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第百七十八話 魔王領での戦闘 魔王城 隔離の間

落ちていく直哉にデーモン達がチャンスとばかりに襲いかかった。

攻撃された衝撃で目を覚ましては、MP切れで意識を失うを交互に繰り返して、ようやく連装魔蓄棺を解除して、意識を失う事を止めた。


(久しぶりにMP切れの症状になったな。直下落下形絶叫マシーンの様に、身体がフワッとなる感覚は慣れないな。つか、未だにフワッとなっているのは何だ?)


改めて周囲を見て、

「うわっ!」

思わず声を出しながら、MP回復薬を取り出して使っていた。

その間もデーモン達の攻撃は続いていたが、新調した防具のお陰でダメージは軽微であった。

「マリオット!」

回復用の珠と接続して、回復速度を上げて靴の風の魔石を起動した。


そこへ、襲いかかるデーモン達。

(まだまだ!)

剣と盾を取り出して群がってくるデーモン達を払っていたが、その数は多く、段々と押されていった。

(不味いな。地面との激突は避けられそうだけど、デーモン達に囲まれてしまう)

直哉がそう考えると、



「お兄ちゃんから離れるのー!」

ドラゴン状態のリリがラリーナを引っ付けながら飛び込んできた。

「ウガァァァァァァァ!」

両方のツメと牙で、直哉に群がるデーモン達を弾き飛ばしていった。

「やれやれ、リリの奴、完全に私の事を忘れていやがるな」

ラリーナはそう呟くと、

「まぁ、ココまで降りてくれば、後は何とかなるか」


リリの背中から、デーモンに向かって飛び掛かった。

「まずは、一つ!」

直弥に向かっていたデーモンに一体を切り捨て、その死体を足場にして次のデーモンへ向かっていった。

リリ達のおかげで、直哉に襲いかかるデーモンの数が激減し、捌けるほどになっていた。

本来であれば、もっと大量のデーモンが迎撃する予定であったが、フィリア達の方へ向かっていくデーモンが居たので、少人数でも倒し切れた。


「よっと!」

直哉が着地すると、

「お兄ちゃーん!」

ズドーン!

リリがドラゴンのまま飛び込み、

「直哉、平気か?」

ラリーナも降りてきた。


「あ、あぁ。身体中が痛いが、生きてはいる」

そういう身体は、金と銀が交互に光り、HPとMPが回復中なのが判った。

「結構ダメージを負ったね。少し回復しているよ」

「じゃぁ、リリが周囲を警戒するの」

リリがドラゴンのまま飛び立って、周囲の警戒をしていた。

(あれじゃぁ、遠くからでも判っちゃうのでは?)

そう思いながら回復に専念していた。


少しすると、フィリア達が合流してきた。

「直哉様ご無事で良かった」

フィリアがそう言いながら、泣きつき、回復してくれていた。

連装魔畜棺の充填を終わらせ、休息と回復と警戒を順番に行い、全員が完全回復すると、

「先に進みましょう」

直哉を先頭にして、闇のエネルギーが充満している部分へ向けて進んでいった。


「下からだと、判りにくいな」

直哉がそうぼやくと、

「また、上から行きましょうか?」

「いや、目立ちすぎる。デーモン達を片っ端から倒していく事になってしまうから、このまま地上を慎重に進もう」

漆黒の大地を突き進んでいった。




◆魔王城


いきなり視界が開け、大きな広場のような場所に出ると、その中心に大きな城が出来ていた。

「あれが、魔王が居る城かな?」

「そうだと思います」

直哉は周囲を見渡して、

「しかし、何も居ないな」

「魔物がひしめき合っているのかと思ったけど、拍子抜けだな」

直哉の言葉にラリーナも同意した。


リリが何かを見付けたようで、

「城の前になにかあるの!」

リリがそれを見に行こうとしていたので、

「突撃したら危ないよ、みんなで警戒しながら行きましょう」

「はーいなの!」

直哉達が何かに近付くと、それはデーモンであった。


「おや? こんな所に迷い人ですか? それとも、巷で噂の勇者かな?」

直哉が前に出て、リリとフィリアが後ろで詠唱を開始した。

「俺は勇者と呼ばれている。ここは魔王が住む城か?」

デーモンは小馬鹿にしたように、

「はっ、そんな事を教えるわけがないでしょうに」

「では、お前は何のためにそこに居るのだ?」


デーモンはニヤリと笑い、

「こうするためさ!」

そう言って、巨大化しながら襲いかかってきた。

「グルァァァァァァ!」

巨大な角が二本に、巨大な牙が二本。

四つ足歩行で、羽根まで生えている。

(まるでゲームに出てくるベヒモスみたいだ)

