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第五十五話 仮面の男との戦い

◆忍びの里 入り口


直哉は仲間を見渡した。


リリは氷の魔法を使い加護を詠唱している所で、ラリーナはリリの詠唱中に襲いかかって来てる火トカゲを撃破していた。フィリアは光魔法で加護を掛けていて、エリザは水属性の矢を火トカゲに乱射していた。


マーリカはフィリアの後ろで小さくなって震えていた。


「リリとラリーナは氷の援護が終わったら、仮面の男を倒さなくて良いから攪乱して! フィリアはマーリカを頼む。エリザは仮面の男の傍にある魔方陣を破壊して! 火トカゲは俺がおさえる!」

「了解(なの、です、だ、なのじゃ)」


(とは言っても、どうするかな?)

直哉は周囲を見渡した。

(んー、雪か。雪? よし! 使ってみるか)

「マリオネット!」

そして、直哉はマリオネットで、盾を操作して火トカゲからの攻撃や、行動範囲を制限しながら、周囲にある大量の雪をかき集めて、火トカゲに当てていた。

「ふははは、そのような攻撃で、火トカゲを倒せるものか!」

(ですよね。でも、チリも積もれば何とやらだ)


直哉はそれでも、雪を集めて投げつけていた。

初めのうちは、そこまで効果はなかったが、壁が出来るほどの量を投げ続けると、火トカゲ達の行動範囲は狭まり、溶かす速度も遅くなり、やがて雪の中に埋もれていった。


「氷を司る精霊達よ、我が魔力にひれ伏し仲間に氷の恩恵を!」

「アイスフィールド!」

その間に、リリとラリーナの戦闘準備が整い、エリザは弓を換え狙いを定めていた。


「ちぇっすとー」

「おらおらおら!」

リリとラリーナは、火トカゲが埋まっている雪の上を走って仮面の男に攻撃を開始した。


「ふっ、ふっ、ふっ」

仮面の男は、ヒツジの毛でガードし続けた。

魔方陣からは続々と火トカゲが出てきていたが、直哉の雪攻撃で出口が大混雑していた。

「このような、アナログな方法で魔方陣を無効化するとはな。だが、俺が全てを吹き飛ばす!」


そう言って、仮面の男は腕に力をこめた。その腕はサルのぬいぐるみで、もの凄い力を溜めていった。


「はっ!」

その時、エリザの矢が魔方陣目掛けて飛んでいった。


「やらせはせんよ! おらぁ!」

サルの腕から放たれた衝撃波によって、エリザの矢は受け止められ粉砕した。

エリザはかまうことなく次の矢をつがえた。


リリとラリーナは衝撃波を受けたものの、空中で体制を立て直し、攻撃を再開していた。


「五月蠅い小蠅どもめ!」

もう一度力をため始めた。


「うおぉぉぉぉ」

直哉は、さらにマリオネットの本数を増やし、鉄の剣と盾を数セット取りだして、リリ達と共に斬りかかった。


「これが、噂の見えざる手ですか、中々面白い術を使うのですね。ですが、純粋な力の前に何処まで持ちますかな?」

仮面の男は、さらに衝撃波を放ってきた。


「ちっ!」

リリとラリーナはまたもや吹き飛ばされ、受け身を取った後、回復薬で傷を癒していた。


(さて、どうやって足止めするかな。まずは、燃やしてみるか)

