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第五十話 新たな騒動

◆ルグニア城


直哉達が会議の間に到着すると、中にはダライアスキーとアンナの他に、アシュリーとエリザ、それにもう一人の熟女、そして近衛騎士達が周囲を固めながら話あっていた。

「大変な事になりましたね」

「我がルグニアの近衛騎士団が遅れを取るとは!」

「わらわも出るぞえ」

その視線は、エバーズとその後ろの直哉達に注がれ、直哉達を見た熟女から鋭い声が上がった。

「エバーズ! 冒険者に手を借りるのは我がルグニアの誇りが許しません」


直哉は熟女に対面し自己紹介をした。

「俺は、バルグフル王国の宮廷魔術師であるシンディア様より、ルグニア王国のアシュリー様へ親書を届けに来た直哉と申します。バルグフルでは辺境地伯爵を任され、さらに冒険者で鍛冶職人をしております」

「・・・・・・・」

熟女は肩書きを整理し終えて、

「冒険者ではないですか!」


「はい。冒険者も俺の大事な肩書きです」

熟女は物凄い剣幕で、

「とにかく、我がルグニアは冒険者などに力を借りる事はありません。今すぐにお引き取りを!」

と怒っていると、アシュリーが、


「お母様! 命の恩人に何て事を言うのですか! ルグニアの誇りより、恩を大事にしなければ国の未来に先がありません!」

その声に、その場のルグニアの人々は驚いた。


「まさか! 今の声はアシュリー様?」

ザワザワとなる場を、アシュリーが収めた。


「皆のもの、静まりなさい」

その、威厳のある声に一同は静まり帰った。

「前皇后の仰る事もわかります。ですが、現状を見てください。我がルグニアが冒険者を締め出し、国を閉鎖した結果を見てください。レッドムーンという反乱分子がはびこり、それを収拾するどころか女王であるこの私の暗殺にまで発展した」

静かになった周囲がざわめきだした。

「暗殺だって? まさか? レッドムーンのやつら?」

ざわめきが一段落したところを見計らい、

「ギリギリの所を、こちらのバルグフルの伯爵である直哉さんに助けて頂きました」

「ざわざわざわ」

「さっき、中庭でアンナ様を一撃で倒していたぞ」

「ざわざわざわ」

「さらに、私の母の病気を癒し、この様に元気になってくれた。ですから、お母様! 直哉さんにお礼を言うべきであり、追い出すなんて言語道断!」

アシュリーは、バルドズムを彷彿させるオーラを出して、シギノを説得した。


「ぐぬぅ」

アシュリーの言うことは正論で、シギノは何も言えなくなっていた。

「直哉伯爵。申し訳ありません」

アシュリーは頭を下げた。

「頭を上げてください。俺は気にしていませんので。それに、今はルグニアの民を守ることが最優先なのでは?」

直哉の言葉に、ルグニアの者はハッとして、


「そうであった、皆のもの対応策を! それと、直哉伯爵、恥を忍んでお頼みします。我がルグニアの民を守るため、その力を貸してもらえないだろうか?」

アシュリーの言葉に直哉は、

「わかりました。俺の能力で出来る限りの事をします」


「待つのじゃ! わらわも行くぞ!」

そう言いながらエリザが直哉の前にやってきた。

「直哉伯爵。足手まといとわかっておるのじゃが、頼むのじゃ。わらわもルグニアを守りたいのじゃ」

エリザの真剣な眼差しに、

「わかりました。アシュリー様、エリザ様をお借りしてもよろしいでしょうか?」

「エリザ、良いのだな?」

エリザは頷いた。

「では、直哉伯爵よ、エリザを、妹をよろしく頼みます」

「わかりました」


「それでは、直哉伯爵には、このルグニアで迅速に動けるように、このルグニア王国の王家の紋章を授けます。これを見せればこの国ではみなが従います」

アシュリーから紋章を受け取った。

「ありがとうございます」


「そうじゃ、お主は鍛冶職人じゃったな?」

「はい。上級職を目指してやってきました」

「わらわの武器を新調してもらえないかの?」

エリザは持っていた弓を見せた。

「どのようにしますか?」

「もっと強力な物が欲しい」

直哉は弓を確認すると、

「これでもかなり固いですが、もっとですか?」

エリザは弓を引いて、

「わらわの力だと、楽なのじゃ」

「凄いですね。わかりました。アシュリー様、どこかに部屋を用意してもらえますか?」

「あ、あぁ、わかった密談の間をかそう」

そう言って、ダライアスキーに合図を送った。

「かしこまりました」



直哉たちはダライアスキーに連れられて、秘密の間に案内してもらった。秘密の部屋は城の上方に位置していて、窓も無く、上下左右を石で囲まれ、外に会話が漏れない造りになっていた。

「こちらです。終わりましたら先ほどの部屋へ来てください」

「ありがとうございます。助かりました」

部屋に入ると、リリ・フィリア・ラリーナは各々、武具とアイテムを確認していた。


「こんな感じでどうですか?」

直哉はエリザに新しい弓を渡した。

「ふん!」

エリザは弓を引き、

「試し撃ちをしてみるかの」

矢をつがえて、即席の的に向けて放った。

スコーン!

