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第十八話 鍛練の成果

◆露天風呂にて


「あー、星がきれいですね」

直哉は今日の疲れを取るために露天でのんびりしていた筈なのに。

「王子、目が嫌らしいです」

「ゴンゾーさん浮いてこないでください!」

何故か、全員露天に集合していて大騒ぎになっていた。


露天には、湯船に浸からなくても温風で身体を冷やさない場所があり、直哉はそこに待避していた。

そこへ、フィリアがやってきて、となりに腰掛けた。

「お疲れ様でした」

「フィリアもお疲れ様。ゴンゾーさんの鍛練はどうだった?」

「斬新でした。いつもなら直哉様の指示通りに動けば良かったのですが、自分で状況を分析して魔法を使い分けるのに苦労しっぱなしです。ゴンゾーさんもおっしゃっておりました、直哉様の状況分析や未来予測には目を見張る物がある。私とリリさんがもっと動けたら、私たちのパーティはもっと強くなるって。私もそう思います」

「リリもそう思うの」


いつの間にかに後ろに来ていたリリが会話に混ざってきた。

「リリも、もっともっと強くなって、お兄ちゃんとお姉ちゃんと一緒に居たいもん。だからね、お師匠様に新しい拳技を教えて貰うことにする!」

直哉は驚きながらも、リリの決意に応えるために、

「わかった、新しい技を使いこなせるようになったら、勝負だ!」

「はいなの! 今度は負けないの!」

三人は強くなることを誓い合った。


「直哉様はリリさんとの約束が果たせたら、本格的にご自分の世界へ帰る方法を探しに行くのですか?」

フィリアはこの生活が楽しく感じられていた、自分の周りには、直哉とリリそして母親がいる、こんな生活がいつまでも続いたら良いと思うほどに。だからこそ、確認したくなった。このまま、直哉達と一緒に居させてもらえるのかを。

「そうだね、ただリリとの約束と平行で元の世界への帰り方を模索していくよ? ルビードラゴンを倒すには何が必要なのかさっぱり判らないからね。情報を集めるのなら一緒に集めちゃおうかと思ってる」

「リリもそれが良いと思うの。でも、フィリアお姉ちゃんは一緒に来てくれるの?」

「そうだね、フィリアさえ良かったら一緒に旅に出ないかい?」

フィリアは考えていた。

「やっぱり、狙われの身で冒険に出るのは怖い?」

直哉が心配して聞くと、

「いえ、私の方はお二人が居れば安心出来るのですが、母をここに置いて行くとなると、少々不安です」

「なるほどね」

直哉はそう言って、少し考え始めた。


「そういうお兄ちゃんはイリーナさんを置いていくの?」

考え中の直哉に、リリが爆弾をぶつけてきた。

「直哉様とイリーナさんって恋仲なのですか?」

フィリアは驚いた声をだした。

「ん? いやいや。そんな仲じゃ無いですよ。確かにリリより前に一緒に暮らしませんかと誘ったけど、あの頃はイリーナさんにお世話になりっぱなしで、一番信頼していたからね。安心できる場所が欲しかったのだよ」

