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第五十六話 崩壊した忍びの里で

◆忍びの里


大広場へ到達した直哉達は、その場に横たわっている怪我人の多さに驚きを隠せないでいた。

(こりゃ、MPの限界まで回復薬を造り出すことになりそうだ。それに、家も造らないといけないかな)

「戦闘は終わったのかな? 一応周囲の警戒をしながら消火活動をやってください」

「わっかりやした!」

若手の鍛冶職人たちは、直哉の指示通り消火活動を続けていた。


直哉はフィリアにお肩を貸しているラリーナに、

「フィリアとマーリカの事を頼むね。俺は、情報を集めに行ってくる」

「わかった。この場は任せよ。それと、行くなら回復薬を置いていってくれ。フィリアが回復したら、この場の人々を見てもらうから」

「了解」


そう言って、回復薬100本、MP回復薬100本をアイテムボックスから取り出して、ラリーナの前に並べた。

「相変わらず出鱈目な本数だな」

ラリーナは呆れながら薬を並べていった。

「それじゃあ、ここは任せるよ」

ラリーナに後を託して奥へ進んでいった。



(この辺は火災は少なく、倒壊した建物が多いな)

そうやって、周囲を警戒しながら進んでいくと、奥からリリとエリザが担架を使って負傷者を運んできた。

「あー、お兄ちゃんなの!」

「直哉殿、身体は大丈夫なのかえ?」

「二人とも大丈夫だった? 俺のほうはすっかり良くなったよ」

直哉はリリの頭を撫でながら答えていた。


運んでいるのは男性で、忍び装束を着た渋いおじさんであった。

「こちらの方は?」

「さっきまで、一緒に戦ってくれていたおじさんなの! すっごく強かったの!」

「敵が居たのかい?」

「そうなのじゃ、鳥型の魔物が複数居てな。風の魔法を使ってくるので、わらわの出番があまり無かったのじゃ」

エリザは不満そうにつぶやいた。

「なるほど。また、敵は残っているの?」

「もう全部倒したの!」

「現在、エバーズ達が周囲の警戒に当たっているのじゃ」


直哉は負傷者の傷を見て、

「この足じゃ、動くのは厳しそうだね」

直哉は、振りかける傷薬を数本取り出し、足の傷へ振りかけた。

「うっ。くっ」

傷が治っていく感覚に戸惑いを見せた忍び装束の男が口を開いた。

「世話をかける」

「いえ。それにしても酷い怪我ですね。敵はそんなに強かったのですか?」 

「弱くはなかったが、拙者一人でも何とか回避し続ける事は出来たのだが、リリ殿があまりにも楽しげに空を飛ぶのでな、拙者も飛びたくなったのだ」


「えっと、つまり?」

「リリが気持ちよく空を飛んで敵を倒していたら、おじさんも飛んできたの! そのまま、お空で敵を倒した後、おじさんは落ちたの」

「えー」

「いやー、かたじけない。しかしリリ殿が操る風は中々に荒々しい。拙者も感服いたした」

「とにかく大広場で休憩していてください。大広場までの火災はだいぶ鎮火しました」

「恩にきる」

「この先の大広場でラリーナがフィリアとマーリカを見てくれているから、そこまで運んでいってくれる? 俺は、エバーズさんに会いに行ってくるから」

「マーリカだと!」

マーリカの名を聞いた忍び装束のおっさんが、直哉に飛び掛る勢いで聞いてきた。

「はい。俺たちに助けを求めてきました」

「そうか、それでエバーズ達も来てくれているのだな。あの子にも礼を言わねばな」

「じゃぁ、リリ、エリザ、後は任せて大丈夫かな?」

「任せてなの!」

「ああ。任せるのじゃ」

直哉はリリたちと別れて、更に奥へと進んだ。



奥は、血のにおいが充満していた。

(くっ。これは酷いな)

身体を切断された遺体と、誰の物かわからない四肢が至る所に散乱していた。


エバーズが直哉を見つけてやってきた。

「そっちはどうだい?」

「広場で消火活動中です。ここは酷いですね、人の死がこれほど壮絶なものだとは。向こうは全て燃えてしまっていたので、見た目にはわからなかったです。ただ、消火した建物からご遺体を運び出す時が辛いですね」


