第百八十話 魔王領での戦闘 最後の戦い
◆魔王城 魔王の間
直哉達が作戦会議をしている時、魔王達の方も魔王の命を受けていた。
「デーモンロードは私の横へ、アークデーモンとジェネラルデーモンはグレートデーモン達の指揮を! グレートデーモン及びレッサーデーモンの物量プラス、アークデーモンの魔法による攻撃で一網打尽にせよ! ジェネラルデーモンは魔法により防御力が下がった勇者達を、殲滅せよ!」
「承知」
三体のデーモンは魔王の命令を遂行すべく行動を開始した。
「あらら、気づかれていたようですね」
敵が動き出したのを見て直哉は詠唱を早めた。
「火よ水よ風よ土よ光よ闇よ! 我が声に耳を傾けその力を示せ!」
「直哉様には近づけさせません!」
「一気に来られると厄介だな。リリとアイリで蹂躙出来ないか?」
ラリーナの要請に、
「任せてなの!」
「やってみます」
リリは前に出てドラゴン化し、アイリはクロードを呼び出した。
「やっつけるの!」
「クロード、リリさんに合わせて攻撃しなさい!」
「グルオーン!」
リリは正面から押し寄せようとしている、レッサーデーモンとグレートデーモン達に対して、放射線状にブレスを吐きかけた。
クロードも同じように、ブレスで攻撃を開始した。
レッサーデーモンがブレスによって被害を被ると、
「ガー!」
グレートデーモンがレッサーデーモンに指示を出し、レッサーデーモンにグレートデーモンが作り出した障壁の内部へ入るように指示出した。
グレートデーモンの障壁の内部では、リリ達のブレスの勢いが半減していた。
「むー!」
だが、デーモン達の進軍は完全に止まっていた。
各属性を均等に収束する。
「ここに新たな属性よ、顕現せよ!」
直哉の手に無属性の精霊が出現した。
(よし、ここまでのMP消費量は、この前よりも少なく済んだ。後は!)
MP回復薬を飲みMPを回復しながら、さらに魔力を練り上げていった。
直哉の動きを見ていた魔王は、
「あの魔法は危険な気がする、何とか出来ないか?」
「御意」
デーモンロードは頭を下げて出陣した。
膠着してた前線に、アークデーモンとジェネラルデーモンが到着した。
ジェネラルデーモンは、レッサーデーモン達を護るようにリリ達のブレスの前に立ちはだかった。
「あいつには、ブレスの効果が余り無いの。悔しいの!」
「リリはドラゴンから戻って、アイリはワンスケのフェンリルバージョンを迎撃に!」
「はい」
リリはその場でドラゴン化を解いて、魔法と拳での攻撃にシフトしていった。
そして、ワンスケが前に出てきた。
それを見たグレートデーモン達はチャンスと見て、障壁を解除して魔法の詠唱を開始した。
「不味い、魔法が来るぞ!」
エリザとマーリカが前に出て、
「魔法は任せるのじゃ!」
「やって見ます」
エリザは手のひらサイズの盾に属性を付けて展開した。
「これで、防げればよいのじゃが」
「土遁! 土石波壁!」
物理的な壁を造りだし、
「ご主人様程では無いですが、強固に出来ました」
グレートデーモンの放った魔法は、直哉の方へ飛んで行き、エリザとマーリカの防御陣によって防がれていた。
「これなら、護れるのじゃ」
「大丈夫そうですね」
二人が安堵したところへ、強大な魔法が飛んできた。
「なっ!」
二人が絶句していると、
「プロテクションフィールド!」
光の障壁が一瞬で出来上がり、魔法を相殺した。
「あ、焦ったのじゃ」
「ありがとうございます」
魔法での攻防は、直哉の方へ軍配が上がった。
ジェネラルデーモンとレッサーデーモン達は、リリとワンスケとクロードのトリオの猛攻にさらされていた。
ジェネラルを先頭にして前に出ようとすると、ワンスケが速度で、クロードが全体ブレスで、リリが速度+威力+全体魔法で攻撃して押さえ込んでいた。
「ちぇっすとー!」
両腕に魔法を光らせながら、ジェネラルに襲いかかった。
「ここなの!」
ジェネラルが盾を構えて、リリを迎撃しようとしていたので風魔法でジェネラルをおちょくる様に飛んでいた。
「リズファー流奥義! 瞬迅殺からの大地割り!」
死角から一気に近づき攻撃を繰り出した。
「何と言う連携だ! だが、これで道は開けた!」
ジェネラルデーモンが方膝を付いた時、直哉の魔法も進んでいた。
「火よ水よ風よ土よ光よ闇よ! そして、無よ! 我が声に耳を傾けその力を示せ!」
七種類の精霊達が、直哉の前で輪になってクルクル回っていた。
(よし!安定した。後は威力用の魔力を込めるだけだ)
その時、後ろから殺気を感じて、前に飛んだ。
(何だ? 今の殺気は!)
