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第百八十三話 直哉の物語

◆ドラゴンバルグ


正哉と晶子は驚いていた。

「ここが、直哉の飛ばされた世界」

「随分と古い感じなのだな」

直哉に連れられ、バルグフルからルグニア、ソラティア、バラムドを経由しバルグへ戻って来た。


「一年見ない間に、別人のようになりましたね」

「あぁ、これほど力強い目をした直哉を見たのは、はじめてだよ」

両親が直哉を見て、感激していた。



「そうだ、父さんにやって貰いたい事があったんだ!」

「ん? 俺に何をさせようというのだ?」

「戦闘で臓器を失った人の回復方法を教えて欲しい」

正哉は驚いて、

「何? 直哉は治療も出来るのか?」

直哉は首を横に振り、

「流石に無理だよ。でも、臓器を造りそれを繋げる事が出来るのだけど、それ以上は上手く行かなくて」

(それはそうだろう。ただ人工臓器を繋げるだけで治るのであれば、我々医者は要らなくなるな)


「よし、少しブランクがあるが、やってみよう。病院は何所だ?」

「そんなもの無いよ。診療所は造ったけど、地球のような施設は造れなかったよ」

「何故だ?」

「必要な資材がわからないし、その設備を使える人も、管理出来る人も居ないので病院というアイデアはボツになった」

「そうか。わかった。今ある施設の確認と、患者の容態確認だな」

正哉は、地球での経験を元に、新たな治療法を確立していった。


そしてその日中に二人の手術を終え、診療所のベッドには、ゴンゾーさんとシルビアが眠っていた。


「手術は成功です。後は人工臓器との相性を見ていく事になります」

「今まで通りに動けますか?」

「全盛期より落ちますが、余程激しい使い方をしなければ大丈夫です」

正哉は患者の様体をそれぞれ付き添ってきた者に説明しながら、集まって来ていた医師見習い達に教えていった。



晶子はそんな正哉を見て、

「直哉、私にはなにか無いの?」

「もちろんあるよ」

そう言って、ドラゴンバルグの管理室へ連れて行った。

「何、ココ? 随分とローカルなのね」

「そうなんだよ。おかげで、やり難くて仕方がないんだよ。何とかならない?」

晶子は腕を組んで考えながら、

「機材と助手が居れば何とかなると思う」


「助手のレベルは?」

「私の言う通りの事が出来れば良い」

直哉は、コンソールから各地の管理者を呼び出し、この間造った人形を出向させた。

「うちの母が、この世界のシステムを扱いやすいように作り替えてくれるから、それを手伝って欲しい」

ルグニア達は晶子指導の下、驚異的な速度でシステムを構築していった。

直哉も晶子の欲しがる部品を作成しながら手伝った。



二人とも、自分のやりたい事をやっているので、のめり込んでギリギリまでやるのかと思って居たが、夕方になったらバルグに新しく造った、直哉の屋敷へ帰ってきた。

「ただいま」

「ただいま」

直哉は驚きながら、

「お帰り、父さん、母さん。帰って来たのだね」


二人はお互いの顔を見て笑いながら、

「もちろん。地球では自分のやりたい事をやり続けて、一時でも直哉を失うという辛い目にあったのだ。だから、同じ事は二度としないと誓ったのだよ。これからは、仕事は仕事、プライベートはプライベートとオンオフをしっかりと切り替える事にするよ」

直哉は二人に抱きつきながら、

「ありがとう! 嬉しいよ!」

そう言って、二人の部屋まで送った。



食堂には様々な人が集まっていた。

その様子を見て、正哉と晶子は驚いていた。

「凄い人数で食べるのだな」

「うん。今日は特別だよ。普段は、この屋敷を使っている人たちだけだけど、今日は俺の両親が来てくれたお祝いの日だから、各国の方々も来ているよ」

「あら、こんな格好で良かったのかしら」

晶子は普段着を指さした。

「大丈夫だよ」

そう言って、二人を座らせると、定位置に戻った。


バルグの屋敷には、バルグフルの使用人達とルグニアの使用人達が集められていた。また、各地の領民達は殆どがこのバルグの地へ集まっていた。

食堂には、直哉、嫁達、屋敷の使用人達、バルグフルからリカード、シンディア、アレク、そしてラナ達五名。ルグニアからは、アシュリー、ダライアスキー、エバーズが参加し直哉の弟子であったメントールが大規模鍛冶場から代表でやってきていた。ソラティアからは、ガンツとリンダ、そしてバール、ジャンヌとパルジャンが参加していた。バラムドからは、アシカ、ユーサイ、アケチ、ミヨシの弟でソゴウがやってきていた。