直哉が辛そうにしているのを見て、

「埋葬関係は、ダライアスキー達に任せよう。直哉伯爵には他にやってもらいたいことがある」

エバーズは他の役目をやって貰う事にした

「何でしょうか?」

「怪我人を治療するための場所を造って欲しい」

「どのくらいの規模ですか?」

「出来るだけ大きくして欲しい」

直哉は考えて、

「この辺りだと、俺の土地では無いので、整地する必要が出てきますが」

「それは、ダライアスキーに言って、直哉の領地にしてしまおう。それなら、あの力が使えるのだろう?」

「そうですね、わかりました、その話はダライアスキーさんと詰める事にします」

「よろしく頼む」

「それでは、戻ります。エバーズさんはどうしますか?」

「俺も戻ろう」

エバーズは直哉に言った後で、奥のアンナに向けて、

「アンナ! この場の指揮は任せる。後ほどダライアスキーと共に来るからそれまで頼む」

「承知いたしました」

アンナが承知した事を確認してその場を後にした。


「大広場の方は酷い火災だっただろう?」

「はい。ですが、そろそろ鎮火していると思います」

「何か秘策でもあったのかな? って、なんだアレは!」

直哉と話している最中に、直哉の造り出した簡易消火風呂が目に入り驚愕していた。

「アレが秘策ですよ」

そう話していると、台車を押していた若手職人達が、


「親方! もう少しで全ての建物の消火が終わります!」

「ありがとう。終わったら水の魔法石を外せば水が止まるので、外しておいてくださいね」

「わっかりやした!」

そう指示を出す直哉に、

「親方とは、随分と懐かれたものだな」

「俺には勿体ない方々ばかりですから、不思議です」

「それだけ、直哉伯爵の実力が本物だという事だな」

「恐縮です」



直哉達が大広場に戻ると、リリ達がフィリアの指示の元、大忙しで怪我人の選別をしていた。

「ただいま」

「直哉様!」

「お兄ちゃん!」

「直哉!」

「直哉殿!」

みんなは直哉のところに寄って来そうだったので、


「みんなは、そのまま作業を進めて! 俺も参加するから。エバーズさんもフィリアの所に来て下さい」

直哉はフィリアの元へ行き、状況を確認していた。

「さて、どのような並びにしているの?」

「私から見て、左側から緊急性の高い方を並べております」

「わかった。俺は緊急性の高い方に回復薬を振り掛けていくよ」

「マリオネットをお使いですか?」

「そのつもりだよ。マリオネット!」

直哉は最大本数を出して、全てに振り掛ける回復薬を持たせた。

フィリアは立ち上がり、


「怪我人の皆様! これより我が夫である、勇者直哉が皆様の傷を癒すべく、勇者の力を使い神の手を行使いたします。傷薬を使いますので怖がらず受け入れてください!」

その言葉を聴きながら、直哉は回復薬を飛ばした。

「おぉ! 回復薬が勝手に飛んできて傷を回復していくぞ!」

「勇者様!」

傷が回復した者達は次々と直哉を崇めていった。

「さぁ、動ける様になった者は勇者様の手伝いを!」

「おぉ!」

治療を受け動ける様になった者や、軽症の人々がフィリアの元へ集い、回復薬を受け取りながら使用上の注意を聞いていた。


「俺の出番は無さそうだな」

エバーズは、フィリアや直哉の手際の良さに舌を巻いていた。

そこへ、怪我人の振り分けを終えたリリ達が、ダライアスキー達を連れてきた。


「お兄ちゃん! おっちゃんが来たの!」

「なかなか斬新な呼ばれ方ですね」

ダライアスキーは、苦笑しながらやって来た。

「エバーズよ、現状はどんな感じだ?」

「直哉伯爵の力で、街の入り口を塞いでいたモンスターを駆逐し、里の消火作業を直哉伯爵に任せ、奥でも鳥形モンスターとの戦闘になり、リリちゃんと忍びの棟梁の連携で、鳥形モンスターを蹂躙する事が出来た」