飛びながら後ろに振り返ると、そこには魔王の横にいた豪華な武具を装着したデーモンが、剣を降り下ろした体勢で直哉を睨んでいた。
「あの、奇襲を避けるとは、流石勇者と言うべきか?」
デーモンロードは、剣を構え直すと直哉に斬りかかった。
「おっと。ふっ。よっ」
直哉は魔法を切らさないように、回避に専念していた。
「得意のゲートやらは使わぬのか?」
直哉はデーモンロードの声には耳を貸さず、徐々に魔力を注いでいった。
「ぬぅ、やらせはせん!」
魔力を溜め始めた直哉を見て焦り始めたデーモンロードは、直哉に対して闇雲に斬りかかって行った。
直哉はニヤリと笑いながら回避していた。
「何がそんなにおかしいのだ!」
デーモンロードはなまじ知性が有ったために、直哉の行動が不可解で苛立ちを覚えながら、直哉を追っていった。
デーモンロードは手数を増やし、フェイントを増加させて直哉を追い詰めた。
「これで、終わりだ!」
デーモンロードは回避出来ない様に追い込み、必殺の一撃を放とうとしていた。
直哉は、デーモンロードの一撃が、体勢を崩したところへの突きだと見極め、さらには周囲の状況を見極めて、靴の魔石を起動し上空へ逃げ出した。
「なっ!」
突きの体勢で空振り、飛んで行った直哉を見送りながら呆気に取られていた。
直哉は魔法を発動しようとしたときに、今までとは違い、明確に対象を選択できる事に気が付いた。
(マルチロック開始! 真下に1、その他デーモン多数、ついでに魔王!)
どんどん上昇しながらロックしていった。
(こんな所かな?)
