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第百六十六話 新ワンスケとアイリの思い

◆直哉の屋敷地下鍛練場


直哉はフィリアとアイリを連れて鍛練場へ降りてきた。

そこには、リリとラリーナが既に鍛練を始めていて、エリザとマーリカは装備の確認をしていた。

「さて、ワンスケの意識を移動させようと思う。魔王が死に、ワンスケ自体がどうなっているかわからないが、ワンスケが死んだらアイリの方がわかるのだよね?」

「はい。捕まえたモンスターが死亡すると、テイムモンスター一覧の名前の所に、死亡と出ます。その状態で放って置く事も出来ますが、テイムできる数は術者のレベルによって決まるので、滅多な事が無い限り、放出させるのが普通です」

「放出するとどうなるの?」

「そのまま、モンスターの死体が出てきます」

「なるほど。それともう一つ、テイムしたモンスターの死体を持ち歩けるという事は、生き返らすことが出来るの?」

「完全に元通りでは無いという事と、テイムモンスターの蘇生を覚えるのは高レベルという事をクリアすれば出来ます」

「出来るんだ」


直哉は、蘇生魔法について考え直すことにした。

(おそらく、リソース不足とやらで、ニセ神が蘇生魔法を封印しているな。ん? 封印するリソースより、魔法を使われるリソースの方が多いのか? まぁ、そういう事なのだろうな。そうでなければ封印する意味が無いからな。しかし、俺の封印については全くの無駄だと思うのだけど、違うのかな? まぁ、俺を呼び出したと思われる本当の神とやらと連絡を取られるのが、相当して欲しくないという事なのだろうけど。それにしても俺にとっては面倒なことだよ)

そう考えて視線を戻すと、その場に居る全ての者が直哉を心配するように見ていた。

「あぁ、ごめんごめん。ちょっと蘇生について考え事をしていたよ」


「蘇生についてですか?」

「うん。この世界に本当に蘇生が無いのかについてをさ」

「私のスキルが問題ですか?」

「問題というか、考えるキッカケをくれたが正確かな」

「考えるキッカケですか?」

「うん。今までは無いという情報を鵜呑みにして、探すことすらしなかったけど、もしかしたら見つかって無いだけで本当は有るのではないのか。とか、魔法が強力過ぎて使用者に負担がかかるとか」

(意識だけとは言え、ガナックさんが使っている所を見てしまった今では、有るという方が正しいと思えるよ)


