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第百七十話 対カースドラゴン戦 その1

直哉の屋敷の前では、完全装備状態のリリが跳ね回っていた。傍には直哉が造った武具を着たラインハルト(竜王)の姿があった。

「るんるんるん」

リリは直哉が見てきた中で一番喜んでいた。


それを見ていたフィリアとラリーナが直哉と話していた。

「完全に浮かれているな」

「それは、仕方がないと思います。直哉様が一緒ですし生き別れだった父親が見つかったのですから」

「そうだな。でもさ、実際どうなるんだ?」

「何が?」

「いや、カースドラゴンが父親のカタキだって言ってたのに、そうじゃなかったからさ、リリは戦えるのか?」

「うーん、どうなんですか? 直哉様?」

「それは、リリを信じるしかないよ」

「そうですよね。リリなら、大丈夫ですよ」


そこへ、マーリカが甲冑マント姿の男と忍び装束の男を連れてきた。

「こちらの準備は整いました」

タダカッツとハンゾーである。

「直哉殿!この防具は確かに防御力が上がっているのだが、今までのように周囲を見渡す事が出来ぬし、闘気を遮断されるため、闘いにくいのでごさるな」

新しい装備のマントをバサバサと風になびかせながら、兜を被りながら左右に首を振っていた。

「タダカッツさん。申し訳ない。鎧はだいぶ軽量化と運動性能を高めましたが、兜については、それが限界でした」


横にいたハンゾーが、

「しかし、その装備でタダカッツ殿の修羅モードのデメリットがメリットに変わるのだから、その恩恵は計り知れない」

「確かに。拙者の修羅モードは、周囲にいる者の全能力を下げ、拙者の全能力を上げるというものだからな」

(何という味方殺しなんだろう)


「この防具なら、始めから修羅モードで戦える」

直哉が造ったのは、

闘気を遮断し反射するマントと兜で、開いている前面から闘気が溢れ出す仕組みになっていた。


「これなら、前面から退避すればタダカッツ殿の技を喰らわずに済みますな」

「はい。なので、技を使用するときは必ず着けてください。普段の戦闘では兜を前から後ろへ脱げば、首の後ろに収納されたようになります」

(実際は折り畳まれると言うべきだけど、あれだけ硬い兜が折り畳まれると言っても信じて貰えないよな)

直哉は頭を掻きながらそう思った。


「マントの方は、耐熱と耐火が付与されているですよね」

「はい。全員分のマントを用意してあります」

直哉は、ドラゴンのブレスからのダメージを軽減するための防具を造り上げていた。

「効果は、リリとラインハルトさんのブレスなら数発は耐えられる仕様になっていますが、過信するのは禁物です。出来るならちゃんと回避して欲しいです」

「まぁ、そうだろうな」


タダカッツは、

「いざという時に、ドラゴンの正面に立ってブレスを回避する手間を掛けずに連続攻撃が出来るのは、拙者としてはかなり魅力的なのだがな」

「いやぁ、無理しないでくださいね。下手をしたらドラゴンのブレスで即死ですから」

「うむ、ラインハルト殿との鍛練で、対ドラゴン戦も様になって来たし、直哉殿の作戦も完璧に思えるから大丈夫でござろう」

「過信は禁物です」

「心しよう」



直哉はハンゾーに来て貰い、

「では、これからハンゾーさんと共にマーリカとハンゾーさんのお母さんが封印されている場所へ行ってきます。その場所を発見次第、この場所とゲートを繋ぎますので、皆さんはゲートを潜ってきて下さい」

