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第百七十五話 アイリの力と世界の理

直哉がリリが呼ぶ方へ向かっていると、何かが積み上がった小山が見えてきた。

(あれは何だろう? って、複数のドラゴン! ・・・死体か?)


直哉は急いだ。


「あー! お兄ちゃん来たの!」

リリが直哉を感じて、飛び込んできた。

「わーい! お兄ちゃんなの!」


「リリ、どうしたの? ん? ラリーナも居るんだ。それに、タダカッツさんにラインハルトさん? そして、アイリまで!」

リリを抱えて、ラリーナ達が休憩している所へ向かった。



「詳しい話をお願いします」

ドラゴンが居ることから、ラインハルトが中心になって何かしていると判断して聞いてみた。

「みなの要望を纏めた結果だ」

「要望?」

「あぁ。リリ、タダカッツ、ラリーナはカースドラゴン戦の様な鍛練を積みたい。そこの小娘は自分を護ってくれるテイムモンスターが欲しいという要望を一気に満たしただけだ」


ホッとした表情を浮かべ、

「なるほど、理解しました。ですが、バルグフルの領地内でドラゴンを召喚するなら、まずは許可を取ってください。恐らく、お城の方で騒ぎになっていると思います」

「何と!」

(それにしても、自分を護って貰う存在にドラゴンを選ぶとは。いや、ドラゴンを指定したのはラインハルトさんか。アイリの実力なら、ドラゴンとはいえ下級のドラゴンならテイム出来ると思うのだけど。何と言っても魔族であるワンスケをテイム出来る程の実力があるのだから。足りないのは自信か危機感か。さて、何と言って自信を付けさせようか)


直哉が考えていると、後ろから声がかかった。

「話しは聞かせて貰った!」

その声に、直哉達は一斉に振り向いた。

「リカード!?」

「陛下!」

そこには、リカード以下、シンディア、アレク、そしてラナ達やヘーニルがドラゴンの死体を取り囲んでいた。

「いやぁ、直哉の領地からドラゴンの目撃情報が多数寄せられてな、慌ててやってきた所だ」

リカードはドラゴンの死体を見ながら、

「しかし、こんなに沢山のドラゴンは何所から来たのだ?」


ラインハルトが前に出て、

「私が竜王の力を使い、召喚した」

シンディアは驚き、

「召喚獣なのですか? そう言うと、このドラゴンからは、素材や肉などは取れないのですか?」

「いや、取れるぞ。召喚してから解放してるから、通常の魔物と同じ扱いになる」

「そうか! それなら、問題無さそうだな。だが、その召喚はどのくらい出来るのだ?」


ラインハルトは、自分の竜の力を確認して、

「今日は、後数匹は召喚出来るぞ」

「種類は?」

「下位だけでなく、古代種まで呼べるぞ」

「いや、流石に古代種は倒せないが、この間襲撃してきた、レッドドラゴンなんかを呼べると、盛り上がるのだが」

「その位なら問題無く召喚出来るが、倒せるのか?」

「直哉達が居るのであれば問題無い!」

リカードの陽気な声に、皆がリカードの方を見て、


「倒せば素材が手に入り、ドラゴンスレイヤーとしての名声も得られるか。そんな楽しそうなイベントなら、バルグフルのお祭りとして、みんなでやりましょうよ。そこで、アイリちゃんにテイムして貰うと。大きなドラゴンがテイムされれば、盛り上がるぞ!」