「探しに行きますか?」

「いや、今の所は必要ないので優先度は低いな」

「そうですか。もし、探しに行くのであれば私もついて行きます」

じっと目を見たまま、回答を待つフィリアに、

「覚えたいの?」

「はい。直哉様の危険が一つでも無くなるのであれば」

腕を組み考えながら、

「一つだけ約束してほしい。何かを代償にするような魔法なら、覚えないでほしい」


「その時になったら、相談します」

相談できれば、と、心の中で、付け足していた。



「よし、蘇生についてはこのくらいにして、ワンスケの移行を始めますか」

アイリは待ってましたとばかりに、ワンスケの新しい身体を抱きしめながらやって来た。

新しい身体は、茶色の豆柴の様なヌイグルミであった。

「アイリはそのまま新しい身体を持っていてくれる? フィリアは結界を張ってく。他のみんなは周囲の警戒を」

「はい」

直哉の指示の元に、みんなが動き出した。


フィリアの張った結界の中に、ワンスケの新しい身体を持ったアイリとアイテムボックスからワンスケが入った腕輪を取り出そうとしている直哉がいた。

「では、取り出すよ?」

「お願いします」

アイリが腕を伸ばし、腕輪を装備する準備をして、フィリアは結界に力をこめ、残りは何が起こっても対応出来る様に準備をしていた。



直哉がみんなの顔を見て肯いたのを確認してから、腕輪を取り出した。

「何だ! この瘴気は! いや、闇の力か!?」

取り出した腕輪から、どす黒いエネルギーが溢れ出し、直哉とアイリを包み込もうとしていた。

「直哉様!」

「結界はそのままで!」

慌てたフィリアが結界を解こうとした時、直哉が制止した。

「ですが!」

「結界を解けば逃げられる! このまま閉じ込めておくんだ!」


「ワンスケ!? どうしたの? ワンスケ!」

アイリは必死に声を掛けていた。

腕輪の制御を振り切り、黒い犬のヌイグルミが現れた。

「ぐるるるるるるるる」

口から闇の力を溢れさせながら威嚇してきた。

「これが、本当の姿!?」

直哉は震えるアイリを見て、


「アイリ! 現状でワンスケはテイムしている事になっているのか?」

アイリは、

「あれ? テイムが解除されています。何で? どうして? ワンスケ!」

ワンスケに向かって叫んでいた。

「それなら、もう一度ワンスケをテイムするんだ!」

アイリはハッとして、呪文を唱え始めた。


「悠久の時にて受け継がれし秘術、我が魔力と共にその力を示せ!」

アイリはワンスケに向かって両腕を伸ばした。

「モンスターテイム!」

ワンスケが抵抗を始めた。

「われは、新しい魔王様の側近に・・・・うぐぐぐぐぐ」

アイリも必死に魔力を込めていった。

「ワンスケ! お願い! 戻って来て!」


直哉はワンスケに近づき、

「ワンスケよ、思い出せ! 目の前の少女の事を! お前が言ったのであろう! お前の目的はこの娘の幸せだけだと!」

闇の力が一瞬弱まったが、ワンスケの中から膨大な闇の力が溢れ出しアイリを飲み込もうとした。

「危ない!」

直哉はアイリの前に立ちはだかりその身を挺して、ワンスケの攻撃からアイリを護っていた。

「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁ」


直哉は背中に強烈なダメージを負いながらも、アイリを護る事をやめなかった。

「直哉さん・・・」

アイリは更に魔力を強めていった。

「直哉様!」

「お兄ちゃん!」

「直哉!」

結界の外からは、嫁達の悲鳴が聞こえてきた。


(あぁ。直哉さんに護られていると安心出来る。ワンスケ! 貴女も素直になりなさい!)

「私と契約を結べ!」

「ぐるるるるるるるるるる」

始めは勢いがあったワンスケの威嚇は、段々と小さくなり、

「ワン!」


最後は抵抗を止めた。

その瞬間、闇の力は霧散しワンスケ核が直哉の造ったヌイグルミに入り、テイムが終了した。

「良かったね」

そう言うと、直哉はその場に倒れた。


全てが終わったのを見て、結界を解き、嫁達が押し寄せた。

「直哉様!」

「いつもながら、無茶が過ぎる!」

そう言って治療を開始した。

(あれ? あれだけ闇の力に晒されていたのに、闇の力に侵食されていないなんて、どうしたのかしら)

フィリアは、首をかしげながら、傷の治療をしていった。




◆直哉の部屋


直哉が目を覚ますと、そこは直哉の部屋でベッドに寝かされていた。

(あれ? ここは? 何でココに?)

身体を確認すると、胴体や腕は包帯でグルグル巻きにされていたが、既に治療が終わっていたようで、光も収まっていた。

「みんな、心配掛けたようだね」

周囲に、リリをはじめ、フィリアやラリーナ、そしてエリザが集まって眠っていた。

直哉はみんなに掛け布団を掛けて、もう一度ベッドに戻った。


(はぁ、また、やってしまったか)

直哉がため息をつきながら腕輪を見ると、

(あれ? アイリの思い? 何で?)

少し混乱していたが、

(後は二つか、順当に考えるとマーリカなんだけどな。後は、誰だろう。この配置にも何か意味があるのかな? 一番大きいのが真ん中に入るのだけど、まだ埋まってないのだよね。そこから6つの方向に線が延びていて、リリ達の珠へ繋がっているのだよな。うーむ。バルグフルの王城や、ルグニアの忍びの里で俺の事を予言していた書になんて書いてあったっけ?)

考え事をしていたが、いつの間にかに眠ってしまっていた。




◆次の日


直哉が目を覚ますと、嫁達は直哉にくっつくようにして眠っていた。

(あれ? 何をしていたんだ?)

少し思い返してみたが、

(いや、何もしていないはずだ!)