直哉は魔力を注ぎ込み、
「七色の精霊達よ! 我が名は直哉! かのカソードの転生者なり。いにしえの盟約によりその力を貸したまえ! 全てを超越する力を!」
直哉から数千ものMPが魔力となって放出する。
「カソード・レイ!」
直哉から七色の光が放射され、魔王とデーモン達を包み込んでいく。
魔法が発動し、周囲は七色の光で満たされていた。
(何とかなったのかな? はっ! 不味い、これだけは外さなくては)
直哉は最後の力を使い、連装魔蓄棺を解除して、地上へ向けて落ちていった。
直哉の落下をいち速く見つけたマーリカは、
「ご主人様が魔力を使いきって落ちてきています」
そう言って、落下予想地点を示していた。
その場所には、デーモンロードの残骸が散らばっていた。
「何だ? このゴツイのは」
ラリーナ達も集まって来ていた。
「お兄ちゃんを迎えに行くの!」
「みんなで行きましょう」
飛び出して行きそうなリリに、フィリアが全員を促した。
魔王が居た辺りには人影はなく、デーモン達が多数居た所は、未だに埃が舞っていて視界が悪かった。
リリ達は、六人で輪になって直哉を迎えに行った。
落ちてくる直哉を六人で受け止めると、ゆっくりと地上へ降りて行った。
「お兄ちゃん」
「直哉様」
「直哉」
「直哉殿」
「ご主人様」
「直哉さん」
六人が直哉にMP回復薬をかけて、回復させていた。
リリ達は周囲の警戒をしながら直哉が目覚めるのを待っていた。
魔王軍も、殆ど即死であったが、魔王はアークデーモンの張った障壁に隠れ、アークデーモンもろとも盾にしたため、大ダメージを負ったが生きていた。
だが、デーモンロードはカソード・レイを真上から受けた為、魔法の威力を逸らすことも出来ずに消え去った。
ジェネラルデーモンは、ラリーナが付けた傷口より魔法が侵食し折角の防御力を生かす事無く消滅した。
アークデーモンは、魔法障壁を張って堪えていたが、後ろから来た魔王に盾にされ、その命を散らしていた。
埃が晴れると、そこには慢心総意の魔王が立っていた。
「ふっふっふ。まさか、ここまで追い詰められるとは思わなかったぞ」
そう言うと、身体の内部に仕舞い込んでいた闇の衣を身体の周囲に這わせ、
「このまま、壊れるまで動かすとするか」
そう言って、直哉達へ攻撃を開始した。
「不味い、まだ、直哉は回復しきっていないぞ」
リリはフィリアを見て、
「フィリアお姉ちゃん、お兄ちゃんをお願いなの」
「えぇ、私の障壁が何処まで持つかわかりませんが、最善を尽くします」
ラリーナもフィリアを見て、
「あれは私たちが抑える。フィリアは直哉を頼む」
「はい」
「わらわも行くのじゃ!」
「私はフィリア様を援護します」
「私は、ワンスケとクロードを出します」
リリ達は行動を開始した。
「ディバインプロテクション!」
リリ達に光の加護がかかる。
「まずは、私から! リズファー流、瞬迅殺! 大地割り!」
魔王までの距離を一気に詰めて、殴りかかった。
「ふん!」
闇のエネルギーで造った剣で迎撃してきた。
そこへ、
「喰らうのじゃ!」
ラリーナより高い位置を取ったエリザが矢を放った。
トストス
エリザの放った矢は、闇の衣により無効化された。
「ちぇっすとー!」
さらに、リリが殴りかかる。
「グルルルルル」
ワンスケも同時に噛みつきに行った。
「さらに、大地割り!」
ラリーナはリリ達の攻撃に合わせて、奥義を追加した。
「ふん!」
魔王が左腕で虫を掃うように振ると、闇のエネルギーが周囲に溢れだした。
「不味いの!」
「ヤバい」
「キャインキャイン」
リリ達は、間合いを強制的に取らされた。
「それなら!」
リリは魔法の詠唱を開始した。
「第二奥義、天空斬!」
ラリーナも遠距離攻撃にシフトした。
ワンスケは、遠距離攻撃手段が無いため、後方へ移動し、代わりにクロードがブレスで攻撃していた。
「その、ブレスに合わせて、サンダーテンペストなの!」
ラリーナの斬撃、リリの雷撃、クロードのブレスによる攻撃で、魔王の足が止まった。
「今度こそ、喰らうのじゃ!」
巨大な弓で槍を打ち出した。
「無駄ぁ!」
魔王は闇の衣から盾を造り出して、槍を弾き飛ばした。
「ちっ、あれも弾く事が出来るのか!」
エリザは舌打ちしながら、さらに槍を装填した。
「インテンスペイン!」
魔王が闇の魔法を放つが、フィリアの光の加護により、無効化されていた。
「むっ、あの光魔法士は厄介だな。先に倒すか?」
攻撃対象を直哉とフィリアに変更して、一気に突破しようとしていた。
「行かせないの!」
「ここは、通さん!」
「ガルルルルル!」
リリ達が魔王の足を止めようと、攻撃を再開したが、今度は闇の衣を厚く展開して、全ての攻撃を受け流していた。
「このままでは!」
「クロード! 行きなさい!」
アイリの命令に、
「グルアァァァァァァァァァ!」
一際大きな咆哮を上げてから、魔王に突撃して行った。
「ほぅ、死にに来たか」
魔王は、クロードを迎撃すべく足を止めた。
それを見た、リリとラリーナが遠距離攻撃での援護を強くした。
「アイリ! 今なのじゃ!」
エリザの合図で、アイリはクロードを腕輪にしまった。
「なにっ!?」
流石の魔王も驚いていた。
そこへ、
「これで!」
エリザは魔王の死角から当たるように槍を放っていた。
「五月蝿いハエが飛んでいるようですね」
魔王がリリ達を迎撃しようとした時、
ドス! ドス!