「ま、待ってください」

アイリが慌てて駆け寄ってきた。

「ん? そんなに慌てて、どうしたの?」

「私は無理です。そんな大勢の前でテイムするなんて。もし、失敗してみんなが怪我を負ってしまったと思うとテイムしていられません」

アイリは両目を両手で押さえて泣き始めた。


直哉はそんなアイリの両肩を手で押さえ、

「そんなに、仲間を信じられない?」

アイリは目を見開き直哉を見て、

「えっ?」

「リリ達は、そんなに頼りにならない?」

「そ、そんな事無いです」

「それならどうして?」

目を伏せた後で、

「ドラゴンをテイムする自信がありません」


直哉は手を放して、

「そうか。それなら、どの魔物であればテイムする自信があるの?」

もう一度顔を上げて、

「えっ?」

「ドラゴンはテイムする自信がないなら、例えば、グリフィンとか?」

アイリは何かを考えるように、

「いいえ」

直哉は少し時間をおいた。

「そう言われると、自信をもってテイム出来る魔物なんて居ません」

「それなら、鍛練ついでにテイム出来るのだから、気楽にやれば良いのでは?」

「気楽に・・・」


「そう。それに、リカード達がバックアップしてくれるから、安全性は更に上がると思うのだけど」

「そうですよね」

直哉の説得に、アイリの心は揺らぎ始めた。

「俺も勿論助けるから」

「わかりました。そこまで言ってくださるのであれば、やって見ます」

こうして、パスタスが人形を造り上げている間に、アイリのテイムが行われる事になった。




バルグフルの東の平原に特設会場を造り、そこで、ドラゴン戦を体験出来ると言う事で、多くの冒険者達が集まった。

怪我をする者、武具を破壊される者、撃破する者がいた。そして、ついにアイリの出番となった。

「さぁ、ついにやってきました! 本日のメインイベント! こちらの小さな少女が、今まで冒険者達が戦っていたドラゴンを、テイムするというのです! さぁ、本当に旨く行くのか! 後期待ください!」

アイリの前には真っ黒なドラゴンが横たわっていた。

「流石に戦闘能力がないので、瀕死の状態へは、こちらのスタッフが行います!」

リリとラリーナ、そしてタダカッツがブラックドラゴンを削って行った。


「アイリ! 今だ!」

ラリーナの声に合わせて、アイリはテイム魔法を発動させた。

「悠久の時にて受け継がれし秘術、我が魔力と共にその力を示せ!」

アイリの魔力が溢れだす。

「モンスターテイム!」

痛めつけていたドラゴンを、マーリカの魔力が包み込む。


(今度こそ! 私の元に来い!)

(ガルルルルルル、断る!)

精神の削り合が行われていた。

しばらく続いていたが、

(あぁ、今回も無理かもしれない)

また、アイリが弱気になったところに、

「落ち着けアイリ」


直哉が後ろから支えてあげた。

「直哉さん!?」

「大丈夫、みんなを信じて。そして、アイリ自身を信じてあげて」

「でも」

直哉はアイリを支えながら、

「大丈夫! ワンスケをテイム出来るほどの精神力があるのだから、この程度の魔物なら問題なくテイム出来るよ!」


アイリは迷っていたが、

「信じて見ます」

「おぉ!」

「私信じてくれている直哉さんの事を!」

「それで良いさ!」


アイリはドラゴンに集中した。

(私の元に来い!)

(ガルルルルルル、先程とは別人では無いのか!? 精神力が桁違いに上昇しているぞ、ガルルルルルル)

(さぁ! 私の元に来い!)

膨大な魔力がブラックドラゴンに襲いかかる。

それから、十数分もの精神力の攻防が行われていた。

(グヌゥゥゥゥゥ。この様な小娘に、後れを取る事になろうとは・・・・・)

ついに、ブラックドラゴンのテイムに成功した。



「ふぅ。出来ました!」

うわぁぁぁぁぁぁぁ!

その時、ドラゴン戦会場は最高に盛り上がった!

(アイリ、よくやった!)

直哉も喜んでいた。

「直哉さん、ありがとうございます」

アイリはその場に崩れ落ち、直哉はアイリを抱きかかえて屋敷へ運んだ。

その日、バルグフルでは十体のドラゴンが倒され、しばらくの間ドラゴン料理が振舞われ、装備品やアイテム等が充実した。




◆アシカの屋敷


アイリがドラゴンをテイムしてから数日後、管理者達の身体が出来上がり、現在アシカの屋敷へ集合していた。

ヨシは、集まった人形を見て大笑いしていた。

「あっはっはっは! こっちがルグニアで、同じ姿なのがタゴサクで、こっちのショタ犬耳がソラティアのか。あっはっはっはっは!」

ソラティアのショタ犬耳は、タゴサクに抱えられていた。

「もう、諦めました」


「それでヨシよ、我らの管理権限を集めて何をする気だ?」

ルグニアの突っ込みに、

「もちろん、元の管理者が管理権限を取り戻す手助けをする」

「神の!? ですが、バルグの管理権限が無いけど、どうするの?」

「それは、神に相談しましょう」

そして、ヨシは直哉の方を見て、

「直哉にはその腕輪をかざして貰おう」

そう言って、カソードの腕輪を指差した。


(提供して欲しいのは、カソードの腕輪だよな)

直哉は腕をヨシの方へ向けて、

「こんな感じで良いのですか?」

「あぁ、みんなは、あの腕輪に自分の権限でアクセスしてくれる?」

「了解」


ヨシを始め、ルグニアやタゴサク、ソラティアの面々が次々と腕輪にアクセスして行った。

その瞬間、ヨシの部屋は異空間へ隔離された。




◆異空間


そこには、カソードが佇んでいた。

「ヨシよ、良くやった。褒めて使わす」

ヨシを始め、ルグニア達もその場にひれ伏した。

「その御姿を、もう一度拝見出来るとは、感激です!」

管理者達はそれぞれ、カソードと言葉をかわしていった。


そして、カソードが直哉の前に来て、その後ろに管理者たちが並んでいた。

「さて、直哉よおぬしに伝えておく事がある」

「はい」

「バルグの管理者が暴走し、管理権限を奪ったのは聞いておるな?」

「ヨシ様がその様な話をしてくださいました」

「本来ならば、そのバルグの管理者の権限があれば、その権限を書き換える事が出来るのだが、問題が起きた」

(問題?)

