第三十四話 領地を探索する
お詫び
第三十一話 領地に現れた熱いやつ
直哉のステータスで、スキル部分に盾攻撃と急所攻撃を入れ忘れてました。
修正してあります。
リリとフィリアは直哉の正面に座った。
「なになに?」
「どのようなご用件でしょうか?」
直哉は照れながら、
「ようやくこの世界の拠点を造る事が出来た。だから、リリとフィリアを妻として迎えたい」
リリとフィリアはお互いを見た後、ため息をついた。
「流石に、それはないの」
「乙女心を理解してください」
「えっ? 駄目なの?」
直哉は不安になった。
「妻になりたいかなりたくないかで言えば、なりたいですと。でも、プロポーズって、新築だけど装飾もまだで殺風景な場所に集められて妻にしたいって。もう少し雰囲気を良くしてからとか無かったのですか?」
フィリアの痛烈な駄目出しに、
「ぐぬぬ」
直哉は頭を抱えた。
「まさか、リリにまで駄目だしされるとは」
リリは頬を膨らませながら、
「あー、お兄ちゃん酷いの! リリだって女の子なの!」
直哉が衝撃を受け、項垂れていると、
「あっはっはっはっは!」
直哉がハッと視線を向けると、笑いながら入ってきたミーファと、呆れ顔で入ってきたイリーナが居た。
「一体、何をやっているのですか?」
イリーナに言われ顔を真っ赤にした直哉が、
「立ち聞きとは趣味が悪いですね」
「いやいや! 家に帰ってきたら、家が変わってるし、誰もいないし、途方にくれていたらミーファさんが来てくれたので、ようやくこっちに来られたわよ」
「あー、そういえばイリーナさんは徒歩でしたっけ?」
「私だけでなく、ラナさんやルナさんもきっと悩みますよ?」
イリーナの言葉に直哉は、
「と、言うことは、早いうちに来客用の屋敷を何とかしないと困る人が出てくるって事ですね」
「そういうこと」
「ミーファさん。明日にでもメイドたちを雇えますか?」
「そうねぇ、数名はお城に申請すれば確保できるかもしれないけど、直哉さんの領地を管理できるほどとなると、一般の方からも募集することになると思う。その場合は、イリーナさんの方で管理してるのよね?」
「そうね、冒険者ギルドで、一般人の職も斡旋しているから、そっちで募集ということになるわね」
二人の会話に直哉は、
「ミーファさんが必要だと思う人数は何人くらいですか?」
「そうねぇ、受付要員が二人で二組、屋敷の家事で二人、庭の管理に二人、こっちの屋敷に二人で十名ほどが妥当ですね」
「なるほど。来客用の屋敷に繋がる転移石の権限に、ミーファさんを追加しておきましたので、人選はお任せします」
イリーナが身を乗り出しながら、
「直哉君、私にも許可出しておいてくれるかな?」
「えぇ、イリーナさんには使用許可権限を出しておきました。使うとき他の人が一緒に入らないように注意してくださいね」
直哉の言葉に、
「わかってるわよ!」
「それでは、ご飯にしましょう」
フィリアは用意しておいたご飯を並べながら声を掛けた。
「今日はいつもと感じが違うのね」
イリーナは並べられた料理を見て感想を述べた。
「そうですね、今日は主に私が作ったので、母とは感じが違うと思います」
「リリも! リリも作ったの!」
それを聞いた直哉がテーブルを見渡すと
「サラダはいつもと同じだけど、上に何かかかってる? スープは野菜のほかに肉が豊富に入ってますね」
「今日のサラダには直哉様の世界にあるというドレッシングを作ってみました。お酢と酸味の果物、それに木の実から作った油を混ぜて、最後に胡椒を混ぜてます。いつもは塩と胡椒だけなので、違った味になっていると思います」
「なんだって? いつの間にそんな代物を!」
「直哉様の言葉はしっかりと覚えていますから」
直哉はスープを見ながら、
「こっちは、リリの意見が反映されていそうだね」
「えぇ。と言うよりも下味を付けずに焼き始めた肉があったので、それを入れてから味をまとめてみました」
「肉のうまみが程よく出て旨そうだ」
直哉のセリフに、フィリアとリリが喜んだ。
「そして、メインはリリの焼いたお肉なの!」
「下味などの味付けは私が見ていたので、美味しく出来ていますよ」
巨大な肉の塊を切り分けていた。
「デザートはフルーツの盛り合わせだね。それにパンが付いてるね。結構な量だよ」
みんな席について、各々食べ始めた。
「うまい! サイコー!」
