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第百七十九話 魔王領での戦闘 直哉の思い

◆隔離の間 リリ


(このままでは厳しいの。ダメージが貯まってきたし、決定打が無いの)

リリが焦りだした時、身体が光に包まれ始めている事に気が付いた。

(この光は何なの?)

その光は優しく暖かった。

(この暖かさは、お兄ちゃんなの!)


そう感じた瞬間、直哉の思いが流れ込んできた。

(あぁ、お兄ちゃんの気持ちがリリに流れ込んでくるの!)

リリの身体を光が覆うと、突撃を再開した。

「これなら行けるの!」

そこからは、一方的な展開で、ニセリリの攻撃は光が受け止め、リリの攻撃は光が後押しした。

(やっぱりお兄ちゃんは優しいの!)

リリは直哉の思いに包まれながらニセリリを倒す事が出来た。


「やったの!」

リリに倒されたニセリリはドッペルゲンガーに戻った。

「顔が無いの!」

しばらく周囲を警戒してから、

「あっちから、お兄ちゃんの匂いがするの!」

そう言いながら奥の鉄格子をくぐり抜けた。




◆隔離の間 フィリア


(新手の魔族?)

ニセフィリアは困惑しているようだ。

(私になってどうするのかしら? はっ! まさか、直哉様に近付く為に変化したのかしら、それならば、容赦はしません!)

フィリアが光の加護を自分にかけると、ニセフィリアも同じ行動をとった

「いやぁぁぁぁぁぁ!」

だが、ニセフィリアは苦しみだした。

(えっと、光の加護でダメージを負うとは、魔の者で間違いないようですね)

フィリアは追い討ちとばかりに、破邪魔法を放った。

苦しんでいるニセフィリアも破邪魔法を放ったが、フィリアには何の効果も無く、ニセフィリアが、一方的にダメージを負っていった。そこへ、直哉から絆の腕輪による援護が入り、

「ここまでです」

と、止めをさした。


(一体何をしたかったのでしょうか?)

フィリアはほんの少し考えたが、

(直哉様の所へ急ぎましょう)

先に進むことにした。




◆隔離の間 ラリーナ


ラリーナは久しぶりに全力が出せる相手と対戦して楽しくなっていた。

(流石私! 楽しいぜ!)

フェイント、攻撃、回避、フェイントと出せる技を駆使して殴りあっていた。

だが、少しずつ差が出始めていた。

(自分の技を放ってくれるから、鍛練には丁度良いな。ここで先に攻撃はどうだ!)

一撃事に成長していくラリーナに対し、スキャンをかけ直さないと強くなれないドッペルゲンガーでは、結果が見えていた。


(始めは楽しかったが、続かなかったようだな)

ラリーナは徐々に押して行き、最後にはドッペルゲンガーの首を落とした。

(結局この程度か)

ラリーナがガッカリしていると、絆の腕輪による援護が入った。

(これは直哉か)

ラリーナは直哉の光に癒されながら先へ進んだ。




◆隔離の間 エリザ


エリザ同士の対決は、遠距離からの打ち合いであった。

「喰らえなのじゃ!」

「そこなのじゃ!」

撃っては回避し、撃っては回避し、お互いの技と技をぶつけ合っていた。


ダメージは無いものの、与える事も出来なかった。

(このままでは埒があかんぞ)

エリザが困っていると、絆の腕輪による援護が入った。

(これは、何なのじゃ?)

エリザは困惑し、ニセエリザも困惑した。

(あいつの攻撃ではないようなのじゃ。攻撃と言うか、包まれている感があるのじゃ)

エリザが光に身を委ねると、直哉の思いが返ってきた。


(直哉殿。そうか。そうなのじゃな)

エリザは直哉の言葉を思い出していた。

(ありがとうなのじゃ)

そう思いながら槍を構えた。

ニセエリザはチャンスとばかりに連射できる矢を放ちまくった。

「直哉殿、我を護るのじゃ!」

手のひらサイズの盾がエリザの周囲に展開した。


スカカカカカ!


ニセエリザの放った矢は、全て手のひらサイズの盾で防ぎきった。

(流石直哉なのじゃ! そして、これで、終わりなのじゃ!)

溜めていた槍をニセエリザへ向けて放った。


「ちっ!」

ニセエリザは予想以上に速い槍を回避するのが精一杯であった。

「それは甘いのじゃ!」

ニセエリザは、槍を回避してその槍が二本だったことに戦慄した。

「なっ!」

エリザと同じように手のひらサイズの盾を出して防ごうとしたが、エリザの槍によって完全に破壊された。


ザシュ!


