棚の壁に密着している部分、最後にアシュリーに似た女の人の石像だね」

入り口横の四角い枠は入ってすぐ右手側の壁にあり、本棚は部屋の右奥、ダミーだった扉は正面奥、アシュリー似の石像は部屋の左奥にあった。

「さて、入り口の枠から調べるか」

直哉達は入り口へ戻った。

「直哉伯爵!」

そこへ、ダライアスキーがやってきて、


「直哉伯爵は宝物の箱を開けることが出来ますか?」

「えっ? どういう事ですか?」

「それが、どの箱も開ける事が出来ないのですよ。本棚にも何らかのロックがかかっているのだと思います」

「なるほど、試して見ましょう」

直哉は目の前の剣と盾の入った強化ポリカーボネートの箱を開けようとしたが、

「あれ? つなぎ目が無い? 鍵穴と言うか台座にめり込んでいますね」

「そうなんですよ。強引に開けようとしても、びくともしないので途方にくれていました」

「それは厄介ですね」


直哉は気になっている箇所をダライアスキーに伝えた。

「そうか、ならばそこの入り口のから調べよう」

そう言って、入り口の四角い枠を調べ始めた。ほこりを払うと、冒険者ギルドにあったスキャンパネルの様な模様が浮かび上がってきたが、真っ黒だった。

「電源が入っていないような感じだな」

ダライアスキーの言葉に直哉はハッとした。アイテムボックスから壁画の欠片を取り出して、

「これを入れる場所が、どこかにあるのかも」

そう言いながら溝を探し始めた。


「ご主人様! こちらでは?」

マーリカが、入り口の反対側に溝があることを発見した。

「さすがマーリカちゃん!」

そう言いながら壁画をセットすると、四角い枠は赤く光り始めた。


「かざして見ますか」

直哉が手のひらで枠に触れると、

「スキャンを開始します」

で、電子的な声が聞こえ、枠の色が黄色に変わった。

「ビックリした」

直哉が驚いていると、

「貴方には資格がありません」

という声と共に、枠の色は赤に戻った。


「一応、みんな試して見ましょう」

直哉の提案により、その場の全員が試して見たが、誰一人資格が無かった。

「さて、ますますわかりませんな」

ダライアスキーは首をひねっていた。


「ここは、ルグニアの宝物庫なのじゃ、つまり、ルグニアの血を引くものが資格の持ち主ではないのか?」

「と言う事は、アシュリー様のみという事ですか?」

「おそらくじゃがの」

直哉は考えて、

「試してもらう価値はありますね」

「では、私が呼んできましょう」

ダライアスキーはアシュリーを呼びに行った。


「俺たちはその間に、他の二箇所を調べておきましょう」

直哉の提案により、アシュリー似の石像へ集まった。

「しかし似ているような、そうではないような」

直哉がじっとその石像を見ていると、

「お兄ちゃん、何処をそんなに見ているの?」

「えっ?」

直哉がリリのほうを見ると、フィリアとラリーナもジト目で直哉を見ていた。

「あ、いや、そんなつもりはなかったのですが」

「わかっていますよ」

直哉は皆に笑われてしまった。



「でも、この人誰なんだろう?」

直哉が頭を捻っていると、エリザが傍にやってきて、

「姉上に似ておられるが、ドワーフっぽいの。おそらくじゃが、ルグニア様じゃと思う」

「ルグニア様?」

「そうじゃ、この国を建国したお方じゃ」

「なるほど、それほどの人なら石像になっていても不思議ではないか」


直哉達は、石像を調べなおした。

「石像自体には特別何も無いな」

直哉はそう言ったが、

「いいえ、ご主人様。内部は精巧な機械仕掛けになっております」

「そうなの? じゃぁ、表面を破壊して中を露出させれば良いのかな?」

「それは止めてください」


後ろから女性の声が聞こえてきた。

「お姉様!」

「アシュリー様」

直哉達は頭を下げた。