直哉がそんな事を考えていると、


「あれは、ベヒーモス!? まさか、幻獣!?」

マーリカが驚いていた。

「幻獣? 何か情報があるの?」

直哉の問に、

「あれは、土の幻獣であるベヒーモスに似ています。ベヒーモスは土の幻獣という事で、土系の魔法が強く、防御値が高いです」

「ふむふむ、ちなみに羽根が生えてるけど飛べるの?」

「空を飛ぶというのは聞いた事がありませんが、高くジャンプしてくる可能性はあります」

マーリカの講義を聴いていると、ベヒーモスが襲いかかってきた。


「全員散開! 上空へ逃げて、そこから各個攻撃!」

「了解!」

本来の相手なら非常に強いベヒーモスであったが、上空へ逃げられ、攻撃手段がジャンプ攻撃か石礫等の飛び道具しか無くなったため、一方的な展開となった。

「リリ、アイリ、上空で早く動けない人を乗せてあげて」

リリとクロードが皆を乗せて右に左に動き回り、エリザが弓でマーリカが雷で直哉が究極魔法で一方的に削っていった。


「グルァァァァァァ!」

石礫が当たらないと見て、飛び掛かったが、ヒョィと軽く回避され、攻撃が外れると槍やら魔法が飛んで来て確実にダメージが蓄積していった。

「これで、トドメだ!」

エリザが槍を飛ばして、ついにベヒーモスの装甲を突き破り地面に縫い付けると、ラリーナがリリの背中から飛び降りた。

「リズファー流奥義! 大地割り!」


「グルァァァァァァ!」

ラリーナの一撃でベヒーモスの胴体が砕け散り、断末魔を上げていた。

(昔最後の一撃で、身体を飛ばしてきた魔族が居たから、今回も気をつけておこう)

直哉は城壁シールドをいつでも展開出来るようにしておいた。

(ふぅ、何も起こらなかったか)

ベヒーモスはキラメキながら消滅した。


「やったの!」

「倒しましたね」

「楽勝だな!」

みんなは喜びながら直哉の元へ集まった。

「みんな怪我はしていないかい?」

手当を済ませた後で、直哉達は周囲を警戒しながら城へ進んでいった。




◆魔王城 入り口


魔王城は驚く事に、人間が造った物と同じ城で、

「魔王の力で造ったのでは無さそうな城だね」

「これなら、魔王を倒しても城が崩壊するような事は無さそうだ」

大きな門の前に到着すると、

「行くよ?」

みんなが肯いたのを確認して、その門を押した。


ギィィィィィィィ。


古い門が開く時の軋み音が鳴り響き、門が開いたが、そこには闇の渦が出来ていた。

「これは何だ?」

「光だったらゲートみたいな感じですね」

ラリーナやフィリアがその闇を注意深く観察していた。

「恐らく、転移装置だな。他の入り口がないか探してみよう」

直哉の指示で周囲をくまなく探したが、入り口はココだけであった。


「上に入れそうな場所があったのだけど、見えない障壁に阻まれて進めなかったの!」

リリの報告を受け、直哉がその場所へ行き、ゲートを開こうとしたが、どれだけ魔力をつぎ込んでもゲートが繋がらずに断念していた。

「ここから入るしかないのか?」

門の前で作戦会議をしていると、

「直哉、後ろからデーモン達だ!」

「あの数を相手にするのは面倒だな」

「ですが、城の中で挟み撃ちになったら、もっと大変ではないでしょうか?」

「いや、ここだと対応する敵の数が多すぎる。城の中ならば少ない敵を叩ける場所があるかもしれない」

そう、話しているうちにどんどんと近づいてきていた。


直哉は意を決して、

「よし、進もう!」

そう宣言して、先頭に立って闇の渦へ突入した。




◆魔王城 隔離の間 直哉


(ん? ここは?)

「リリ? フィリア? ラリーナ? エリザ? マーリカ? アイリ? 居ないのか?」

室内は明るかった。天井までは三メートル程しかなく、剣を振り回すには少し狭かった。左右も二メートル程しか無く、異常に狭かった。

直哉は一人立っていた。

(何だここは? 後ろに闇の渦は無いか。戻れないと言う事は、進むしかないか)

直哉は警戒しながら進んでいくと、通路と同じ大きさの鉄格子が見えてきた。


(鉄格子? でも、閉開用のボタンがこちら側について居るぞ。格子の隙間から手を伸ばせば向こうからでも届きそうだ。それなら、行くしかないな)

直哉は[開]ボタンを押して鉄格子を開くと中へ進んだ。

そこは、大きな広間になっていて、天井は二十メートル程になり、周囲も半径五十メートルの円形になっていた。直哉が入ってきた方向とは反対の方向に鉄格子があった。

(ん? どういうことだ?)

鉄格子には人影はなく、鉄格子の上には赤いランプが点灯していた。

直哉は後ろを振り返ると、鉄格子の上には緑のランプが点灯していた。


(扉が開いている鉄格子は緑になるのかな?)