「それでは?」

「うん。イリーナさんにそういう状態での二人暮らしは嫌! ってきっぱり断られた。」

「そうですか」

フィリアは安堵している自分に驚いた。

「まぁ、今はその願いが叶っちゃたのだけどね」

直哉はそう言って肩をすくめた。


「リリは? リリの時は? 何で一緒に暮らそうと思ったの?」

リリが聞いてきた。

「それは、俺と同じだなと。安心できる居場所を探しているのだなって思ったから。それに、リリと居ると俺も元気になるからね」

「えへへ」

直哉の答えに満足したように照れた。

「まぁ、何にしてもフィリアの不安を取り除かないと元の世界に帰る事はおろか、隣町に行くのも無理そうですね」

「申し訳ありません」

「それに関して少し考えがあるのだけど、今は材料が足りないから言わないでおくよ」

「直哉様はいけずです」

直哉の言葉にフィリアは不服であった。


「さぁ、湯船に戻りますか?」

「はい!」

「はいなの!」

湯船に戻ると、リカードがハッスルしていた。ゴンゾーが一人でリカードを防いでいた。

「リカードさん! あまり迷惑を掛けるようなら、出入り禁止にしますよ!」

直哉はリカードを諫めた。

「むむ。それは困るな。わかった、少しは落ち着こう」

その後、リカードは大人しく湯船を堪能していた。



◆十日後 鍛練場


午前中の自主鍛練が終了し、リカード達を待っていると、ゴンゾーが一人でやってきた。

「リカード様は明日の式典の準備のため、今日は顔を出すことが出来ないのじゃ」

「明日ってことは、ついにリカードさんが認められたのですか?」

蛇神の湖の調査で、湖の汚染原因を突き止め除去したことが評価され、正式に王位継承権を与えられるのであった。

「そうじゃ、その後に王子を救出した冒険者(直哉殿)達への感謝状と金品の授与式が行われる」

「緊張しますね!」

直哉は震えていた。

「なに、主役は王子なのじゃ、直哉殿はその主役を助けた者として皆に紹介されるだろう。その後は、剣の技を見せてくれと試合を挑まれるだろうな」

「えー、王様の前で闘うのですか?」

直哉は驚愕した。

「まぁ、この十日で近衛兵達が行っている通常鍛練はおろか、上級鍛練すら軽くこなしているのだから、問題は無いじゃろう」

(まぁ、確かにステータスが上昇したのには驚いたよ)



ステータス画面


ナオヤ

鍛冶職人

冒険者ランク2

Lv:11

最大HP:120+200

最大MP:150+200


力:20+20

体力:18+20

知力:13+40

素早さ:13

器用さ:13

運:8+10


ボーナス 15

スキルポイント 8


スキル

戦士系:0

○縦斬りLv2

○横斬りLv3

○リジェネLv1

○得意武器(片手剣:Lv1)

 四連撃Lv1

魔術師系:0

○魔力吸収Lv1

商人系:0

○目利きLv1

鍛冶系:4

 武具作成Lv4

 アクセサリ作成Lv1

 大工Lv3

 冶金Lv3

 精錬Lv3

 アイテム作成Lv3

 武具修理Lv2

 アクセサリ修理Lv1

 家具修理Lv1

サイボーグ系:0

 疑似四肢作成Lv2

 疑似臓器作成Lv1

 疑似部位連携Lv2

 疑似四肢修理Lv1

 マリオネットLv1


(恐らく、今までの活動なら初期値で十分だった、でも、本気の鍛練をすることでステータスが底上げされたのだろう。そうなると、同じ鍛練を繰り返しているだけだと、ステータスは打ち止めになりそうだな。そこで、ボーナスポイントか。今回の鍛練で上がらなかった運に振ろうかな?)