「この距離なら余裕じゃの。まだ、強く出来るかの?」

「それなら」

直哉はバリスタ級の人では引けないほどの、強力な弓を作り出した。


「ふんぬ!」

ギリギリギリと、物凄い音を立てて弓を引いた。

「あれを、素手で引いちゃうんだ」

直哉は若干引きながら呟いた。

「撃つぞえ」

エリザは矢をセットした。

「あ、ここではやめてください」


ドカーン!


激しい音と振動が城を襲った。

「あちゃー」

エリザはその場でうなだれた。壊れた壁からは外が見え街が一望できた。


(ん? あそこはこの間の騒ぎがあった所か。誰かがこっちを見ているな、あれがキメラと呼ばれる存在かな? 人間の様な姿をしているな。ん? 羽根が生えた? こっちに飛んでくるぞ! それに、地上にも数体の何者かがこっちに向かっているな)


「エリザさん! こっちに飛んできている何かを撃ち落とせますか?」

がっくりと項垂れていたエリザは、直哉の声に顔を上げて確認すると、

「あれはキメラなのじゃ! ひ、人を合成しておるのじゃ! 何という悪魔の所業!」

エリザは唇をかみ締めて、矢をつがえて狙いを定めていた。そこへ、


「何事ですか?」

アシュリー達が顔色を変えて飛び込んできた。

「キメラと呼ばれる者がこちらへ飛んできています。エリザ様が迎撃にあたっていますので、我々はその護衛をします」

アシュリー達が外を確認して、空から一体、地上から五体の計六体が城へ向かって来ていた。


「エバーズ! 近衛騎士を率いて地上からの敵を食い止めよ!」

「承知いたしました!」

エバーズ達は慌てて部屋を出て行った。


「リリ! フィリア! 二人はエリザさんの援護! ラリーナは地上の敵を迎撃! 殺さないようにね!」

「はい!」

ラリーナは部屋を飛び出して行った。


「リリ達は何をすればよいの?」

「エリザさんは一人で大丈夫ですか?」

直哉が情報を共有しようとエリザを見ると、ガチガチになっていた。

「どうかしたのですか?」

「わらわが民を傷つける事になるとは」


直哉はエリザの心を察して、

「わかりました、エリザさんはその場で待機していてください」

エリザはその場でグッと唇をかみ締めた。

「わらわは一体何のために」


「リリ! フィリア! 殺さないように魔法で迎撃を! その後地上班を援護!」

「はいなの!」

リリとフィリアは魔法の詠唱に入った。


(俺は両方の援護だな)

直哉はマリオネットを操作し、空から来るキメラに防衛網を飛ばして動きを制限した。


「リリ! 動きを止められる?」

「やって見るの! お姉ちゃん! 援護よろしくなの!」

フィリアから援護をもらったリリは穴から飛び出した。

「ちぇすとー」

空からくるキメラはリリが飛んでくるとは思わなかったようで、バランスを崩して落ちていった。


「あれー?」

リリは追い討ちをかけに降りていった。

「リリ! 網で絡め取る!」

「あちょちょちょちょちょ!」

リリは直哉の張った網へキメラを追い込んだ。

「ぐぁぁぁぁぁぁ」

そのまま上手く網へと追い込んだ。

「空のキメラは確保完了!」



直哉が地上に目を向けると、エバーズが三体、アンナが一体、残りが一体を受け持っているところに、ラリーナが割り込み、一般の近衛騎士達と交戦しているキメラに斬りかかった。