「そして、現在は怪我人の手当をしているところですね」

エバーズと直哉の報告を聞いて、


「なるほど、良くわかりました。という事は、怪我人達を治療する施設が欲しいですね」

「それは、この里の外れに直哉伯爵の力で建てて貰う予定だ。許可を出してくれ」

ダライアスキーは地図を取りだして、

「そう言う事でしたら、この区画という事でよろしいですかな?」

「はい。問題ありません。それと、その区画を俺の領地にして貰えれば時間短縮になるのですが」

ダライアスキーは何を言っているのかわからないので、エバーズを見た。

「あー、この前報告した、直哉伯爵亭を建てる時のスキルだな。確かにアレを使えば、整地も一瞬だったな」

「ふむ。そうですか。そう言う事なら、こちらの土地は如何ですか? 現在ルグニアでも忍びの方でも管理していない土地ですので、直哉伯爵の領地として使って頂いてかまいませんよ」

直哉は地図を見て、自分のマップと照らし合わせた。

「やってみましょう」



土地タブをクリックして、今回の土地のマップを呼び出して、マーキングを始めた。

「大丈夫そうですね、今回の範囲より広くすると実行できませんが、先ほどの範囲であれば造れますね」

「それでは、お願いします。必要な材料があるのであれば、すぐにおっしゃってください。こちらで揃えますので」

「わかりました。とりあえず、外観を造ってから内装を考えようと思います」

直哉は回復薬を作成してフィリアに渡していった。

「これで、応急処置は何とかなるでしょ? 俺は建物を建ててくる」

直哉はリリ達と別れて、建物を設置する土地を確認していった。

「問題無さそうだな」

直哉は土地タブを操作して診療所を造っていった。

「くぅ。仕事の後の一本は効くなぁ」

MP回復薬を飲みながら、ダライアスキーを尋ねた。


「内装はどうしますか?」

「本当に即行で建ってしまうのですね。まさに驚愕ですよ。内装に関しては実際に使う者の意見を取り入れましょう。クリスティーナ、こちらへ」

白衣を着た女性が前に出来てきた。

「こちらはクリスティーナ、我がルグニアの治療師です」


「こんにちは、勇者直哉様。頭は大丈夫ですか?」

クリスティーナは微笑みながら直哉に挨拶をした。

「彼女は、以前王城で直哉伯爵の傷を見て下さったのですよ」

「なるほど! そう言う事でしたか。その節はお世話になりました。あれ以降問題ありません」

「それは、良かったです」


「それでは、診療所はお二人に任せます。私は死者の弔いをするための準備をしてきます」

ダライアスキーはエバーズと里の棟梁と話しを詰めていった。直哉はクリスティーナと他の治療師達と共に新しい診療所を見に行った。そこには若手の鍛冶職人達が集まっており、

「親方! 私たちにも手伝わせてください!」

と、一斉に頭を下げた。

「それでは、皆さんで内装をやってみましょう。とりあえず、中に入って下さい。細かい指示をお願いします」


直哉達は建物に入り、細かい指示を受けながら家具を造っていった。

「大まかな区切りと、大きな家具は造ってしまうので、皆さんは細かい作業をお願いします。材料はダライアスキーさんが都合してくれるので、良いものを造り上げましょう」

「おぉ!」

「いきなり、任せてくれるのですね!」

「やりますよ!」


若手の鍛冶職人達は、直哉の指示の元、それぞれ得意な分野で力を発揮していった。おかげで、直哉はMPの消費を抑える事ができた。平屋の広い建物で、入り口付近に待合室として椅子を大量に設置、防音効果の高い診察室を五部屋用意して、順番に使い使用した部屋を清掃する事で、清潔さを保っている。奥のスペースは、重症患者用のベッドが置いてあり、隔離用の部屋も用意した。