「そうそう、王様より頼みごとがあるそうだ」

ゴンゾーがそう言うと、懐から親書を取り出した。

直哉が手紙を見てみると、今まで作った義手・パーツ類を買い取りたいので全て持ってきてほしい。それと、独占契約を結びたい。という内容であった。

「どういうことですか?」

「それは、王様から直接聞いてもらったほうが良いですな」

「ふむ。まぁ、承知しました」

直哉は、これ以上しつこく聞いても意味が無いことが分かっていたので、引き下がった。


「では、リカード王子が居ない分、直哉殿の鍛練も私が見るとしますかな!」

ゴンゾーはそう言って武器を構えた。

直哉、リリ、フィリアの三人は、

「よろしくお願いします」

と、ゴンゾー相手に連携を試して行った。

直哉が剣と盾を構えてゴンゾーの前に出て、進路をふさぐ。

「えい、やぁ」

「天より来たりし光の精霊よ、我が魔力にひれ伏しその加護を仲間に与えたまえ!」

「ディバインプロテクション」

「大気に宿る、風の精霊達よ! 我が魔力に呼応し敵を絶て!」

「スライスエア」

後ろで、リリとフィリアがそれぞれ詠唱を終わらせる。

直哉は身体に加護がかかったのを確認すると、不意にしゃがんだ。


「なんと!」

ゴンゾーはその行動につられ、チャンスとばかりに斬りかかってしまった。

そこへ、

「ちぇすとー」

「大気に宿る、風の精霊達よ! 我が魔力に呼応し敵を絶て!」

「スライスエア」

リリが風の魔法に乗りながら更に風の魔法を唱え、風の初級魔法を乱打しつつその中の一つとなって突っ込んできた。

「これはいかん」

ゴンゾーは直哉への攻撃を諦めリリへの迎撃を開始しようとした。

そこへ、


「せぃ!」

しゃがんだ上に、意識の外に外れた直哉が攻撃を放つ。

「なんの!」

ゴンゾーは不意打ちを何とかかわして、直哉と距離を取るべく後ろに下がろうとした所へ、リリが飛び込んできた。

「はぁー! 魔神拳!」

「せい!」

リリと直哉は同時攻撃を放った。

「ぬぅ」

避けようとした方向には、リリの打った風魔法が吹き荒れていた。


「ふぅ」

ゴンゾーは息を吐き出した後、深く息を吸い込んだ。

「奥義! 天翔乱撃!」

ものすごい数の斬り上げを放ち、直哉とリリを迎撃した。

「まずい! えぃ! せぃ!」

直哉は縦斬り、横斬りを駆使しゴンゾーの剣を受け流し続けた。

「あちょちょちょちょちょ」

リリは、魔神拳をキャンセルして、無限連続拳を放ち、下から来る剣を殴っていた。

しかし、圧倒的な剣技の前に直哉とリリは押されていった。


そこへ、

「天より来たりし光の精霊よ、我が魔力に呼応し敵を裁け!」

「ホーリーフォトン」

フィリアの魔法がゴンゾーに襲い掛かった。

「なかなか、やりますな」

ゴンゾーはニヤリと笑って飛んできた魔法を剣で迎撃した。

その隙に直哉とリリは目で合図し、

「大気に宿る、風の精霊達よ! 我が魔力に呼応し敵を絶て!」

「スライスエア!」

「装備変更! 両手持ち巨大な盾!」

リリは後ろに飛んで行き、直哉は武器を巨大な盾に持ち替えゴンゾーの前に立った。

「せえぃ!」

そして、その盾を構えたまま突進した。


「なるほど、面白い!」

ゴンゾーはそう言って、突進してくる盾を足蹴にして大きく跳躍した。

そして、直哉を飛び越え、後ろに居るリリとフィリアに攻撃するために居場所を確認した瞬間、

「天より来たりし光の精霊よ、我が魔力に呼応し敵の目をそらせ!」

「スパークフラッシュ!」

フィリアの魔法が炸裂した。

「ぬかった!」

ゴンゾーが直哉の頭の上で大きく体勢を崩した。

直哉はそれを確認する前に、下から上方向に縦斬りを使い、持っていた盾をぶん投げた。

「なんの!」

ゴンゾーは飛んできた盾に対して左手を前に出し接触した瞬間、盾を押し盾の進行方向とは別の方向へ跳躍した。

着地地点に装備を片手剣と盾に変えた直哉が向かい、跳躍したゴンゾーに追撃を仕掛けた。

「えい! やぁ! てぃ!」

ゴンゾーは目を瞑りながら直哉の攻撃をかわしていた。


(そんな、俺の攻撃を目を閉じたまま回避するなんて)

直哉は驚愕しながら攻撃を続けた。

「もう、終わりですかな?」

ゴンゾーはそう言って、今まで以上の速度を出して直哉を翻弄した。

「ぐぅぅぅ」

直哉はゴンゾーの視力が回復していくのと同時に、攻撃速度と強さが増していくのを感じていた。直哉がリリとフィリアの様子をチラッと見たとき、

「隙あり!」

ゴンゾーの剣が直哉の剣と盾を吹き飛ばし、直哉の目の前に剣が寸止めされた。


「まいりました」

「最後の最後で集中力が切れましたな」

ゴンゾーは直哉のミスを指摘した。

「はい。情けないです」

フィリアがリリを抱えながらやってきた。

「リリさんはMPの消費が多過ぎて意識が朦朧としておりますわ」

直哉は新しく造った、霧吹きのように吹きかけるMP回復薬を使い、リリのMPを回復した。

フィリアにもMP回復薬を渡し回復してもらった。

「しかし、直哉殿達は日に日に強くなってゆきますな。奥義を返されたのは久しぶりですよ」

ゴンゾーはそう言って額の汗を拭いた。


「さて、明日の為に今日はこの辺にしておきますかな?」

「そうですね、俺たちも回復して身体を休めることにします」

「そうじゃの、明日は昼過ぎに使いのものがこの店の前に来るので、その頃に店に居てくれ」

ゴンゾーは明日の予定を伝え帰ろうとしていた。

「ムム。この扉が開かないのだが、鍵とかあるのかな?」

「その扉は、リカード王子じゃないと開かないようになっていますよ?」

「なんと! そういえば来る時はリカード様に開けてもらったな」

ゴンゾーはため息をつきながら、

「走って帰るとしますかな」

そういって、家を出て行った。


「フィリア、リリを頼めるかい?」

「もちろんですわ。私の部屋に運んでおきます」

「あ、俺の部屋とリリの部屋はフィリアには解放してあるよ?」

フィリアは頷いて、

「わかりました、リリさんの部屋に連れて行きます」

「よろしくね」

フィリアは直哉に、

「直哉様は如何なさいますか?」

「俺は、明日の準備をした後でそれから風呂に入った後で、一階で飯にするよ」

直哉がそう答えると、

「私もそうします」

フィリアはそう言いながら、リリを抱きかかえて上に向かった。


(さて、明日の準備をしておきますか)

直哉はそう考え、リカードのために造った義手のナンバーリングを確認した。

(よし、大丈夫だ。これで準備完了だな。風呂にでも行くとするか)

風呂からあがった直哉は一階でリリとフィリアと合流して、食事となった。

「明日は王様との謁見ですね」

直哉は期待と不安に胸をふくらませながら食事していた。

そして、何事も無く眠りに付いた直哉達だった。

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