「はぁ!」

上段からの袈裟切りで混ぜられた何かの動物の腕を斬り飛ばした。

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ」

腕を斬り落とされ、ラリーナから距離を置きつつ近衛騎士達に攻撃を開始した。


「なっ! しまった!」

アンナと戦っていたキメラは、ラリーナの方が強いと見て、アンナを吹き飛ばしてラリーナと対峙していたキメラの元へ行った。

「何をする気だ? だが、もう遅い!」

ラリーナは武器を構えなおし、止めをさそうと飛びかかった。

「きしゃー」

アンナの前に居たキメラの腕が伸びて、ラリーナへ攻撃を仕掛けてきた。

「なんだと?」

予想外の攻撃にラリーナは攻撃を外して、距離を取られてしまいさらに合流されてしまった。

「ちっ!」

腕が伸びたキメラは、吹き飛んだ腕を持ってきて魔法を使った。

「なんだと! あれは回復魔法! やらせるか!」

ラリーナは慌てて走り出した。



その頃、エバーズは三対のキメラに包囲されて何とか攻撃を回避していたが、危機的状況であった。

(このままでは、まずいな。近衛騎士達だけでは、この敵は強すぎるな。俺でさえ三体の猛攻は回避するのが精一杯だ)

だが、いつまでも避けていることは出来ず、徐々に追い詰められていった。

「くそ!」

状況を打開するために賭けに出ようとしたとき、上空からピンクの影が落ちてきた。


「ちぇっすとーなの!」

突然の事に標的となったキメラは対応できず、リリの攻撃をまともに喰らった。

「げぎょ」

頭を避け、身体を狙った攻撃は見事身体に当たり、右半身を消し飛ばした。

「あっ!」

リリはしまったと言う顔をしてキメラを見ると、消し飛ばした右半身が徐々に回復してきているところであった。


「気持ち悪いの!」

リリはそういいながら、他の二体を牽制して、エバーズを援護してた。その時リリはこの場ではない場所からの視線を感じ取った。


ラリーナは二体になったキメラと対峙していたが、離れたところからの視線を感じ取り、視線の元を探すと、この前の一件があった場所の屋根の上に何かが居るのに気がついた。


(直哉! この前の建物の上に何か居るぞ。嫌な予感がする)

ラリーナの通信に、

(何者かを捕捉した。直接被害が無さそうだから、地上の制圧を急ごう)

直哉は、地上に降りた後で、マリオネットを再展開し、周囲に防衛網を張り巡らせてラリーナに合図を送った。


「はぁ!」

ラリーナの一撃で二体のキメラは回復をしながら回避しようとして、直哉の張った網に引っかかった。

「よし!」


「リリ! 防衛網を張ったから、追い詰めて!」

直哉は三体の周囲にも防衛網を飛ばして、全てを絡め取った。

「ふぅ、とりあえずは全員の捕縛が成功してよかった」

直哉がほっとしていると、



「お兄ちゃん、周囲にたくさん何か居るの!」

「気を抜くのは後にしよう」

リリとラリーナの叱咤がとんだ。

その直後、家の死角から数体のサーベルタイガーが飛び出してきた。


「リリ! フィリア! ラリーナ! 迎撃開始!」

「了解!」

「今度のは、殺して良いのだろう?」

ラリーナの問いに、

「任せる!」

直哉はOKを出した。


「よしゃ! 殺るぞ!」

ラリーナは銀狼に変化して踊りかかっていった。

「おらおらおらおら、死ね! 死んでしまえ!」

銀狼姿で叫びまくるラリーナを見て、その場の全員が多少怯えていた。

(まずい兆候だな。どうやって治めようか)

直哉は頭を悩ませた。


その直哉のところに三体の敵がやってきて、フィリアを警戒しながら直哉へ飛び掛った。

「この程度の速さなら!」

直哉はとっさに盾を装備し、敵の鼻っ面を叩いて怯ませた。

「ぐがぁぁぁぁぁぁ」


直哉に叩かれた敵は体勢を整えて、直哉に飛び掛ったが、その攻撃を直哉は読んでいて、

「マリオネット!」

数本の剣を操り、剣山型の集合体にして突きつけた。サーベルタイガーは身をかわして回避した。

そして、三体のサーベルタイガーが同時に攻撃を仕掛けてきたので、迎撃した。

「そう簡単にやらせない!」

直哉は三体のうち、正面から来る敵に向かって走り出し、包囲される前に各個撃破する作戦に出た。


「四連撃!」


正面から来た敵は斬り刻まれ、キラメキながら消滅した。

直哉は急にその場にしゃがみ込んだ。その上を直哉の身体を削りながら飛んで行った。

「あぶねぇ。予想以上に早いな!」

そう言って、後方から来ていた二体のサーベルタイガーの攻撃を喰らいながらも回避した。

直哉は剣と盾を装備しなおして片方の敵へ斬りかかっていた。



アシュリーが地上へ降り立ったとき、エリザが直哉の後ろで、オロオロしているだけの足手まといだということに気がつき話しかけていた。

「エリザ! 何をやっているのですか!」

「お姉さま! 民を傷つける事はやりたくありません」

エリザが泣きながら姉に言った。

その会話を直哉は二体の敵と交戦しながら聞いていた。

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