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第百七十一話 対カースドラゴン戦 その2

剣と盾を装備した直哉は、リリを見ながら声を掛けた。

「行くよ?」

「はいなの!」

リリは詠唱を開始し、直哉は走り出した。


「大気に宿る、風の精霊達よ! 我が魔力に呼応し敵を絶て!」

足の装備に風魔法をストックし、

「氷を司る精霊達よ、我が魔力にひれ伏しこの大気を凍結させよ!」

拳には氷の魔法と、

「雷を司る精霊達よ! 我が魔力に呼応し敵に裁きの雷を!」

雷の魔法をストックしていった。



カースドラゴンは近付いて来る直哉に攻撃を開始した。

「GRYAAAAAAAAA!」

修復した羽根から先程のより威力の高い衝撃波が全方位に放たれた。

「くっ」

マリオネットで全方位に飛ばしていた剣が乱れ、直哉自身も先に進めなくなり、盾を構えて衝撃波を押さえ込もうとしていた。

「この程度か?」

そこへ、カースドラゴンは肉弾戦を仕掛けてきた。


爪や牙、尻尾やブレスなど多彩な攻撃を仕掛けてきたが、ラインハルトとの対ドラゴン用の鍛練をした直哉にとって、凌げない攻撃ではなかった。

「よっ、はっ、ふっ、くっ」

爪や牙は動きを見極め回避し、尻尾の薙ぎ祓いは大きくジャンプして回避した。

ブレスに関しては、盾を使って防いでいたが、完全に防ぐことが出来ず、ダメージを負っていた。

(また、ブレスかよ! 俺の後方には誰も居ないな)

直哉は、ゲートを使用して、ブレスの範囲外へ逃げ出した。


一瞬直哉を見失ったカースドラゴンであったが、

「そこに居たか! こそこそと逃げ回る人間風情が! 我が炎で焼き尽くしてくれる!」

なかなか捕まえられないため、さらに激昂していった。


(なるほど、俺は攪乱させた方が効果的だな)

ゲートとマリオネットを駆使し、カースドラゴンをおちょくっていた。

「せぃ! ゲート!」

ゲートから出て、一撃与えたらもう一度ゲートを開き別の場所へ移動する。そして攻撃。

を繰り返していた。

さらに、マリオネットで剣をカースドラゴンの周りに飛ばして、目や口の中など、防御力が極端に下がる所に突き刺すように漂っていた。


「ぐぅぅぅ、ちょこまかちょこまかと!」

身体の周りを金と銀に身体を光らせた直哉に飛び回られ、気を抜くと剣が防御力の弱い部分にぶつかってくるので、ストレスが溜まって行った。

「GRYAAAAAAAAA!」

衝撃波で全てをはじき飛ばして、アドバンテージを取ろうとしたが、


「ちぇっすとー!」

そこへ、リリが飛んで来ていた。

吹き飛んだ直哉を噛み殺そうとしていたドラゴンの鼻先にリリの拳が突き刺さった。

「魔神氷結拳!」


バキ!


「ぐぁぁぁぁぁぁぁ」

強烈な痛みが鼻先を襲う。

「お兄ちゃんはリリが護るの!」

リリは一瞬で闘気を高め、

「うりゃりゃりゃりゃりゃりゃ!」

と両腕で、殴りかかっていた。


カースドラゴンは多少嫌がりながらも、

「調子に乗るな!」

と、リリを連続拳ごとはじき飛ばした。

「リリ! 大丈夫か?」

直哉はカースドラゴンを見ながら、リリに声を掛けていた。

「大丈夫なの! ちょっと掠った程度なの」

そう言って、脇腹を押さえながらも上空へ飛んでいった。



(少し遅くなってくれれば御の字だな)

直哉は冷凍瓶を取りだし、

「マリオネット! リリ! 固めるよ!」

「ハイなの!」

声を掛けながら冷凍瓶での攻撃を始めると、

「ぬぅ、その程度の瓶など、物の数ではないわ!」

そう吠えて、瓶が当たるが気にせず攻撃していた。


(あれだけ当てても、動きが鈍らないか)

「水を司る精霊達よ、我が魔力と共にその姿を現せ!」

そこへ、空へ飛び上がったリリが、回復薬を振りかけ治療師ながら空を飛び、魔法の詠唱をしていた。

(むっ? ダメージを負ったのか?)

リリの動きがおかしいことに気が付いた。

その場に城壁シールドを展開してカースドラゴンの視界を狭めてから、ゲートを開きリリの傍へ行った。

「リリ! 一度戻って回復を優先するんだ!」

「でも」

「戦いはまだまだ続く。長期戦に備えて、多少の傷でも癒しておきなさい」


渋っていたリリだったが、

「わかったの」

直哉の説得によりフィリアの元へ飛んで行った。


城壁シールドを攻撃していたカースドラゴンは、上空に直哉を見つけて、怒りの咆哮をあげた。


(ゲーム内のカースドラゴンもここまでは楽勝モードだったからな。次の怒りモードに突入すると、眷属を呼び始めるからその処理が大変だったよ。でも、今回はラインハルトさんが居るから大丈夫だと思いたいな)

「ゲート!」

直哉はMP回復薬を飲みながらカースドラゴンの背中へ飛び、自分で造った四属性の剣を突き立てた。


ズブ!