「随分早かったですね」

「あなた方が無茶なことをする前に駆けつけさせていただきました」

「なるほど、信頼無いのですね」

「直哉伯爵達が城の壁を破壊したのはつい最近ですから」

直哉はがっくりと膝をつき、

「それは、俺だけのせいでは」

「だから、直哉伯爵達と言ったのですが」

「ぐぬぬ」

直哉は言いくるめられていた。


「それにしても、女性の石像をくまなく探している直哉伯爵は、機から見るとヘン○イですね」

「ちょっ! その言われようは酷くないですか?」

直哉はまたしても笑われていた。

「むー」


「さて、私はどの部分に手をかざせば良いのだ?」

アシュリーの言葉に、

「こちらです」

直哉は入り口まで案内した。



「この部分に手をかざしてみてください」

「わかった」

アシュリーが枠に手をかざすと、

「スキャンを開始します」

で、電子的な声が聞こえ、枠の色が黄色に変わった。

「ふむ、これは中々のからくりだな」

アシュリーが驚いていると、

「お帰りなさいませ、ルグニアの御子孫様」

という声と共に、枠の色は青く光り輝いた。

「おぉ!」

皆が見渡すと、あちこちの宝物が入っているケースがスライドしていった。


「なるほど、ルグニアの血が鍵になっていたのですね」

直哉は納得したようで、

「さて、先ほどの石像のところへ戻りますか」

「気に入りました?」

アシュリーはいたずらっ子のように微笑んだ。

「まぁ、気にはなりました。恐らく鍵の一つだと思ってます」


直哉達が石像の調査を進める中、ダライアスキー率いる調査隊は宝物や本棚を調べた。

「ご主人様、こちらにレールが出現しております」

マーリカはそう言いながら、長年放置されて溜まっていた埃を払った。

「行き先は最初に見た壁画の所?」

そう言いながら、石像をどうやって動かすのかを考えていた。

「力技しかないのか?」

直哉の言葉に、

「ならば、わらわの出番じゃの!」

エリザが力を込めた。


ゴリゴリゴリゴリっと、石像を押していく音が響いた。

「凄いな」

直哉は感心していた。

「リリには無理なの」

「私にも無理ですね」

リリとフィリアはつぶやいた。


しばらくして、四角い枠の上まで石像を運びこんだ。

すると、台座の下部分にあった接続部分が、四角い枠と接続した。

石像からまばゆい光が輝きだして、正面の壁画が輝きだした。一部を除いて。

「あれ? 何か出来てきたの」

リリが驚いていた。その横でラリーナが驚愕していた。

「私の攻撃したところが欠けている」

「あらら」


直哉達が愕然としていると、壁画に現れたルグニアが話しかけてきた。

「何の用じゃ? ルグニアの民では無いものよ」

「えっ? 何でそんな事がわかるの?」

直哉の疑問に、

「私はルグニア。この石像に我が技術の全てを注ぎ込んだ。私であって私でない者」

「人工知能か!」

「ほぅ。この私の技術を理解できるものが居るとはな」

ルグニアは感心していた。


「私はバルグフルの鍛冶職人、直哉伯爵です。上級鍛冶職人を目指しております」

「ほほぅ」

ルグニアの目が細まり、直哉の能力を値踏みしていた。

「非常に高い鍛冶能力があるな。上級鍛冶職人への能力は良し。後は適性だけだな」

「どうすれば、上級鍛冶職人になれるのでしょうか?」

「鍛冶職人のランクアップか。それなら、我が試練を受けよ。合格すればランクアップするための方法を教えよう」

ルグニアの言葉に、

「それは、誰でも受けられるのですか?」

「残念ながら、鍛冶能力が一定以上でなければ無理だ」

「それでは、この国の鍛冶職人たちであればどうですか?」

直哉の提案に、

「それは、この目で見て見ないことには、何とも言えないな」


直哉はアシュリーに、