直哉は火炎瓶を取りだして、仮面の男に向けて飛ばした。


「あれは、魔法の詰まった瓶か! やらせん!」

仮面の男は、攻撃力の低い衝撃波を撃つ事で、攻撃周期を早めて応戦してきた。

「うわ、衝撃波が全方向なのが厳しいな」


周囲にまき散らされた火炎瓶は、雪を溶かし、火トカゲ達が活発に動き始めた。

「あちゃ。失敗した。それならこっちだ」

今度は冷凍瓶を取りだして、同じように飛ばした。


「懲りない奴め!」

仮面の男は衝撃波で応戦していたが、動きが鈍くなって来ていた。

「なんだ? 身体が思うように動かなくなってきてるぞ?」

周囲を見てみると、先ほど火炎瓶で溶けていた雪が、冷気で凍り始め周囲に氷の膜が出来上がっていた。


「それだ!」

「リリ! 水と氷で攻撃だ!」


「フィリアお姉ちゃん! 壁をお願い」


フィリアは膨大な魔力を使い、光の精霊に呼びかけた。

「天より来たりし光の精霊よ、我が魔力と共に邪悪な敵を封じ込めよ!」

「セイントプリズン!」

仮面の男の周囲に、光の壁が周囲を取り囲んだ。


「この程度の魔力など!」

サルの腕に力を溜めて攻撃力を増している最中にリリの魔法が炸裂した。


「水を司る精霊達よ、我が魔力と共にその姿を現せ!」

「ストリングウォーター!」

光の壁の中は一瞬で水が溜まった。

「氷を司る精霊達よ、我が魔力にひれ伏しこの大気を凍結させよ!」

「クールブリザード:ツヴァイなの!」

水の魔法からほぼノータイムで撃ち出した氷の魔法は、光の檻の中にある水を一瞬で凍り付かせた。


「エリザ! 今だ!」

エリザは魔方陣に向け、再度矢を放った。


ドゴン!


魔方陣は、そこに溜まっていた火トカゲや地面と共に吹き飛んだ。

「よし!」


光の牢で氷漬けになっていた仮面の男は、闇の力を放出し始めた。

「まずい、光の牢ごと吹き飛ぶぞ!」



ラリーナは、MPの大量消費で身動き出来なくなったリリを抱えて、直哉の元へ戻ってきた。

もの凄い闇のエネルギーの放出により、リリの氷とフィリアの光の牢は完全に消滅した。


「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」

肩で荒い息をしている仮面の男は、

「一度ならず二度までも! 絶対にゆるさん! かくなる上は最終形態でお相手いたす!」

仮面の男は、羽根を生やし、太い尻尾を出し、頭からは角が生えてきていた。


エリザが先手必勝という事で矢を放ったが、仮面の男に普通の矢のように刺さり、矢は止まったがダメージは無さそうだった。

「なんじゃと! 巨人ですら砕け散る攻撃が、効かぬじゃと?」

「魔族の本領発揮ですね」

直哉はゲームを思い出していた。


(戦士時代、魔族はそれぞれ特殊な力を持っていて、無効になる攻撃も多い。だが、光魔法の破邪ならば浄化できるはず。とにかく光魔法が鍵だ)


「フィリアを中心に! 光魔法を最大限に活用する! フィリアはスタンしない程度に魔法を抑えて、残りのみんなで削るよ!」


直哉ははラリーナからリリを受け取り、治療を開始した。

ラリーナは光の加護が有効な事を確かめた後、攻撃を開始した。

エリザもフィリアに近づき、光の加護の範囲内へ入ってきてから攻撃を開始した。

「マリオネット!」

リリの治療を終えた直哉は、マリオネットで光り属性の附いた剣と盾を大量に浮遊させた。


ウサギと人間の口からは火球が飛び出し、お腹に浮かび上がったヒツジの顔からは雷が迸り、背中の羽根からは突風が巻き起こり、尻尾のヘビからは氷の礫が飛んできた。


ラリーナは地上から、直哉は剣と盾を装備し斬りかかるのと同時に周囲からも牽制の攻撃をして、フィリアは長距離からの光魔法での攻撃、エリザはフィリアの傍から矢の乱射をお見舞いしていた。


「ちぇっすとー」

直哉からMP回復薬を大量にもらい回復したリリは、空から攻め立てた。最速で飛び掛かるリリに、火球が飛んできて、上手く身を躱した所に氷の礫が飛んできて、サクラを展開して防ぐのが精一杯で近づけず、


「せぃ!」

「おるぁ!」

直哉とラリーナも近距離から斬りかかろうと近づくと、雷が周囲に迸り行く手を遮った。


「くそ!」

「近づけないの!」


「それならば!」

エリザの矢は、背中の羽根による風魔法で明後日の方向へ飛んでいってしまっていた。


「くぅ、まだまだなの!」

身体中に火傷をおいながらも、懸命に攻撃を仕掛けるリリに、直哉は新しい盾を造り、リリにマリオネットを使い届けた。

「リリ! その盾を使って飛び込んで! そして、羽根を攻撃!」

「わかったの!」


新しい盾は、四角錐の形をしていて、底面からくりぬかれ、中は空洞になっていた。内側の先端部分に取っ手があり、リリが取っ手を掴むと身体が盾の内側にスッポリと入ってしまった。