「よし、押し込むぞ。って、何?!」

硬い鱗を貫き、肉にまで到達したが、カースドラゴンが痛みに身体を揺すったために、直哉は剣を取られ吹き飛んだ。

「くっ」

靴の風魔法を起動して、何とか体勢を立て直した時、目の前にカースドラゴンの口があり、ブレスの体勢が整っていた。


「やっば!」

咄嗟にマントに身をくるみ、ゲートの準備を始めた。

そこへ放たれるブレス。

「ちっ、やっぱりこのマントじゃ長くは持たないな」

舌打ちをしながらゲートの先を決め、飛んだ。


カースドラゴンは目の前で何度もゲートを使われたため、どの辺りに出現するかを魔力で感知することに成功していた。

「後ろから、反撃・・・何だと!」

反撃をするためにカースドラゴンを見た時、尻尾による攻撃が当たる直前であった。

「ぐっはっ」

尻尾による薙ぎ払いの直撃を受け、吹っ飛んでいった。


「ようやく一匹目か」

カースドラゴンは致命傷と判断し、次の標的を近くにいたラリーナに決め、攻撃を開始した。


(ラリーナ、そのまま戦いを続けてくれ、俺の方は防具を交換してから奇襲を掛ける)

直哉はラインハルトとの鍛練で、尻尾による薙ぎ払いや爪、牙の直撃を受けても死なない装備を開発していた。ダメージは残るものの、致命傷にはならず、直哉のリジェネや回復薬の効果で直ぐに復帰出来る程度に回復していた。

(了解! 派手に攪乱しておく)


「お兄ちゃん!」

リリは回復中であったが、直哉が吹き飛んだのを見ていて悲痛の叫びを上げていた。

リリが飛び出そうとした所、

「待ちなさい。冷静に見るのです」

ラインハルトが羽交い締めにして止めていた。

「放して! お兄ちゃんが、お兄ちゃんが!」

「だから、よく見なさい。それに、一緒に鍛練したでしょう。新しい防具の効果もあるし、大丈夫ですよ」


リリは心配であった。直哉が倒れたまま、ピクリとも動かないので。だが、ラリーナがそのまま攻撃し続けているのを見て、

「リリも、リリのやれることをやろう。お兄ちゃんはフィリアお姉ちゃんが助けてくれる」

リリは覚悟を決めた。

「パパ、ドラゴンさんになっていよい?」

「うーん、まだ早いのだが。前衛が不足しているか。良し、ドラゴンになって押さえつけなさい」

ラインハルトの決断に、

「わかったの!」

リリは喜んだ。



(む、リリの魔力が膨れあがるか。この上がり方はドラゴン化だな。俺が抜けた事による前衛不足を補う作戦か? でも、リリがカースドラゴンを押さえてくれるのであれば、俺はアレを使うとしますか)

新しい防具に換装し指輪を取り出した。

(今回つぎ込む魔力に耐えられるかどうかは、未確定だな。でも、やるしかないか。この攻撃で最終形態へ移行させられるはずだ)

使い古したエクスプロージョンリングを取り出して、魔力を集中し始めた。

直哉の魔力により、悲鳴を上げていた指輪が砕け散りそうになっていた。

(不味い。このまま魔力を篭めたら、指輪が砕け散る。アクセサリ修理! 俺が造った物ではないが、スキルレベルが上がったので何とか修理しながら使えそうだ。けど、今回の攻撃が最後だろうな)

直哉はアクセサリ修理を使い、限界まで指輪の寿命を引き伸ばして魔力を蓄えていった。



ラリーナは直哉とリリから、大きな魔力を感じると、

(一気に決めるきだな)