「さて、お集まりの皆様。本日は俺の両親との再開、そして、ドラゴンバルグの新しい旅立ちを記念しまして、酒宴を催そうと思います」

食堂が歓喜に包まれた。

「いよぅ! 待ってました!」

直哉は右手を挙げて静かにさせると、

「各国の国民に対しては、皆様が帰ってから個別に行ってください」

直哉は全員を見渡して、


「では、両親を紹介します。こちらが、父の正哉です」

正哉が立ち上がって、

「正哉です。医療の事なら任せてください」

「うちの、ゴンゾーをありがとうございました!」

リカードが頭を下げていた。

「そして、こちらが母の晶子です」

晶子も立ち上がって、

「どうも、晶子です。SE、っていうかシステム管理をやってました」

会場にいる殆どの人が頭にハテナマークを出していた。

「まぁ、堅苦しい話しはココまでにして、とりあえず飲みましょう!」


食堂にいる全ての人がジョッキを持って、

「乾杯!」

「かんぱーい!」


宴会へ突入した。



「おっ肉! おっ肉!」

リリが一番に肉の皿に飛びついた。

「こら! まずは、ご両親に挨拶が先でしょ!」

肉の皿にくっついたリリをフィリアが引きはがしながら諭した。

「でも、お肉なの!」

「私達は、各国の方々を迎えている、直哉様の嫁なのですから、それらしく振る舞わなくてはなりませんよ」

「うー」

リリは涙目になりながら、直哉の元へ逃げてきた。


そんなリリを抱っこした直哉は、

「丁度良かった、リリを紹介するね。フィリア達も順番に紹介するから待っていてね」

そう言って、リリ達を順番に紹介していった。


「この子はリリ。俺の最初の仲間で、最初の冒険で意気投合して、そのまま一緒に住む事になった子で、一番の嫁だよ」

さらに詳しい話しを聞いて、二人は涙しながらリリを抱きしめていた。

フィリアを両親の前に連れて行って、

「この娘はフィリア。二番目の仲間で、最初は護衛対象として俺の屋敷へ来ていた娘。あちらに母親がいます。リリと同時にプロポーズした子です」

ラリーナが終わったのを見て、やってきた。

「この子はラリーナ。始めは痛い子だったけど、徐々に良くなって来たよね。最近は俺より強くなって攻撃が当たりにくくなってきたよ」


直哉はエリザを呼ぶと、

「この子は、エリザ。あちらにいるアシュリー様の妹さん。ちょっとドジな所があるけど、力強さだけならみんなの中で一番だよ」

「ちょ! もっと、良い事を言って欲しいのじゃ」

直哉は笑いながらマーリカを呼んだ。

「この子はマーリカ。いつも俺の側にいて俺を危険から護ってくれようとしてくれている子です」

マーリカは頭を下げた。

「最後に、この子はアイリ。最近保護した子で、頑張り屋さん」

そう言うと、

「リリだって頑張ってるの!」

「私も頑張ってます!」

「私も、そのつもりなんだが!」

「わらわも、頑張っているのじゃ」

「私だって!」

全員から猛抗議を受けた。


「あっはっは。尻に敷かれているのだな!」

その結果、みんなによろしく頼むと挨拶し、特にリリとアイリは両親から可愛がられ、甘やかされていた。

「こんなに綺麗な方や可愛い方が直哉の嫁になるなんて、昨日までは考えられなかったわ」

「しかし、複数の女性を嫁にするなんて、なんて非道徳的なんだ!」

晶子は感激し、正哉は憤慨していた。


そして、直哉はリカード達を順番に紹介していった。

「こちらの方はリカード。俺の命の恩人だよ」

「こちらこそ。直哉は私の命の恩人です」

二人して恩人扱いして居た。

「そうか。直哉の事を護ってくれてありがとう」

正哉がリカードと固い握手をした。


そして、全員を紹介して宴も終わり、静寂が周囲を包み込んだ。



◆直哉と両親

「直哉はこの世界で生きて行くのだね」

「うん。俺はこの世界に居る限り、俺で居られる感じがする。地球では俺という殻を被った、別の何者かが俺の殻を操っていたって感じがするよ」

「生き生きしているものね」

正哉達は考えていた。

「直哉が居なくなったこの一年、本当に辛かった。まだ高校生の直哉が神隠しにあったって。だから、私の全てをなげうってでも、貴方を捜そうと決めたの。そして、直哉を見つける事が出来たら、直哉がやりたい事を応援しようと決めたの」

「そうだな。俺も、直哉のやりたい事を応援するぞ。もう病院は売って身軽になったし、何所で生活しても一緒だが、やはり家族と過ごす時間は良い物だと再確認したよ」

三人は夜遅くまで話していた。





それから数ヶ月して、新バルグは正式にドラゴンバルグと名称を変えた。

住民も増え、医療、商業、工業、農業が充実していった。

直哉はドラゴンバルグだけ時代が進み過ぎないように、周囲の環境に合わせて街づくりをして行った。

そんな中、システムを整理していた晶子から、

「システムの中にダンジョンがあるのだけど、これをアクティブにして良いの?」

と、聞かれたので、大急ぎで神に確認すると、

「もちろん、良いぞ」

と、お達しがあったので、任せる事にした。


晶子は仲良くなったルグニアやパスタスと共に、本格的なダンジョンを造り上げる事に専念していった。

ダンジョンの管理をパスタスが造った人形に、ルグニアが人格を植え付けた者を使っていた。

これが、後の世に伝わるミレニアムダンジョンの原型であった。


数年後にドラゴンバルグの国王を引退し、その座をイーエヤッスに譲り、直哉は家族と共に管理者として生きて行くのであった。

こうして、直哉の大冒険はドラゴンバルグ地方の開放をもって終了する事になった。



ファムクリアス戦記 ドラゴンバルグ開国編 完

これで、直哉の冒険は終わります。


長い間のご愛読、ありがとうございました。

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