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第四話 出会いと冒険

◆冒険者ギルド


直哉は見てはいけない状況を見てしまったと思い、

「お、お邪魔しましたー」

と声を掛けて回れ右をして帰ろうとしてみたが、イリーナさんに回り込まれた。

「いらっしゃい、ちょうど良いところに来てくれました」

半ば強引に少女と一緒に奥の部屋へ連れ込まれてしまった。

さらに、イリーナはとんでもないことを言い始めた。


「このお兄ちゃんは、鍛冶屋さんで、どんな武器でも作ってくれる伝説の人ですよ!」

「えっ?」

「えっ?」

少女と直哉の声が完璧にリンクした。

「それに、優秀な冒険者で、どんな戦闘スタイルの人とでもパーティを組んでくれるんだから!」

「えっ?」

「えっ?」

さらに、少女と直哉の声が完璧にリンクした。

少女は目を輝かせながら、

「魔法の発動体が殴っても壊れない武器が欲しい!」

直哉が混乱しているのを尻目に、少女の猛攻は続く。

「とにかく、物理攻撃しても大丈夫に仕上げて欲しい、形状はお任せで!」


魔法を乱発すると疲れるので、魔法で足止めして殴ったり蹴ったりしていたのだが、見習いの杖で殴っていたために、魔法の発動体が真っ二つに割れてしまったとのこと。

魔術師ギルドに帰ったら、大目玉で、魔法の発動体は修復して貰えたものの、杖そのものは直して貰えなかったので、この発動体を組み込んだ武具を作ってもらいたい、しかも装備できる杖か短刀で。

との事だった。

しかも、そんな魔術師とは一緒に冒険できないと、殆どの人にパーティを断られてしまったとの事だった

直哉はイリーナさんに目で(高くつきますよ)と脅しながら、どのような武器にするかイメージしていた。

この少女リリは、早くに両親を亡くし冒険者として生きてきた娘で、最近まで冒険者として活動していたのだが、魔術師への憧れが強くなりジョブチェンジしたのであった。


魔術師が魔法を放つ場合、発動体は手に触れていなくてはならないので、直接手でもつ部分に組み込むことになる。

また、杖はそこから魔力を通して、威力を上げたり、効率を高めたりする術式を通し、またその術式が長いほどその効果をより大きくするので、魔力を長く通しやすい形状になっていた。

短刀でも発動体は組み込めるが、術式が短く、魔術師としての魔力操作の幅が小さくなってしまった。

そこで、発動体を中心にしてその周りを術式で固め、さらにその周りをに物理攻撃をするためのコーティングをしたナックル(杖)を作ってみた。


まずは、鉄鉱石を冶金して鉄を作り出し、鉄と銅と石と木材を使い、武具作成のスキルから、

スキル発動→杖→オプション→形状「ナックル基準のオリジナル」→使用素材「鉄」「銅」「石」「木材」→実行

そして、出来上がったナックル(杖)を少女に手渡し、

「この手に持つところに発動体を入れて軽く素振りしてみて」

と、説明した。


少女が発動体を入れた時に、内側の術式が反応し発動体がそのナックル(杖)を杖として認識したことが分かった。

また、少女の要望通り、殴っても発動体はもちろん術式にもダメージが無いことを確認し、少女は満面の笑みを浮かべた。


「おおおー、ありがとうお兄ちゃん! リリこのご恩は忘れない!」

そう言って、1Sを取り出して、

「でも、手持ちがコレしかなくて、残りは出世払いでも良い?」

直哉は少し考えた後、1Sを返しながら、

「大丈夫支払いは、この受付嬢がしてくれるから、1Gほど」

冗談を言いつつ、防具の方も変えていった。

ローブはミニスカート程の丈にして、短パンを追加、ブーツに攻撃力を上げる仕様を追加した。

ナックルを両手に装備し、短いローブを着ているので、武闘家のような出で立ちになったが、本職は魔術師である。


イリーナも目の前で、ポンポンと出来上がる装備に目を奪われながら、

「一家に一人欲しいわね」

そんな、恐ろしい事をつぶやきながら直哉に忠告した。

「普通の鍛冶職人は、炉と鎚を使い長時間掛けて仕上げていくのだけど、あなたのはほとんどノータイムで出来るから、他の人に知られないように充分注意しなさい」

「やっぱり、そうですよね、わかりました」

直哉は伏し目がちになりながら忠告を受け入れた。


ブンブンブンブン

「この防具は動きやすい! イリーナお姉ちゃん、良い感じの討伐クエストない?」

「うーん、直哉さんの方に若干問題がありますが、リリちゃんならこのオーク10匹の討伐なんてどうかしら?」

先ほどのお返しとばかりに、トゲのある言い方をしながら直哉を挑発していた。


そんな二人の横で、新装備に身を包んだリリが威力を試したいとの事で、直哉を引き連れオーク退治に行くことになった。

オークは、この始まりの城下町より二日程の場所にあるオークの森に生息する亜人である。レベル10程度の冒険者達が腕試しに討伐するモンスターであった。


「まぁ、指輪もあるし、何とかなるかな」

直哉は、アイテムを確認しながらつぶやいた。

(回復薬やMP回復薬などは、多めに買っていくか)