直哉は浮遊させている剣と盾を囮にして、リリへの攻撃を分散させようとしていた。

リリは直哉の造った新しい盾を構えて、突撃を開始した。


「ちぇっすとー」

今度も火球で迎撃を試みたが、リリの勢いは止まらなかった。

「ぎゃーっす」

氷の礫を飛ばして迎撃したが、やはり盾の表面を擦るだけで、リリの身体には届かなかった。

「これなら、行けるの!」


ヒツジが雷でリリを足止めをしようとしたとき、

「今だ! ラリーナ!」

直哉とラリーナが肉薄して牽制した。

「リズファー流、月牙双輪!」

「四連撃! ×の字斬り! さらに、マリオネットの剣と盾をぶつける!」

直哉とラリーナの連携攻撃にたまらず二人に雷を放出した。

「めぇ~」

バチバチバチ!

二人の周囲に雷が迸った。

「ぐっ!」

雷の直撃を喰らった直哉とラリーナは、身体中が痺れ、その場に武器を落とし、直哉はマリオネットも解除された。


盾から出て、それを見ていたリリは、

「今なの! 魔神氷結拳!」


「今じゃ! せぃ!」

攻撃を出した直後の硬直時間を狙い、リリが背中の羽根に攻撃を繰り出した。


グシャ!


リリの拳が羽根を捉え凍結させ破壊した、そこへエリザの矢が飛んできた。

「ギギギ?」

今まで通り、風の魔法で対応しようとしたが、凍結して再生が追いついていなかったので、羽根からの風魔法がまったく発動せず、

「しまっ・・・」


ドパン!


と、胴体に直撃し、光の加護により、かなりのダメージを与えた。

「まさか、この私が・・・・・」


「フィリア! 破邪魔法でトドメを!」


「天より来たりし光の精霊よ、我が魔力と共に邪悪な力を祓いたまえ!」

「ブレイクウィケンネス!」


フィリアの破邪の力により、仮面の男は徐々に浄化されていった。下半身が浄化された頃、フィリアの魔力が尽きてフィリアはその場に倒れた。


「後は!」

ラリーナが痺れる身体に鞭を打ちながら、止めを刺そうとしたとき、仮面の男を中心に、闇の力が膨れ上がった。


「ギャオーン」

闇の力は纏まって行き、やがて東洋の龍の姿になった。


「あれは、龍のぬいぐるみ!」


龍は口を開き、叫び声を上げた。


「ぐぁ」

その場に居た直哉達は、龍の咆哮をくらいその場にしゃがみこんだ。

「くっ」

身動きが取れない直哉達を尻目に、龍は仮面の男をくわえて闇の中へ消えていった。


直哉は周囲を警戒しながら、

「とりあえず、一難去ったのかな? みんな大丈夫?」

直哉は痺れる身体を横にしながら声を出した。


「身体中が痛いの!」

「身体が痺れて思うように動けん」

「・・・・・・・」

「フィリアが倒れておるのじゃ」

「あれ? マーリカさんは?」

「忍の姫なら、わらわのお尻にくっついておる。フィリアが倒れる時に、逃げて来よった」

マーリカはエリザにくっついて震えていた。


(いくらなんでも怯えすぎでしょ。何か原因があるのなら、原因を取り除く手伝いをしてあげたいな。でも、今は里を何とかして助けないと駄目だよな。ただ、そうは言っても、俺も身体が思うように動かせないし、その影響でスキルも使えないし、困ったな。どうやって、里の火を消そうかな? って、考えてるだけじゃ駄目だ。やれることをやろう)