直哉は奧の鉄格子を調べていったが、押しボタンが見あたらず、普通の鉄格子に見えた。

(やばい、詰んだか? ん? 中央付近に誰か居るぞ)

中央付近へ近付くと、そこには直哉が居た。



「やぁ、待っていたよ!」

「お前は誰だ?」

「俺は直哉。伯爵さ! 勇者とも呼ばれている」

ニセ直哉が直哉に言った。

(やばい。俺はあんな風だったのか)

直哉は自己紹介する自分を見て、自己嫌悪に陥っていた。


「さぁ、お前を倒して俺は俺になる!」

ニセ直哉は直哉をスキャンした。

(言っている事が訳わからんが、戦いになりそうだ)

「むっ! 武器を装備していないのか! 防具は高性能だな。スキルは・・・・なんだコレは? どうやって戦っているのだ?」

ニセ直哉は混乱していた。

(ん? アイテムボックスとかステータス画面とか見られないのかな? それなら、このまま行くのだけど。戦士系のスキルは剣がないと意味のない物になるし、後は生産系だからな)


「いや、コレがあるか!」

そう言って、魔法を唱えだした。

(あ、究極魔法か!? それは不味い。さっきの城壁シールドを対魔法仕様に変更して展開!)

ドン!

正面に展開してから、上下左右前後に展開した。

「・・・・・・なんだそのふざけた物は?」

ニセ直哉も唖然としてその城壁を見ていた。

「だが、破壊すれば良いだけだ!」


ニセ直哉の放った魔法が城壁シールドに阻まれ四散していた。

「喰らえ喰らえ喰らえ喰らえ喰らえ喰らえ喰らえ喰らえ喰らえ」

狂ったように究極魔法を飛ばすニセ直哉であった。

(この程度の魔法の威力なら、何の問題も無いな。俺の装備や魔法を使う事が出来るのだろうけど、ステータスまでは同じに出来なかったのだろう。知力が低すぎて、威力が低すぎるな)

直哉はそんな事を考えながら、城壁の中で新しい武具を造っていた。




◆魔王城 隔離の間 リリ


同じ様な場所に出たリリは、

「あれ? リリが居るの!」

「あー、リリが来たの! リリの代わりにリリがお兄ちゃんを貰うの!」

「それはダメなの! お兄ちゃんの側にいるリリはリリだけで良いの!」

「大丈夫なの! リリはここでリリに倒されるの!」

端で聞いていると頭の痛くなる会話であったが、本人達は本気で力の限り殴り合っていた。


同時刻近い場所ではフィリア、ラリーナ、エリザ、マーリカ、アイリもそれぞれ自分と戦っていた。




◆魔王城 隔離の間 直哉


(良し! 新しいアイテムが出来た)

そう言って造ったのが双眼鏡のような物で、

(コレを使うと、壁の向こう側が見えると言う代物だ)

ゲートを応用して、設定した距離の部分を見る事が出来るアイテムであった。

直哉が城壁の外の様子を見てみると、

(ん? 寝てる?)

ニセ直哉は倒れていた。


直哉は城壁の一部をアイテムボックスへ収納して、ニセ直哉に近付いた。

(完全にMP切れで倒れているな。しかも変身も解けている)

そこで倒れていたのはノッペラボウの魔族であった。

(ドッペルゲンガーかな?)

直哉は倒れて動かないドッペルゲンガーにトドメをさした。

すると、奧の鉄格子が開き、ランプが緑色に点灯した。

(おっ、進めるようになった)

直哉はその場を片づけて、新しく開いた道へ進んでいった。


先へ進むと、そこは待合室のような場所で、椅子が大量に並べてあって、正面には大量のモニタが並んでいた。

(ん? あれはリリ! それにフィリア達も!)

現在リリ達が戦っている場面が映し出されていた。

(リリと、ラリーナは壮絶な戦いだな。魂と魂の削り合いだ。もっと、スマートに戦って欲しいのだけど)

直哉は皆の戦いを見ながらそれぞれの事を考え始めた。


(リリはどうしてココまで猪突猛進になってしまったのだろうか? 昔はもっと考えていたような、いや、こんな感じだったかな? でも、ちゃんと魔法でのフェイントや、間接攻撃などを織り交ぜているな。ドッペルゲンガーも真似をしているようだけど、流石に二番煎じじゃリリには通用しないよな)

直哉がリリの事を考え始めると、リリの身体と直哉が付けている絆の腕輪にあるリリの思が輝きだした。

(ん? 腕輪が光り始めたぞ? 中央に向けてリリの思いから光が伸び始めた。そうか! 中央は俺の思いなのか? と、言う事は他の思いに答えていけば、この腕輪が完成すると言う事か)

直哉は、フィリア達の事を順番に思っていくと、直哉の絆の腕輪と、リリ達が輝きに包まれていった。

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