ハンゾーは空を飛ぶための装備を身につけて、

「いざ、参る!」

直哉とハンゾーは空高く舞い上がって行った。



直哉を見送った嫁達は話し合っていた。

「行っちゃったの! リリも行きたかったの」

そんな不満をフィリア達に漏らすと、

「そうですね、直哉様は本当にお忙しいお方。もう少しご緩りとするお時間を取って頂けなければ、お身体を害してしまいます」

「確かにな。ただ、今回のカースドラゴン(?)戦は早急に片づける問題であろう?」

「マーリカのことであるな?」

「そう、きっと直哉はマーリカの心を解放しようと動いているのだと思う」

「それなら、リリ達がお手伝いするの! そして、さっさと終わらせてお兄ちゃんをゆっくり休ませるの!」

「そうですね、それは良い案です」

「だな」

「わらわも同感なのじゃ」

嫁達は一致団結して、カースドラゴン戦に望むのであった。




◆数時間後 大岩


「直哉殿、見えて参りました」

ハンゾーが直哉に報告すると、

「わかりました、慎重に近づいて見ましょう」

二人は周囲を警戒しながら近付いていくと、厳重にお札が貼られた大きな岩が鎮座していた。

「この岩に、お母様が?」

「いや、この大岩は封印の間へ通じる道を塞ぐ物だ。この封印の奧に母上がいらっしゃる」


「では、ここに皆さんを呼んで準備しますか」

「はい」

直哉はゲートマルチを放ち、リリ達を呼び寄せた。



「ここに、母上がいらっしゃるのですか?」

「この奧にいらっしゃる」

直哉はラインハルトに向かって、

「どうですか? なにか感じますか?」

「いや、何も感じないな」

「そうはそうです。この大岩の結界には認識を阻害する術式も込められていますので、中の物を感じる事は難しいはずです」


「それでは、直哉殿」

ハンゾーに促され、

「みなさん、準備は良いですか?」

直哉は仲間の顔をみて、

「始めてください」


マーリカは、大岩に手をついて封印の解除を始めた。

他の仲間達はそれぞれの武器を構えて、不慮の事故に備えていた。

「そろそろ、大岩の封印が解けます。その後は、母上が封じられている大広間まで傷害はありません」

ハンゾーがそう説明すると、マーリカが術を終わらせた。


パキッ


大岩が弾けるような音と共に真っ二つに割れて、その奧の道が通れるようになった。

「さぁ、直哉殿、号令をお願いします」

「いきなり戦闘になることは無いのですか?」

「はい」

直哉は意を決して、

「一気に大広間まで行きます」

そう言って、先頭を歩いて行った。


マーリカが何度か前に走り出そうとして、ハンゾーに止められていた。

「待ちなさい。直哉殿が指揮を取られているのだ、それに従いなさい」

「はい」

直哉は大広間へ続く道を観察しながらゆっくりと下っていった。

(緩やかな坂が続くな。両脇には崖を切り取ったような壁があって、上空は木々が生い茂り日の光を遮断している。それなのに、両脇の壁に光の魔石でも埋めてあるかのような明るさで、道を照らしている。よく見れば壁に埋まっている石が光っているな)