二本目の槍はニセエリザの身体を貫いた。

「うぐっぅ」

「止めなのじゃ!」

エリザは、弓にある剣部分を使って近距離攻撃に切り替え、止めをさした。

(ふぅ、何とかなったのじゃ。直哉殿ありがとう)

エリザは、奥の扉へ進んでいった。




◆隔離の間 マーリカ


「雷遁、雷落波!」

「土遁、避雷針!」

マーリカの頭上から大量の雷が襲いかかり、それを避雷針で回避してさらに雷をチャージした。


さらに、ニセマーリカが雷を使う。

「雷遁、雷走り!」

「土遁、避雷壁!」

避雷針の壁バージョンで対抗した。


(このままでは、ご主人様を護りに行けない! 何とかしなくては!)

マーリカは雷を回避後に近接戦闘へ移行した。


キン!


小太刀同士が何度も交差した。

(近接も同等ですか。ならば!)

マーリカは、小太刀に雷遁を纏って斬りかかった。

「フム。そのような、使い方があるのか。面白い」

ニセマーリカも雷遁を武器に流して対応していた。


キン! バチバチ。


金属音に続き、雷が弾ける音が響いた。

(くっ。こちらの技がどんどん吸収されていく。初見の攻撃で倒さないとダメなのか?)

マーリカが焦りだした頃、絆の腕輪による援護が入った。

(何? この光は!? ん? これは、ご主人様!?)

その光を受け入れると、

(あぁ、ご主人様の思いが流れ込んでくる! これは!? ご主人様の世界の武器? レールガンという物ですか。フムフム。雷遁を使って擬似的に電磁誘導というのを発生させ、そのエネルギーで弾丸を発射するのですね)


マーリカは懐から、閃光玉と煙幕玉を大量に取り出して、炸裂させた。

「ふっ、パワーアップしたのかと思えば、逃げの一手ですか?」

ニセマーリカは闇雲に雷遁や飛び道具を乱射していた。

マーリカは土遁を使い、土のドームを造り、その中でレールガンの様な物を、土遁で形作っていった。

(細かい事はわからないので、雷遁で弾丸を飛ばせる形状を造ります)

ニセマーリカの攻撃が止み、煙幕等の効果が無くなった。


「何ですか、その土の塊は!」

ニセマーリカは土のドームを見て忍術の効果がないと悟ると、直接叩き壊す事にした。

「そのまま、潰れてしまえ!」

土のドームに押し潰される前に、ドームの外へ飛び出した。

土遁で造ったレールガンに、直哉が造った任意で動かせるブロックを駆使して弾丸とした。

「喰らいなさい! 雷遁」


ニセマーリカは対雷遁用の忍術を唱え始めた。

「レールガン!」

しかし、雷遁は弾丸発射用の忍術で、実際は土遁でコーティングしたブロックが無数に飛び出し、ニセマーリカを貫いた。

「なに!? ぐふぅ」

大量のブロック片に貫かれて、ニセマーリカは倒れた。

(ふぅ。何とか倒せましたね。ご主人様の下へ急ぎましょう)

マーリカは、新たに開いた奧に進んでいった。




◆隔離の間 アイリ


(あれ? みんなは何所? 直哉さん、怖いよぅ)

アイリはワンスケを呼び出した。

「おぅ、どした?」

「扉を潜ったら、誰も居なかったの」

ワンスケは周囲を見渡して、

「ふむ、確かに直哉達は居ないな。ん? だが、近い場所には居るようだ」

「そうなの?」

「あぁ、とりあえず、奥へ進もうぜ」


ワンスケに促されて、中央へ進むとそこにはニセアイリが待っていた。

「遅かったのね。一人は寂しかった」

ワンスケはアイリの前に守る様に立った。ニセアイリは続ける、

「貴方は良いわよね。勇者に目を掛けられ、仲間を増やしているのだから!」

「ふざけるな! アイリの事を何も知らない癖に!」

ワンスケが吠えた。


「ふっふっふ。まずは貴方から貰おうかしら」

ニセアイリがワンスケにテイム魔法を掛けた。

「ぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅ」

普通なら、テイムされた魔物にテイムは方は効かないのだが、今回はアイリを複製したニセアイリだったので、上書きが出来るのであった。


「ワンスケ!」

アイリが叫ぶと、

「そう、貴方はワンスケというのね。さぁ、私の元へ下りなさい」

さらに魔力を篭めていった。


(ダメ! このままではワンスケが持って行かれてしまう)

アイリは涙を溜めながら、

「そんなのは嫌だ!」

アイリがワンスケを取られまいと、魔力を高めた。

そこへ、絆の腕輪による援護が入った。

(これは? なおやさんの心? あぁ、思いが溢れてくる。暖かい)