「ここで、鍛冶職人たちの昇級試験を、受けさせる事が出来ると思います」

「なるほど、ダライアスキー! 鍛冶職人たちへの手配を」

「承知いたしました」

アシュリーの依頼によりダライアスキーは、鍛冶職人達への通知を手配した。

「まずは、俺をお願いします」

直哉の言葉に、

「わかった。それでは、階段に進むが良い!」

そういうと、壁に密着してた本棚が移動して、下に降りる階段が現れた。


「よし! みんな行こう!」

「待ちなさい」

ルグニアは直哉達を止めた。

「何でしょう?」

「そこから先へは、鍛冶職人のみが進むことが出来る」

「えー、お兄ちゃんと一緒に行けないの?」

リリ達は不満タラタラであった。

「仕方ないさ。俺だけで行って来るよ」




◆試練の間


直哉はリリ達と別れ、階段を降りて行った。

「ここが、試練の間か」

狭い無機質な空間に、コンソールがポツンとあり、そこに文字が表示していた。



コンソールの文字


貴方がなれる上級鍛冶職人一覧です。

高等鍛冶職人:全ての鍛冶スキルを覚える事が出来るが、必要スキルポイントが高くなる。

武具職人:武具作成系統のスキルを中心に覚える。他系統はスキルレベルの最大が5になる。

装飾職人:アクセサリ作成系統のスキルを中心に覚える。他系統はスキルレベルの最大が5になる。

アイテム職人:アイテム作成系統のスキルを中心に覚える。他系統はスキルレベルの最大が5になる。

家具職人:家具作成系統のスキルを中心に覚える。他系統はスキルレベルの最大が5になる。

大工:大工系統のスキルを中心に覚える。他系統はスキルレベルの最大が5になる。

戦闘鍛冶職人:戦士系統のスキルを中心に覚える。鍛冶職人の全系統はスキルレベルの最大が7になる。



(これは、ヘーパイストスさんの情報通りだな)

直哉は迷わず高等鍛冶職人を選択した。

「現在このクラスの人物は居ません。本当によろしいですか?」

何度目かの確認を終え、前方で膨大な魔力が膨れあがり、それが終わると、正面に扉が現れた。


システムの声

「それでは高等鍛冶職人への試練を開始します。全部で五つの試練を受けてもらいます。まずは、第一の間へお進みください」

直哉は声に従い部屋の中へ入っていった。




◆第一の試練


闘技場のような場所に出た直哉は、周囲を確認していった。

透明の壁の向こうには、地面に赤い線で大きな円が描かれていて、その傍には各種武器が置いてあった。


「ここでは、武具の知識の確認をします。赤い円の中にモンスターが出現しますので、側に置いてある、武具を使い己の力量を示せ」


直哉が中に入ると、後ろの扉が閉まり、後戻りが出来ないようになった。

(まぁ、戻る気は無いけどね)

直哉は武具を確認すると、武器は片手剣をはじめ、両手剣、槍、薙刀等近距離武器と、クロスボウ、弓の遠距離があり、防具は軽装、重装、が置いてあった。

(これって、持って行けるのかな?)

直哉がアイテムボックスに仕舞おうとすると、


「システムエラー、このアイテムは入れられません」

「なんだ、持って帰れないのか」

直哉はがっかりしたものの、気を取り直して試練に望んだ。

(出てきてる敵はオークが中心で、ゴブリン、コボルトも居ると、ただ、遠距離系が居なさそうだから、押し切れそうだな)

はじめに軽装と剣と盾を装備して赤い円の中に入ると、ゴブリン達が襲いかかってきた。


「はっ! せぃ!」

ガツン! ザシュ!

直哉はいつもの鍛練のように、剣と盾を使い、ゴブリンを圧倒していった。

少しの間、戦っていると、出口の扉の上にある枠が二つ青く輝いた。

(なんだアレは?)

直哉はゴブリンの攻撃を避けながら、その枠を確認すると、片手と軽装が青く光っていた。

(つまり、この武具はクリアという事かな、しかし、どうやって軽装から重装に変更するのだろう?)