そう思って身体を起こしてみた。


「うみゅー」

直哉の上半身の上で丸くなって眠っていたリリが転がり落ちていった。

「あっ」

そのまま下にいたラリーナにぶつかった。

「痛いの」

「痛いぞ」

二人はぶつけた所を押さえながら抗議してきた。



「ご、ごめんよ。それと、おはよう」

直哉は謝りながら朝の挨拶をすると、

「あー! お兄ちゃんが起きたの!」

と、大きな声で叫ぶと、みんなが起き出した。

「あぁ、直哉様! 本当にご無事で良かった」

「傷一つないのじゃ。良かったのじゃ」

みんなが喜びながら傷口があった場所を触ってきた。



直哉の無事を確認してから下の食堂へ降りていくと、マーリカとアイリが待っていた。

「おはよう」

「おはようございます。ご主人様!」

「直哉さん、おはようございます」

皆とも挨拶を済ませて、昨日の結果を確認した。


「それで、ワンスケはどんな感じですか?」

アイリは腕輪を触って、今のところは問題無いようです。

「では、出してみて下さい」

また、闇の衣で直哉がやられないように、臨戦態勢を取った。

「出でよ! ワンスケ!」

アイリの声に反応するように、腕輪が光り豆柴のヌイグルミが現れた。



「あれ? アイリ。おっす! ん? 俺の身体何か変じゃね?」

「お前はワンスケか?」

「ん? おぉ! 直哉じゃないか! 俺の身体がおかしくないか?」

アイリはそのままワンスケを抱きしめた。

「良かった。ワンスケ。良かったよ」

「うぇぇぇぇぇ。おぃ! アイリ! 離せ! く、くるしぃ」


「直哉様、本当によろしいのですか?」

「何が?」

「元はあの魔族ですよ?」

「そうだね。でも、今は違う」

「ですが!」

「それに、ワンスケに誰かが殺られていたとして、その御遺族は? 今のところ、俺達には何も悪さはして居ないのだから、問題は無いと思うのだけど」

フィリアは直哉に言いくるめられて、黙った。


そこへ、アイリの抱きしめ攻撃から離脱したワンスケがやってきた。

「直哉よ。身体は大丈夫か?」

「えっ? えぇ」

「そうか。この度は、アイリと私のために手を尽くして下さり、本当にありがとうございました。また、その身を挺してアイリを護って下さり、本当にありがとうございます。我が身はどうなっても構いません。ですが、アイリだけはご容赦下さい」

そう言って、頭を下げた。



「とりあえず、俺はどうこうするつもりはありませんよ。ただ、その身体の使い勝手を教えてください。問題無いようであれば、ルグニア様の所に持って行くので」

「えっ? 俺の身体を!?」

「いいえ。ルグニア様の身体を持って行きます」

自分の身体を確認するように見たワンスケは、

「そうか良かった。って、やっと、違和感に気が付いた! この身体は俺のじゃないじゃないか!」

直哉はおどけながら、

「あれ? 今頃気が付いたのですか?」


ワンスケはガックリとしながら、

「なんたる鬼畜。私の身体をココまで改造するなんて。。。」

直哉は少し悪い顔をしながら、

「ちなみに、アイリが頑張ってくれたのだけど」

ワンスケはムクっと起き上がり、

「うん! 良い身体だ!」

その身体を誇った。

「わかりやすいね」

みんなは笑っていた。



◆バラムド アシカの屋敷


「では、オダとトークガの罪については、御家断絶ののち、バラムドより追放と言うことでよろしいな」

その他の貴族達の中には、煮え切らない顔をしているものも居たが、反対意見は出なかった。

「よろしい、では解散!」

ヨシの号令により、みんな平伏した。

ヨシは、その光景を見ながら、奥の間より退出した。


部屋に戻ったヨシは、シュリと御三家を交えて直哉を迎える準備を始めた。

「とりあえず、今回の目的は、オダ達を引き取ってもらえるように交渉する事だからな!」

ヨシの発言に、

「アシカ様の気まぐれが、一番怪しいのですが・・・」

ユーサイは首を横に振りながら、深いため息をついた。

他の者達も大きく頷いていた。

ヨシはうなだれていた。




◆バラムド 直哉視点


直哉達は、アシカの屋敷に呼ばれたため、大聖堂に集合していた。

もちろん、パスタスとスリーも一緒に。

「それでは、アシカ様の所へ行きましょうか」

直哉を先頭にして、アシカの屋敷へ向かった。



何の問題も無くアシカの屋敷に辿り着いた直哉達は、いきなり、ヨシの部屋へ通された。

部屋に入ると、パスタスは平伏した。

「はぁ、この部屋の中では、その様な面倒な事はしなくて良いぞ」

ヨシの砕けた言葉にパスタスは驚きながらも顔を上げた。

「さて、直哉達の方から聞きたいことがあるという事であったが、どの様な事だ?」

ズバッと聞いて来た。


「はい。オダとイーエヤッスの今後についてです」

ヨシは無表情で、

「どうしてそのことが気にかかるのだ?」

直哉はパスタスの事を話して、紹介した。


「直哉さんより紹介していただきました、人形師のパスタスと申します」

そう言って、頭を下げた。

「そうか、お主が人形師であったか」

ヨシは興味深そうにパスタスを見て、その後でスリーを見た。

「こっちが、お前が作った人形か?」

「スリーと申します」

スリーが自己紹介をすると、足かはビックリしていたが、

「そうか、これをお主がか。先代と同じくらいの技量を持っているな」


「えっ? 父を、父をご存知なのですか?」

パスタスは襲い掛かるように詰め寄ろうとして、ユウサイに止められていた。

「あ、申し訳ありません」

パスタスは我に返り、その場に平伏した。

「いや、大丈夫だ。問題は無い」

ヨシの命令により、パスタスへの拘束は解かれた。


「さて、何から話そうかな」

ヨシは遠い目をしていたが、たいした話ではなく、ただの茶のみ友達であった。

ユーサイ達は、

「ほほぅ、その様な昔から屋敷を抜け出して遊び歩いていたのですか!」

と、怒り、

「父はいったい何をなさっていたのですか」

パスタスもまた、自分の父親がやっていた事を聞かされ、羞恥に震えていた。

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