「なんと、魔王がその管理者の身体を乗っ取ったようだ」


(えー、魔王ってガナックさんが倒したんじゃ?)

「ガナックに圧倒された魔王は、あの後直ぐにあの場所で復活した。そこに、バルグの管理者が居合わせたのだ」

直哉は焦りながら、

「それって、魔王が管理者権限を使って、このドラゴンバルグの世界を好きに出来るって事ですか?」

「そういう事になる」

(おぃおぃ。問題が大きすぎる。あの魔王が復活したって事だけでも大事なのに、管理者権限まで持っているとは、チートだよな)


「直哉よ、ガナックから何か受け取ってないか?」

「ありますよ」

直哉は、ガナックから受け取った、権限二つを取り出した。

「これは!? バルグの管理者権限の一部? マスターでは無いが管理の一部を使用する事が出来る物が二つですか。これは、使えそうですね」

カソードは直哉の持っていた権限を使い、権限の上書きを始めた。


(なんか、母さんのパソコンの画面みたいだ)

「とりあえず、バルグの管理者権限を使用不能にする事が出来た。マスターのアクセスコードを知らないと変更出来ないはず。魔王にそのコードが渡る前に、バルグの管理者から魔王を分離し、魔王を倒す必要がある」

「今の権限で、このドラゴンバルグに張られている結界は解除出来ないのですか?」

「それは出来ぬ。バルグの管理者と魔王が一体化している今はな」

「何故ですか?」

「本来、魔王はこの世界に存在する者であった。障壁が解除されれば世界に吸収され、世界の理の一部となるであろう」

「それなら、問題ないのでは?」

「いや、問題はバルグの管理者のほうだ。障壁の外で解放されれば、使える事が出来なくなる。その上でこの世界に干渉できる管理権限があるので干渉し放題となってしまうのだ。なので、障壁を消す前に魔王から分離させ権限を奪わなくてはならないのだ」


直哉は情報を整理していた。

(つまり、俺はこの障壁の内部の何処かにいる魔王を探し出して、バルグの管理者を分離させ、魔王を消滅させて、管理権限を奪うって事か。無理ゲーにも程があるぞ!?)

「あの、魔王と管理者の分離ってどうやってやるのですか?」

カソードは、直哉の腕輪を触り、

「私の腕輪を解放しておく。これで、ゲームの世界で使っていたカソードのオリジナル魔法と、これ魔契約してきた精霊達の力が使えるはずだ」


カソードの腕輪は光り輝いていた。

(この知識は!? その光と共に、直哉の封印されていた知識が解放された)

「あぁぁぁぁぁぁぁぁ」

直哉は頭を抱えて、転がっていた。

「何をしたのですか?」

常軌を逸した直哉の行動を見て、ルグニアがカソードへ詰め寄った。

「封印されていた記憶を解放した」

「あぁ、なるほど」

ルグニアは納得していた。



(なんと言うことだ! 俺の知っているドラゴンバルグとこの世界は決定的に違うでは無いか!)

直哉は目を瞑り、ゲームとの違いを思い出していた。

(確かにバルグフルから始まりオークの森やルグニアとか、地名は同じだ。だが、ドラゴンバルグは島だった。ここは島ではない、位置関係も違うし、何でゲームと同じだなんて思っていたのだろう)

直哉がカソードの顔を見ると、

「ん? どうやら思い出したようだな?」

「はい。思い出しました。くっ」

直哉はその場に倒れ込んだ。


「まだ、無理をするでない。一度直哉の屋敷へ戻り、休養せよ。カソードの腕輪を使えば、この空間へ来る事が出来るから、体調を整えてから、もう一度来なさい」

「はい」

直哉は大人しくバルグフルの屋敷へ帰っていった。


「お前達は、バルグの管理者が使っていた管理室へ行って貰い、そこで、無理の無い世界へのリソース配分を始めるぞ」

「了解です」

ヨシ達は、そのまま管理室へ消えて行った。

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