アイリを光が包み込むと、ワンスケも光に包み込まれた。

「わ、わおーん!」

ワンスケの光が集束すると、そこには大きな狼が居た。

「あ、あれ? ワンスケ?」

ワンスケはヌイグルミでありながら、昇華し、フェンリルとなった。その身体はヌイグルミであったが。

「何だ? その力は? お前の中には無い力だぞ?」


アイリはニセアイリを睨み付け、

「この力を貴方に教える義理はありません」

そう言って、ワンスケを突撃させた。

「ぐるるるるるるるるるぅ」

ワンスケがニセアイリに飛び掛かり、その首を落とした。


「直哉さん。私!嬉しいです」

アイリは新しく開いた扉に向かった。




◆魔王城


直哉が待っていると、

「お兄ちゃんの匂いが近付いてるの!」

リリが光輝きながら飛んできた。

「おにぃちゃーん!」


「おっと」

直哉は優しく受け止めた。

「なかなか大変そうだったね」

「そうなの! 大変だったの!」

リリは直哉の胸に顔を埋めながら、スリスリして甘えていた。



「あらら、先を越されてしまいましたか?」

ゆっくりと、フィリアが入ってきた。

「お疲れ様。良くわからない事になっていたね」

「はい。何故わかったのですか?」

「あれで見てた」

「なるほど、そういう事でしたか」

フィリアは納得して直哉の腕にしがみついた。



「楽しそうな事をしているな」

そこへ、ラリーナが大きくなったシロと共にやって来た。

「自分の技を磨いていたけど、納得出来た?」

「いいや! 始めのうちは良かったのだけど、少しギアを上げたら付いてこなくなった。あれなら、リリの方が万倍もマシだ」

そう言いながら、直哉にくっついた。

「万倍って」



直哉がラリーナの言葉に笑っていると、

「やったのじゃ!」

そこへ、意気揚々なエリザが入ってきた。

「直哉のお陰なのじゃ」

「上手く敵を欺いていたね」

「直哉殿の言葉を思い出したから勝てたのじゃ!」

エリザが興奮しながらくっついてきた。



「ご主人様! ご無事ですか!」

みんながくっ付いているところにマーリカが飛び込んできた。

「あれ? 皆様光っておられるのですか?」

「そうみたいだよ」

マーリカは光を抱きしめ、

「この光はご主人様から、私への想いが詰まっています。はじめての事なので、とても嬉しいです」

「そうだね。俺もさっき気がついたからね」


「だからか」

「今まで感じた事が無かったのは、気のせいでは無いのですね」

みんな、自分の身体の回りの光を感じていた。


「直哉さん!」

そこへ、アイリがやってきた。

「えっ!?」

アイリと一緒に入ってきた、大きなヌイグルミに直哉以外は唖然としていた。

「おぉ、本当にワンスケが昇華したんだね」

「おぅ! よくわからんが、強くなれたぜ!」

「この状態でも、大丈夫なのでしょうか?」

アイリは直哉に確認してきたが、

「正直なところ、解らないよ」

直哉は匙を投げた。


「そんなぁ」

アイリががっくりと膝を付いてショックを受けていた。

「大丈夫だろう。今の所違和感無いし」

(いやいや、俺たちからすればワンスケの姿が大きく変わった事に違和感バリバリなんですがね)

周りの心配をよそに、本人は問題無さそうであった。




直哉達が集まり、しばらくしても何も起きなかったが、

いきなり、奥に進む扉が開いた。

「よし、進むぞ!」

直哉達は奥へ進んだ。


この部屋のギミックは、前の部屋で偽物と戦っていた仲間たちが、本物かどうか疑心暗鬼に陥り、同士討ちを促す部屋であったが、直哉達は絆の腕輪によって本物とわかっていたので、部屋のギミックが全くの無意味と化していた。


「それにしても、さっきの部屋は何だったのでしょうか?」

「さぁ、休憩所だったのでは?」

「確かに、完全に回復出来たけどさ。意味不明な部屋を作るのだな」

「それにしても、まさか、リリが寝てしまうとは思わなかったけどね」

直哉は背中でスヤスヤと眠るリリを起こさないように先に進んでいった。




薄暗い通路を歩いていると、眠っていたリリが、

「この先に大量の魔物がいるの!」

と、警告を出してきた。

「うん。そんな気がする」

「少し先に大きなホールがあるみたいだ」


リリを下ろし、戦闘準備を整えて、先へ進むと、

予想通り大きく開けた場所にでた。

「直哉様! デーモンです! ですが、表で遭遇したのより遥かに強い固体が多数いるようです」

「これは、腕が鳴るな!」

それぞれ、周囲を警戒すると、

「あそこに、少女が玉座の様な椅子に座っています!」

マーリカが魔王を発見した。

「よし!」

みんなが飛び出して行きそうなのを、

「まって、闇雲に出ないで!」


直哉は回復した連想魔蓄棺を装備して、

「とりあえず、先制攻撃で一気に滅ぼそうと思う、もしこっちに来るようであれば、フィリアの光魔法を中心にして、敵を足止めしてくれる?」

「表で使った、無属性魔法とやらを使うのか?」

「いいや、その上の魔法を使う」

リリが直哉の傍に立って、

「魔力切れになったら、その装備は外してあげるの」

「それなら、わらわが倒れる直哉を支えるのじゃ」

「みなさん、好き勝手に言わないでください。私だって、直哉様を支えたいのに」


デーモン達が気がついていないことを良い事に、好き勝手言い合っていた。


「よし! 戦闘開始だ!」

直哉は詠唱を開始した。

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