と、後方から、槍が二本突き刺さった。
「ほ、ほほぅ、なかなかやるではないか」
魔王はニヤリと笑いながら、攻撃を続けていた。
「何じゃと!? あれでも攻撃を止めないのか!」
「何か秘密があるのかもしれない」
「このままじゃ、ジリ貧なの!」
三人が焦り始めると、魔王はニヤリと笑い、
「くらぇ!」
そう言って、数え切れないほどの闇の礫をリリ達に向かって飛ばした。
「むっ! 舞い散れ! サクラ! ラリーナお姉ちゃんも護って!」
スカカカカカカカカカカカン!
大量の闇の礫をリリのサクラが防いでいたが、
「このままでは、押し切られるの」
「一度、戻るか?」
ラリーナが退却を考え始めた。
上空では、手のひらサイズの盾を展開したエリザが後方へ移動し始めていた。
「すまないのじゃ、上空では踏ん張りが効かないのじゃ」
そう言って、戻ろうとした時にみんなの身体が輝き始めた。
サクラの耐久力が上がり、手のひらサイズの盾が強化され、みんなの光の加護が強まった。
「この力は!」
「お兄ちゃんの思いなの!」
「これなら、行ける!」
リリ達が希望を取り戻した時、直哉は起き上がっていた。
「直哉様? お身体の具合は如何ですか?」
「フィリア、ありがとう。あと、一回攻撃出来れば良いから、支えていてくれるかい?」
フィリアは、直哉を回復しながら支えていた。傍にいたマーリカも直哉を支えていた。
「マーリカもありがとう」
直哉はそう言って、魔王の方を向いて絆の腕輪をかざして、
「リリ、フィリア、ラリーナ、エリザ、マーリカ、アイリ。君達の絆の力を使わせて貰う。俺を中心にして紡がれた絆の力よ! 魔を滅したまえ!」
直哉の言葉と同時に、絆の腕輪から光が溢れだし、魔王の闇の衣ごと包み込んだ。
「うぐぐぐぐぐぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! またしてもその腕輪か!」
必死に抵抗していたが、絆の腕輪の攻撃を無効化する事が出来ずに、管理者の少女の身体から吹き飛んで行った。
「これで、最後です!」
直哉は少女の身体から出ていった、闇の球体に向けて、さらに腕輪の力を解放して照射した。
「うぐぐぐぐぐぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
そして魔王を司る闇のエネルギーが消滅した。
「終わった」
「やったの!」
「やりましたね」
「やったぞ!」
「終わったのじゃ!」
「流石、ご主人様です」
「やりました」
七人は直哉を中心にして喜んだ。
2018/08/31
修正いたしました
誤
「七色の精霊達よ! 我が名は直哉! かのリカードの転生者なり。いにしえの盟約によりその力を貸したまえ! 全てを超越する力を!」
正
「七色の精霊達よ! 我が名は直哉! かのカソードの転生者なり。いにしえの盟約によりその力を貸したまえ! 全てを超越する力を!」