直哉は久しぶりの元の世界の味を堪能した。
みんなも納得したようで、ドレッシングのレシピや、スープのレシピなどを聞きながら新しい味を考案していた。
食事が終わると、フルーツをつまみながら新屋敷の体勢を話し合った。
「明日お城に行って、何名か確保してきます」
「私の方は一般人から集めておきます。面接はそちらでお願いしますね」
「リリ達はどうするの?」
リリは直哉に聞いた。
「俺たちはこの屋敷の周りに、この『安全地帯』というアイテムを一定距離毎に配置しに行こう。それが終わったら、俺は鍛冶ギルドに行ってくる」
「何の用があるのですか?」
「スキルでわからない事があるから、それを聞きに行って来る。ついでに買出しもしてくるよ」
「食料はこちらで買いますので、直哉さんはそれ以外をお願いしますね」
買う物を確認した後、それぞれの部屋に戻っていった。
直哉は温泉に浸かって元の世界と今の世界のことを考えていた。
(家に居た頃は、温泉を引くなんて考えたこと無かったもんな。お父さんもお母さんも元気にしてるかな? 俺の事、心配してるよな。まさか、仕事に追われて俺の事まだ気がついて無いとかって事は無いよな? それにしても、こっちの世界に来てからいろいろあったよなぁ。イリーナさんの紹介でリリに出会った。最初の冒険ではどうなる事かと思ったけど、直接攻撃する魔法使いとかゲームの中じゃ要らない子だからな。そっちにスキルを振るなら攻撃魔法を覚えてくれよ! ってなるよな。でも、魔法と物理の同時攻撃でかなり強力な一撃を撃てるようになったから、これは誤算だったよな。そういえば真っ赤なドラゴンのルビードラゴンだっけ? ゲームではその名前のドラゴンは居なかったな。真っ赤なドラゴンは居たけど、ファイアドラゴンにレッドドラゴン、そうそうカースドラゴンは一応赤くなるな。あれは強かったな。戦士時代に追加された『竜王と共に悪のドラゴンを倒せ!』っていうイベントクエストで龍神族の中でも一体しかいない緑色の竜王と共に戦うクエストなんだけど、俺がやったときはまだ情報板に竜王と共闘する方法が載ってなくて、仕方ないから十名以上のパーティを作ってみんなでゾンビアタック《死に戻りを繰り返す事》をしたな。あの時は時間かかったな。次の魔法使いの時はソロで行って、竜王に攻撃して貰ってるところに最強魔法を落としまくって倒したな。あれは楽だった。まぁ、リリの言っていたドラゴンは新しい敵なのかなぁ。さて、少し風に当たって寝るとしますか)
直哉はお湯から出て、露天へ向かった。
「ふぅ。風が心地良いな」
(さて、明日に備えて寝るとしますか)
直哉は少しの間涼んだ後、部屋に戻り眠りについた。
◆南の森
朝食後、直哉とリリとフィリアはフル装備で屋敷の周辺を探索していた。
「屋敷から少し離れただけで木々が鬱蒼としてくるな」
直哉はうんざりしながら周りを見まわした。
「これじゃぁ、お空飛べないの」
リリもがっかりしながら、周囲を警戒していた。
「でも、木々の匂いは落ち着きますね」
フィリアは独特の感受性を発揮していた。
「ここと、あそこと、向こうと」
直哉は『安全地帯』が効果的に発揮できるポイントを割り出して、指示していった。
「この辺?」
「ここですか?」
リリとフィリアが直哉の定めたポイントへアイテムを設置しに行った。
順調に配置していた三人の前に、巨大な岩の塊が行く手を遮った。
(あれ? 屋敷からポイントを確認した時にこんなのあったかな?)
直哉は不用意に近づくと、突然その岩が襲いかかってきた。
「動いた!」
「お兄ちゃん!」
「直哉様!」
「大気に宿る風の精霊たちよ! 我が魔力にひれ伏し仲間に風の恩恵を!」
「エアフィールド!」
「天より来たりし光の精霊よ、我が魔力にひれ伏しその加護を仲間に与えたまえ!」
「ディバインプロテクション!」
「むぅ、ここは風より氷の方が良かった気がするの」
「氷を司る精霊達よ、我が魔力にひれ伏し仲間に氷の恩恵を!」
「アイスフィールド!」
直哉達は散開し巨大な岩を取り囲んだ。
「二人とも、あの攻撃に当たらないように! 恐らく衝撃波を撃ってくるはず。身を守らず回避に専念して! 直撃を喰らったら、俺の造った防具でも防ぎきる事が出来ないから」
そう言いながら、ストーンゴーレムの注意を引くべく斬りかかった。
「せぃ!」
ガン!