と考え、銀狼化してカースドラゴンへ躍りかかっていった。

「ワオォォォォォン!」


「こしゃくな、子犬風情が!」

カースドラゴンは爪や牙で応戦し、確実に倒すために押さえつけようと躍起になっていた。

「洒落臭い!」

それをヒョイと回避しながら、逆に爪と牙で切り裂いていった。

「うぐぐぐぐぐぐ」

段々と面倒になって来たのか、ブレスをはき始めた。

「ちっ」

近接攻撃は回避しきれていたが、ブレスを完全に防ぐことが出来ないために、ダメージを覚悟して戦っていた。


「ラリーナ殿、助太刀いたす」

そこへ、ハンゾーが治療を終え突撃してきた。

「リリも、いるの!」

リリも一緒に飛んで来ていた。この時タダカッツも治療を終え、駆けつけようと走っていたが、まだ辿り着いていなかった。


「拙者は右側から、ラリーナ殿は左側から、リリ殿は正面をお頼み申す」

ハンゾーの指示通りにリリとラリーナが包囲した。

「五月蠅い蝿共め!」

カースドラゴンは全方位から攻撃されるのを嫌がり、

「GRYAAAAAAAAA!」

衝撃波を放った。


ラリーナとハンゾーは楽々と回避し、リリはドラゴン化して耐えた。

「なっ! ドラゴンだと!?」

カースドラゴンはリリの姿を見て驚愕していた。

これまでは、竜族が見あたらなかったため、倒される心配が無かったが、竜族が居ることでその安全が瓦解した。

「さぁ、いっくのー!」

リリは、驚愕し動きの止まったカースドラゴンの押さえ込みに入った。


「くっ!」

ジタバタと足掻いているが、リリの押さえ込みはラインハルト直伝で、抜け出すことが出来なかった。

(まずいまずいまずい)

そこへ、ハンゾーとラリーナの連続攻撃と、ようやく追いついたタダカッツの攻撃がカースドラゴンの防御を貫いていった。

「ぐぅううううううう」

不気味なうなり声を上げながら、身体の色を深紅に変化させていった。


「むむ、不味いの拘束が解けそうなの!」

リリの叫びで、ラリーナ達がその場を離れた。

「これが、限界なの!」

そう言うと、押さえ込みを解除して、上空へ逃げて行った。


ようやく拘束が解け、第三形態まだ、もう少しという所に直哉の魔法が炸裂した。

「喰らいやがれ! エクスプロージョン! アハト!」

エクスプロージョンリングから八つの魔法が飛び出して、次々とカースドラゴンの元へ飛んで行った。

(む、アレは危険だ)

カースドラゴンはギリギリまで魔力を羽根に集め、

「GRYAAAAAAAAA!」

衝撃波で迎え撃った。



次々と炸裂する爆裂魔法を衝撃波だけではじき飛ばそうとしたが、魔法が一つから二つだけなら防げたのだろうが、最終的には数多くの爆裂魔法がカースドラゴンへ降り注いだ。

「ぎゃぁああああああ」

人間のような叫び声を上げて、カースドラゴンはその場に丸くなった。

直哉の指にはめていたエクスプロージョンリングは粉々に砕け散った。

(今までありがとう)

直哉は心の中で礼を言ってから、

「追い打ちを!」

そう叫ぶと、新しく造った四属性の剣を装備して斬りかかっていった。



カースドラゴンの色が深紅に変わり、羽根が今までの数倍の大きさになり、頭が三つに増えた。

(えー、キングギドラかよ。つか、ゲームの中では頭が増えることはなかったのに、ここに来て大きく違うことが起こるなんて)

「せぃ!」


ガキン!


「くっ」

今までよりさらに防御力が上がり、直哉の通常攻撃では鱗を貫通することが出来なくなっていた。

さらに、羽根をばたつかせて、

「GRYAAAAAAAAA!」

衝撃波を放たれると、リリとタダカッツ以外は弾き飛ばされた。


「ちぃ!」

ラリーナとハンゾーは受け身を取り、直哉はマットを出して激突ダメージを緩和した。

しかし、三つ首のカースドラゴンの咆吼は衝撃波だけでなく、爆発の魔法と眷属の召喚を兼ねていた。

「こんのーなの!」

リリはブレスを吐いて爆発の魔法を弾き飛ばし、カースドラゴンへその攻撃を届かせようとしていた。


しかし、カースドラゴンの真ん中の首がブレスを吐き、迎撃してきた。

「むー」

一見互角に見えた戦いであったが、カースドラゴンは後二つ首が残っていて、それぞれがリリに向かって攻撃を仕様としていた。


「ココなのじゃ!」

リリに迫る首に対して、新たに狙いを付けていたエリザから槍が放たれた。

カースドラゴンは二つの首のうち、一つがもう一つの首を護る様に前に出て、その槍を一番防御力の高い部分で受け止めた。

「ぐぎゃぁ!」

だが、攻撃力が高かったために、その首は昏倒した。


そして、護られた首はリリへ向かって攻撃を仕掛けようとしたが、走ってきた銀狼によって止められていた。

「させぬ!」

そこへ、タダカッツが槍を振るい、首を攻撃し始めていた。

しかし呼び出された眷属の地龍がタダカッツに襲いかかる。


「ぬぅ! 邪魔立てするな!」

タダカッツは地龍への対応を迫られ、ジリジリと押されていった。

直哉はゲートを開きエリザの横へ行った。

「直哉殿!? どうしたのじゃ?」

「地龍を打ち抜いてもらえる? ラインハルトさんに動いてもらおうと思っていたけど、カースドラゴンが予定外の形態になったので、作戦を変更する」

「わかったのじゃ」

エリザは、カースドラゴンから地龍へ目標を変更した。


(よし、さっきのエリザの攻撃で一つは昏倒したままだな。ここは、貫くより叩いた方が良さそうだ)

直哉は武器を剣から鈍器へ変更してゲートをカースドラゴンの上に開いた。

(さぁ、行くぞ!)

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