「よし、もう一踏ん張りだな! リリとラリーナは傷の手当て、フィリアにMP回復薬振りかけて、エリザは俺と共に、この辺に埋まっている火トカゲの掃討だね」

「直哉殿は戦えるのかえ?」

直哉は手を握ってみて、

「武器を持つ事は出来そうだよ。でも、スキルが使えないのは俺にとって致命的だよ」


「お兄ちゃん、火傷の薬って無いの?」

直哉は少し考えて、

「今朝造った、凍傷の症状を緩和する塗り薬で何とかならないかな? あれって、皮膚が再生するのを手伝う効果があるって説明だったからね」

そう言って、アイテムボックスから薬を取りだして、リリに渡した。

ラリーナのHPが回復し、フィリアも意識を取り戻した頃、直哉とエリザは雪に埋もれた火トカゲの位置を確認していた。その時、里の奥で戦闘をする音が聞こえて来た。


「まだ、生きている人が居たのか! リリの傷の具合は?」

「もう少しで完治するの!」

「じゃぁ、リリの傷が塞がり次第、エリザと共に奥の探索を頼む」

「了解なの(じゃ)!」

直哉は身体の痺れが薄れていくのを感じていた。

(よし! そろそろ麻痺が治るな、そしたら、消火用のアイテムを造るとするか)


「行ってくるの!」

「くれぐれも、無茶しないように!」

リリとエリザは里の奥へ進んでいった。里の奥での戦闘の音が聞こえなくなった頃、直哉とラリーナの麻痺が回復した。

「よし、状態異常が回復した。スキルも使えるぜ」



やる気を出し始めたところに、エバーズ達が到着した。

「おや? 直哉伯爵じゃないか、里は火災に見舞われているようだが、どうしてこんなところで、油売っているのだ?」

直哉はエバーズに、里についてからの状況を伝えた。


「なに? ここにも仮面の男が居て、モンスターに襲われただと!」

エバーズは連れてきていた近衛騎士達に命令し、足下の火トカゲを見張る班。エバーズと共に里の奥へ行く班。火災を消火する班に分けて、リリ達の後を追った。



直哉の周りには、火災を消火する班の鍛冶職人の若手が集まっていて、消火用のアイテムを考案してた。

「この世界の消化アイテムって何ですか?」

「水の魔法石で、水を出してそれをかけるとかですね」

「なるほど。それなら水の魔法石っと」

スキルを発動し、水の魔法石を造り出した。

「これで、水を掛けていきますか」

「なんと! コレが噂の奇術ですかな? この速度でアイテムが作成できるなんて凄すぎる!」

鍛冶職人の若手達は直哉の鍛冶職人としてのレベルの差を実感していた。

「それでは、我々は水の魔法石を使って消火作業をしてきます」

里の入り口の方から消火作業が開始された。


(水の魔法石から出た水を、それぞれの持っていた入れ物に移してから掛けているのか、効率が悪いな。なにか無いかな・・・・)

直哉はスキルを発動させ、何か無いか探していた。

(これは、風呂か。これに水を溜めて高い位置から掛ければ今より速くなるな)

石と木材で台車を造り出し、その上にリフトを設置。大きな風呂を乗せて上下移動を可能にして、風呂の排水用の穴を仕切り板で塞いでおく。そこへ水の魔法石を数個用意し、一気に水を溜めて行く。それを三台造り出していった。


「これで、何とかなりそうだな」

直哉はMP回復薬を飲みながらつぶやいた。

「直哉伯爵。コレは何ですか?」

消火作業に手間取っていた若手集が、見慣れぬ者の周囲に集まってきていた。

「消火用の台車です。燃えている建物の傍に運んで下さい」

若手集三人で一台を動かして、配置についた。

「では、一人が栓の引き抜きのために上に乗って下さい」

直哉の指示の元、栓の操作のための人員を乗せ、リフトは建物より高い位置へ移動した。

「今です! 栓を抜いて下さい」

ざっぱーん。

風呂に溜まった水が一気に流れ出し、勢いよく燃えていた建物に降り注いだ。

「おぉー」

「水が少なくなったら、一度栓をして水が溜まるのを待ってから、もう一度栓を外してください」

若手の職人達は直哉の言葉を実行して、次々と燃えていた建物を消火していった。

直哉達の活躍によって、里の半分ほどが鎮火して、次の火災現場へ行くため、大広場へやってきた。

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