その時、勢い余って赤い枠を出てしまった直哉は、

「ありゃ、試験会場から出ちゃったよ」

と思ったが、ペナルティ等の警告はなく、敵も線からは出てこなかった。

「ふむ、危なくなったら線から出ればよいのか」

直哉は臨機応変に武具を替えて試練をこなしていった。



弓を引き矢を放ったところで、全てのランプが青く輝いた。

「あれ? 最後の弓は攻撃が当たらなかったのに合格になったな」

そして、モンスターは消え赤い線も消えた。

「これにて第一の試練を終了する」

ルグニアの声が聞こえ、

「あれ? もう終わりですか?」

直哉は聞いてみた。


「基本的な武具の知識、最低限の戦闘力を有している事が判りました」

ルグニアの言葉に、

「なるほど。そう言う事でしたか」

と納得した。

「第一の試練は合格です、次の部屋へ進んでください」

「了解した」

直哉は、ルグニアの言葉に従い次の部屋を目指した。




◆第二の試練


部屋に入ると、一見すると何も無い空間が広がり、大きな穴が開いている様に見える。

だが、部屋の入り口を入った正面に、透明な壁があるのか赤い枠が空中に入り口を作っていた。

ご丁寧に、赤い枠の上には、入り口と書いてあり、部屋の反対側には出口と書かれた赤い枠があった。


「ここでは、集中力を確認します。その扉の向こうには透明な壁で造られた迷路があります。武具アイテムを一切使わずに己の力量を示せ」


(まぁ、入り口でボーッとしていても仕方がないか)

直哉は両手両足、さらに五感全てを総動員して透明の壁が、有るか無いかを確認しながら進んでいった。

(これは、大したことないな。コレの何処が集中力を要するのだろう?)

と、考え事をしていると、急に床の感覚が無くなった。

「おっと。あぶねぇ、透明な床の落とし穴って、酷くないっすか?」

と、愚痴をこぼしながら、さらにゆっくりと進む事になり、

(なるほど、いつ床が無くなるかを気遣いながら進むというのは、以外と集中力が必要なんだな。しかも、ただの道ではなく、迷路になっているから、余計時間がかかるよ。なんて厄介な所なんだ)


直哉は、一時間以上掛けてようやく出口にたどり着いた時は、疲労困憊で座り込んでいた。

「コレでどうですか?」

直哉の問に、

「これにて第二の試練を終了する。第二の試練は合格です、次の部屋へ進んでください」

とルグニアの声が聞こえた。

直哉は少しの間休憩してから、次の部屋へ進む事にした。




◆第三の試練


この部屋も先ほどの部屋と同じく、何も無い空間が広がっていて、大きな穴が開いていた。

違うのは穴の傍にある地面に赤い線があり、その中に木や石などの素材が置いてあった。


「ここでは、柔軟性を確認します。穴の上を渡るためのアイテムを、穴の手前にある赤い枠の内側にある素材を使い、造りなさい。但し、素材は意図的に足りなくしてあります。足りない部分は柔軟な考えを働かせ渡れるようにせよ」


(ふむ、柔軟に考えても、素材は増えないよな。さてどうするかな)

「俺が飛んでいっても、駄目だよな。おそらく頑張れば飛べそうなんだけど」

「それは、お勧め出来ないな。一応鍛冶職人の試練だから、その力を見せないと意味がないぞ」

直哉のつぶやきに律儀に答えが返ってきた。

「ふむ。そうだよな」


(さて、どうするかな。木と石じゃ、増やす事は出来ないし)

直哉が素材を確認していると、地面が他の部分と違う事に気がついた。

(何でここだけ床の素材が違うのかな? まさか!)

直哉はアイテムボックスから発掘セットを取りだした。

(よし! 岩の素材が手に入った。つか、コレを使って橋にしてよいのかな?)

その後、反対側までの橋を造りそれを渡った。



「これで、どうだ!」

「うーん、一応赤い枠の内部にあった物か。まさか、床を掘って素材にするとはな」

ルグニアは少しの間考えていたが、

「よし、合格とする」

「何が問題でしたか?」

直哉が聞いてみると、

「鍛冶職人として、床を掘るのは如何なものかと考えていたが、実際は素材を集めに発掘する事もあるだろうから、ここは貴方の柔軟性として評価しました」


ルグニアが納得していなかったようなので、

「どうすれば、正解だったのですか?」

と聞いてみた。ルグニアは、

「一つは鉱石変化を使って、石を大きな鉱石へ変化させたり、同じパーツを複製するスキルを使って、素材の使用量を減らしたりするのを狙っていたのです」

直哉は手を打って、

「なるほど、そういった方法が、あったのですね」

直哉は感心しながら、次の部屋へ向かった。

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