「くぅ。痺れる」
ストーンゴーレムに剣を当てると、強い衝撃が直哉の腕を襲い、危うく剣を落とすところだった。
「こんなの、どうやって倒すのですか?」
「リリの拳が痛いの」
二人も有効な攻撃を入れる事が出来ず、焦り始めていた。
「リリ! 風の上級魔法を覚えた?」
「うんなの! 攻撃魔法覚えたの!」
「よし! それならそれを中心に組み立てよう。俺がゴーレムの正面で攻撃を受け止めるから、リリは魔法の準備、フィリアはその援護を頼む」
「わかったの!」
「承知しました」
リリはMPを回復させた後、詠唱を始めた。
「大気に宿る風の精霊たちよ! 我が魔力と共に立ちはだかる敵を吹き飛ばせ!」
膨大な魔力がリリを中心に集まってきた。
異変を感じたストーンゴーレムは魔力の集まる方へ向かおうとしたが、巨大な盾に装備を換えた直哉がその行く手を遮った。
「ここは、通さない!」
「天より来たりし光の精霊よ、我が魔力に呼応し武器に魔力を与えたまえ!」
「セイントマジック!」
リリの拳が輝きだした。
「お兄ちゃん!」
「おうよ!」
直哉が射線を確保すると、
「ストームブロウ!」
リリは魔法を放った。
周囲に膨大な風の力が巻き起こり、ストーンゴーレムを包み込んだ。
直哉はストーンゴーレムが守るであろう核を探していた。
しばらく動かなかったゴーレムは両腕で首元を守るように動き始めた。
「ここだ!」
直哉は持っていた火炎瓶をゴーレムの首元へ投げつけた。
ガシャン。
見事にゴーレムの首元に当たりゴーレムが苦しそうにうごめいた。
「やはり、弱点は首元にある核だ!」
直哉の声にリリとフィリアは動こうとしたが、リリはMP大量消費の影響でその場を動く事が出来なかった。
フィリアは、
「天より来たりし光の精霊よ、我が魔力にひれ伏し邪悪なる者に裁きの鉄槌を!」
「エンジェルフィスト!」
物凄い数の光の矢を首元へたたきつけた。
「さらにこれで!」
直哉はありったけの火炎瓶をマリオネットを使い的確に当てていった。
急所に攻撃を受けながらも、直哉達に腕を振るいながら叩き潰そうとするストーンゴーレムだったが、直哉の盾ガードで防げるほど弱くなっていた。
直哉は勝機と見て、武装を四属性の剣とジュラルミンの盾にして、斬りかかっていった。
「セィ!」
ガゴン!
大きな衝撃を受けたが、外郭の時よりは軽いため、連続攻撃を開始した。
「四連斬り!」
全てに急所斬りを使い、ゴーレムの核を削っていった。
「ムッ!」ゴーレムは最後の足掻きで、両手を組みながら大きく振りかぶった。
「退避!」
直哉は叫んだ。
フィリアは反応したが、リリは未だに動けずにいた。
「リリ!」
直哉はリリの元へ駆けつけ、リリを担ぎ上げその場を逃げ出した。
直後、大地を物凄い衝撃が走った。
「うぉ」
「きゃぁ」
直哉はリリを抱えていたため、ふらついてしまった。
フィリアは何とか堪えたが、直哉のほうを見て血の気が引いた。
「直哉様! 後ろ!」
直哉はMP回復薬を飲みながら振り向くと、ストーンゴーレムが飛び掛ってきていた。
「MPが全快しなかったけど、これでもくらえ!」
直哉はとっさに指輪を前に出し魔法を放った。
「エクスプロージョン!」
物凄い爆発が近くで巻き起こった。
直撃を受けたストーンゴーレムは吹き飛ばされ、地面に叩きつけられた。
直哉達も熱風を浴びたが、リリが唱えたエアフィールドとアイスフィールドのおかげで、ダメージは小さくすんだ。
「とりあえず、ぶっ飛ばしたけど、他に敵がいないか注意して!」
直哉達は周囲に敵が居ないことを確認してその場に座り込んだ。
「強かった!」
「でも、やりましたね!」
「何とかなったの!」
しばらくその場で休憩してから、ストーンゴーレムが吹っ飛んだところに行くと、タグとドロップアイテムが落ちていた。
「ゴーレム岩が百個に、念動石が三個、遠見石が二個。っていうか、ゴーレムって念動力で動いていたのかよ!」
直哉は興奮しながら、
「ゴーレムって魔法石を落とすのだね」
「そうですね、上位のゴーレムなら色々な種類の魔法石を落とすと聞いています。今回は上手くコアを破壊したので、結構良品がドロップしてますね」
「フムフム。と言うことは部位破壊で目とか潰すと、魔法石は減っていくわけか」
「そう聞いております」
直哉は今回のことを頭に入れ、
「よし! とにかくアイテムを設置してしまおう」
気持ちを切り替えて『安全地帯』を配置していった。
その後は大きな戦闘も無く、無事に配置を完了し、アイテムの効果が発動していることを確認して、鍛冶ギルドへ向かった。
第三十四話のサブタイトルを[南の森で]から[領地を探索する]へ変更いたしました。
また、《アイスフィールド》の詠唱が間違っていたので修正いたしました。
「氷を司る精霊達よ、我が魔力にひれ伏しこの大気を凍結させよ!」→「氷を司る精霊達よ、我が魔力にひれ伏し仲間に氷の恩恵を!」