幻想的な道を直哉達は下っていき、ついに大広間へ到着した。




◆大広間


そこは磨いた大理石を敷き詰めたような空間で、石の模様の部分が発光していた。

「広いな」

直哉は呟いた。マーリカ達の母親が封印されている場所が見えず、

「どの辺にあるのですか?」

「この大広間の中心で、カースドラゴンを封印しています」

直哉は遠くを見るようにしたが、

「中心・・・。ここからは見えないですね」


「はい。入り口から中心まで5キロ程あります」

「5キロ!? 一時間以上かかるじゃないですか!」

「そうです。あのカースドラゴンを追い込むのは並大抵の事ではなかったのです」

直哉はリリ達を見て、

「走りますか?」

「飛ぶの!」

「良いぜ!」

急ぐ事になった。



一時間近く移動してようやくマーリカの母親が封印されている祭壇へ辿り着いた。

「ここが、封印の祭壇?」

「はい。そして、中に居るのが母です」

直哉が覗き込むと、黒豹がドラゴンを抱え込むようにして水晶の中に封印されていた。

「あれが、マーリカのお母さん」

「まずいな、カースドラゴンが封印から逃げ出している」

ハンゾーは焦っていた。

「えっ?」

「本来であれば、ドラゴンは母の胎内に居るはずなのだが、既に全身が出てしまっている、あれでは封印の意味が無い」


ハンゾーが叫ぶのと同時に、ドラゴンの瞳が開かれた。

「GRYAAAAAAAAA!」

水晶が砕け散り、中からカースドラゴンが現れた。

「戦闘準備! ラリーナとタダカッツさんお願いします!」


カースドラゴンは全長30メートルの巨大な漆黒の身体で、四本の足で大地に立っていた。

「よくも、我を閉じ込めたな!」

カースドラゴンは怒り狂っていた。

背中についていた羽根を羽ばたかせると、周囲に衝撃波を撒き散らしながら飛び上がった。


「いかん、飛ばしたら厄介だ!」

ラインハルトの忠告に、

「喰らうのじゃ!」

エリザは咄嗟に通常の矢を放った。

しかし、その矢はカースドラゴンの羽根による衝撃波によって明後日の方向へ飛んでいっていた。

「ちっ、羽根から繰り出される衝撃波によって、矢が届かないのじゃ」


その時直哉はゲートマルチを使い、マーリカの母親を回収していた。

「フィリア治療を頼む。マーリカはフィリアの援護を!」

「はい」

二人はマーリカの母親へ駆け寄った。


「直哉! このままでは近付けないので、アレを使う。奴の上空へ飛ばしてくれ」

ラリーナは、新しく造ってもらった長槍を取り出して、直哉の方へ走ってきた。

「了解! ゲートマルチ!」

直哉はカースドラゴンの上に出口を作ると、

「行って来る!」

ラリーナは迷い無く飛び込んだ。


「そらぁ!」

カースドラゴンは、急に上空から出てきた人間に一瞬焦ったが、自分の防御力を信じているのでそれを無視し、自分を封印していたマーリカの母親の方へ向かってきていた。

「みんな、護るよ!」

「おぅ!」

マーリカの母親を護る陣形は、先頭にタダカッツとラリーナ、次に直哉、左右にラインハルトとリリ、後方にフィリアとマーリカとアイリ。遊撃にハンゾー、上空にエリザとなっていた。


「とりあえず、叩き落します!」

直哉は、アイテムボックスから投擲用の槍を大量に取り出し、

「えぃ!」

ゲートインとゲートアウトを駆使して、カースドラゴンの上空から槍を降り注いだ。

流にのカースドラゴンはその槍のシャワーを嫌がり、速度が低下した。

そこへ、

「リズファー流奥義、大地割り!」

ラリーナの長槍は、羽根を貫通し背中に食い込んだ。


「ぐぁぁぁぁぁ!」

久しぶりに痛みを感じて叫びを上げ、地上へ落下した。

「よし!」

直哉はメテオの準備をし、ラリーナとタダカッツは猛攻撃を開始し、ハンゾーは一撃離脱で柔らかい部分を攻撃し、エリザが槍を放ち、アイリはワンスケを放っていた。

「リリも殴りたいの!」

リリはウズウズしていた。

「待つのだ。婿殿が立てた作戦通りに事が進んでいるのだ、ここは作戦通りに待機だ」

「むー、解ったの」


地上に叩き落され、猛攻を受けていたが、大ダメージを与えるには至らず、反撃されていた。

「尻尾が来るぞ!」

「爪だ!」

「牙だ!」

高い防御力を生かして、攻撃を受けながら攻撃をしていた。

「くっ、槍が連射できれば」

エリザは悔しがりながらも、弓を引いていた。


直哉はメテオの状況を見て、

「前衛は一旦下がって回復を!」

「了解!」

直哉の指示で、ラリーナとタダカッツが戻ってきた。


チャンスと見たカースドラゴンは突進しようとしたが、その鼻先を狙ってエリザは槍を飛ばした。

「ぬぅ!」

カースドラゴンは唯一ダメージの大きい槍の攻撃を回避して、突撃を止めていた。

「エリザも回復を、その手で弓を引くのは無理だ!」

エリザは無理に弓を引いていたため、弦を引く手が血まみれになっていた。


カースドラゴンは直哉達が固まっているのを見て、口にエネルギーを溜めていった。

「ブレスが来る!」

直哉は、城壁シールドを準備して、ブレスが来るのを待っていた。

ラリーナ達は回復を開始した。

カースドラゴンはブレスのエネルギーを溜め終え、勝利を確信してブレスを放った。

「くぅ! 城壁シールド!」


ドスン!


直哉は準備していた城壁シールドを展開した。

カースドラゴンは驚愕の表情で城壁シールドを見ていた。

直哉はさらに、

「ついでに、喰らえ!」

メテオをカースドラゴンへ放つと、


ブレスに集中していたカースドラゴンは、メテオの直撃を許してしまった。

「ギャァァァァァァ」

予想外のダメージに悲痛の叫びを上げていた。

「やったか?」

ラリーナがそう言うと、

カースドラゴンの身体が、段々と薄い赤色へ変化していった。


「よし、第二段階への移行を確認した。もう少しだ!」

直哉は、用意していた属性持ちの剣をマリオネットで飛ばしていた。

「GRYAAAAAAAAA!」

カースドラゴンは叫び周囲に衝撃波を放った。


「しまった!」

一撃入れようとしていたハンゾーが吹き飛ばされた。

「むっ! ゲートマルチ!」

そんなハンゾーをゲートでこちら側へ軌道修正して、マットを出して衝撃を吸収した。

「かたじけない」

衝撃波を受けたダメージを回復させながら礼を言ってきた。


「さて、動けるのは俺だけみたいだから、行って来るか。ラインハルトさん、ダメージが蓄積したら止めをお願いしますね」

直哉が飛び出そうとすると、

「待ってなの! リリも、リリも行くの!」

そう言って、直哉の元へ飛び出してきた。

「そうだね、ラリーナ達が戻るまで、一緒に戦いますか!」

「はいなの!」


直哉はリリと共にカースドラゴンの第二形態との戦いを開始した。

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