出発前には自分用の防具を作った。

布で作った上下そろった、ラフな装備だが防御は中々高いものが出来上がり、冒険者っぽい出で立ちになった。



◆冒険者ギルドの酒場


直哉はオークの森に行くために食料を調達しに酒場へやってきた。

メニューを見て、美味そうな料理を探していると、JTステーキ(15S)売り切れが目に入った。

「JTステーキのJTってなんですか?」

酒場の主人に聞いてみると、

「ジャイアントトードだよ。あれの肉は最高さ! ただ、最近ジャイアントトードの生息地に別のモンスターが居着いたために、滅多に取れなくなったんだよな」

(そういえば、肉があったような・・・)

アイテムボックスから『ジャイアントトードの肉(極上)』を取り出し、主人の前に無造作に置いた

「これと・・・・」


「こ、これは! ジャイアントトードの肉! しかも最高級ランクじゃないですか!!!!」


何かを言おうとした直哉に、主人は鼻息を荒くしながら詰め寄った。

「こ、こんな立派な肉を何処で! いや、是非売ってくれ! この量なら20人前は余裕で確保できる」

「わかりました、とりあえずこの肉のJTステーキを一人前と六日分の二人前の料理と交換でどうですか?」

直哉は若干引きながら取引を持ちかけた。

「それなら、うちが儲けすぎるのだが良いのかな?」

主人は目の色を変えてはいるものの、信頼関係にヒビが入らないようにする頭は保っていた。

「料金に関しては、ご主人にお任せします。それに、また取ってくれば良いですし」

時間があれば生息地の方へ足を伸ばそうと考えていた。

二人分の食料を調達し、オークの森へ出発した。



◆オークの森へ向かう街道


城下町からオークの森へは徒歩で二日程かかる。

リリは元々冒険者だったので、オークの森へは何度も通ったことのある経験者であった。

「お兄ちゃんは、オークの森に行ったことないの?」

「うーん、この身体ではないですね」

(ゲームでは虐殺しまくっていたのですがね)

「リリはね、小さい頃お父さんとお母さんに連れられて来たことあるよ」

今でも充分小さいでしょと思いながら、

「その時から冒険者をやってたの?」

「うん! 色々と教えてもらったよ」

直哉は、笑顔の裏に大きな悲しみを隠した少女の横顔を見とれてしまった。


道中二人はお互いの知識や連携について、話ながら歩いていた。

「リリちゃん、そろそろお腹空かないか?」

「確かにお腹は空いたけど、ここで準備してたら到着が遅れちゃうよ?」

食事に関しては、町の中であれば三食普通にたべるのだが、町の外ではいつ魔物に襲われるかわからないために、野営の時に晩と朝を簡単に食べる位で済ましてしまうことが多かった。


「そんな時は、これだ!」

そういって、直哉は昼食用のサンドイッチと水筒を取り出した。

サンドイッチがなかったために、酒場の主人に材料と作り方を教えて作ってもらった。

水筒は、肩から掛けられるようになっており、飲み口には蓋がしてあってこぼれないようになっていて、そこにストローが刺さっているので、そのまま飲むことが出来る。


「何コレ? 凄く良い匂い! それに、このコップみたいなのも変なの?」

リリは初めて見るサンドイッチと水筒に釘付けとなり、直哉に肩から掛けてもらった水筒を大事に抱え、サンドイッチを持った。

「両手が塞がっちゃった」

「まぁ、パンを食べてごらん」

リリは四苦八苦しながら、サンドイッチをほおばると、目を見開き、

「やわらかーい! おいしー! ・・・んぐ」

「喉に詰まったのなら、ストローから飲み物を飲んで!」

直哉がリリの口元に水筒を持っていき中の飲み物を飲ませてあげた。

「ぷはー、食べ物にやられるところだった」

「慌てて食べるからだよ、水筒はこうやって下げておけば、片手は自由になるでしょ?」

そういって、水筒を肩から下げさせた。


水筒は、大工スキルの中にあった家具から選んだもので、家具一覧に普通に載っていた。

この水筒は十数本用意してあり、色々な種類の飲み物を入れてきてあった。

「お兄ちゃんって、不思議な事をいっぱい知ってるんだね」

目を輝かせながら、次はどんなものが出てくるのか楽しみなようだ。


夜は大工スキルでコテージでも作ろうかと思ったのだが、他にも冒険者が居たので自重し、布と鉄から着る寝袋を二つ作り出しリリと並んで寝転がった。

「なにこれ! フカフカ! でも、武器が持てる! このまま冒険したい!」

リリは着る寝袋が気に入ったようで、武器を持ったままゴロゴロと転がっていた。

あいにく防御は紙なので、冒険には向かないのだが、布団にくるまっているような感覚に陥るため、着心地は最高であった。

あまりにも快適なため、二日の行程が一日半で終わってしまった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ゲームっぽさがある所 [気になる点] イリーナさんが少々上から目線すぎなのでは?
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