設備のチェックが終わり、


「問題ありません。急ぎの治療が必要な方を順に運んできてください」

喜びを噛みしめる暇もなく、次々怪我人を運び込んでいった。

身動きの出来ない怪我人を運び終わり、後は医療チームに任せて直哉達は大広場に戻った。


大広場へ戻ってくると、リリ達がぐったりとした表情で座っていた。

「みんな、おつかれさん」

「お兄ちゃん。リリ、疲れたの」

「流石に疲れたな」

直哉はコテージを取りだし、広場へ設置した。

「なんと!」

「まだ造れるのか!」

「神よ!」

若手の鍛冶職人達は直哉を崇めていた。

「リリ達は中で休憩を取ってくれ。食べ物や飲み物も出しておくので、食べられそうであれば食べていて。俺は周囲を見て回るよ」

「お供しますわ」



直哉とフィリアが外に出ると、若手の鍛冶職人達は、それぞれの場所に自分用のスペースを造り出して休憩していた。

「ありゃ、皆さんの休憩場所も必要ですね」

「いえいえ、滅相もない。我々は建物の見える場所なら問題無いです」

「もし、許されるのであれば、親方の工房で働きたいです!」

「それは俺も!」

「ワシもじゃ!」

若手の職人達は次々と立候補してきた。

直哉は困惑しながら、

(そう言われても、俺は工房を持ってないからなぁ)

「考えておきますね」

直哉はお茶を濁した。

「おぉー!」

「やった!」

鍛冶職人たちは喜んでいた。そんな様子を見ていたフィリアが、


「あらら、知りませんよ、期待させるような事を言ってしまわれて、どうするおつもりなのですか?」

「んー、ルグニアに大きな鍛冶場を造るのも良いかなと」

「また、大それた事を」

直哉とフィリアは笑いあった。

「さて、周囲の警戒を始めますか」

そう言って、周囲の警戒を始めようとしたとき、エバーズがやってきて、



「おぉ、直哉伯爵! 先ほどルグニアから連絡があって、伯爵邸で働きたいと言う人が後を絶たないのでそちらの対応をして欲しいとの事だ」

「俺の屋敷にですか? わかりました、俺たちの家ですから俺たちで対応します。ですが、こちらは大丈夫ですか?」

「こちらは、若手の鍛冶職人たちで何とかする予定だ」

「わかりました。俺たちはルグニアに戻ります」

直哉がフィリアと共にコテージへ戻ろうとした時、


「ちょっと待ってくれ」

リリと友にお空を飛んだおじさんが声をかけた。

「なんでしょうか?」

「お主はもしかして漂流者なのか?」

おっさんの言葉に、

「何でその言葉を知っているのですか?」

直哉は思わず聞き返していた。

「やはり、そうだったのですか。我が里の占い爺が言っていた。世界に災いが起こるとき、南の土地に漂流者が現れる。その者、異種族の垣根を超越し災厄と対峙する勇者となる。我が里の姫もその者の助けとなろう」


直哉は唖然としていた、

「その、占い爺に会わせてください!」

「そういてやりたいのは山々なのだが、先の戦闘で帰らぬ人になった」

直哉はがっくりとして、

「そうでしたか。とても残念です」

「そこで、我が娘を共に連れて行って欲しい」

そういうと、後ろに隠れていたマーリカを前に出してきた。

「ほら、自分で挨拶しなさい」

「私はマーリカと申します。是非とも主様の末席に置いてくださいませ」


(うーん。あの怯えようは冒険以前の問題だよな。彼女の助けになりたいと思った事はあったけど、どうするべきか)


「連れて行きましょう」

突然出たフィリアの言葉に、

「急にどうしたの?」

「この子は、私たちと同じです。心に大きな傷を負っている。恐らくですが、この子のご両親はもうこの世には居ないと思います」

直哉はおっさんを見て、

「そうなのですか?」

「仰るとおりです。ですので、未知なる者の前では臆病な性格になってしまった。我々がどんなに接しても、その心を溶かすことが出来なかったのだ」


(それを、俺達に任せるということか。まぁ、現状の忍びの里に置いて置くよりは良いかな)

「わかりました。では、マーリカちゃん一緒に行きますか?」

「喜んで。父様、行って来ます!」

「そういうことで、お預かりします」

直哉一行は忍びの里を後にした。

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